とよたま愛読会58回(山河草木:66巻11章〜卷末)  記塩津晴彦


日 時  平成13年7月22(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
物 語  山河草木 辰の巻 第66巻 11章 〜 卷末

★ 報告:猛暑を感じさせる天候の日々が続きます。
そんな半日を愛読会は参加者六名で『霊界物語』第六六巻の第一二章から巻末までの通読を無事に終えました。いつものとおり拝読箇所で気の付いたことを列記してみました。

★ 拝読箇所で気のついたこと:
第三篇  異燭獣虚(いしょくじゅうきょ)
 第一二章 恋の暗夜 (一六九四)

 コマの村の里庄の二男サンダーは、国内きっての美男子でありまた奇妙なことに、日頃自ら女装を好み、傍目には男子とは見破れないほどの容貌を誇っていた。彼は許嫁のスガコが行方知れずになってから、悶々とした日々を送っていたが、ある日家の前をシーゴーが通りかかり、その「美貌」を見初めて例の如く誘拐の甘い言葉「いかなる煩悶苦悩も、オーラ山の活神玄真坊によって煙散霧消し、天国に救われる」投げかける。その言葉に動かされたサンダーは夕暮れからオーラ山目指して進んでいく。

その歌 『恋の力の不思議なる   病躯を起して野路山路
     区別白露分(けじめしらつゆ)けて行く   オーラの山の活神の
     稜威を受けて妹と背の  汝に会はぬが楽しみに
     冷たき夜風を浴びながら  露の芝草踏しめて
     心の空の明りをば   杖や力と頼みつつ
     吾はイソイソ上り行く』

そして遂に玄真坊のところへ到着する。  彼が闇路を踏み分けて愛しいスガコ姫の所へたどり着いたのは恋の力か、魔の力か。

 第一三章 恋の懸嘴(一六九五)
 一方玄真坊は、ヨリコ姫に見放されていささか不平不満の日々を送っていたところへ、絶世の美女(?)サンダーが現れたのだからたまらない。  しかしここで気が付くことがありますね。 『玄真坊は一種の色情狂である』という表現と『玄真坊の室内には経机が一脚きちんと据えられ、二三冊の金で縁を取つた経書が行儀よく飾られている』とのお示しです。(一八二頁) まるでどこかの寺僧の部屋の様ですね。色に狂った坊さん、ということに合わせてサンダーの女装癖が記述されているようにも感じます。  玄真坊は何とか彼を自分のものにしたくなり、サンダーが「スガコ姫の兄だ」偽って話したのに対して、天命によって自分とサンダーは夫婦になることに決まっている、夫婦になればスガコ姫に会わせてやる、と説き伏せにかかります。  玄真坊のいやらしい口説き文句に身を震わせながらサンダーは何とか彼女に会おうとして、積極的に玄真坊の歓心を買うような台詞を並べる。

 第一四章 相生松風 (一六九六)
 サンダーはスガコ姫に会うことができたが、玄真坊の約束履行の催促が厳しく、二人は曖昧な返事を続けたのでとうとう一室に幽閉されてしまい、その上食料責めに遭う。両人は互いの恋心を確認仕合ながら、悲痛な覚悟で詠う。
『うつし世をあとに見すてて久方の   天津御国に吾は進まむ』
『大神の御許しうけてわれは今     スガコと共に天国に行かむ』
『現世はよし添へずとも天津国     神の御前に永久に栄えむ』
そこへ玄真坊が最後の返事を聞きに来る。

二人は覚悟はしていたが、一日でも命が延びればと執着心を起こした。そしてパンを与えてくれと懇願した。玄真坊はその答えを喜び、自ら二人のための食事を調理しようとする。

 第一五章 喰ひ違ひ (一六九七)
 してやったりとほくそ笑みながら料理に取りかかる玄真坊、そこへ付近の村の宣伝を終えたシーゴーが帰ってくる。シーゴーは玄真坊を見て何かあることを感じ、自分が村であった美人の事を話し、玄真坊の反応を伺いながらヨリコ女帝の元に伺候する。その後玄真坊も女帝に呼ばれる。  ヨリコ女帝はシーゴーの労をねぎらい、シーゴーもタライ村のジャンク里庄の財産をもぎ取ったことや美人のサンダーを引き寄せた事を自慢する。シーゴーがスガコ、サンダーを引き出すように尋ねるが、玄真坊は「今二人は断食中で会ってもその窶れた姿は見られない」と断る。しかしヨリコはシーゴーの求めに応じ、彼の手柄として二人を扱うことを許す。また玄真坊には女人の色気に見向きもしないように要求する。すっかり当てのはずれた玄真坊は羅漢面でひねくれる。

第四篇 恋連愛曖
 第一六章 恋の夢路一(一六九八)
 一方、一度はジャンクの義勇軍に参加しバルガン城に向かった梅公別だが、途中で自分の馬がどうしても云うことを聞かず、勝手に西へ向かって走り出すので、何かの御神慮と感じ、そのまま星明かりの原野を疾走する。途中バラモン軍隊がタライ村のサンヨの娘花香を打擲しているところに出くわし、天狗の物まねをして兵士を追い払う。  花香は梅公に感謝し、ついでに秋波を送る。彼女曰く梅公は「夢の中の恋人」なのだと。これには梅公も『なるほど私の名は梅公だ。さうしてお前さまの名は花香。三千世界一度に開く梅の花の香の香りといふ所だなー。何だか訳が分からなくなつてきましたわい』などと色気を見せるような言葉を吐出します。

 第一七章 縁馬の別 (一六九九)
 梅公と花香は馬上で甘い会話を交わしながら駒を進める。そして梅公は彼女に、山賊に捕らわれているサンダー、スガコを救出する目的であることを告げる。二人はそれぞれの想いを歌で述べる。

花香『魔風恋風面にうけ    魔神の集ふオーラ山
   勇の集うオーラ山     勇み進んで出でて行く
   吾が魂は奮ひ立ち    血潮は躍り魂光る
   あゝ惟神 神惟 神かけ祈り奉る』
梅公『恋の矢玉は防げども  もはや力も尽き果てて
   花香の姫に玉打たれ  恋の奴となりにけり』

 そうする内に二人はオーラ山の麓に到着する。
そして例の光かがやく大杉を目当てに麓から登りだす。

第一八章 魔神の囁 (一七○○)
 オーラ山の岩窟では玄真坊が閉じこめてある二人の前でくどくどしい言い訳を始めるが、その言葉尻を捕まえて、
サンダーは『親分のシーゴ様だとか、も一つ親分のヨリコだとかおっしゃったが、天地の聖場で泥棒と交際があるとは一向に合点が参りません』と玄真坊に迫る。玄真坊は慌ててうち消し、食事を勧めるが、今度はあべこべに二人から食事を拒絶される。  さてここでまた気になるお示しが出てきます。 玄真『よく考えてごらん。どこやらの国の王様だって、もとは海賊上がりだよ。』『自転倒島の富豪だつて難爵をもらつて威張つてゐるが、あれでも、ヤツパリ贋札を拵えたり、今でも外国紙幣を盛んに贋造しているじやないか』  海賊上がりの王様、というのは常識的には英国の王様ですね。しかし我が日本国天皇の祖先も海賊だったという説が一部にあります。そう考えると何かこの巻の主題が見えてくるように思います。  さて意地と見栄っ張りを通そうとする玄真坊に対してスガコ姫が、なぜシーゴー達に自分の食事を取り上げられたのか、と問いつめると、 玄真は、『そこが救世主の救世主たるところだ。光を和らげ、塵に交わり衆生を済度するのだから、観自在天様の働きをしてゐるのだ。観自在天様は泥棒を改心させやうと思へば、泥棒となり』と答えますが、これは無論聖師さまご自身のことを玄真坊の台詞として喋らせていらっしゃる訳です。そして将にこの台詞こそ聖師様の現界での御神業の在りようなのですね。  いつも柔軟で懐の広い教えと活動で救いの御技を執り行っていただいたのです。気が付いたら終わっていた」というような感じでしょうか。  その後の三人の会話は、とても筆で表せないものですね。ピンク色のもやをかぶせるしかないでしょう。

第一九章 女の度胸 (一七○一)
 オーラ山で毎晩光が輝く大杉の所へ来た梅公と花香は梯子を伝ってよじ登り、まづ光を消してしまった。これを見た玄真坊とシーゴーは不思議がる。梅公は突然大声で「真の玄真坊大天狗」を名乗り大杉から山賊団の解散を要求した。 玄真坊とシーゴーはそれを聞いて奮えおののくが報告を受けたヨリコ女帝は微動だにもせず、大杉の下から梅公に呼びかける。梅公も自分が三五教の宣伝使であることを白状したので、玄真坊とシーゴーはにわかに元気を取り戻し、縄ばしごの括りを解き梅公らは地上に落ちてくる。

第二○章 真鬼姉妹 (一七○二)
 捕らえられた二人はサンダー、スガコの居る岩窟に放り込まれ四人はそれぞれの素性と経緯を語り合い喜び合う。そしてヨリコ女帝はどうやら花香の姉らしいことが分かる。梅公はそうなってくると『あーあ、話が理に落ちて気が鬱いで仕方がない。どうです皆様、二男二女が大きな声で歌いましょう』と先陣を切って歌い出す。

 『玄真坊よシーゴーよ     一つの秘密を言うてやろ
  何ほど心を砕きつつ      天下を狙って見たとこで
  お前の知恵では及ばない   肝心要の救世主
  此処にござるを知らないか  玄真坊やシーゴーの
  腰抜け身魂ぢや駄目だぞよ 俺の言ふこと分からねば
  女帝のヨリコを招んで来い  女帝であろうが何だろが
  吾が言霊の一節に       言向和して見せてやろ』
(本書二八八頁)

 オーラ山の岩窟で兄弟の再会あり。山賊の女帝もその子分たる玄真坊、シーゴーもすっかり毒気を抜かれて唖然とし、この時一天を包んでいた黒雲は、折から吹き来る山嵐に晴れ、大空は梨地色に星光燦爛として輝き初めて来た。  梅公の言霊にオーラ山は清められ、登場人物 も各々の地位と任務が判然として来たのですね。 自分の居場所、対人関係からする自分の存在価値が分かってくれば、これまでの胸の詰まりも無くなるというものでしょう。  所々に散りばめられた日本の権力者達への鋭い風刺の聞いた批判は、聖師様の面目躍如たるものが在ります。そしてその基軸は次の第六七巻で一回り大きく展開されていきます。

以上。

次回 霊界物語とよたま愛読会(第59回) ご案内
日 時 : 平成十三年八月二十六(日) 午後一時から午後四時三十分まで
場 所 : 愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩八分 川崎方)
物 語 : 山河草木 午の巻 第六十七巻
拝 読 : 序文より通読いたします。 (物語をおもちでない方もどうぞ、参加費不要)
連絡先  愛善苑 豊玉分苑の連絡先(川崎方)
       電話 03-332-3996、03-331-8644


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