とよたま愛読会65回 山河草木 第69巻7章〜14章  記望月 幹巳


日 時  平成14年2月24(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
電 話  03-3321-3896、03-3321-8644
物 語  山河草木 辰の巻 第69巻 巻7章〜14章

★ 報告: 雪解の候、皆様には変わりなくお過ごしのことと思います。  第65回の愛読会もつつがなく行われ、珍の国の物語も新しい展開を迎えました。

 城を飛び出して行方不明になった世継・国照別の後に、妹の春乃姫が立てられます。  春乃姫は侠客・愛州を牢獄から助け出し、宣伝使として街の辻々に現れ、また松若彦の娘・常盤姫と協力して官憲と民衆の闘争を静めたりと、大活躍をします。  未だ暗がりから明けない珍の国をよく支え、来るべき夜明けに備えて人々に心の準備と忍耐を呼びかけます。  一方、国の立て直しの立役者となるべき世継・国照別は、身魂磨きのため、後を愛州・春乃姫に託し、珍の国を後にします。果たして、国照別は志を遂げることができるのでしょうか。

★ 拝読箇所で気のついたこと:
◇第二編 愛国の至情
○ 第七章 聖子(一七五二)

* 進歩派の老中・岩治別が、守旧派の追及を逃れて城を飛び出して以来、社会の不安が増し、世の中の立替が起こるとの流言が飛び交い、容易ならぬ雰囲気になってきた。

* 実は岩治別は侠客・愛州のもとに潜んでいた。

* さて、高砂城内では、世継の国照別が城を飛び出し、行方をくらましてしまった件について、協議がなされていた。

* 結論:監督責任のあった老中伊佐彦、松若彦は今回の件おとがめなし、そして、国照別の代わりに妹の春乃姫を世継に立てる。

* ただし、春乃姫は世継になるにあたって、城の出入りの自由、結婚相手選択の自由、進退の自由、老中任免権、を要求する。老中もしぶしぶこれを認めざるをえなかった。

○第八章 春乃愛(一七五三)
* 伊佐彦の妻、樽乃姫は嫉妬深く、残虐な性格であった。連夜、政務に追われる夫が帰ってこないことを怒り、ついに春乃姫からの手紙を勘違いして、狂乱してしまう。

* 街中に剣とピストルを携えて飛び出し、誰彼かまわず切りつけ、狙撃する。ついに、取り締まりに捕縛され、牢獄に投げ込まれる。

* 隣の牢獄に入れられていた愛州は、樽乃姫の狂乱の様から世の中の乱れを見て取り、その感興を歌に詠んでいる。

* 一方、春乃姫は侠客たちに約束したとおり、牢獄にやってきて愛州を開放し、城を抜け出す手引きをする。春乃姫は、兄・国照別から知らされて、愛州が実はヒルの国の国司の長子・国愛別であることを知っていたのであった。

○第九章 迎酒(一七五四)
* 愛州の子分たちは春乃姫の約束にしたがって、親分が帰ってくるのを待っていた。

* すでに約束の十日目になっており、痺れを切らした子分たちが、牢獄へ押し寄せて腕ずくで愛州を取り戻そうと、出陣の酒盛りの準備を始める。そこへ、ひょっこりと愛州が戻ってくる。

* 出陣の酒盛りは、そのまま祝いの酒盛りとなり、愛州の館には万歳の声が響く。

○ 第十章 宣両(一七五五)
* 城下の外れのうどん屋で、四、五人の若者が新聞を見ながら、このごろの珍の国の世相に話の花を咲かせている。

* 大地震、エトナ山の爆発、世継・国照別の逐電、進歩派老中・岩治別の失踪、老中伊佐彦の妻・樽乃姫の狂乱と逮捕、侠客・愛州の投獄、とざっとこれだけの事件が、すでに起こっている。

* そこへ、宣伝歌の声が聞こえてくる。
 ・ 厳と瑞の二柱の神が、天津空より降り、助けの神として善悪・正邪を立て分ける。
 ・ 誤解・矛盾に満ちた悪魔の世界を射照らして、松の神代に立て直す。
 ・ 民草はみな、神の御子であり、神が子供たちを見捨てることはない。
 ・ 神には備えがあるので、何が起ころうとも、勇んで天地の時を祈り、待つべし。
 ・* 我は、斎苑の館に現れた、瑞の御霊の大神の教えを世に弘く述べ伝える。

* うどん屋の若者たちは、この女宣伝使の後をつけていくが、すると向こうより、侠客・愛州が馬に乗ってやってくる。

* 四辻で愛州は馬上から、宣伝歌を歌い始めた。
 ・ 神人和楽・四民平等の神代が、常世の曲つ教えにより、物質本位・優勝劣敗の世となり果てている。
 ・我ら侠客は背水会を組織して、社会の大掃除をなし、衆生を救おうと活動している。
 ・義侠のある奴は、我らの参加に集まり着たり、奮起せよ。

* 先の女宣伝使は、実は春乃姫が化けた姿であった。春乃姫は愛州の宣伝を見て、横道へそっと姿を隠してしまった。

* 愛州の宣伝はなおも続く。
 ・ 物質界に神の天国を建設するには、肉体を持った真人の力でなくてはならない。
 ・ それを感じた我は、世の中の模範を示そうと、侠客の身分となって人類愛善という本当の目的を遂げようと励んでいる。
 ・ 神は万物普遍の霊であり、一方、人間は天地の経綸を実行するための器である。
 ・ 神と人とが合一して強く大きな力を発揮する、という三五教の教えを自分の身で示そうと決意した自分である。
 ・いかなる妨害があっても、決して恐れてはならない。屈してはならない。
 ・人々よ、神の世のために勇み奮い立て。宝も名誉も打ち捨てて尽くすべし。

* この宣伝に、道筋に人が集まり、愛州の人気は支柱に沸き上がった。

○第十一章 機転使(一七五六)
* 一方、都大路の中心では、公園内で浮浪階級大演説会が始まった。出口・入り口は多数の取締りで固められ、警戒ものものしい様子である。

* 浮浪階級演説会の会長・ブルドックはたいへんな勢いで演説を始めた。

* 世の中がこうも乱れた原因は、松若彦・伊佐彦の老中が私欲を満たそうと、衆生から搾り取っているためである。

* この難しい世を切り抜ける唯一の手段は、世を暗がりにしている張本人を打ち切って棄てるより他に手立てはない。

* 神や仏はなにもしてくれない。ただ自分の腕力のみが頼りだ。

* 取り締まりはこれを聞いて中止・解散を命ずるが、弁士たちは応じず、大乱闘の騒ぎとなり、町々には火の手があがった。

* するとそこへ侠客たちが消防隊を組織してやって来て、たちまち火災を消し止め、引き上げてしまった。

* 火事の騒ぎが収まると、群集はまたもや公園に集まり来たり、内閣倒壊、金持ち階級の討滅、清家階級の打破を叫びだした。再び取締も集まり、第二の闘争が始まり、ほとんど戦場のようになってしまった。

* そこへ、白馬にまたがり、被面布で顔を覆い隠した女が宣伝歌を歌いながら現れた。
 ・ 自分はオリオン星座より降り立った神の使い、松代姫である。
 ・ 汝ら一同は皆、皇神の珍の子、兄弟である。争いあうとは何事か。
 ・ 神の目から見れば、上に立つ者も下にいる者も、どちらも名利物欲を第一にしている。
 ・ どちらも神を忘れ、自らの魂のありかを忘却している。
 ・ 人は神の子神の宮、天津国の聖霊が、神の御心を謹んで承り、この世の人と生まれ来ているのである。
 ・* このことを知り、悔い改め、上下貴賎の区別なく、心を合わせて珍の国を守るべし。

* 女は馬に鞭打ち、駈け去っていく。これは実は、松若彦の娘、常盤姫であった。常盤姫は春乃姫と示し合わせ、騒動を治めるために天使と化けて現れたのであった。

* 憲兵、取締、群集、主義者らは麗しい天使の出現に肝をつぶし、闘争をやめてただ呆然と女天使の後を見送っていた。

* そこへまた、蓑笠、草鞋、脚絆のいでたちで、布で顔を覆い隠した女が、宣伝歌を歌いながら進み来た。

* 女は自ら春乃姫であると名乗る。

* 世の人々は上下の区別なく互いに合い親しんで、神の宝を分かち合い、満遍なく分配するのが神の決まりである。

* この神の教えにすがって世を開くより道はない。

* 今や天の時が来た。上下各階級の人々よ、目覚めるべし。

* 歌い終わると、春乃姫と名乗る女は煙のように姿を隠してしまった。人々は春乃姫と聞いて感嘆し、取締も群集も文句も言わずに各々家路に帰り行く。

○第十二章 悪原眠衆(一七五七)
* 松若彦の長男・松依別は、父親に恋人との仲を無理やり裂かれてやけになり、毎日遊郭通い。娘の常盤姫は出歩いてほとんど家に戻らない。

* 松若彦は子供たちの行状に、妻の捨子姫に小言を言っている。

* そこへ家僕の新公が慌しく入って来て、プロ階級演説会で取締と群集が衝突した事件を報告する。:闘争は不思議な天女が現れて鎮静したが、その天女の顔が常盤姫そっくりであった。また、白馬も家のものに間違いない、と。

* 松若彦はそれを聞いて、娘がプロ運動に参加したことに怒り、帰って来ても家に一歩も入れないように新公に言いつける。

* やがて、常盤姫が帰って来る。新公は、松若彦の言葉を伝えるが、常盤姫はそれを聞いて逆に喜び、「もう二度と家には戻らない」と言って出て行ってしまう。

* 常盤姫は、途中で兄の松依別とすれ違う。松依別は遊郭帰りで酔っていたが、兄妹は別れを交わす。

* 松依別は遊郭帰りの体で屋敷に入り、酔った勢いで父親の松若彦に悪態をつく。

* 松若彦はそれを見て肝をつぶし、倒れて腰を打って唸ってしまう。

◇第三篇 神柱国礎
○第一三章 国別(一七五八)

* 国照別は、魂を磨き、真の神徳を治めるため、生まれ故郷の珍の国を出ていく。

* 共の浅公とともに、アリナ山を下り、最初の目的地、懸橋御殿を指して、歌を歌いながら進む。

* 霧は深く、太陽も沈み、やむを得ず山中にて一夜を明かすことになった。

○第十四章 暗枕(一七五九)
* 霧や大雨、大風に悩まされる中、国照別と浅公は互いに弱音を吐いたりからかったり強がったり、面白いやり取りを交わしている。

* すると、怪しい口笛のような声が聞こえてくる。浅公はてっきり魔神の出現とおびえ出す。

* 実は梢を渡る風の音であった。国照別は風だとわかっていたが、面白半分に浅公をからかっている。

* 国照別は、浅公に言う。『魔神は退却したけれど、浅公がうまいものを沢山食って脂がのったら、またやって来て食おうと言っていたよ。だからこれからの道中、うまいものはみんな俺に食わせろ。』

* 主従、滑稽なやりとりをするうちに夜は明け、二人は急坂を下り、アリナの滝の懸橋御殿を指して進んでゆく。

 

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