とよたま愛読会66回(山河草木:69巻15章〜70巻1章) 記望月 幹巳


日 時  平成14年 3月23(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
電 話  03-3321-3896、03-3321-8644
物 語  山河草木 辰の巻 第65巻15章〜
70巻1章

★ 報告:第66回の愛読会は6名参加者を得まして、無事に行われました。拝読は69巻の高砂洲の2国の立て替え物語が完結ます。  国照別は、老中の捕り手に囲まれたり、山賊に出くわしたりと試練に遭いますが、いずれも切り抜けて、国愛別の妹・清香姫と合流し、ハルの国に入ります。  時至り、乞われてハルの国の大王となった国照別は善政をほどこし、まずハルの国の立て替えを成し遂げます。その後故郷に凱旋し、松若彦・伊佐彦の目もようやく覚め、ここに至って珍の国の立て替えもようやく完了することになります。

立て替え物語の大筋をまとめます。
1. ハルの国に入り、わずか一年ほどで政治の中枢に入ることができた国照別の方が、結果的に早く立て替えを成し遂げています。一方国愛別は、侠客という立場で市井にあり続け、自力では改革を成し遂げることはできませんでした。

2. 大王となった国照別の凱旋により、ようやく珍の国の老中たちの目が覚めます。自ら地位を投げ打って国照別を城に迎え入れたハルの国の老中たちとの対比が明らかです。

3. 両国における立て替え政治の具体的な施策は、次のようなものでした。
仁恵・徳政:租税免除、大赦、借金棒引きのような恩徳政策。貧富のところを得さしめる
・懸隔を打破する:貧富の差を縮め、富をできるだけ公平に分配する仕組みを作る、といったところでしょうか。 上下の障壁を取り払う

:69巻を通じて、いたるところに見受けられる表現です。この巻の立て替え物語のキーワードの一つと言えるでしょう。具体的にどのようなことを指すのかは詳しく述べられていませんが、民意を政治に反映させるような仕組みを作る、というところでしょうか。「普通選挙権」がひとつの施策として出てきていますので、そのように推測します。  この物語の受け取り方は皆様さまざまあると思いますが、最後に巻末歌を一つ引用させていただいて、69巻のまとめを終えさせていただきます。

この話 高砂洲の事のみか その他の国にも ありそうなこと  

★ 拝読箇所で気のついたこと
○第三篇 神柱国礎 第十五章 四天王(一七六〇)
・ 国州、浅州の二人は、アリナの滝の御殿にたどり着き、月次祭に参列し、滝の禊に行く。

・ すると、信者風の男たち十四五人に囲まれ、取り押さえられてしまう。国照別は息を整えて跳ね起き、たちまち四五人を取って投げ、啖呵を切る。

・ この勢いに、男たちの中の大将・駒治は平伏し、自分たちは伊佐彦老中の手下の捕り手で、世継である国照別を連れ戻しにやってきた者たちである、と白状する。

・ 国照別はあべこべに、自分の子分となって珍の国の立て直しに協力するよう、捕り手たちに呼びかける。駒治、市公、馬公の三人だけが十手を捨てて国照別に従い、他の捕り手は一目散に逃げていった。

・ 一行五人は捕り手たちは捨て置き、名にし負う霊跡、鏡の池へ禊に向かっていく。

○第十六章 波動(一七六一)
・ 国照別一行は三日三晩禊を修し、鏡の池の霊場に参拝し、宣伝歌を奏上した。その歌、
O 珍の国にはびこる曲がった道を根本的に改良し、
O 清き太祝詞を世界の為に宣り上げて、
O 迷った身魂を救い上げ、常世の国まで救い行く。
O 珍の国をまこと一つの三五の神代に立て替えて、
O 諸々の神人らが勇み立ち、安く楽しくいつまでも栄えしめ給へ、永遠無窮の命をよさし給えと願い奉ります。

・ 一行の中で、まず浅公が鏡の池に言霊を発し、託宣を祈った。浅公は、子分5人中の上下を問う。すると鏡の池は「実力のある者が上になるべし」と託宣し、駒治を一の子分と定めた。

・ 浅公は不満を訴えるが、ここに駒治と浅公は角力を取り、結果、駒治が一の子分と定まった。

○第四篇 新政復興 第十七章 琴玉(一七六二)
・国愛別の祖国、ヒルの国(=インカ国=日の神の子孫の国)もまた、珍の国と同様、常世国より来た悪思想により人心動揺し、社会は不穏な形勢となっていた。

・ 折りしも国司・楓別命の長子・国愛別が逐電したというので、長老秋山別・モリスは国内をくまなく捜索したが行方を得られなかった(実は珍の国で侠客として活躍していたことは、これまでの物語に述べられている)。

・ そこで、やむなく妹の清香姫を世継として立てていた。

・ 清香姫は、兄がこの国家の危機を立て替えなおそうと、まずは世情の調査の為に城を抜け出したことを知っていた。城に居ては、昔かたぎの両親や長老たちが、新しい考え方をさえぎるばかりであったからである。

・ 清香姫の意見も常に入れられず、国家の刷新を神明に祈って、ただ身はやせ衰えるばかりであった。

・ ところが、秋山別、モリスの両老は姫の様子を見て、恋の病と勘違いし、婿選びの準備をはじめてしまう。これに愛想をつかした清香姫はついに、兄と同じように城を出て国の改革に身を投じようと決心するに至る。

○第十八章 老狽(一七六三)
・ 清香姫は侍女・春子姫の手引きで深夜一緒に館を抜け出すが、秋山別・モリスはいち早く変事に気づく。

・ 秋山別・モリスは、清香姫の逐電が人に知られて責任を問われる前に、姫を連れ戻そうと、二人だけで追いかけてゆく。

○第十九章 老水(一七六四)
・ 秋山別より先に行ったモリスは、木株につまづいて倒れ、老体のこととて、息も絶え絶えになってしまう。

・ その様を見かねて、春子姫はモリスの手当てをする。モリスは息を吹き返すが、自分を助けてくれたのが春子姫とは知らず、うわごとに春子姫を責める。

・ 後から秋山別は追いついて、倒れているモリスと合流する。二人はとうてい姫に追いつけないと判断し、辞職を覚悟で家路についた。

○第二十章 声援(一七六五)
・ 一方、清香姫と春子姫は高照山の山麓にたどり着いた。

・ 二人はヒルの国の現状を嘆き、下に下って身魂を磨き立て直しをなさんとの意思を表し、歌に歌っている。

・ そこへ、山賊・源九郎一党が現れ、二人を取り囲んでしまう。

・ 春子姫は啖呵を切り、あくまで賊に屈しない意気を見せるが、多勢に無勢、危機に陥ってしまう。しかし、今まさに捉えられようとするとき、宣伝歌の声が聞こえてくる。

○第二十一章 貴遇(一七六六)
・ 宣伝歌の主は、国照別一行であった。

・ 国照別は、二人の女が山賊に襲われているところに出くわし、間に飛び込んで加勢をする。その勢いに山賊たちは切りたてられ、ほうほうの体で逃げていく。

・ 清香姫・春子姫は、国愛別の密使により、国照別の素性をあらかじめ知っていた。また清香姫は兄より、国照別こそ将来の夫、と聞かされていた。そこで、一緒にヒルの国で立て直しの活動をしようともちかける。 ・ 国照別も、ヒルの国にやってきたのは、実は国愛別との約束「珍の国の改良は国愛別が、ヒルの国は国照別が改革する」にしたがってのことであったと、明かす。

・ 一行はヒルの都の場末にやって来た。

○第二十二章 有終(一七六七)
・ 一行はあばら家を借りて住み、子分たちが畑で野菜を作り、国照別がそれを町に売りに出て、一年ほど暮らしていた。

・ しかし、ふとしたことから一行の素性が秋山別・モリスの耳に入り、両老中は清香姫に自分の至誠を表すために地位・名望を投げ捨てて共に耕作に従事し、その上で城に帰るように懇願した。

・ 城に帰った清香姫は、両親に自分たち兄妹の意中を明らかにした。楓別命夫婦は吾が子らの誠に感じ入り、自分たちは退隠して清香姫、国照別に政治を譲った。

・ 清香姫・国照別らは仁恵を行い、徳政を施し、貧富を収まるべきところに収め、上下の障壁を取り、老若男女に選挙権を与えた。ここに騒乱はたちまち収まり、地上の天国が実現した。

・ 国照別は選ばれて、ヒルの国の大王となった。

・ 一方、その後珍の国では、上下の乖離がますますはなはだしく、国愛別・岩治別、春乃姫・常盤姫らの活動により人心はやや緩和したけれども、いよいよ状況は厳しくなってきていた。

・ そこへ、ヒルの国の大王となった国照別は多数の部下を従えて、救援に駆けつけた。国照別は三年ぶりの故国の惨状に心を痛めたが、民衆は国照別の行軍に恭順の意を示して迎えた。

・ 国愛別らは、国照別を導いて城内深く入り、ここにおいてようやく、松若彦・伊佐彦は今までの地位・爵位を投げ打って、民衆の前に罪を謝すこととなった。

・ 国愛別は春乃姫と夫婦となり、また民衆に推されて珍の国の大王となった。ここに貧富の懸隔は打破され、上下の待遇は改善され、ようやく珍の国は平安無事に治まった。

 

◆第70巻 山河草木 酉の巻 序文◆
・ 山河草木第一巻(六十一巻)の口述を始めたのが大正十二年の夏、それから口述の七十二巻目にあたる本巻を終えたのが、大正十四年八月二十五日(旧七月六日)。
その間にあったことは
O エスペラントの講習・宣伝
O 蒙古入り
O 世界宗教連合会、紅卍字会・普天教との提携
O 万国信教愛善会の創立
O 人類愛善会の発起
O 天恩郷光照殿建築工事
O その他海外宣伝使の派遣

○総説
・ 場面をインドに移して、デカタン高原のトルマン国の物語が始まります。

・ トルマン国を狙うバラモン軍の大足別と、その手下スコブツエン宗の妖僧キューバーの陰謀、王妃・千草姫に憑依した高姫の活動、向上主義者を称する国士の活躍、国難に殉じる英雄ジャンクの働き、等々を記しています。

○第一篇 花鳥山月 第一章 信人権(一七六八)
・ 物語の背景 O バラモン教の根源地たるインドは、七千余国を一団となす地であり、浄行(僧侶階級?)、刹帝利(クシャトリア=武士)、首陀(シュードラ=隷属民)、毘舎(ヴァイシャ=商人)、その他の階級が設けられていた。
O 一方、ウラル教がデカタン高原の一角に勢力を築き、バラモン教の本拠ハルナの都に向かって教線を拡大しつつあった。
O この状況に、バラモン教の大黒主は「宣伝将軍」を各地に遣わし、とくに大足別将軍に数千の兵を与え、討伐を主目的として出発せしめていた。 O 舞台となるトルマン国は、デカタン高原の最も土地の肥えた所にあり、国土は広くはないが、かなりの人口を持っている。そして、地理上、代々ウラル教を報じていた。
O 大黒主は、トルマン国にもバラモンの勢力を広めるため、寵臣キューバーに命じて、スコブツエン宗という、名前は違うが内容は同じ一派を立てさせ、トルマン国にて布教させた。しかし、王家・有力者の人々はスコブツエン宗に入信することはなかった。
O キューバーは、大黒主の寵臣として、また密命を受けた身として、特殊の権利と地位を与えられていた。バラモン軍の将軍たちでさえも、キューバーに従わざるを得なかった。 O キューバーのスコブツエン宗は、バラモン教に輪をかけて難行・苦行を重んじる残酷な宗旨である。

・ ある小さな山里の古ぼけた祠の前で、二人の三五教徒の首陀、レールとマークが、バラモンの批判をしている。その現世的なやり方、差別をあげつらい、首陀向上運動の進展、信仰の独立を目指している。

・ そこへ、スコブツエン宗のキューバーが現れた。首陀たちはにわかに話題を転じ、さっさと逃げてしまう。

・ キューバーは、耳さとく大黒主への反逆を聞き取って姿をあらわしたが、レールとマークもいち早く山林に姿を隠してしまった。レール、マークは再びキューバーの悪口に花を咲かせるが、またもやキューバーが追ってくるのを認めて、山林の奥へ逃げてしまった。

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