とよたま愛読会102回天祥地瑞 午の巻 第79巻11章〜第18章
                 記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成17年3月27(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語  
天祥地瑞 午の巻 第79巻11章 瀑下の乙女(1992)第18章 言霊の幸(1999)

★ 報告
陽春の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います。第102回とよたま愛読会の報告をお送りいたします。

海津見姫の神の来臨を祝う宴が終わり、大身竜彦の命は、艶男の住まいを竜の島一の名勝・鏡湖の琴滝のほとりに建設します。
艶男は朝夕、竜の島根の開発を祈り、言霊を上げていました。
艶男に恋心を抱く竜神族の女神たちは、艶男の言霊を聞くために、琴滝の寝殿の庭に集まってきていました。
艶男は、数多の竜神の乙女たちから恋の思いを告白され、また海津見姫の神に諭されて、竜の島根を開くという誓いを立てたにもかかわらず、人面竜身の姿に嫌悪を覚え、どうすることもできずに悩む日々を送っていました。
しかしある日、乙女の中でも最も気性の激しい燕子花(かきつばた)の勢いに押されて、契りを結んでしまいます。
艶男は妻の体が人身になるよう、神に祈りを込めて言霊を七日七夜唱えつづけます。
すると、燕子花の体からは鱗が消え、すっかり人間の体になったのでした。
艶男と燕子花は、ひそかに竜の島根を出て、艶男の故郷・水上山へ行くことを図ります。
二人は鰐鮫の背中に乗って湖を越え、水火土(しほつち)の神の舟に出迎えられて、水上山に帰還します。
突然消息を絶っていた息子が、妻を連れて帰ってきたことに、両親の国津神の御祖神夫婦は喜び、祝宴を開いたのでした。
一方、艶男と燕子花が突然いなくなり、竜の島根は大騒ぎになります。
国王・女王は悲しみのあまり奥殿に姿を隠してしまいました。
嘆き悲しむ竜神の女神、白萩・白菊・女郎花の前に、艶男の生言霊が霊体として現れ、燕子花と一緒に水上山に帰ったことを伝えます。三柱の竜神は、二人を追って水上山に旅立ち、竜体となって水上山の川のほとりに潜むことになりました。
 一方、残された竜神たちは日々嘆き悲しんでいましたが、海津見姫の神の託宣により、日々天の数歌を宣り上げます。
一年後、竜神たちは言霊の力によって、見事人間の体になることができました。

★ 拝読箇所で気のついたこと
第七十九巻 午の巻 竜宮風景
 第十一章 瀑下の乙女(1992)

 * 大竜身彦の命は、艶男のために、竜宮島第一の景勝地・鏡湖の下方の琴滝に寝殿を作って住まわせた。
 * 艶男はこの寝殿で朝夕、天津祝詞や生言霊を奏上して、竜の島根の開発を祈っていた。竜神族の女神たちは、この寝殿の広庭に集まって艶男の言霊を聞きに集まっていた。
 * その言霊の力で、あたりに散在する巨岩は瑪瑙に変わり、滝のしぶきにぬれた面を日光に映して、得もいわれぬ光沢を放っていた。
 * ある朝、艶男が滝の光景を称える言霊歌を歌い終わると、夜の明けた庭に、竜宮城に仕える見目形優れた七乙女が、何事かをしきりに祈っているのが見えた。
 * 艶男が七人に何を祈っているかを問い掛けると、七人の乙女、白萩・白菊・女郎花・燕子花・菖蒲・撫子・藤袴はそれぞれ、艶男への思いを打ち明け、せめて声を聞くためにここに来ているのだ、と歌った。
 * 艶男は、七人の乙女に言い寄られて、ただどうしようもない自分を嘆く歌を歌うのみであった。
 * 滝の落ちる剣の池の砂は、艶男の言霊によって金銀となり、水底の白珊瑚は乙女たちの赤き心によって赤珊瑚に染まり、滝のしぶきは珊瑚の枝に真珠・瑪瑙・黄金・白金に変じた。天地瑞祥の気はあたりに充満し、孔雀、鳳凰、迦陵頻伽が太平を歌う声が四辺から響いてきた。

 第十二章 樹下の夢(1993)
 * 艶男はつれづれを慰めるために神苑を立ち出て、庭伝いに森かげを逍遥しながら、乙女たちの恋の告白に悩む気持ちを歌っていた。
 * 竜宮島にとどまって国土を開くと一度は誓ったが、竜神族の体の醜さに嫌悪を覚え、乙女たちの恋の告白に答えることもできずに辟易し、今はただ故郷へ帰りたい心が募り、心は沈んでいた。
 * そこへ、乙女の中でも最も激しい気性と思いを持った燕子花がそっと艶男を追ってきた。そして再び、猛烈な恋の告白の歌で艶男に迫った。燕子花の押しの強さに押しきられ、艶男はついに燕子花の思いを受け入れてしまった。
 * これより、燕子花は公然と艶男の寝殿に寝起きし、艶男にまめまめしく仕えることになった。
 * 艶男は女の一念に押し切られて、人面竜神の乙女とちぎってしまったことを恥ずかしく思い、悩んでいた。そして、神々に、妻の体が人身となるよう祈り、言霊歌を七日七夜、絶え間なく宣り上げた。
 * すると、不思議なことに燕子花の体はたちまち人身となり、鱗は跡形もなく消えうせてしまった。この奇跡に艶男と燕子花は喜び、感謝の歌を歌った。

 第十三章 鰐の背(一九九四)
 * 艶男は燕子花と示し合わせて、ひそかに竜宮島を出てともに故郷に帰ろうと決心を固めた。艶男と燕子花は、麗子にも知らせずに、郊外の散歩にことよせて、真夜中に第一門の方へと急いで行った。
 * 第一門の鉄門を開けると、そこは渚で波が迫っていた。艶男はいかにしてこの湖を越えようかと思案にくれる歌を歌っていると、波をかき分けて現れた八尋の大鰐があった。鰐は水面に背を現し、二人に背に乗るよう促している風であった。
 * 二人は天の与えとばかりに鰐の背に飛び乗ると、鰐は湖を南のほうへと泳ぎだした。艶男と燕子花はこの天佑に喜び、感謝の歌を歌った。
 * すると、後方からどっとときの声があがった。二人が月光を透かし見れば、これは二人が逃げたことが発覚し、竜神たちが追っ手を放ったのであった。
 * これは一大事と、燕子花は声を張り上げて天之数歌をしきりに奏上した。するとときの声はぴたりと止んで、鰐の速度はいっそう速くなった。
 * 水上山がほんのりと見えはじめ、二人は水上山の国津神の国への思いを歌に交わした。すると、波の奥から忽然と一艘の舟が漕ぎ寄せてきた。見ると、これは水火土の神であった。
 * 水火土の神は艶男らを迎えに待っていたと言い、ここからは海の瀬が強いので、鰐の背から舟に移るように二人を促した。艶男はここまで送ってくれた鰐に感謝合掌し、二人は水火土の神の舟に乗って、月照る海原を南へと漕ぎ出て行った。

 第十四章 再生の歓び(1995)
 
* 水上山を中心として約二十里四方の土地を治める国津神の御祖の神、山神彦・川神姫は、二人の兄妹が姿を消してしまったので、夜昼となく慟哭し、見る影もなくやつれた姿になってしまっていた。国津神たちは二人を捜し求めたが、一ヶ月を経ても何の便りもないままであった。
 * 二柱は玉耶湖の汀辺をさまよいながら、兄妹を捜し求める歌を歌っていた。そこへ館に仕える従者神の真砂がやってきて、昨日の夢に、艶男はまもなく帰り着て、麗子は竜宮島の王になっていることを見た、と伝えた。
 * 川神姫は夢の話に希望を託して、ひとまず今日は帰り、また次の機会をまとうと答えた。次の朝、山神彦・川神姫は、真砂に導かれて、栄居の浜辺に出て行った。すると、はるか前方から一艘の舟が漕ぎ来るのが見えた。
 * 次第に舟が岸に近づくにつれて、水火土の神が先導をし、艶男と見慣れない女神が乗っているのが見えた。やがて舟が岸に着くと、両親は天に向かって感謝の言葉を奏上し、喜び勇んで水上山の館へと帰って行った。

 第十五章 宴遊会(1996)
 * 大御祖の神夫婦は、息子の艶男が妻を伴って竜の島根から無事に帰ってきたことを喜び、多くの国津神を招いて祝賀の宴を開いた。山神彦・川神姫は、息子の帰還に喜びの歌を歌った。
 * 祝宴は簡単に済まされ、おのおのは思い思いに河辺伝いに庭園を逍遥することになった。艶男は栗毛の駒にまたがり、燕子花は白馬にまたがり、川辺に咲き乱れた山吹の花をめでつつ、美しい水上山の景色を称え、二人の絆を確かめる歌を歌った。
 * すると、御祖の神に仕える重臣たち、岩ヶ音、真砂、白砂、水音、瀬音の5人は二人のところへかけより、おのおの祝歌を歌った。
 * こうして宴席は閉じられ、日は西山に傾き黄昏があたりを包んだ。

 第三篇 伊吹の山颪
 第十六章 共鳴(むたなき)の庭(一九九七)
 * 一方、竜の島根では、姫神たちが、艶男が消えうせたことに上を下への大騒ぎをしていた。大竜身彦の命は失望のあまり奥殿に深く姿を隠し、麗子姫は侍女に命じて探させたが、何の手がかりもなかった。
 * 麗子は嘆きの思いを歌に歌っていた。そこに艶男に恋焦がれていた白萩が現れ、燕子花の姿が見えないことから、二人で逐電したに違いないと麗子に告げ、共に艶男の失踪を嘆き悲しむ歌を歌った。
 * 麗子は心乱れ、しばらく休むために奥殿に入っていった。白萩は、ひとり琴滝のほとりに行き、さらに嘆きの歌を歌っていた。そこへまた女神・白菊がやってきて、ともに艶男のいない悲しみを歌いあった。

 第十七章 還元竜神(1998)
 * 白菊と白萩は、思う存分泣こうと嘆きの述懐歌を歌いあっていた。そこへ、同じ思いを持つ女郎花が悄然と入り来て、ともに同じ思いを打ち明けあっていた。
 * そうするうちに、桂木の森をそよがせてやってくる神があった。見れば、艶男である。三人の女神ははっと驚いて、呆然として艶男を見つめていた。
 * 艶男は、自分の肉体はすでに水上山の故郷に帰ったが、三人の真心に引かれて、生言霊が消息を告げにやってきたのだ、と語った。そして、自分の突然の帰還を詫び、燕子花は共に水上山にあることを伝え、三人にそれぞれ歌を送ると、さっと潮風に乗って白雲の奥深くに消えてしまった。
 * 三人の女神は艶男・燕子花の消息を知ると、日ごろの思いを達しようと矢も盾もたまらず、元の竜体になると、湖中にとびこんで南を指して泳ぎ進んでいった。
 * 三柱の竜神は、浦水の浜辺についたが、夜中であったので、多い側の河口からひそかに水上山の聖地へと上っていった。一度竜体になると、容易には人面に戻ることができないので、大井川の対岸の藤の丘という、樹木が密生する場所に忍び住むこととした。
 * これより、艶男は三竜神の魂に夜な夜な引き込まれ、とつぜん大井川の川辺が恋しくなり、暇があるたびに駒を駆って川を渡り、藤が丘の谷間に遊んでいた。

 第十八章 言霊の幸(1999)
 * 竜の島根は、艶男が姿を消してより、大竜身彦の命と弟姫の神は奥殿深く姿を隠し、また七乙女の半分以上も姿を消してしまったため、火の消えたようなさびしい有様となってしまった。
 * 七乙女のうち、取り残された撫子、桜木、藤袴をはじめ、島の姫神たちは、嘆きのあまり伊吹山の鏡湖の汀に集まり、天を仰いで日夜慟哭しながらおのおの述懐の歌を述べていた。
 * すると、鏡湖の水を左右に分けて昇ってきた女神は、海津見姫の神であった。竜神族の女神たちははっとひれ伏して敬意を表した。
 * 海津見姫の神は、天の数歌を授け、人の姿になるために、人身となるまで言霊を宣り上げるようにと諭した。
 * これより、島根の竜神たちは、昼夜絶えることなく天の数歌を宣りあげると、一年後には完全な人身と生まれ変わった。竜の島は、宝の島、美人の島、生命の島と称えられるにいたった。


以上   [前回レポート] [次回レポー ト]  


[拝読箇所一覧] [愛読会の紹介] オニ(王仁)の道ページ