とよたま愛読会104回(天祥地瑞
未の巻 序文〜第5章)
記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp
日 時 平成17年5月22(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所 愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
連絡先 03-3321-3896、 03-3321-8644
物 語 天祥地瑞 未の巻 第80巻
序文〜第5章「三つ盃」(2009)
★ 報告:
向暑のみぎり、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います。
ご参加者皆さんから拝読のご感想もいただいておりますので、あわせてお送りいたします。
この巻は、前回の水上山の物語の続きとなっています。水上山の国司の長男・艶男は竜女と契りを結んだ罪によって命を落とします。艶男をめぐって恋を争った竜女神たちの闘いにより、水上山は天変地異に襲われて大きな被害を出してしまいます。
この惨状に、御樋代神の朝霧比女の神が降臨し、国司の引退を告げ、高光山に宮居を定めます。艶男の幼い息子が成人するまで、水上山の国政を任された重臣の巌ヶ根(いわがね)は、御樋代神の言葉に従い、高光山に至る広大な原野を開拓しようと心を砕いていました。
巌ヶ根は四男の冬男に、国土の視察と高光山への派遣を命じます。冬男は使命に燃えて出発しますが、途上、忍ヶ丘に居を構え、旅人の命を奪ってその霊魂を支配する笑い婆の策略にかかって、命を落としてしまいます。笑い婆は冬男の精霊を虐待しますが、そこへ、かつての家の家臣・熊公、虎公の精霊があわられ、笑い婆をやっつけて冬男を助けます。笑い婆は逃げ出しますが、三人は、こうなった以上はせめて笑い婆を滅ぼして、後の災いを絶とうと決心し、忍ヶ丘の婆の館へ進んでいきます。冬男、熊公、虎公が婆の館に着いて中の様子をうかがうと、婆は熊公、虎公に引っ張られた傷に苦しんでいました。また、婆に命を奪われて召使とされていた三人の娘は、これを好機と婆に復讐しようとしているところでした。そこへ冬男、熊公、虎公が入ってきて、三人の娘と一緒に、婆を征伐しようとします。すると、笑い婆の妹、譏り婆が入ってきて笑い婆を助け出し、逃げ去ってしまいます。
笑い婆に命を奪われて幽霊となり、婆に支配されていた忍ヶ丘の村人たちは、二人の鬼婆が逃げ去ったのを知って喜びます。村人の長の発案により、冬男、熊公、虎公は、婆の召使となっていた三人の娘、山、川、海と幽界の結婚式を挙げることになったのでした。
<参加者の皆さんから、拝読個所の感想をいただいております。>
・
岩田さん:・
塩津さん:・中川さん:
途中からの参加になりましたので、私がいる間、皆さんで拝読した箇所は、笑い婆の毒茶を飲まされ冬男が命を獲られ同じく婆に命を獲られた虎、熊と霊体となりながらも笑い婆に手傷を負わせ、婆の住処まで追いつめるがそこに笑い婆の妹の誹り婆が現れて婆二人がピンチを切り抜け逃げ去るところまででした。正直その読んだ範囲で興味を持ったところは無かったです。私が興味を持ったのは拝読箇所の前の総説でした。
万世一系の皇統に触れられている記述もあり、どういう風に理解して良いのか単純に鵜呑みに出来ない内容だと思いました。難解な言霊論も展開されているのでこの総説を理解するだけでも相当勉強をしないと真解は難しいと思いました。しかし笑い婆を背に負い誹り婆が去って行く情景は本当にマンガチックだなーと思いました。
霊界は想念の世界なので見栄や外分がないので本当にこんな状態なのかなとも考えました。私はどっちかというと格調高そうに書いてある文章が好きなのですがまさか天祥地瑞に入ってもこういう高姫的キャラが大活躍するとは思いませんでした。
以上です。皆さん、ありがとうございました!
★ 拝読箇所で気のついたこと
<付録>
<総説>
皇道に明らかにされている神の意義については、四種の大きな区別がある。幽の幽、幽の顕、顕の幽、顕の顕である。
幽の幽神は、天之峰火夫の神以下、皇典に載っている天之御中主神から別天神までの称号である。
幽の顕である神は、天照大神、神素盞嗚尊等の神位にまします神霊を称して言う。天照大神、神素盞嗚尊等は、幽の幽神の御水火(みいき)から出生された体神であり、尊貴きわまる神格である。
顕の幽である神は、大己貴命(おおなむちのみこと)、少彦名命等の称号である。いったん地上の現界に姿を顕現して、顕実界を主宰したが、定命がつきて、神界に復活し、幽体となったという意義である。管公(菅原道真)、楠公(楠正成)、豊公(豊臣秀吉)、その他の現人没後の神霊の称号である。
顕の顕なる神は、万世一系の皇統を垂れさせ給い、世界に君臨し給う現人神である天津日嗣天皇の御玉体である。
すべて宇宙も神も万物も、その太源は天之峰火夫の神、すなわち大宇宙の大極限の言霊が幸はいまして成り出でたものなのであるから、最も貴く尊いものは、この言霊以外にないのである。
著者は、天祥地瑞未の巻を口述するにあたり、皇道言霊学上から見た声音の一部を略解しようとするものである。
ワ声の言霊活用:世に生きて活用する。
ヲ声の言霊活用:男、陰茎(を)、居る、己、上命(お)、下諾(お)、唯、尾、緒等の言霊活用がある。
ウ声の言霊活用:心の結、植え立つ、薄き、倦む、結び立つ、憂き、醜き等の活用がある。
ヱ声の言霊活用:笑む、腹中之真(なかわたにまことある)、中腹に成就(なりつく)、必ず出る、などの言霊妙用が
ある。
ヰ声の言霊活用:三世の瀬戸、寿(いのち)呼吸之内(いのち)、今、現在電光の機関、など言霊妙用がある。
すべて猪は一直線に走ってわき見をしない性である。
ヤ声の言霊活用:矢、焼く、透明体なる天中固有の紋理(あや)、蒼洞、先天の真気(あめのそこたち)、親、
左旋、などの言霊妙用がある。
ヨ声の言霊活用:半、呼び出す形、寄り合う、億兆の現在所、漂う形、天地水火纏まる形、能く指令する、等の
妙用がある。
ユ声の言霊活用:天の結ぶ姿、蒸せ騰がる、行き届く、努力(ゆめえた)、忌々(ゆゆ)、往来為す、総べ震る
(ゆるる)、夢、弓、などの妙用がある。
エ声の言霊活用:猶普き(なほあまねき)、既に移転、編む(えむ)、えらむ、飢る(ううる)、悦び合う、
恋れつく、等の活用がある。
イ声の言霊活用:天井、射中る(イあつる)、心の形、興り伸び立ち止まる、父の孫、母の子、親の心をうけ持つ
等の妙用がある。
<忍ヶ丘>
第一章 独り旅(2005)
水上山に国土の司の長男であった艶男(あでやか)は、竜の島根に行くことになり、竜女たちの恋の嵐に取り巻かれた。
竜女のひとり、燕子花(かきつばた)との恋に落ち、一緒に竜の島根を抜け出して、水上山に帰り、燕子花を妻とした。
しかし燕子花は出産後に竜神の体に戻っていたところを艶男に目撃され、恥ずかしさのあまり大井川の淵に身を沈めてしまった。
竜の島根から艶男を追ってきた三柱の竜女神の霊と燕子花の霊は恋を争った。その激しさに艶男はついに淵に身を投じたが、暴風、大雨、地震が起こり、水上山は修羅の巷と化した。
阿鼻叫喚の地獄となってしまったが、御樋代神である朝霧比女の神が四柱の侍神を従えて水上山に降臨し、言霊によって天変地異の惨状をしづめた。
朝霧比女の神は、国司夫婦を引退させ、艶男と燕子花の子・竜彦が成人するまで、重臣の巌ヶ根に水上山の国政を託した。竜彦は侍神の子心比女の神が預かることとなり、御樋代神一行は高光山に宮居を定めて国土に君臨することとなった。
その後、巌ヶ根は、予讃の国の国務を余念なく務めることとなった。水上山から高光山までは、三百里の遠距離であったが、その間の開拓を成し遂げようと、巌ヶ根は日夜心を砕いていた。
巌ヶ根には、四人の息子、春男、夏男、秋男、冬男がいた。
葭原の国土は、地上一面葭草に覆われ、その間に水奔草(すいほんそう)というものが発生していた。水奔草は見た目は美しいが、毒をもち、これに触るものはたちまち命を落とした。
それがために国津神も禽獣虫魚も原野に住むのを恐れていた。原野に住んでいたのは、甲羅のある鰐に似た怪獣と、蛇とムカデを混同したようなイチジという爬虫族のみであった。
巌ヶ根はこの原野を開拓しようと、まず四男の冬男を高光山まで派遣した。冬男はまず国土を視察しようと、水奔草の茂る原野を勇んでまい進していた。
すると、一つの低い丘山に行き当たった。ここには多くの国津神があちこちに穴を掘って住居し、やや広い村を形作っていた。しかしこれは実は生きた人間ではなく、水奔草の毒にあたって生命を失った水奔鬼という幽霊の集団であった。
そのようなことは露知らない冬男は、この丘のとある小さな家に一夜の宿を乞うた。
すると屋内より、年老いた白髪異様の婆が現れ、「笑い婆」と名乗った。婆は笑いながら歌を歌い、娘ともども冬男を歓迎しようと述べた。
冬男は婆の勧めに屋内に進み入ると、容色端麗な乙女が三人、笑みをたたえて愛想よく迎え出た。そして、冬男を誘惑する歌を歌った。
冬男は困惑を歌に現すが、終日の旅行に身体縄のごとく疲れ、ぐったりとその場に倒れ伏してしまった。
第二章 行倒(2006)
臥所を起き出た冬男に、三人の乙女らはお茶を勧めた。のどが乾いていた冬男は何も考える間もなくぐっと飲み干したが、その味わいは香ばしいが臭みがあった。もしや水奔草の茶ではないかと驚いたが、何食わぬ体で天地を拝し、天之数歌を歌った。
するとたちまち家も笑い婆も三人の乙女も消えうせ、あたりは白樺と雑草の茂る丘の上となってしまった。
冬男は驚いて草原を進んでいったが、だんだんに頭は痛み足はだるみ、気分が悪くなってきた。小さな丘にたどりついたが、体は腫れ上がり身動きもできなくなってしまった。
すると闇の中から笑い婆の声が聞こえてきた。そして、冬男を計略にかけ、毒茶を飲ませたことを誇らしげに歌った。三人の乙女は娘などではなく、やはり水奔草の毒茶で命を落とした水奔鬼であった。
冬男は息も切れ切れになりながら笑い婆に抵抗するが、笑い婆は冬男をあざ笑う。冬男は無念の歯を食いしばりながら笑い婆の思い通りにはならないと意気を歌うが、ついにその場に打ち伏して命を落としてしまった。
第三章 復活(2007)
笑い婆は、息の絶えた冬男の霊魂と身体を茨の鞭で打ちたたいていたが、闇の中から二人の大男が現れて、婆の首を引っつかむと、どっと大地に投げつけた。
これは、前にやはり笑い婆の計略にかかって命を落とした、かつての冬男の家臣・熊公と虎公の精霊であった。熊公と虎公は婆の両手をつかんで左右から力限りに引っ張れば、婆は顔をしかめ、火団となって忍ヶ丘へ逃げ去った。
冬男の精霊は、家の家臣・熊公と虎公の霊に助け出されたのを喜んだが、また以前に原野に派遣された二人が、笑い婆の毒茶によって命を落としていたことを知った。
三人は、こうなったら主従力を合わせて笑い婆の命を取って、後の災いを取り除こうと協議一決した。そして、婆の住処である忍ヶ丘まで、進軍歌を歌いながら進んでいった。
三人は真夜中ごろ、忍ヶ丘の笑い婆の家の表に着いた。そっと破れ戸の外から中の様子をうかがうと、婆は熊公・虎公に両腕を引き伸ばされた痛みに苦しみもだえていた。
三人の乙女は婆を介抱するどころか、命を奪われた上に日ごろ使われていた恨みを晴らそうと、枕辺に立って婆を見下ろしていた。
第四章 姉妹婆(2008)
冬男、熊公、虎公は家の中に進み入った。婆は驚きの色を見せながらもかすかに笑い声をもらし、目を怒らせて三男三女を見上げていた。
冬男は婆を戒め改心を迫るが、婆は逆に、現世の苦しみを助けようと命を奪ったのだから、感謝するべきであり、この忍ヶ丘の幽霊たちは、自分が救ってあげた者たちばかりだ、と嘯いた。
冬男、熊公、虎公と三人の娘・山、川、海は怒って婆をののしり、今こそ婆を滅ぼそうと歌を歌うが、婆は苦しみ冷や汗をかきながらも、しぶとく一同をののりし返している。
一同は心を合わせて、今こそ婆を征伐して滅ぼそうとする折しも、表戸を静かに開いて入ってきたごま塩頭の中婆があった。中婆は一同に目礼し、自分は「譏り(そしり)」であると名乗った。そして、里人の代表として、怪我をした笑い婆を見舞いに来たのだ、と述べた。
譏り婆は笑い婆に近寄って抱き起こすと、すっくと背に負ってまっしぐらに表を指して駆け出した。そして沖天の雲に乗り、遠い南の空に向かって、雲を霞と逃げ去ってしまった。この婆は笑い婆の妹で、間断なく人を譏っている悪魔であった。
残された六人は後を追うすべもなく、互いに顔を見合わせてしばらく呆然としていた。
第五章 三つ盃(2009)
忍ヶ丘から笑い婆が火の玉となって出て行ったのを見て、幽霊の里人たちは、頭の茄子という精霊を先頭に、婆の館に様子を見に来た。山、川、海の三人は、笑い婆が三人の客人のおかげで逃げ去ったことを報告した。
幽霊の里人たちは婆が逃げ去ったことを喜び、歓呼の声を上げて踊り祝った。茄子は、婆が帰ってくる前に根城を固めておこうと、冬男と山、熊公と川、虎公と海を見合わせ、幽界の結婚式を挙げさせた。
幽冥界は意思想念の世界であれば、くどくどしい式もいらず、挙式は極めて簡単に終わった。それぞれの夫婦はお互いに誓いの歌を歌いあった。
鬼婆が逃げ去り、村人の心は清新の空気が注がれた。また三組の結婚式が行われ、この丘の里は、霊界ながら平和な花園となり、安らかに治まったのである。
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