とよたま愛読会105回(天祥地瑞
未の巻 第80巻6章〜第11章)
記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp
日 時 平成17年6月26(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所 愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
連絡先 03-3321-3896、 03-3321-8644
物 語 天祥地瑞 未の巻 第80巻6章「
秋野の旅」(2010)〜第11章「火炎山」(2015)
★ 報告:
次回7月24日は納涼愛読会と題しまして、更生浴衣での拝読をいたします。ぜひふるってご参加ください。もちろん、浴衣をお持ちでない方はそのまま拝読いただいてもかまいませんので、いつも通りご参加いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
水上山から高光山までは未開の原野が広がっており、毒草・水奔草や恐ろしい害獣害虫のほかに、水奔草の毒にあたって命を落とした亡霊・水奔鬼がたむろする危険極まりない場所でした。
御樋代神の託宣により、この原野の開拓を命じられた国津神の執政・巌ヶ根は、四男の冬男に原野の探索を命じますが、冬男は水奔鬼の親玉・笑い婆の手にかかって命を落としてしまいます。しかし、冬男は精霊の身になりながら、他の精霊たちと力を合わせて笑い婆を傷つけ追い出し、一矢を報いて、笑い婆の奴隷となっていた水奔鬼たちを解放したのでした。
さて、水上山の館では、一年経っても探索に使わした冬男からの復命がないので、協議の結果、冬男の兄・秋男に4人の従者をつけて、改めて高光山までの原野の探索と、冬男の消息を尋ねるために出発させることになりました。
秋男は弟の取ったルートを避け、南へ進みます。一行が月見ヶ丘にたどり着いた夜、突然辺りが闇に包まれ、水奔鬼の譏り婆の襲撃を受けます。譏り婆は一同を脅して肝を奪おうとしますが、秋男の言霊に逆に打ち破られて退散します。
翌日、しばらく行くと茶店があり、5人の乙女が一行を手招きします。秋男は水奔鬼の罠と知りながら、譏り婆を征伐するため、わざと茶店に誘い込まれます。
毒茶の計略を見破った秋男一行は、5人の乙女の水奔鬼に、真の悪・譏り婆を征伐するために協力を要請します。今は水奔鬼となった乙女たちも、元は譏り婆によって命を奪われた国津神の娘でした。乙女たちの霊は秋男一行と力を合わせて譏り婆を打ち懲らしめ、退散させることに成功します。乙女たちの霊は、陰から秋男一行を見守ることを約束して、消えうせました。
その後、秋男一行は、譏り婆の本拠地である火炎山に向かいます。しかし、ここで笑い婆、譏り婆の襲撃にあい、一行は闇の落とし穴に誘い込まれて奈落の底に落ち、命を落としてしまいました。
秋男一行は精霊となり、穴の底で計略にかかったことを悔やみ、またいかにして笑い婆、譏り婆を征伐しようか協議を行います。
<参加者の皆さんから、拝読個所の感想をいただいております。>
岩田さん:
2、3三日前、山が噴火した夢を見たので、いよいよ富士山かと思いきや、火炎山の噴火のことでありましたか。私は譏り婆の隠れファンなのでチョットヤバイかも・・・イヒヒ。
塩津さん:
『天祥地瑞』には悪神の手先として、笑い、譏(そし)り、瘧(おこ)り、泣き、という四種類の婆が登場します。今回の拝読では、国津神の一族うち秋男が四人の従者をつれて出発し、四婆のうちの譏り婆と対決するお話が中心です。譏り婆の台詞を聞くと、人間の心のうちにひそむ弱さや油断を巧みに突いていることがわかります。
月光に満ちあふれているはずの「月見ヶ丘」が突如、暗闇に包まれます。
一行は、譏り
婆に「大空の月見したのが其の方の いよいよ運の尽きとなりける」などと脅され、その結果、秋男の従者の松は「闇の幕われを包みしたまゆらに 魂はをのゝき消えむとせしも」というように、あわやのところまで押されますが、秋男が言霊(天の数歌)を奏上し婆はしっぽを巻いて退散します。
一般論として言えば、「自分はいつも神さまに守られている。」という信念が、いつとはなしに神さまの方向を向かなくなり、逆に自分を見失うことになりかねない、という事でしょうか。不断に神さまを想うことが、そして正しい言霊を使うことを心掛ける必要がありますね。
以上です。
★ 拝読箇所で気のついたこと
巌ヶ根は、一年経っても視察に使わした冬男から何の便りもないため、重臣と息子たちを集めて会議を開いた。
水奔草の毒、水奔鬼、害獣イヂチ等の危険によって、もしや冬男は命を落としたかもしれない、ということになり、巌ヶ根の三男・秋男を首領として探索隊を結成し、再び高光山までの原野を探索させることになった。
秋男は、松、竹、梅、桜の
一同は、高光山までの道を開き、また冬男の消息を探ろうと、水上山の館を勇ましく出発した。
進軍歌を歌いながら進んでひと時ばかり行くと、小さな丘に突き当たった。一行はこの丘によじ登り、月を眺めながら旅の疲れを休めることになった。
第二篇 秋夜の月
第七章 月見ヶ丘(2011)
一行は小さな丘・月見ヶ丘で休息を取り、秋の夜の澄み切った月を眺めながら述懐の歌を歌っていた。
すると、突然東南の天から一塊の黒雲が現れ、みるみる四方に広がってたちまちあたりは闇に包まれてしまった。
一同は、すわ悪魔の仕業かと警戒態勢を取ると、何処からともなく、いやらしい声が聞こえてきた。そして、一同をののしり、冬男はすでに自分の手にかかって命を落としたと、誇らしげに語ると、時分は譏り婆であると名乗った。
秋男は天地を拝し、拍手をしながら天之数歌を繰り返した。すると譏り婆の声は、捨て台詞を吐いて、ぴたりと止まってしまった。
第八章 月と闇(2012)
月見ヶ丘以南は、水奔鬼・譏り婆の縄張りの魔の原野であった。譏り婆は、秋男一行の行く手を阻もうと、小手調べに黒雲を起こして譏り散らしたが、秋男の言霊に打たれて退却したのであった。
雲は科戸の風に吹きまくられ、以前のように明鏡のような月が晧晧と輝きわたった。一同は勇み立ち、譏り婆の襲撃を述懐し、また月見ヶ丘の美しい風景を歌った。
これより先、一行は火炎山方面を指して、やや高い原野を伝いながら、宣伝歌を歌って南へ進んでいった。
第九章 露の路(2013)
一同は秋の原野を、高い陸地を選びながら、宣伝歌を歌いつつ進んでいった。
一行は譏り婆を撃退したことに勇み立ち、もし冬男が譏り婆のために命を落としたのであれば、必ずや敵を討って恨みを晴らそうと決心を固め、また本来の使命である高光山への道の探索に使命を燃やしていた。
進んでいくうちに、にわかに喉の渇きが耐えがたくなった。すると、こんもりと生い茂った常磐木のかげに、ささやかな茶店のようなものがあり、四、五人の乙女が手をかざして一行を招いている。
第十章 五乙女(2014)
一行は、森影のささやかな家に立ち寄ってみれば、五人の乙女が笑みを満面に浮かべて一行を迎え入れた。この乙女らの名は、秋風、野分、夕霧、朝霧、秋雨と言った。
秋男は、ここでひと時休息を取ろうと、一行を引き連れて柴の戸をくぐって奥に入った。すると、表はあばら家であったのに、美しく広い居間がいくつも並んでいた。
一行は驚き、もしやここは譏り婆の館でこれは罠ではないかと案じていた。すると、
秋男をはじめ一行は警戒し、茶を飲むのをためらい疑っていた。乙女らはしきりに茶を勧めていたが、そのうちに、茶の色が次第に変わって墨のように真っ黒になってしまった。これは、水奔草の毒茶であった。
乙女たちはついに、自分たちは曲津神であると白状した。そして、実はここは館ではなく永遠の岩窟であり、ここに誘い込まれた上は覚悟せよと一同を威嚇した。従者たちは怒り勇んで
しかし秋男は、乙女たちに向かって、ここが岩窟であったことを知ってわざとここに誘い込まれたのであり、乙女たちも婆の悪計にかかって命を奪われ、水奔鬼となってしまったのではないか、本当に悪いのは譏り婆ではないか、と問いかけた。
乙女は顔を曇らせ、実は秋男の言うとおりで、婆に命を取られた悔しさに水奔鬼となっていたに過ぎない、と事情を明かした。そして、婆は昨夜から奥の間に傷ついて休んでいるので、婆を滅ぼしてくれ、と一同に頼み込んだ。
そこで、一同は協力して婆の潜んでいる居間を四方から囲み、大音声を張り上げて、天之数歌と七十五声の言霊を宣りあげた。
婆は悲鳴を上げて死に物狂いとなり、秋男に向かって飛び掛ってきたが、秋男は婆の横面を打ちすえた。婆はたまりかねて岩窟を飛び出し、怪しい雲を起こすと大空さして逃げていった。
五人の乙女は、婆が逃げていったのを見て、満面に笑みをたたえて喜んだ。そして、自分たちは水上山の国津神の娘であり、高光山へ詣でる途中に、婆の計略にかかって命を落とした者であると、素性を明かした。
そして、譏り婆のもっとも恐れるのは言霊の力であると助言すると、自分たちはかげながら力を添えようと言い残し、白煙となって消えうせた。
ふと一行があたりを見ると、森陰の雑草の生い茂る中に腰をおろしてうずくまっていた。
第十一章 火炎山(2015)
秋男一行は、毒草の茂る原野を進み、三日目の黄昏時に、ようやく火炎山の麓にたどりついた。火炎山は名高い大火山であり、焼け石を降らして害を成し、国津神たちは地獄山とも読んでいた。
また、この山はあらゆる猛獣や毒蛇の住処であり、譏り婆の本拠でもあった。忍ヶ丘で冬男たちの精霊に敗れ傷ついた笑い婆も、ここへ逃げてきて、譏り婆の館に身を寄せていた。
一同は、火炎山の火を噴くものすごい有様に感嘆し、述懐の歌を歌っていた。
すると、いづこともなく怪しき声が再び聞こえてきた。声は、笑い婆と名乗ると、冬男は自分が計略にかけて命を奪ったと誇り、自分を傷つけた冬男への仕返しに、兄の秋男に報いてやろう、と一行に脅しをかけた。
秋男は、弟・冬男が笑い婆のために命を落としたことを知ると、怒り立ち上がり、婆に向かって弟の敵、と挑みかけた。従者たちも勇んで婆を迎え撃つ歌を歌った。
すると突然、火炎山の噴火がぴたりと止まり、あたり一帯は真の闇につつまれてしまった。秋男一行は身体きわまり、大地にどっかと座ってしばし思案に暮れていた。
笑い婆は暗がりの中から顔の輪郭をはっきりを現して、長い下を出しながら秋男の前近くに寄ってくると、大きな瓶から毒茶を秋男の面上に注ぎかけた
秋男はたまりかね、両手で顔を覆って心の中で天之数歌を奏上した。笑い婆はたちまち消えうせ、笑い声だけが遥かかなたから聞こえるのみであった。
また後方から譏り婆の声が、秋男一行を罵った。秋男は声のするほうに向かって、こぶしを固めて飛びついたが、とたんに闇の落とし穴にどっと落ち込んでしまった。
譏り婆は、秋男が計略にかかって命を落としたとあざけり笑った。四人の従者は怒り、いっせいに譏り婆の声のするほうへ突進したが、同じく一度に闇の奈落に墜落し、命を失ってしまった。
火炎山は再び噴煙を噴き出し、火の光は天に沖し、ものすごい光景となった。
秋男一行は命を落としたが、その精霊は
秋男は、この上は
おりしも、いずこともなく、いやらしい笑い婆、譏り婆の破れ鐘のような声が、ものすごく響き渡って来た。
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