とよたま愛読会107回(天祥地瑞
未の巻 第80巻18章〜第23章)
記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp
日 時 平成17年8月28(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所 愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
連絡先 03-3321-3896、 03-3321-8644
物 語 天祥地瑞 未の巻 第80巻18章
大挙出発(2022)〜第23章
野火の壮観(2027)
★ 報告: 今回は拝読会後には暑気払いとしまして、毎度お世話になっている下高井戸の居酒屋「たつみ」にて楽しいときを過ごしました。
また、ご参加者の皆様には、拝読個所の感想を募集しております。いただきましたご感想は、もれなくこの案内に掲載させていただきますので、どうぞ奮ってお送りください。
<あらすじ>
火炎山の爆発という葭原の国全体を揺るがす大事件にあたって、水上山の執・政・巌ヶ根は、再再度、息子たちを探索に出発させることを決定します。
先に探索に遣わした四男・冬男、三男・秋男の消息を探ると共に、火炎山爆発の影響を調査するために、長男・春男、次男・夏男に執政の水音、瀬音を補佐として、従者たちを従えた探索隊を組織しました。
一行は陥没した火炎山の後が「火の湖」となり、逃げ惑う猛獣毒蛇や悪鬼たちが安全な丘に群がり押し寄せてきている様を目の当たりにします。
探索隊は、月見ヶ丘で水奔鬼の鬼婆たちの襲撃を受けますが、春男、夏男、水音、瀬音の言霊に婆たちは打ち破られ、逃げていきます。
逃げた鬼婆たちが次に狙ったのは、火の湖の真中に残った「秋男島」でした。秋男島には、火炎山で命を落とした秋男たち一行が精霊となって鎮まり、悪魔たちの攻撃から島を守っていました。
水奔鬼たちの攻撃激しく迫り、秋男たちは窮地に陥りますが、そのとき天の鳥船が秋男島に降り来ると、朝空男の神、国生男の神ら高光山から遣わされた天津神たちが、言霊によって悪魔たちを追い散らします。
鳥船には冬男たちの精霊と、春男・夏男の探索隊一行も乗り込んでいました。兄弟たちは互いの消息を知り、秋男と冬男が命を落としたことを悔やみますが、再会できた神恩に感謝します。
水奔鬼の鬼婆たちは天津神二神の言霊に激しく傷つけられ、終に力尽きると、火の湖に墜落して全滅してしまいました。
春男・夏男の探索隊は天津神に助けられて水上山に復命し、巌ヶ根にすべてを報告しました。秋男の精霊たちは、秋男島に永遠に留まり、火の湖の守護神として、国人から篤い尊敬を得ることになりました。また冬男の精霊たちは忍ヶ丘に永遠に留まり、国土守護の神として、国人たちから篤く崇敬されることとなりました。
高光山に復命した朝空男の神、国生男の神は、御樋代神・朝霧比女の神に、これまでのいきさつを詳細に報告します。朝霧比女の神は、まだ原野に残る水奔草の間に猛獣・毒蛇・悪魔の残党たちが潜んでいるが、それを清め滅ぼすための火が、火炎山の爆発で失われてしまったことを心配します。
そこへ、百日の禊を終えた大御照の神が帰ってきた。大御照の神は、万里の海を渡ってやってくる朝香比女の神が、真火の燧石をもたらすであろう、という預言を復命します。
朝霧比女の神は、さっそく朝香比女の神を天の鳥船で迎えに遣わし、高光山で歓迎の宴を開くと、朝香比女の神は真火の燧石を朝霧比女の神に授けます。朝霧比女の神はさっそく、真火で原野を清めさせると、猛獣毒蛇、悪魔たちは、水奔草とともに火に焼かれてしまいました。
朝霧比女の神は、朝香比女の神の好意への感謝として、天の鳥船製造の技術を持つ国生男の神を、供として遣わします。新たに国生男の神を加えた朝香比女の神一行は、西方の国土を目指して、再び万里の海に漕ぎ出して行くことになりました。
★ 拝読箇所で気のついたこと]
第八十巻 未の巻
天地変遷水上山の執政・巌ヶ根は、高光山以西を視察するために派遣した四男の冬男、三男の秋男一行がいつまで待っても戻ってこないため、さらに自分の子を派遣して調査させようかと事を図っていた。
すると、東南の方に火炎山は轟然として爆発し、水上山まで振動が伝わってくるほどであった。
そのため、巌ヶ根は意を決して長男・春男、次男・夏男に命じ、執政の水音、瀬音を補佐に数多の従者を引き連れさせて、調査に向かうこととした。
巌ヶ根は出発に際して斎主となり、調査のたびの無事を祈念する祝詞を宣り上げた。
一同はそれぞれ出発の述懐歌を歌うと、木枯らしが吹きすさぶ野路を東南に向かって進んだ。それぞれ行軍歌を歌いながら進発し、茂みの森影で一夜を明かすことになった。
そのあたりは火炎山が陥落したために、猛獣や毒蛇が集まってきている場所であったため、辺りには怪しい鳴き声が響き、不快な空気が漂っていた。
第十九章 笑譏怒泣(2023)
一同は森を出て原野を進んでいった。火炎山が爆発して変わり果てたあたりの様子を歌いながら、行進して行った。
一行は月見ヶ丘に着いた。そのときには黄昏時であり、闇が深くなってきていた。月見ヶ丘は、秋男一行が譏り婆と言霊戦を行った場所であった。
一同はあたりの怪しい様子に警戒をしていた。するとリズムの合わないとんちんかんな音楽が響き渡り、そのあたりだけが昼間のように明るくなった。
闇の中から四人の美人が現れ、媚を呈しながら一行に向かって、自分たちは葭井の里の国津神の娘であり、火炎山が陥没したために家が湖の底に沈んでしまったために、月見ヶ丘に難を避けていたのだ、と語った。
春男は女たちの様子が怪しいので疑っていた。執政のひとり水音は、女に尻尾があることを見て取り、女が譏り婆の化身であることを見破った。
するとにわかに辺りは闇に戻り、いやらしい声がしきりに聞こえてきた。譏り婆は自分が秋男を火炎山で殺めたことを誇らしげに語ると、他の三人の女は笑い婆、瘧り婆、泣き婆が変装したものであると正体を明かした。
譏り婆は、自分の幻術で一同の目をくりぬいたなどと脅して、一同を混乱させようとした。春男、夏男、水音、瀬音はあまたの従者と共に、天の数歌を大音声に宣り上げた。鬼婆たちは言霊に辟易し、怪しい悲鳴をあげながらいずこともなく逃げ去った。
すると月見ヶ丘の闇は晴れ、大空の月が晧晧と輝きわたった。東南方には、火炎山の陥没によって生まれた火の湖が、寂然と波静かに月星の影を浮かべていた。
第二十章 復命(2024)
火の湖の中央に浮かんでいる小島を、秋男島といった。水奔鬼の鬼婆たちは、この島を住処にしようと企んでいたが、秋男たちの精霊がこの島の司となっており、悪魔たちを防ごうと言霊戦を行っていた。
笑い婆は悪魔を引き連れて、濁った言霊で秋男たちを攻め立てていた。譏り婆はさらに水奔鬼たちを使っていっせいに耳を聾するばかりの怪音で島を包んで攻撃してきた。
そこへ天の鳥船が空に現れ、秋男島の砂地に悠々と舞い降りた。そして、朝空男の神、国生男の神を始めとし、精霊となった冬男一行が現れた。また、水上山から弟たちの消息を尋ねてきた春男、夏男、執政の水音、瀬音とその従者たちも、鳥船から降りて来た。
秋男はこの様を見て歓喜し、天津神の前に出て感謝の路を述べ、また弟の精霊や兄たちに面会できたうれしさに、踊り歌った。
朝空男の神、国生男の神は、秋男たち秋男島を守ってきた精霊たちを安堵させる歌を歌った。冬男は兄の精霊との再会を喜び、水音、瀬音は若君たちの精霊に会うことができた喜びを歌った。春男、夏男も、弟たちが命を落としたことを知って悲しんだが、精霊として存在していることに心を慰めた。
秋男は一同に感謝の歌を述べた。
二柱の天津神は秋男島の頂上に登り、天の数歌を奏上すると、水奔鬼の鬼婆たちは満身に傷を負って湖上を逃げ去り、終に力尽きて熱湯の湖水に陥って全滅した。
春男・夏男の一行は一人も命を落とすことなく無事に水上山に復命した。そして、二人の弟の身の成り行きなどをつぶさに神前に報告した。巌ヶ根は三男、四男が命を落としたことを知って落胆したが、神恩の深いことを感謝し、朝夕神前に祝詞を上げる日を送ることになった。
秋男たち精霊一行は、秋男島に鎮まり、湖中の神として往来の船や漁夫たちを永遠に守ることとなった。また冬男は忍ヶ丘に熊公、虎公、山、川、海の精霊たちと共に永遠に鎮まり、霊界から葭原国の栄を守り、悪魔を滅ぼす神として、国人から尊敬を集めることとなった。
第二十一章 青木が原(2025)
葭原国を東西に画する中央山脈の最高峰が、高光山であった。常に紫の瑞雲がたなびく霊地であった。この地点を青木が原といい、八百万の神が集まって政に仕えていた。
御樋代神の朝霧比女の神は、神苑を逍遥しながら国土を統べる神業に心を悩ませていた。朝霧比女の神は、子心比女の神が竜彦をあやしながら養育している様を見て、肌身離さず育んで良く育て、国の司となるように、と言葉を掛けた。
子心比女の神は朝霧比女の神の気遣いに感謝し、また火炎山の視察に出た朝空男、国生男の神がどうなったかを尋ねた。すると、ちょうど空に天の鳥船の影が見えてきた。
朝空男の神、国生男の神の無事帰着に、高光山の神々は喜びの声を上げた。朝霧比女の神が二神の労をねぎらう歌を歌った。
朝空男の神は火炎山の爆発を報告し、国生男の神は、水上山の国津神たちの国土開拓の進捗を報告した。二神は、火炎山の曲津神を焼き滅ぼす力を持った火種が失われてしまったことを懸念し、今後の方策を朝霧比女の神に諮った。
朝霧比女の神も今後は御火をどうやって得たらよいかを心配したが、まずは大御照の神が、百日の禊を終えて帰ってくるのを待つようにと歌った。
折りしも禊を終えて帰ってきた大御照の神が、青木ヶ原の聖場に来着した。そして、万里の海を越えてやってくる朝香比女の神が、御火をもたらすであろう、との預言を賜ったことを明かし、松浦の港に朝香比女の神を出迎えに行くよう進言した。
朝霧比女の神は斎戒沐浴し、青木ヶ原の神前に自ら斎主となり、天の鳥船での出迎えに当たって空中安全の祈願をなした。祭典の無事終了をもって、朝空男の神、国生男の神、大御照の神の三柱神たちは、鳥船に乗り込んで松浦の港へ、朝香比女の神一行を出迎えに出発した。
第二十二章 迎への鳥船(2026)
朝香比女の神一行は、歎かひの島の国津神たちに燧石を授けて歓ぎの島と名づけた後、葭原の国に向かって進み、国土の東海岸にある松浦の港に、真昼頃にようやく到着した。
一行は老松生い茂る磯辺に上陸し、美しい景色をめでながら、述懐の歌を歌った。すると、天の鳥船が空気をどよもしながら、松浦の港に向かってやってくるのが見えた。
鳥船が空を翔けてくる有様を歌っているうちに、鳥船は静かに松浦の港の砂浜の上に着地した。初めて鳥船を見た朝香比女の神の従者神たちは、口々に驚きの歌を歌った。
鳥船からは朝空男、国生男、大御照の三柱の神が降り来たり、朝香比女一行に最敬礼をなすと、御樋代神・朝霧比女の神の命により、一行を迎えに来たことを伝えた。
朝香比女の神は朝霧比女の神の心遣いに謝意を表した。一同は挨拶を交わすと、天の鳥船に乗り込んで松浦港を出発し、高光山へと飛び立った。
朝香比女の神は下界を見下ろして、水奔草が生い茂る原野に気づき、これを焼き払うために燧石を朝霧比女の神に授けようと歌った。
一行は空中の旅を歌に歌ううちに、その日の夕方ごろに青木ヶ原の聖場に降り立った。高光山の神々たちは両手を高く差し上げて、ときの声を上げて歓迎の意を表した。
第二十三章 野火の壮観(2027)
高光山の聖場は、朝香比女の神の降臨によって輝きがみなぎり、瑞雲たなびき新生の気があたりにただよった。
朝霧比女の神は、八尋殿に朝香比女の神一行を招き、心限りの歓待をした。朝霧比女の神は、朝香比女の神の来着を喜ぶ歌を歌い、朝香比女の神は感謝の辞を歌った。そして、各従者神たちも互いに歓迎と感謝の辞を述べ終わると、朝香比女の神は、葭原の国の原野を焼き清めるために、燧石を国土の宝として進呈しようと提案した。
朝霧比女の神はいたく喜び、朝香比女の神に感謝の歌を歌うとさっそく、大御照の神以下の神々に命じて地上に降らしめ、真火の燧石で葭原に火を放たせた。すると、折からの旋風にたちまち原野は火の海となり、水奔草や猛獣毒蛇は火に包まれた。
この様を見て、朝香比女の神、朝霧比女の神以下高光山の神々は歓び、歓声を上げた。大御照の神は高光山に復命し、焼き清めの様子を詳細に報告した。朝霧比女の神は改めて、真火の神徳に感謝の歌を歌った。
ここに山上の宴会は終了した。朝霧比女の神以下高光山の神々は、朝香比女の神一行に感謝の辞を述べ、松浦の港まで、朝空男の神、国生男の神が鳥船で一行を送っていった。
半日をかけて松浦の港に着くと、朝空男の神は、国生男の神を残して去っていった。これは、朝霧比女の神が朝香比女の神の好意に報いようと、天の鳥船の製造技術を持つ国生男の神を、朝香比女の神の供として仕えるように遣わしたのであった。
朝香比女の神一行は、国生男の神を新しい供に加えて、西方の国土を指して出航していった。
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