とよたま愛読会109回天祥地瑞 申の巻 第81巻6章 〜 第11章
                 記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成17年10月23(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語  
天祥地瑞 申の巻
           第81巻6章
月見の宴(2033) 第11章 五月闇(2038)

★ 報告
暮秋の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います、第109回のご報告をお送りいたします。


拝読個所は、サール国・イドム国の争いに端を発した、伊佐子島の物語の続きとなります。

サール国王エールスは、電光石火の侵攻でイドム国を落とし、支配下に組み入れました。 エールス王は、土地のやせた貧しいサール国を離れて、豊かなイドム城に陣取り、王都としました。しかし王は勝利に驕り、部下や妃とともに、毎日酒宴にふけっていました。

  あるとき王は、酒宴の席で諫言をした右守のナーリスを咎め、サール国に追い返してしまいます。うるさがたの忠臣・ナーリスが去った後には、王にこびへつらう奸臣のみがイドム城に残ってしまいました。

  左守のチクターは実はひそかに、王妃と情を通じ合う仲になっていました。二人は王を暗殺して国をほしいままにしようと計画していたのです。そして、エールス王を野外の夜宴に誘い出すと、崖から突き落として殺害し、王妃が実権を握ってしまいました。

  権力を握った王妃は、さっそく人魚の真珠を求めて、真珠湖の人魚の郷へ攻め入ります。しかし、人魚の酋長たちは準備を整えてサール軍を待ち受けており、湖の奥へ誘い出すと一気に殲滅してしまいました。この人魚攻めの大敗で、サール軍は王妃・左守ら軍の首脳をはじめ、精鋭部隊を一気に失ってしまいました。

  折りしもイドム国の民衆の間には、イドム国復興運動が盛り上がっていました。愛国運動の大頭目マークとラートは、民衆軍を引き連れて、一気にイドム城に押し寄せます。統制を失っていたサール軍は戦わずして潰走し、民衆軍はイドム城を解放しました。

  民衆軍にまぎれていたイドム王家の右守ターマンにより、マークとラートは、イドム王が月光山に立てこもっていることを知ります。マークは早速、イドム王を城に迎えるために、ターマンの案内で月光山に向かったのでした。

  一方サール国では、国王の留守を太子のエームスが守っていました。サール国の都城・木田山城には、イドム国からの捕虜が護送されてきていました。あるときエームスは、イドムの捕虜の中に絶世の美女を認め、恋に落ちてしまいます。それは、イドム国王の王女チンリウでした。

  エームス太子は、たとえ王女に自分の思いを告げたとしても、自分は王女の親の敵にあたるため、到底受け入れられることはないだろうと思い悩み、次第にやつれて行きます。太子の様子を心配した侍臣の朝月と夕月は、太子の心を知り、必ずやチンリウ王女の心を太子になびかせて見せようと、太子をなだめます。  果たして太子の恋の行方はどうなりますでしょうか。

 

★ 拝読箇所で気のついたこと

第81巻 申の巻
 
第1篇 伊佐子の島
 
第6章 月見の宴(2033)
 * イドム国を手に入れたサール国王エールスは、風光明媚なイドム城に妃や重臣たちを集め、宴を開いていた。

 * 述懐の歌を歌う中に、左守のチクターは、王を主の神と称え、重臣を高鉾・神鉾の天津神になぞらえて王を賞賛した。

 * 右守のナーリスは左守の行き過ぎた言葉を戒めるが、逆に王の不興を買ってしまう。王は右守に、本国を守るように言いつけてサール国に帰し、厄介払いしてしまう。

 * 忠臣でうるさがたの右守がいなくなった後は、左守チクター、軍師エーマンらの奸臣のみが残ることとなった。重臣たちは国務を忘れて、王、王妃とともに詩歌管弦・酒宴の歓楽にふけっていた。 イドムの嵐

 第7章 月音し(2034)
 * エールス王、妃サックス姫、左守チクターの三名はある日、大栄山の絶勝地に月見の宴を張った。ここは奇岩の岩壁の上から、はるかに深く早く流れる水乃川を見下ろす絶景の奇勝である。

 * エールス王は月明かりに照る紅葉をめでながら、左守チクターの追従の歌にいい機嫌になり、泥酔してろれつも回らないほどに飲んでいた。

 * 実はサックス姫と左守のチクターは深い恋仲になっており、折あらば王を亡き者にして思いを遂げようと画策していたのであった。チクターが目配せすると、サックス姫は全身の力を込めて、エールス王を断崖から突き落としてしまった。

 * サックス姫とチクターは示し合わせて、エールス王が泥酔して水乃川に落ちたと城内に触れ回り、表面は悲しげな風をして、配下の者たちに王の捜索を命じた。

 * この騒ぎに軍師エーマンは夜中急ぎ登城し、サックス姫、チクターの様子を見て首をかしげたが、何も言わずに黙っていた。

 * やがて、水乃川の深淵でエールス王の遺体が発見され、型のごとく葬儀が行われた。以後、サックス姫は女王としてサール国に君臨し、チクターは依然として左守を務めることとなった。

 第8章 人魚の勝利(2035)
 * 大栄山の南面にある真珠の湖には多くの人魚が生息していた。人魚たちは湖の東西南北に人魚郷を作って平和に暮らしていたが、イドム王の部下が襲来して人魚の乙女を捕らえて行く事件がたびたび起こっていた。

 * そこで、国津神たちの襲来を防ぐために空き地に鋭くとがった貝殻を敷き詰めるなど、防衛線を敷いて警戒する態勢になっていた。

 * あるとき、東西南北の各人魚郷の酋長たちは、湖の中央にある真珠島に集まり、協議をこらしていた。

 * イドム国が戦に破れて、サール国に城を奪われたニュースは人魚たちの下にも届いていた。人魚たちは、サール国王エールスが荒々しい気性の持ち主であると聞いていたので、必ずやイドム国にも増して、人魚の乙女を捕らえに兵隊を遣わしてくるだろうと予測していたのである。

 * 酋長たちは協議の結果、サール国の兵隊が来たら、岸に山が迫っていて険しい北郷にすべての人魚を避難させ、敵を迎え撃つ作戦を練った。

 * 折りしも、サール国女王となったサックスは早速、数百の騎士を従えて大栄山に登ってくると、人魚を捕獲しようと真珠の湖に迫ってきた。

 * 東西南北の酋長たちは、さっそく人魚たちに知らせを出して、全員を北郷に避難させた。酋長たちは、真珠島の岩頭に立って、サール国の騎士たちを待ち構えていた。

 * サールの騎士たちは東、西、南の人魚郷を目指して馬に乗ったまま湖に飛び込み襲ってきたが、一人の人魚も見つけることができず、泳ぎ着かれて溺れ死ぬ馬が続出した。

 * サックス女王は一度岸に引き返し、丸木舟を作って湖の奥に進む作戦に変更した。真珠島に上陸して人魚の酋長を捕らえ、人魚たちの隠れ家を自白させようとしたのである。

 * しかし、丸木舟が真珠島に近寄ってくるやいなや、酋長たちは島の断崖の上から、いっせいに真珠の岩を岩石落としに投げつけた。

 * あわれ、女王をはじめ従軍していた左守チクター、数多の騎士たちは舟もろとも湖中に沈没し、水の藻屑と消え去ってしまった。これ以降、真珠の湖を侵して人魚を攻めようとする者もなく、ここは神仙郷として人魚たちは栄えることとなった。

 第9章 維新の叫び(2036)
 * 真珠湖攻めの大敗により、女王・左守らの首脳をはじめ、精鋭の騎士たちをすっかり失ってしまったサール軍には動揺が広がっていた。

 * 力によってイドム国王を追い払い、国を奪って暴政を敷いた天罰は、やはり恐ろしいものであった。

 * 残された重臣の軍師エーマンは、女王やチクターらの遺体を篤く葬り、十日間の喪に服しつつ述懐の歌を歌っていた。驕り高ぶりを悔い、サール国に追いやった右守ナーリスの言に従っていたら、と後悔の歌を歌っていた。

 * エーマンはただ一人で、イドム国に駐屯するサール軍の統制をはからざるを得ないことになってしまったのである。

 * 一方、サール軍の暴政に苦しんでいたイドム国民の中には、あちこちに愛国の志士が奮起し、この機に乗じて城を奪い返し、イドム王を再び迎え入れて国を再興しようとの活動が活発になってきた。

 * 中でも愛国派の大頭目、マークとラートは国の至るところに立ち現れ、馬上から国津神たちに奮起を呼びかけた。群集はほら貝を吹き、鳴子を打ち鳴らし、あちこちに示威運動が起こってきた。

 * マークとラートはついにイドム城外の広場に群集を集結し、馬上から維新の歌を高々に歌い始めた。そして、今こそ城に攻め寄せイドム国を再興せよ、と呼びかけた。群集はいっせいにイドム城に攻め寄せると、軍師エーマンはこの様を見て慌てふためき、水乃川に身を投げて自ら命を絶ってしまった。

 第10章 復古運動(2037)
 * マーク、ラートが引率した民衆軍は、一戦も交えることなくイドム城を取り返した。 * この群集の中には、イドム国王アヅミの右守ターマンが、民衆に変装して紛れ込んでいた。ターマンはマークとラートに近寄り身分を明かし、イドム王が月光山に隠れていることを明かして、感謝の意を表した。 * マークは自分たちの手柄ではなく、天命によってサール軍は滅びたと歌うと、こうなった上は、アヅミ王を再び迎えて王に再び国を任せたいとターマンに伝えた。 * ターマン、ラート、マークは互いにここまでの道のりの苦難を歌いあった。そして、ターマンとマークは月光山へアヅミ王を迎えに出立し、王の到着まで、ラートがイドム城を守ることとなった。 * ターマンとマークは、道々これまでの述懐の歌を歌いつつ月光山へと馬を急がせた。

 第 3篇 木田山城
 第11章 五月闇(2038)
 * サール国王エールスは、イドム城を落としたときに、多くの敵軍を捕虜として捕らえ、牢獄につなぐために、サール国に護送させていた。

 * サール国には大栄山から流れる、うす濁った木田川という川が流れており、川を越えた東側の丘陵の木田山に城があった。

 * サール国の太子エームスは、木田山城の師団長として留守を守り、数多の敵軍の捕虜が護送されてくるのを朝夕眺めていた。

* ある日、捕虜の中に美しい三人連れの美人を認め、たちまち恋慕の情にとらわれると、敵国の女性であろうとも何とかして妻にしたいと煩悶苦悩するようになってしまった。この三人の美女とは、アヅミ王の娘チンリウ姫、侍女のアララギ、姫の乳母の娘センリウの三人であった。

 * 太子エームスの侍臣、朝月と夕月は、太子の様子がただならないことに気づき、心を痛めてなんとかして太子の気を晴らそうと、さまざま歌や踊り、小鳥や虫の鳴き声などを催してみたが、太子は日に日に憔悴していくばかりであった。

 * ある日朝月、夕月は太子に花ヶ丘の清遊を進めようと、花咲く丘の美しさを歌に歌った。太子は花鳥風月に心は動かず、花ヶ丘に咲く花ではない花に、今は心を奪われているのだ、とそれとなく自分の思いを歌に歌った。

 * 朝月は太子の心を察し、自分が太子の花への使者となりましょう、と歌うと、太子は、自分が恋焦がれる花は、実は敵国の捕虜の中にいるのだと歌い、高貴な身なりから、間違いなくあれはアヅミ王の王女であろうと明かした。

 * 太子は、王女にとって自分は親の敵であり、どうやって王女の心を掴んだらよいか、朝月、夕月に相談を持ちかけた。朝月、夕月はなんとしても王女に太子の心を伝え心をなびかせてみようと、太子の思いを承った。

 * かくして、朝月、夕月はひとまず太子の前を下がっていった。太子は一人、木田川の流れを眺めながら、述懐の歌を歌っていた。侍女の滝津瀬、山風がお茶を汲みに参上したが、太子の心は晴れず、茶にも菓子にも手をつけずにうつむいていた。

 * 侍女たちは太子の様子を心配するが、太子もう夜が遅いのでひとまず下がるように言いつけ、侍女たちは下がっていった。かくして、木田山城の夜は更けていった。


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