とよたま愛読会110回(天祥地瑞
申の巻 第81巻12章〜16章)
記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp
日 時 平成17年11月27(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所 愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
連絡先 03-3321-3896、 03-3321-8644
物 語 天祥地瑞 申の巻
第81巻12章
木田山颪(2039)〜16章
亀神の救ひ(2043)
★ 報告:師走の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います。
忘年会のご案内 次回第111回愛読会終了後、恒例の忘年会を開催いたします。
下高井戸の「たつみ」にて、午後六時ごろの開始を予定しております。
参加費は、お一人様千円です。愛読会のみのご参加、忘年会のみのご参加も可能です。
また、特に事前のお申し込みも必要ありませんので、皆様奮ってご参加ください。
忘年会のみのご参加で、場所がわからない方は、上記の望月宛てメールください。
今回の拝読した物語は、サール国太子エームスのイドム国王女チンリウへの恋の行方から始まります。
捕虜にした敵国の王女に恋をしてしまったサール国太子エームスは、配下の朝月、夕月を牢獄に派遣し、チンリウ王女に自分の思いを伝えさせ、王女の心をなびかせようと、説得させます。
しかし王女のサール国に対する恨みは深く、朝月、夕月は追い返されてしまいます。
そこで太子は王女のお守役である乳母のアララギを味方につける作戦に出ます。アララギを引見し、王女が太子との結婚を承諾すれば栄耀栄華の生活が約束されるが、もし拒めば死刑に処すという二者択一で協力を迫ります。アララギはあっさりと承諾し、牢獄に帰って娘のセンリウと共に王女説得にかかります。
アララギとセンリウは、王女が太子との結婚を拒めば自分たちの命も亡きものとなってしまうと、王女の情に訴えます。アララギとセンリウを憐れに思ったチンリウ王女はついに、太子との結婚を承諾します。
さっそく盛大な結婚式が行われました。その夜、アララギは王女を呼び出し、エームス太子によからぬ噂があるとして、娘のセンリウを初夜の身代わりにすることを提案します。結婚式の豪華さを目の当たりにしたアララギは、にわかに王女がねたましくなり、王女とそっくりな自分の娘センリウを王妃につけようと画策していたのでした。
王女はセンリウと入れ替えられ、アララギの姦計により罪を着せられ、魔の島へと遠島に書せられてしまいます。
まんまと自分の娘を替え玉の王妃にしたてたアララギはサール国の実権を握ります。そして、替え玉を見破りそうになった従臣・朝月を遠島にしてしまいます。これ以降、サール国の王宮内は上におもねる奸臣のみがはびこり、正義の士はことごとく迫害されてしまいました。
サール国は乱れ、国の各地に騒乱が起き始めます。 一方、チンリウ王女が流された魔の島は、夕刻になるとすっかり海に水没して島上の生き物の命を奪うという、恐ろしい島でした。王女は護送の兵士によって左耳を切り取られ、島に捨てられてしまいます。
夕刻になり、次第に島は水没して最期を覚悟したチンリウ王女でしたが、どこからともなく大きな亀が現れて、王女を背中に乗せると、イドム国に送り届けました。王女は神の助けと亀に感謝を捧げます。
王女がおろされた浜辺は、父母であるイドム国王・王妃が立てこもっている月光山のすぐ麓にありました。そんなこととは知らない王女は、食物を探しに森の中へと分け入って行きました。
★ 拝読箇所で気のついたこと
*三人はイドム国を忍び、王と王妃の行方を案じ、またサール国への恨みを歌っていた。
*そこへ、エームス太子の侍従・朝月、夕月の両人が足音を忍ばせてやってきた。そして、エームス太子のチンリウ姫への思いを告げ、牢獄から出ようと思ったら、太子の思いを受け入れるよう説得をはじめた。
*チンリウ姫は敵国の太子の情けを受けるくらいなら、生命を捨てた方がましだ、と憤慨した。
*朝月、夕月は、姫と太子の結婚が成れば、イドム国も再興されて平和が訪れるだろう、と姫を口説くが、チンリウ姫は頑として二人の説得を拒みつづけた。
*朝月、夕月はすごすごと立ち去り、こうなったら力づくで姫を従わせようか、と相談をめぐらしている。
第13章 思ひの掛川(2040)
*一方エームス太子は、木田山城の奥殿に恋の悩みを述懐の歌に歌っていた。父王がイドム国を滅ぼしたために、自分がチンリウ姫の親の敵になってしまったことで、父王エームスへの恨みを歌った。
*そこへ朝月、夕月が帰ってきて、チンリウ姫の心は固く、説得に失敗したことを報告した。そこでエームス太子は、侍女のアララギをこちら側に引き入れて、姫を説得させる策を思いついた。
*さっそくアララギを縛ったまま太子の前に引き出した。朝月は、このまま姫が太子の思いを拒み続ければ牢獄に苦しみつづけ、思いを受け入れれば太子妃として栄華を得られるだろう、と二者択一を迫り、アララギを問い詰めた。
*するとアララギは恐れ気もなく、姫を必ず説得させようと太子の前で約束した。そして牢獄に送還されたアララギは、言葉を尽くしてチンリウ姫を説得にかかった。
*このままでは、我々は処刑されてしまう、それよりはエームス太子の妃になって牢獄から抜け出せば、命も助かり、よい暮らしも出来、イドム国の再興もなるだろう。何より、従者である自分たちの命を憐れと思い、どうか助けてください、と最後は姫の情に訴えた。
* アララギ、センリウ母娘の嘆願によって、チンリウ姫は憐れみの心から、ついにエームス太子の思いを受け入れることに決めた。
*エームス太子はさっそく三人を牢獄から解放し、立派な衣装に着替えさせ、宮殿に迎え入れた。
第14章 鷺と烏(2041)
*チンリウ姫は、侍女母娘の命を憐れに思い、敵国の太子エームスの妃となることを承諾した。
*エームス太子は城内に命じて、さっそく結婚式を行うこととした。太子はチンリウ姫を奥殿に招き、この結婚が成ったなら、チンリウ姫の父王をイドム城に迎えて、姫の心に報いよう、と誓った。
*結婚式が始まり、仲介役となったアララギは祝歌を歌った。続いてエームス太子、チンリウ姫、朝月、夕月、センリウと喜びの歌を歌い、結婚の儀式を済ませることとなった。
*チンリウ姫が太子の寝室に進みいることになった直前、アララギがすぐれない面持ちで姫を別室に招いた。
そして語るに、
( これまでエームス太子は何度も妃を迎えたが、いずれも一晩きりで命を落としている。
( それというのも実は、太子は猛獣の化け物である。
( このことは、サール国の侍女たちから噂で聞いた確かな話である。
( そこで自分の娘センリウは姫にそっくりであることから、今夜は安全のため、身代わりに立てて様子を見てみましょう。
*というものだった。これはアララギの計略であったが、チンリウ姫は疑いもなく乳母の提案を聞き入れ、センリウと着物を着替えてその夜は別室に控えていた。
*翌朝、センリウが無事であったのを見て、チンリウ姫はアララギに、『何ともなかったようだが太子は替え玉に気づかれたのだろうか』、と相談した。
*アララギは、『太子は替え玉に気づいてはいないようだが、太子の心をもっと姫に向かわせるためには、祭壇にある水晶の花瓶を庭で打つとよい』と姫に勧めた。
* チンリウ姫は何の疑いもなく、花瓶を庭に持ち出して打つと、花瓶は二つに割れてしまった。
*アララギは突然姫のたぶさを掴んで引きずりまわし、家宝を打ち壊した大罪人、と叫んだ。たちまち姫は捕り手に囲まれてしまった。アララギは、替え玉が気づかれないように姫の口に猿轡をかませ、顔を殴って容貌がわからないようにしてしまった。
*チンリウ姫は、家宝を打ち壊した罪人・センリウとして、遠島の刑に処せられることになってしまった。
第15章 厚顔無恥(2042)
*
乳母のアララギは、結婚式の荘厳さににわかに嫉みに襲われ、自分の娘・センリウが姫とそっくりなのを幸い、姫をだまして入れ替えさせ、また罠に陥れて遠島に流してしまったのである。
*エームス太子は替え玉に気づかず、センリウをチンリウ姫と思い込み、寵愛していた。
*アララギは、自分の娘センリウ(=実は替え玉のチンリウ姫)の家宝破壊の罪に対し、身内だからといって手心を加えることなく裁きを下した、とサール国の人々から思われていた。
*そして、その公平無私な処置が木田山城内の賞賛を集めた。この件でエームス太子からも厚く信頼されることになり、城内の一切の事務を取り仕切るようになったので、その権力と声望はとみに増していった。
*婚礼の後、祝賀の宴が開かれることになった。そこでもアララギは、自分の娘の罪に対して公平な裁きを下したことで、皆から賞賛された。
*朝月、夕月は、アララギを気遣ってセンリウ(=実はチンリウ姫)の恩赦を申し出るが、アララギは、身内だからといって刑を軽くしてはならない、と頑なに否定した。
*また王妃(=実はアララギの娘センリウ)もまた、サール国の掟を勝手に変えてはならぬ、と断固反対をした。アララギは城内の人々から一層、公平無私の人という評判を取り付けることになった。
* しかし朝月は、センリウの刑の重さを不憫に思い、またどうも今の太子妃が本当のチンリウ姫ではないような気がする、と懸念を表明した。
*疑われた王妃(=センリウ)は怒り、太子に朝月の処罰を要求した。エームス太子は朝月に対して激しく怒り、たちまちこれも遠島の刑に処してしまった。
*朝月が縛られて島流しに送られる姿を見て、エームス太子、太子妃(=センリウ)、アララギは愉快げに微笑みながら、大罪人が正しく処罰されたことを喜ぶ歌を歌っていた。
*アララギが木田山城の権力を握ってからは、邪な輩を重用し、正義の士はことごとく罪を着せて刑に処した。サール国には悪人がはびこり、国内各所には暴動が起こり、民の恨みの声は山野に満ち溢れることになってしまった。
*センリウと入れ替えられて島流しにされたチンリウ姫の行く先は、「かくれ島」に送られることになった。この島は夕方になると全島が波間に水没してしまうという魔の島であった。
*アララギは自分の計略が発覚することを恐れて、姫を亡き者にしようと、あえてこの島に姫を送らせたのであった。
*また、島流しにされた朝月は「荒島」という岩石の孤島に打ち捨てられ、嘆きのうちに魚介を食料として月日を送ることとなった。
第4篇 猛獣思想
第16章 亀神の救ひ(2043)
*センリウと取り替えられたチンリウ姫は、丸木舟に乗せられて嘆きの歌を歌いつつ、「かくれ島」に送られていた。
*姫を護送してきた騎士は島につくと、姫を上陸させ、送り届けた印に姫の左の耳を切り落として去っていった。
*次第に島は水没してゆき、姫は進退窮まってただ死期を待つのみとなってしまった。
*島の頂上に立って悲嘆の歌を歌ううちに、海水は姫の膝まで届くほどになり、最早これまでと覚悟を決めた。
*するとその折、大きな亀がどこからともなく現れ来ると、姫の前にぽっかりと甲羅を浮かせた。そして、背中に乗れとばかりに頭をもたげて控えている。
*チンリウ姫は、これこそ神の助けと亀の背中に乗ると、亀は荒波をくぐりつつ南へ南へと泳ぎ始めた。
*姫は海亀の助けに感謝し、またこれまでを述懐するうちに、敵国の王妃になったセンリウの身の上に憐れを催し、自分の身魂が汚されずに済んだことに感謝を覚えた。アララギの悪計も、結果として自分の操を守ることになったことに思いを致していた。
*亀はイドム国の海岸を指して海を泳ぎ渡り、イドム国真砂ヶ浜に姫を下ろした。チンリウ姫が感謝の歌を歌うと、亀は二、三度うなずいて海中に姿を消した。
*真砂ヶ浜は月光山の西方の峰伝いに位置し、丘陵が迫った森林地帯であった。姫は、現在父母が月光山に篭もっているとは夢にも知らず、ただ木の実を探ろうと、不案内のまま森林深く忍び行ることとなった。
[拝読箇所一覧] [愛読会の紹介] [オニ(王仁)の道ページ]