とよたま愛読会93回(天祥地瑞:77巻 序文〜6章「田族島着陸」)
 
       記望月幹巳       メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成16年6月27(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語  天祥地瑞 卯の巻 第77巻 序文〜6章「田族島着陸」

★ 報告
 盛夏の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います。物語は、朝香比女の神の旅が続きます。国津神・狭野彦を共に従えた朝香比女は、曲津神たちの妨害を退け平定しつつ原野を進んでいきます。万里(まで)の海に出たところで、主の大神より使わされた、五柱の天津神たちと合流し、旅の仲間を得ます。  航海の途中にも、八十曲津神の攻撃を受けますが、そのたびに言霊で曲津神たちを打ち破り、ついに田族の島へと到着します。
  さて、七十七巻の序文ですが、今回は少し趣が変わっており、聖師様による大和魂についての一論文となっています。当時の時代背景を色濃く映した論調ですが、聖師様の和魂洋才論や自由についての考え方など、たいへん興味深い内容となっています。 できるだけ現代語にして意味を追いながらまとめてみましたので、物語の原文と照らしつつ、玩味していただきたいと思います。

★ 拝読箇所で気のついたこと
第七十七巻 辰の巻
序文

 * 各国には、その国に合った建国の精神があるように、日本には固有の大和魂というものがある。

 * 吾(出口聖師)は、明治三十一年より、その大和魂の宣揚に努めてきた。今、大和魂を奉じる団体が沢山現れてきたことは、喜ばしいことである。

 * 東方に位置し、万世一系の国家として他に類を見ない日本国とすれば、自身が持っている国民精神=大和魂に基づいてこそ、日本の文化文物の特異性を世界に訴え、賞賛を受けることができるのである。

 * 今日、大和魂を発奮して国民が覚醒しなければ、その輝きも徳も失われてしまう、と叫ぶ向きもあるが、堅固で純粋な大和魂はそう簡単に消えたり磨り減ったりするものではない。むしろ、常に明るく澄んで、磨かれつつ光を放っているのである。

 * では、大和魂がどのようなものであるかというと、忠孝、信義、友愛、大侠、義勇、正義、自由、それぞれが、純真な意識的行動によって、発現される=大和魂なのである。

 * 日本の比類ない国体を護り、国家を支持する精神はすべて、このような国民性が持っている、誇りと矜持なのである。それこそが、日本人の国民性のみが占有する、独占的な特質なのであり、他のいかなる国民も、真似をしたり奪ったりできないところである。

 * たとえて言えば、これは大和魂が約束する、絶対に侵すことの出来ないひとつの手形である。もしもこの手形を手放す者があるとすれば、大和魂=国民的精神は奪い去られ、精神的財産は跡形もなく消えうせるということになる。

 * 現代日本に生を受け営みつつ、これを手放す精神的亡者があるとすれば、それは日本精神を賊し冒涜するものであり、筆者としては心外千万の沙汰である。

 * 顧みて、欧米の文明が日本(精神)に何をもたらしたか。理知や物質的・機械的なものは先走り、上滑るほどに盛りだくさんであった。欧米文明の心酔者は、それに幻惑され、愛溺し、重宝がった。その結果残ったのは、思想の偏りと荒廃くらいなものである。そんな状況の中、ややもすれば、この思想の変遷を助長し促進して、とんでもない方向へ脱線し奔放をほしいままにする一部の国民さえ現れたのである。

 * 基本的に、欧米文明の長所を取り短所を大和魂で補う、ということの正しさは、いかに古臭い学者といえども、もはや否認する道理もない。しかし、短を補うのではなく、あまりに長所を盲信し、機械と物質のロボットと化してしまったことによって、脱線・奔放をほしいままにする「似非自由主義者」という怪物が、のさばり出すようになってしまった。

 * つまり、常軌を逸した状態が、ただ政治や経済組織の上に見られるだけでなく、人間の思想の上にも存在するようになってしまった。まことに呪わしい世相・人間世界となってしまったのである。

 * 具体的に、どのような異常状態が、現在の人間精神にあるかと言うと、欧米文明をあまりに広範に取り入れてしまった結果、欧米文明の長所が本来どこにあったか、という指標が狂ってしまった。そうして終に、脱線し歯止めがなくなり、ありのままの姿をさらけ出してしまった。その結果が左翼化、共産主義化である。

 * 左翼・共産主義が、資本主義の是正を叫び、統制経済の確立を叫ぶのは、既存の組織のあり方を正すという点では、一つの努力とみなすことはできる。しかし、大局的に大きく物事を見たときに、果たしてそのような方向で大和魂は、発揚したり、その豊かな味わいを発揮したりできるのだろうか。

 * 左翼的・共産主義的な是正ではなく、先祖に報い始めに返る精神で是正をしていかなければ、日本の国民精神は滅亡してしまうかもしれない。

 * このような事態の中、皇国日本の真の精神と、天壌無窮の皇室の尊厳とをあまねく国民に現し、そうすることで、この非常時に直面している国民同胞を迷いから醒ますために、『天祥地瑞』の神書を著したのである。東洋、特に日本の天地開闢・宇宙創造説を、西洋諸国と比べて見ても、海外のものは根拠のない神話物語であり、これを見ても非文明的である理由がわかるであろう。

 * さて、この巻は、八柱の御樋代神の一人、朝香比女神が、スウヤトゴル山で太元顕津男の神と再会し、英雄的活動により大曲津見を言向けやわし、新しい国土を経営し国魂神を生み出でますという、紫微天界での大活動の序幕の物語である。

 

 第一篇 万里(まで)の海原
第一章 天馬行空(一九三三)

 * 八十曲津の神たちは、真賀の湖水の計略を朝香比女に破られ、あべこべにその多くが魚貝に姿を変えられてしまい、国津神たちの食料と定められてしまった。そのため何としても比女を陥れようと、高千秀山の峰より流れる東河の岸辺に、無数の大蛇となって、比女を待ち構えていた。

 * 朝香比女はつらつらと透かして見れば、東河の水面一帯に大蛇が横たわり、その鱗に月光が輝いているのが見えた。

 * 従者の狭野彦は、そうとは気づかず、麗しき河の流れと思って歎美の歌を歌い、瀬踏みをしようとした。

 * 朝香比女はそれを厳しく押し止め、言霊歌によってその危険を明らかにし、知らせた。すると、四方八方よりウーウーウーとウ声の言霊が響き渡り、川面に群がり塞いでいた幾千万の大蛇は、次第次第に姿を細め、消えてしまった。

 * 狭野彦は驚いて、朝香比女の言霊の威力をたたえる歌を歌った。

 * 朝香比女はそれに答えて、大河の水が強く馬では渡りかねるので、大空を駆けて河を渡ろう、と歌った。

 * 狭野彦は驚いて、国津神である自分が、どうやって空を飛べるのですか、と歌で問うた。すると、空中に歌で答える神があり、鋭敏鳴出(うなりづ)の神であると名乗り現れた。

 * 高千秀宮の神司である鋭敏鳴出の神は、ひそかに朝香比女に随行してその行く手を守っていたのであった。朝香比女は感謝の歌で迎えた。鋭敏鳴出の神は、曲津神の砦が多くあることを注意すると、再び姿を消した。

 * 朝香比女は、タトツテチの言霊によって自分と狭野彦の馬に翼を生じさせ、いとも簡単に広河の激流を渡った。狭野彦は天津神の活動を目の当たりにし、驚嘆の歌を歌った。

 * 朝香比女は鋭敏鳴出の神の加護を感謝し、一方狭野彦は、天津神の功徳に心を勇み立たせ、二人は霞が立ち込める国稚原を進んで行った。

 

 第二章 天地七柱(一九三四)
 * 狭野彦は朝香比女の神の言霊と鋭敏鳴出の神の守りの功徳をたたえる歌を歌い、朝香比女はそれに答える歌を歌いつつ進んでいた。

 * 一行は、八十曲津神の住処である霧の海の岸辺に到着した。するとそこには、主の大神の神命により比女の征途を守りたすけるべく、待ち迎える五柱の神があった。初頭比古(うぶがみひこ)の神、起立比古(おきたつひこ)の神、立世比女(たつよひめ)の神、天中比古(あめなかひこ)の神、天晴比女(あめはれひめ)の神である。

 * 一行は、霧の海の曲津神たちは数多く、比女を守り助けるためにやってきたと名乗った。朝香比女は、神々のいさめを踏みにじって飛び出してきた自分を助けにやってきた神々に感謝の歌を歌った。

 * 神々はそれぞれ自己紹介の歌を交し合い、朝香比女をはじめとする六柱の天津神に、狭野彦の一柱の国津神を加えて、一同霧の海の岸辺に生言霊をおのおの奏上した。すると、たちまちあたりの巌は大きな舟となって、岸辺に浮かんだ。

 * 神々は駒とともに舟に乗り移り、よもやまの話に一夜を語り明かした。

 第三章 狭野の食国(おすくに)(一九三五)
 * 七柱の神々は、舟の中で語り明かすうち、東雲近くになって、海鳥のさえずる声が響き渡り、またときどき鷲の声が神々の耳をそばだてさせた。

 * 一行はそれぞれ、霧の海に東雲の空が明けていく様子を見て、これからの旅立ちに心を新たにし、曲津神との対決に心を引き締める述懐の歌を歌った。

 * 天晴比女は、言霊によって霧の晴れたこのとき、海原を進んで、大蟻の住むという魔の島々にこぎ寄せて上陸しよう、と歌った。

 * すると不思議にも、舟は櫓も櫂もないのに、自然に海原を進んで行った。神々がおのおの歌を歌いあう間に、数十里の波を渡って、船は魔の島近くにたどり着いた。

 * 朝香比女は、魔の島を間近に眺め、舟を止めて島の様子をうかがっていたが、馬よりも大きな蟻が数十万も群がっている様子を見て、魔の島よ海に沈め、蟻よ消え失せよ、と言霊歌を歌った。蟻はこの歌を聞いて驚き、前後左右に島を駆け巡り始めた。

 * さて、実はこの魔の島は八十曲津神が地中に潜んで、頭だけを水上に浮かせたものであり、蟻はその頭にわいた虱であった。

 * 朝香比女が「島よ沈め」と歌った言霊も、一時は何の効果もなく、曲津神はますます狂い立って島は高く浮き上がった。そして、曲津神の巨体が水上に浮かび上がり、目鼻口が不規則に並んだ顔は雲よりも高く、膝まで海中につかった巨大な姿を現した。

 * 不規律な歯並の口から発する笑い声は、雷が百も同時に鳴ったかのようであった。そして、朝香比女をののしりあざ笑って、巨大な口から唾を四方八方に吹き散らした。一滴でもこの唾に触れると、全身が固着して、手も足も動かせなくなってしまう。曲津神の魔術を尽くした奥の手であった。

 * 朝香比女の神は少しも恐れた様子なく、天の数歌に続いて、曲津神を巌に固め、蟻虱を土とする言霊歌を歌った。すると、八十曲津神の巨体は、そのまま海中に巨大な巌島と固められてしまった。

 * 従者神たちは朝香比女の言霊の神徳に驚きたたえる述懐歌を歌った。この巌島は、周囲百里に余る、相当に大きな島であった。天中比古の神は、狭野彦を助手として草木の種を蒔き、島の経営に当たりたいと、朝香比女に申し出た。朝香比女はこれを了承した。

 * 天中比古は、生言霊によって草木五穀を生み出した。こうして狭野の食国が出来上がり、天中比古は永遠に鎮まることとなった。

 

 第四章 狭野の島生み(一九三六)
 * 神々は、朝香比女の功に魔の島がたちまち豊かな島に変わったことを賛美する歌を歌った。

 * 朝香比女により、この島は狭野の島と名づけられた。狭野の島の経営を共に任せられた狭野彦は、国津神たちをこの島に移住させて、清き神国を造ろうと、豊富を歌った。

 * 朝香比女は、天中比古と狭野彦をこの島に残し置き、四柱の神々ととみに霧の海を順風に送られ、南へ南へと進んで行った。

 

 第五章 言霊生島(一九三七)
 * 朝香比女一行の乗った舟は、櫓も櫂もないまま、島々を右に左に潜り抜け、周囲百里の大きな狭野の島も、いつしか後に見えなくなった。

 * 朝香比女は、狭野の島を任せてきた天中比古、狭野彦を名残惜しみつつ、海を渡って進み行く決意を晴れ晴れと歌った。

 * 従者神たちも、それぞれ朝香比女の大曲津神退治の功績をたたえ、海原の旅を楽しむ歌を歌って順調に進んでいた。

 * 日も傾く頃、海風が起こり、荒波が立ち、舟を左右にゆすり出した。天晴比女の神は、この風は曲津神の仕業であろうと見抜くが、舟は荒波の間を木の葉のように翻弄されつつ漂うほどとなった。

 * 朝香比女は平然として歌を詠み、浪に対して、巌となり島となれ、と歌いかけた。すると不思議にも、猛り狂っていた波は、たちまちのこぎりの歯のような険しい巌山となり、あわ立つ小波は砂となって、一つの島が生まれた。

 * 一行は朝香比女の不思議をたたえ、また言霊の威力を、鋭敏鳴出の神の功徳としてたたえた。神々はおのおの述懐歌を歌いつつ、はるか空にかすむ白馬ヶ岳方面さして、船のへさきを向けて進んで行った。

 

 第六章 田族島(たからじま)着陸(一九三八)
 * 海はたそがれ日は落ちてきた。神々は述懐歌を歌っていたが、なんとはなしに寂しき道中に、起立比古はつい弱音を吐くが、立世比女に諭されて宣り直し、夜の海の美しさをたたえる歌を歌った。

 * 朝香比女は、起立比古の言霊に万里の海原もよみがえり、輝きを取り戻したと喜び、夜の航海を楽しんだ。

 * そうするうちに、白馬ヶ岳の麓に舟は着いた。この島は、万里(まで)の島と言い、万里の海の島々の中で、もっとも広く土の肥えた素晴らしい島であった。

 * 万里の島には、幾千万ともなく野生の馬と羊が住んでおり、またこれまで誰も国津神が住んだことのない、田族(たから)の島であった。

 * 朝香比女の神一行は、舟を磯につないで島に登って来ると、たくさんの馬・羊は先を争って、白馬ヶ岳の麓をさして逃げていった。一行は、天を封じて立っている大きな楠の陰に憩いながら、おのおの述懐の歌を歌った。

 * 住むものもなきこの島に白駒がいななき、野も開かれているのを見て朝香比女は、御樋代神の一人、田族(たから)比女神がこの島を統べていることを悟った。

 * 神々が述懐歌を歌ううち、いずこよりか白駒にまたがった神が現れ、輪守比古の神、若春比古と名乗った。そして二柱の神は、田族比女の神の神言により、朝香比女一行を迎えにきたことを告げた。

 * 一同はひらりと駒に乗り、月の照る夜半の野路を、くつわを揃えて田族比女の館へ進んで行った。

以上   [前回レポート] [次回レポート]


[拝読箇所一覧] [愛読会の紹介] オニ(王仁)の道ページ