とよたま愛読会96回
 (天祥地瑞:辰の巻 78巻 序文〜6章「
焼野の月」

 
                     記望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成16年9月26(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語  天祥地瑞 辰の巻 第78巻 「序文」〜 6
焼野の月

★ 報告
 菊薫る候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います。第
96回とよたま愛読会のご報告をお送りいたします。

物語は、朝香比女が万里(まで)ヶ島を旅立ち、グロスの島へとやってきます。二大曲津神、グロス、グロノスが巣くうこの島を祓い清め、島の御樋代神・葦原比女と邂逅しようと、一行はまず、曲神の隠れ場となっている萱草・葦の大原野を、天の真火で焼き清めます。
焼き清められ、曲神を追い払った原野を進む一行は、思いがけず、先住する国津神たちの村にたどりつきます。国津神たちは十年前、他の島からここに移住し、忍ヶ丘の真鶴が巣くう松を神とあがめて、曲神の圧迫に耐えつつ生き延びていたのでした。国津神たちは、真火で曲津神を追い払い、また火傷を負った老母をたちまち癒した朝香比女の神力に感じて、主の大神を真の神として祭ろうと誓います。翌日、朝香比女の神一行は、真火から逃げた曲神たちが潜む、醜の沼に征途の旅に出かけていきます。
今回の物語では、万里ヶ島のエピソードに続いて、松に巣くう真鶴という主題が登場しています。万里ヶ島では、真鶴はもともと島を治める動物の長として降されたが、統治の力なく、補佐役の猿に実権を奪われていました。そして、田族比女ら天津神による万里ヶ島の国固めの後は、象徴的な地位にのみとどまることとなっていました。
ただ厳かで優美なものというだけで神と崇められていた真鶴には、曲津神を糾し事態を収拾する力はありませんでした。真鶴は象徴にとどまるものであり、真に統治の資格を持つのは御樋代神、そして主神を祭ることこそが正しい道である、ということが再度語られ示されました。 さまざまな解釈ができるでしょうが、骨子としては、主の大神を起源とする霊統こそが正しい統治を可能にする、ということではないでしょうか。そしてそのことは、権威や荘厳さではなく、悪を正し正義を行っていく行為によって示される、ということが示されているように思います。

 

 

★ 拝読箇所で気のついたこと
序文
皇国日本の国体は、万世一系の天皇が統治する、神聖無比の神国である。天皇は神聖不可犯であり、天立君主である。また唯一絶対にして宇宙の中で対立するものは何もない。憲法は、君主立憲制である。日本の天皇は宇宙絶対であるので、時がくれば、必ず宇宙を統一するお方である。いかなる強国であっても、横暴であれば押さえつけなければならない。いかなる弱小国であっても、正義ならば、助けなければ成らない。

このように、まったく造化の心持で宇宙を生成化育することが、日本天皇の心持なのである。だからこそ、皇道においては、君と臣下は対立するものではない。皇道が、絶対唯一のものであることができるのである。忠孝といっても、日本の忠孝は、絶対の大忠・大孝でなければならないのである。

私は、このような尊い天津日嗣天皇が君臨されている日本に、安全に生を送ることができることの大恩を感謝しなければならない。そして、皇道の大本源にさかのぼり、その真相を明らかにして差し上げることは、われわれ臣民の一大義務なのである。

この物語も、あまりに広範にわたるので、簡単には諒解しがたいうらみはあるけれども、宇宙の大本、皇道の本源を大本信徒に理解させることができるよう、神務のひまを見て著述し、天神地祇に祈願を怠らず、発行する次第である。

 

第一篇 波濤の神光
第一章 浜辺の訣別(一九五七)
 万里(まで)の大海原に浮かぶ万里の島は、面積八千方里。豊葦原の瑞穂の国の発祥地である。

八十曲津神がこの島に発生し暴威を振るっていたが、八十御樋代神の一人、田族(たから)比女の神が、主の神の命により十柱の女男の神将を率いて荒ぶる曲津神たちを追い伏せ追い払った。

その後、やはり御樋代神である朝香比女の神が万里の島を訪れ、国の形が改まり、また曲神の恐れる天の真火の火打石をもたらした。

この巻では、その後太元顕津男の神が西方の国を治め、朝香比女に国魂神の養育を任せて万里ヶ島に降り立ち、田族比女の神と御水火をあわせて国魂神を生み、再び高照山北面の稚国原を修理固成するべく進んで行く、その大略を示す。

朝香比女の神とその従者神男女四柱の神々が、万里ヶ島を立ち去ろうとすると、田族比女の神は十柱の神々を率いて御来矢の浜辺まで見送り、別れの歌を互いに交わした。

朝香比女は、万里ヶ島の栄を祈り、顕津男の神に出会えたら、田族比女のことを伝えようと歌った。また、天の真火によって国を守るように諭した。

田族比女以下、みな朝香比女への名残おしさと天の真火を賜ったことへの感謝を歌った。

田族比女の従者神、直道比古は、せめて西方の国の国境まで、朝香比女一行を遅らせてくれるようにたのんだ。しかし朝香比女は、残って万里ヶ島を守るように諭した。

一同はさらに訣別の歌を交し合い、朝香比女の神と四柱の従者神は、駒とともに磐楠船にひらりと乗り移れば、すがすがしい陽気に満ちた風がたちまち吹いて来て、櫓や櫂を使わずに、舟は海上に静かに動き出した。

 

第二章 波上の追懐(一九五八
 朝香比女の神が乗った磐楠船は、薄霞たなびく初夏の海原を、悠々としてたどって行った。

田族比女の神一行は、名残惜しみつつ、船が見えなくなるまで見送り、歌を歌った。

田族比女は、朝香比女の諭しに万里ヶ島の経営に思いを新たにし、また朝香比女の御魂を祭る宮居を立てることを誓った。

従者神たち一同も、それぞれ別れの歌を歌った。

船が見えなくなると、一行は万里の聖所に戻ってきた。そして、さっそく火の若宮の工事に取り掛かったが、十日ほどで荘厳な若宮が完成した。

湯結比女の神はこの火の若宮に仕えて、主の神と朝香比女の神の生魂に、沸かした白湯を笹葉にひたして左右左に打ち振り御魂を清め、湯を奉って、まめやかに仕えた。

これより今の世に至るまで、神社には御巫(みかんのこ、神事に奉仕する未婚の女性)というものがあり、御湯を沸かして神明に奉ることとなった。

一方、朝香比女の神一行は、田族比女の神一行に別れを惜しみ、振り返り振り返り手を上げて歌を歌いつつ、進んでいった。

 

第三章 グロスの島(一九五九)
 紫微天界はまだ国土が稚く、国の形も完全には定まっていなかったので、あちこちに妖邪の気が凝り固まって、種々の異様の動植物を生み、それがまた妖邪の気を四方に飛散させていた。

主の大神は、完全無欠の神の国を開設しようと、天之道立の神、太元顕津男の神の二柱に、霊界現界の神業を委任した。

天之道立の神は惟神の大道を宣布し、顕津男の神は国土を治める司神を造ろうと国土を巡った。

邪神の中には、数個の頭を持った竜や大蛇がおり、翼の生えた虎、狼、熊などが水陸両面に住んでいるものもおり、容易に正しい神の経綸を許さなかった。

そこで、主の大神は、これらの妖魔を根底的に言向け和し征服全滅しようと、英雄的な資質を持った神々を、紫微天界の四方に派遣していた。

御樋代神はすべて女神であったが、みな優美な姿とはうらはらに、勇猛剛直で神代の英雄神のみが選ばれていたので、その行動が雄々しいことは何も不思議なことでないのである。

朝香比女の神の乗った磐楠船は、日のたそがれるころ、曲津神が集まるというグロスの島に近づいた。曲神の島は、突然黒煙を四方に吹き散らし、海面を闇に包んで船さえも見えないほどになってしまった。

このグロスの島には、ゴロス、グロノスという二大曲津神があり、数多の醜神を使役して、隙あらば他の島を侵そうとかまえていた。

御樋代神の船が島に近づいてきたので、ゴロス、グロノスはあらゆる曲神を呼び集め、必死に船が近づくのを妨害しようと猛り狂っていた。

朝香比女の神は、いかに曲神が抵抗しようとも、真火と言霊により、征服しよう、と歌った。そして、闇が近づく黄昏時を避けて、明日の朝を待った。

すると、グロスの島から沸き立つ黒雲は次第次第に雲の峰が湧くように膨れ広がり、あたりの海面を真の闇と包んでしまった。そして、青白い火団が、船の周囲を蛍合戦のように飛び狂い、凄惨の気が漂ってきた。

朝香比女は少しも驚かず、平然として曲神の業を眺めながら、歌を歌った。最後に天晴比女の神が天の数歌を歌い、大空の月をあらわして曲神を照らし現そう、と歌うと、黒雲は風に吹き散らされ、天空に明るく清い月影が浮かび照らした。

グロノス、ゴロスは夜が明けるまでに船を滅ぼそうと死力を尽くし、長大な竜蛇の姿を現し、剣のような角をかざしながら、船に向かって火焔を吐いた。

朝香比女の神は平然として微笑みながら、暁まではこの船に休み安らう、と歌った。

各神々は、グロスの島に向かって明日の征途を楽しみながら歌を歌い、眠らずに船の上に安座して、さまざまなことを面白おかしく語り合い、夜明けを待っていた。

 

第四章 焼野の行進(一九六〇)
 
東の空がようやくしののめて、日が上ってくると、真鶴の声、カササギの声が冴えて、朝香比女の一行を迎え出るごとくであった。

朝香比女の神は船を巌が並んだ浜辺に寄せると、一行は駒に乗って上陸した。そこは、萱草、葦がぼうぼうと道なきまでに生い茂った原野であった。一同は、この草原が曲神の隠れ家になっていると見て取った。

朝香比女の神は、この草原に真火を放って清めようと、初頭比古の神に命を下した。初頭比古の神は火打石を受け取ると、神言を奏上しつつカチリカチリと打ち出せば、枯草に真火は燃え移った。

おりしも、海面より激しく風が吹いてきて、火は四方八方にみるみる広がっていった。幾千里の大原野は見る見る黒焦げになり、竜、大蛇、猛獣等の焼け滅びた姿が無残の光景をとどめた。神々はそのなきがらを土中に埋め、数多の月日を費やした。

グロノス、ゴロスは鷹巣の山を指して逃げ去った。朝香比女の神は、焼き清めたこの大野原に、国魂神を移住させて島を拓こう、と歌った。

一同は、真火のいさおしをたたえ、大野原から曲神を追い払ったことを喜んだ。グロノス、ゴロスの逃げた行方を気にしつつ、この島に住むという御樋代神・葦原比女の神をたずねて、一行は進んでいった。

 

第五章 忍ヶ丘(一九六一)
 朝香比女の神一行は、果て無き焼け野が原を馬にまたがって進んでいった。すると、野原の真中に小さな丘があって、常盤木の松が数千本、野火に焼かれず青々と残っていた。

一行はここに長旅の疲れを休めようと馬をつなぎ、丘の上から大野が原の国見をした。すると、いづこからともなく、悲しげな声が次々に聞こえてきた。

朝香比女は、四方を見回しながら、歌を歌い、自分は天津高宮からやってきた御樋代神であるから、心安く姿を現すように訴えた。

すると、丘の南側を穿って住処にしていた数十の国津神たちがつぎつぎに現れて礼拝した。

国津神たちは、グロノス、ゴロスに虐げられ、穴に住んで日々を送ってきたのであった。

国津神の野槌彦は、このたびの野火に曲神は逃げ去ったけれど、母が火に傷つけられ苦しんでいる、と訴えた。

朝香比女は憐れに思い、野槌彦が背負ってきた老母に天之数歌を歌い息吹いた。すると、焼け爛れた老母の頭部顔面は元に戻り、髪は黒くよみがえった。

老母と野槌彦は喜び、朝香比女に感謝の歌を歌った。朝香比女の神は、いかに曲津神の禍が強くとも、天の数歌の言霊で祓うように諭した。

野槌彦は喜んで、かつてはこの丘の鶴の休む松を神として祭っていたが、これからは主の大神を斎き祭ろう、と誓った。

野槌姫は、この丘は忍ヶ丘といい、国津神一行は十数年前に竜の島というところから、やはり曲津神を避けてやってきたのだが、再び曲津神に侵されてしまっていたのだ、と由来を語った。

初頭比古は、このような荒れた曲神の島に国津神たちが先住していたことにき、この島の御樋代神・葦原比女の行方を慮った。そして、忍ヶ丘からはるかに眺めて、沼を見つけた。

野槌彦は、あの沼こそ大蛇が棲む沼であり、黒煙を朝夕吐き出しているのだ、と歌った。そして、神々一行に大蛇の征服を願った。朝香比女は、もう夕方に近いので、征途を明日に定めて国津神たちの館に休むこととした。

野槌彦は、真鶴が巣くう松だけ残して、他の松を柱にして、忍ヶ丘のいただきに主の神を祭る宮居を造ることを誓った。

 

第六章 焼野の月(一九六二)
 
国津神の村に一夜の宿を取った神々は、どことなく心が勇んで眠られず、焼野原をあちこち逍遥しながら、月を仰いで歌を歌っていた。

一同は、グロノス・ゴロスを追い払った月夜の美しさ、明日の曲神征途への抱負、顕津男の神の功の賛美、旅の述懐などを歌に歌った。

朝香比女の神はしづしづと現れ、明日の征途を前に眠れぬ神々たちをなだめる歌を歌った。最後に、野槌彦がおそるおそる一行の前に現れ、明け方も近いので、どうか床に入って休むよう一同に勧めた。

やがて夜が明けると、神々は国津神の歓呼の声に送られつつ、はるかの野辺に見える醜の沼をさして、馬上静かに進んでいった。


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