とよたま愛読会115回
特別篇 入蒙記 (附)入蒙余禄 と 霊界物語1巻 〜15」    
[前回へ] [次回 へ]
                 記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成18年4月23(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語  
特別篇 入蒙記 (附)入蒙余録  と 霊界物語 霊主体従 1巻 子の巻 〜15

★ 報告
特別篇の入蒙記が終わり、第一巻に入りました。入蒙記もさることながら、第一巻は教えの創立のいきさつが書かれている非常に重要な巻です。じっくりと内容を追いながら拝読していきたいと思います。

 

★ 拝読箇所で気のついたこと

河草木 特別篇 入蒙記
[附]入蒙余禄

 大本の経綸と満蒙(昭和七年二月四日 みろく殿における講演 − 三月号『神の国』誌)
  * いよいよ大本は開教四十周年を迎えることになりました。

  * 教祖のお筆先には、三十年で世の切り替えをするが、あまりに乱れがひどいので、それが十年延びた、とあります。
   そうしてみると、ちょうど今が立替建直しの時期になったと信じます。

  * 満四十周年に、神様からかねてご警告になっていた、シベリヤ線を花道とするということがいよいよ実現して来ました。

  * この事があることは神様から聞かされておりましたので、蒙古を独立させておこうと、大正元年ころから馬の稽古をし、準備をしていました。

  * それが大正十三年に年来の意思を決行したのです。
   ジンギスカンの挙兵から六百六十六年目に、日いずる国から生き神が出て国を救う、という蒙古の予言と符合したために、最初は思いのほか事が進みました。


  * ところが張作霖の裏切りに会って、危うく銃殺されようというところにまでなりました。
   当時の人々や信者は、大変な失敗であったと感じたのであります。


  * 今、皇軍が連戦連勝でほぼ東三省を平定したのですが、先の蒙古入りが種まきとなって、時がめぐってきています。
   というのも、武力で平定したとは言え、結局民衆の心をも服従させるのには、宗教をもって行うしかないからです。


  * 国によって垣根を作っていた、その出雲八重垣を破るのには、人類愛善の精神が必要です。
   すでに先般、満州へ日出麿を派遣しており、また自身も満州へ行って活動したいと考えております。

  * 先に蒙古入りしたときは、とにかく先鞭をつけて、日本国民に満蒙の意義を意識させておかねばならない、ということでした。

  * しかし今は、日本国民全体が、鉢巻をして多いに考え、尽くさなければならないときが来ています。
   世界の戦争が起き、日本は世界を相手に戦わなければならない、という悲壮な覚悟をするときであると思うのであります。
 

世界経綸の第一歩(大正十四年一月二十五日号『神の国』誌)
  * いよいよ本年は十二万年に一度の甲子の年です。
   これまでは魂磨きの時代でありましたが、いよいよ挙国一致して事に当たらなければならないのであります。

  * 神諭に「誠の分かった役員三人あれば立派に神業が完成される」とあるように、役員三人の心が合いさえすれば、それが元になって正義の団体が固まり、どんなことでも成就するでしょう。

  * 大正十三年は甲子の年であり、神様の仕組まれた世界経綸の始まりとして、三人の役員を連れて、蒙古入りを始めたのであります。

  * 少なくとも一ヵ年は帰国させて下さらないと思っていましたが、百二十六日で日本に再び帰ることになったのは、神界の思し召しがあることで、大本がまだ統一していないため、まずこれを統一して世界の経綸に着手すべく仕組まれたものと考えます。


  * 蒙古から帰国後、過去の陋習を廃し、適材を適所に配してできるだけ新しい空気を作るように勤めましたので、みなそれぞれ助け合って御神業が完成するように努めてほしいものです。
 

蒙古建国(昭和七年十月十五日 十月号『昭和』誌)
  * トール河畔の森林深くに馬を駆って遊んでいた聖師、松村、萩原、白凌閣、温長興らは、新緑の萌える川辺に大きな館が並んでいるところにやってきた。

  * 白凌閣を通訳として訪ねてみれば、これはこの辺りに勢力を張る女馬賊・蘿龍(ラリウ)の館であった。

  * 日本から来た聖者の一行であると伝えると、蘿龍は聖師を導き、日本語で身の上を語りだした。

  * 蘿龍の父は日本人であり、日清戦争のときに台湾からやってきた人で、蘿清吉(ラシンキツ)と名乗っていた。
   母は蒙古の人であった。
   父は三千騎を率いて蒙古独立軍に参加したが、張作霖の姦計に欺かれて殺された、という。

  * 一行は歓迎されて館に宿泊した。蘿龍は聖師と行動を共にすることを誓い、別働隊となって働いた。

  * しかし、聖師一行がパインタラで敗れたことを知ると、蘿龍の別働隊は南県を襲って敵を討とうとしたが、ついに捕らえられて処刑された。
 

蒙古の夢(大正十三年十二月十日号『神の国』誌)
  * その昔、蒙古の英雄が十万の兵をもって神国日本を脅かしたが、伊勢の神風の佑助により、退けられた。

  * 日本の武人の功にはあらず、主上の祈願の結果、神明の御加護があったのであり、われらの祖先の一大侮辱とも言うべき事件であった。

  * 日本男子の気骨を示し、歴史の汚点を払拭するため蒙古に進出しようという思いは、少年のころから持っていた。
 

  * 徒手空拳、三人の同志と共に万里遠征の徒に上った。
   蒙古の大原野に三軍を叱咤して雄図に就いたが、敵軍のために帰国のやむなきに至った。されど吾は再び。
 

 

霊界物語 第一巻

霊主体従 子の巻

* この『霊界物語』は、天地が分かれてから天の岩戸開きの後、神素盞嗚命が地球上にはびこっていた八岐大蛇を寸断し、叢雲(むらくもの)宝剣を天祖に奉り、至誠を天地に表して五六七神政を成就し、松の世を建設し、国祖を地上霊界の主宰神とした、太古の神代の物語と、霊界探検の大要を略述した。

* また、苦集滅道、道法礼節を開示した。決して現界の事象を寓意的に著したものではない。

* しかしながら、神幽界の出来事は、現界に現れ来るのであり、これをもって心魂を清め言行を改め、霊主体従の本旨を実行することを希望する。

発端
* 自分は明治三十一年旧二月九日、神使に伴われて丹波穴太の霊山高熊山に、一週間の霊的修行を終えた。

* それより天眼通、天耳通、自他神通、天言通、宿命通の大要を心得し、今日あるように神明の教義を明らかにするに至るまでには、ものすごい波瀾と曲折があった。

* 自分はただ、開教後二十四年間のいきさつを、きわめて簡単に記憶より呼び起こして、その一端を示すにとどめる。

* 竜宮館には、変性男子の神系と、変性女子の神系と、二大系統が、歴然と区別されている。

* 変性男子:
 ・変性男子は神政出現の予言・警告を発し、苦労を重ねて神示を伝達し、水をもって身魂の洗礼を施し、救世主の再生・再臨を待っておられたのである。

 ・救世主に対面するまで、ほとんど七年の間、野に叫びつつあった変性男子の肉宮は、女体男霊である。

 ・五十七歳で厳の御魂の神業に参加し、明治二十五年の正月元旦から同四十五年の正月元旦まで、満二十年の水洗礼で現世の汚濁した現界・神界に洗礼を施し、世界改造の神策を顕示した。

 ・かの欧州大戦乱も、厳の御魂の神業発動の一端であり、世界の一大警告であった。

* 変性女子:
 ・変性女子の肉宮は、瑞の御魂の神業に参加奉仕し、火をもって世界万民に洗礼を施すという神務を担っている。

 ・明治三十一年の旧二月九日をもって神業に参加し、大正七年二月九日をもって、満二十年間の霊的神業をほとんど完成した。

 ・物質万能主義、無神論、無霊魂説に心酔する体主霊従の現代も、やや覚醒の域に達し、神霊の実在を認識する者も次第に多くなってきたのは、神霊の偉大な神機発動の結果であり、決して人智・人力の致すところではない。

* 変性男子の肉宮は、神政開祖(ヨハネ)の神業に入り、二十七年間、神筆を揮って霊体両界の大改造を促進し、今は霊界に入っても、その神業を継続奉仕されつつあるのである。

* 変性女子は三十年間の神業に奉仕し、もって五六七神政の成就を待ち、世界を善導することにより、神明の徳に浴せしめる神業を担っている。

* 神業の参加以来、本年をもって二十三年になるが、残る七年間こそ、もっとも重大な任務遂行の難関である。

* というのも、神諭には『三十年で身魂の立替立直しをいたすぞよ』言われているが、大正十一年の正月元旦が変性男子の神業成就三十年であり、大正十七年二月九日が、変性女子の神業成就三十年である。

* 水洗礼によって、霊界と現界の両界の改造することが三十年、これはヨハネ(変性男子)の奉仕すべき神業である。
 霊魂の改造が、前後三十年を要する、という意味である。
 また、三十年というのは大要を示されたのであり、奉仕者の身魂の磨かれ具合によっては、期間が変更されるのもやむをえない場合もあるのである。

* 神諭の「身魂」とは魂のみのことではなく、身が物質界、魂が霊魂、心性、神界等を指している。
 すべて宇宙は霊が元であり、体が末となっている。

* 物質的現界の改造を断行されるのは、国祖大国常立神であり、精神界・心霊界の改造を断行されるのは、豊国主神の神権である。


* 霊主体従の身魂=霊の本(ひのもと)の身魂:
 ・天地の立法にかなった行動を好んで遂行しようとする。
 ・常に天下公共のために心身をささげ、犠牲的行動をもって本懐とする。
 ・至真、至善、至美、至直の大精神を発揮する。
 ・救世の神業に奉仕する神や人の身魂。

* 体主霊従の身魂=自己愛智(ちしき)の身魂:
 ・私利私欲にふける。
 ・天地の神明を畏れない。
 ・体欲を重んじる。
 ・衣食住にのみ心を煩わす。
 ・利によって集まり、利によって散じる。
 ・行動は常に的が外れている。
 ・利己主義を強調して義務を弁えない。
 ・慈悲を知らない。
 ・心が猛獣のような不善の神や人の身魂。


* 天の大神は、最初の人体の祖として天足彦、胞場姫を造った。
 そして、霊主体従の神木に体主霊従(ちしき)の果実を実らせ、食べないようにと厳命したが、二人は体欲にかられて、命を犯して神の怒りに触れた。

* これにより世界には体主霊従の妖気が発生し、神人界に邪悪な分子が発生することとなった。

* 神がわざわざ天足彦と胞場姫を試すようなことをしなければ、邪悪も生まれなかっただろう、という人がいるが、神業は一度進むべき方向が定まったら、逆行したり審判を甘くしたりということは、決してないのである。
 神諭に『時節には神もかなわぬ』とあるのは、このことを示しているのである。


* 天地の剖判から五十六億七千万年を経て、いよいよ弥勒出現の暁となった。
 弥勒の神が下生して三界の大革正を成就し、松の世を顕現するためには、ここに神柱を立て、苦集滅道、道法礼節を開示し、善を勧めて悪を懲らし、至仁至愛の教えを布き、世の中が太平に治まるための天則を啓示し、天意に基づいた善政を天地に広げていく時期に近づいたのである。

* 私は、このような重大な時期に生まれて、このような神業に奉仕することを得ることができれば、これ以上の幸いはない。

* 神示には、『神は万物普遍の聖霊にして、人は天地経綸の司宰なり』とある。
 私は今このときでなければ、いつ天地の神業に奉仕することができるだろうか。いや、今しかないのだ。

* また、言霊の幸はう国、言霊の天照る国、言霊の生ける国、言霊の助ける国、神の造りしくに、神徳の充てる国に生をうけた、神国の人たちよ、あなた方もそうなのである。

* 神の恩の高く、深きに感謝して、国祖の大御心に報い奉らなければならない次第である。


第一篇 幽界の探検
第一章 霊山修行(1)

* 高熊山は上古は高御倉山と言った。開化天皇を祭った延喜式内小幡神社のあったところである。
 武烈天皇が継嗣を定めようとされたときに、穴太の皇子が高熊山山中に逃れ給い、やむなく天皇は継体天皇に御位を譲りたもうた、という故事が残っている。

* 高熊山には、古来『朝日照る、夕日輝く、高倉の、三ツ葉躑躅の其の下に、黄金の小判千両埋けおいた』というものである。
 自分は大正九年に登山して、ふと休息すると足元に三ツ葉躑躅が生えているのを見出し、はじめてその謎が解けたのである。

* 「朝日照る」:
  天津日の神の御稜威(みいづ)が、旭が昇る勢いで世界全体に輝きわたり、夕日が輝くというように、他の国々までも神徳が行き渡る黄金時代が来る、ということであり、この霊山に、その神威霊徳を秘めておいた、という神界の謎である。

* 「三ツ葉躑躅」とは、三つの御魂、瑞霊を意味する。ツツジとは、万古不易という意味の言霊である。

* 「小判千両埋けおいた」:
  大判は上を意味し、小判は下を意味する。
  判は確固不動の権力の意味である。
  また、小判は小幡でもあり、神教顕現地(こばん)ともなる。
  穴太の産土に、開化天皇を御祭神とする小幡神社が御鎮座されていたのも、畏れ多くも深い神策によることであると思われる。

* 自分が明治三十一年如月の九日、富士浅間神社の祭神・木花咲耶姫命の神使である松岡芙蓉仙人に導かれて、高熊山に一週間の修行を命じられたのも、決して偶然ではないと思われる。

* 神示のままに修行した自分の霊力発達の程度は、非常に迅速であり、過去、現在、未来に透徹し、神界の秘奥をうかがい知ることができ、また現界の出来事は数百年数千年の後までことごとく知るに至った。

* しかしながらすべては一切神界の秘密に属することであるので、残念ながら今日これを詳細に発表することはできないのである。

第2章 業の意義(2)
* 霊界の業といえば、深山幽谷に入って世間を出て、難行苦行をなすことと考えている人が多いようである。
 しかし、業は行であり、顕幽一致、身魂一本の真理により、顕界において可急的大活動をなし、天地の経綸に奉仕するのが、第一の行である。

* たとえ一ヶ月でも人界の事業を廃して山林に隠匿し、怪行異業に熱中するのは、すなわち一ヶ月の社会の損害であり、神界の怠業者、罷業者である。

* 自分は二十七年間、俗界で悲痛な修行を遂行し、その後にただ一週間、一回のみ空前絶後の実修を行ったのみである。

第3章 現界の苦行(3)
* 高熊山の修行は、一時間神界の修行をさせられると、二時間現界の修行をさせられた。
 しかし神界の一時間の修行のほうが、数十倍も苦しかったのである。

* 現界の修行は寒空に襦袢一枚で岩の上に正座し、飲まず食わずで過ごすというのみであった。
 ある晩、人を殺めると噂の山の大熊に出くわしたが、寂しく恐ろしい修行中には、大熊のうなり声さえ恋しく懐かしく思え、一切の生き物には仁慈の神の生き御魂が宿っていることが、適切に感得された。

* 猛獣でさえそうであるのだから、ましてや人間ほど人間の力になるものはないのである。人は四恩を思い起こし、助け助けられて行くべきものなのである。

第4章 現実的苦行(4)
* また、一週間水を口にしないことで、水のありがたさを身にしみて感じることができた。
 草木の葉一枚でも、神様のお許しがなければ戴くことはできないということを知り、どんな苦難でも自若、感謝の気持ちで対することができるようになった。

* そしてまた、衣食住の恩とともに、空気の恩を感謝せなくてはならない。
 空気ばかりは、ただの二三分でも呼吸しなくては生きることができないのだから。

第5章 霊界の修業(5)
* 霊界には、天界・地獄界・中有界の三大境域がある。

* 天界は正しい神々や正しい人々の霊魂が安住する国である。

* 地獄界は邪神が集まり、罪悪者が堕ちていく国である。

* 天界、地獄界の中でもそれぞれ上下二界に分かれており、程度に区別がある。
 さらにその中に三段の区画が定まっている。
 それぞれ神徳、罪悪の違いによって、行く世界が違っている。

* 霊界:
 ・天界(=神界)
   * 天の神界(三段に分かれている)
   * 地の神界(三段に分かれている)
 ・ 中有界(浄罪界、また精霊界)
 ・ 地獄界(=幽界)
   * 根の国(三段)
   * 底の国(三段)

* 自分が芙蓉仙人の先導で霊界探検をしたのは、身は高熊山に端座しており、ただ霊魂のみが行ったのである。

* 数百千里を大速力で空中飛行を続けた後、大変な大きな河のほとりで立ち止まり、仙人は『いよいよ是からが霊界の関門である』と言った。

* 河は渡ってみると深くなく、自分が着ていた紺色の着物は不思議にもたちまち純白に変じた。
 対岸へ渡ってから振り向くと、河の水が大蛇となって火焔の舌を吐いていたのには驚いた。

* 多くの旅人がいずれも河を渡ってくるのが見えたが、やはり服の色が種々変化していた。
 そして渡りきると、どこからともなく、五六人の恐い顔をした男が、旅人の姓名をいちいち呼び止めて、一人一人の衣服に切符のようなものを付けていた。

* 河から一里ばかり行くと、役所のようなものが建っており、番卒が現れて旅人の衣服に付いた切符を剥ぎ取り、また衣服の変色模様によって、衣服を剥ぎ取ったり、重ねて着させたりしていた。
 そして、一人一人、番卒が付き添って規定の場所に送られていった。

第6章 八衢の光景(6)
* ここは黄泉の八衢というところで、米の字の形をした辻である。
 その真ん中に霊界の政庁があって、恐ろしい番卒がたくさん控えている。

* 芙蓉仙人の案内で中に入って行くと、小頭と思しき恐ろしい顔つきをした男が慇懃に出迎えた。
 仙人は自分を、大神の命によって幽界の視察をせしめるべく、大切な修行者を案内して来た、この者こそ丹州高倉山に古来秘めおかれた三つ葉躑躅の霊魂である、と紹介し、大王に伝えるようにと言った。

* 小頭が仙人の来意を奥へ伝えに行った後、ものすごい物音が政庁の奥から聞こえてきた。
 仙人は、肉体のあるものがやって来たときには、政庁の装いを変えるので、その音であろうと言った。

* やがて、先の小頭の先導で奥へと進み入ると、上段の間に白髪異様の老神が端座していた。
 老神はうるわしく威厳があり、優しみのある面持ちであった。

* 招かれて進みいり、座に着くと、自分は平身低頭して敬意を表した。
 老神もまた頓首して敬意を表した。そして老神は次のように語った。

 ・ 自分は根の国・底の国の監督を天神から命ぜられ、三千有余年、この政庁の大王の任に就いている。
 ・ 今や天運循環し、わが任務は一年余りで終わる。
 ・ その後は、自分は汝(聖師)と共に霊界、現界において提携し、宇宙の大神業に参加するものである。
 ・ 汝は初めて幽界に足を踏み入れたものであり、実地に研究するため、根の国底の国を探検した上で、顕界に帰るように。

* そして、自分の産土の神を招くと、産土の神は自分に一巻の書を授け、頭上から神息を吹き込んだ。
 自分の臍下丹田はにわかに温かみを感じ、身魂の全部に無限無量の力を与えられたように感じた。

第7章 幽庁の審判(7)
* まずは、大王の許しを得て、自分は芙蓉仙人、産土の神と共に、幽庁の審判を傍聴することになった。

* 審判の法廷には、河を渡ってきた旅人が土下座になってかしこまっていたが、そこにはさまざまな国の人間が混じっているのを認めた。

* 高座にある大王の容貌をふと見ると、恐ろしくものすごい顔になっていたので、思わずあっと驚いて倒れそうになったところを、芙蓉仙人と産土の神に支えられた。

* 裁判はただ、一人一人判決の言い渡しのみで次々と終了して行った。
 芙蓉仙人の説明によれば、大蛇の河を渡るときに、着衣の変色によって罪の大小軽重が明らかになるので、審理の必要がない、とのことであった。

* 審判を終えて、元の居間に戻ってきた大王のお顔は、また温和で慈愛に富んだ様子に戻っていた。

* 神諭にある艮の金神が、改心の出来た人には優しく現れるが、心に曇りがある人民には恐ろしい神として表れる、とあるのを拝読したとき、このときの幽庁の大王のことを思い出さずにはいられなかった。
 また、教祖の優美にして温和、慈愛に富めるご面貌は、大王のお顔を思い起こさせたのである。

* 大王が、これから幽界の修行を行うように、と告げると、産土の神は「よろしくお願い申し上げます」と述べて去っていった。
 また芙蓉仙人も大王に黙礼して退座された。

* 後には大王の前に自分だけが残されたが、すると再び大王の面貌は恐ろしく変わり、番卒がやってきると自分の白衣を脱がせて灰色の着物に着せ替え、第一の門から突き出してしまった。

* 辺りを見ると、枯れ草が氷の針のようになり、横の溝にはいやらしい虫が充満していた。後ろからは番卒が、鋭利な槍で突き刺そうと追ってくるので、やむを得ず前に進んでいった。

* 四五町行ったところで、橋のない深い広い河があった。
 のぞいてみると、旅人が落ちて体中を蛭がたかって血を吸われ、苦しんでいる。後からは鬼のような番卒が槍を持って追いかけてくる。

* 窮地にふと思い出した、産土神から授かった書を開いてみると、『天照大神、惟神霊幸倍坐世』としたためてある。
 自分は思わずこの神文を唱えると、身は大きな川の向こうへ渡っていた。

* 番卒はこれを見て、元の道を帰って行った。
 歩を進めると、にわかに寒気が酷烈となり、手足が凍えてどうすることもできない。

* そこへ黄金色の光が現れ、はっと驚いて見る間に、光の玉が二三尺先に忽然と下ってきた。

第8章 女神の出現(8)
* 玉は次第に大きくなり、たちまちうるわしい女神の姿に変化した。
 全身金色にして紫摩黄金の肌で玲瓏透明にましまし、白の衣装と緋のはかまという出で立ちの、愛情あふれるばかりの女神であった。

* 女神は、自分は「大便所の神である」と告げ、懐から八寸ばかりの比礼を授けると、再会を約して電光石火のごとく天に帰って行った。

* 後に教祖のお話にあった金勝要神であることがわかって神界の微妙なる御経綸に驚かざるを得なかった。

* 女神と分かれた後、太陽も月も星も見えない山野を進んでいった。
 冷たい道の傍らに汚い水溜りがあり、その中に三十歳余りの青年が陥って虫にたかられ、苦しんでいた。

* 思わず「天照大神、惟神霊幸倍坐世」と繰り返すと、青年は水溜りから這い上がることができた。

* 青年は感謝の念を述べ、竜女を犯した自分と祖先の罪により、あのような罰を受けていたと語った。

* それから自分は天照大神の御神号を一心不乱に唱えつつ前進した。すると神力著しく、たちまち全身が温かくなった。

* 四五十丁も行くと、断崖に突き当たった。
 後ろからは鋭利な刃物が迫ってきており、下を見ると、谷川の流れに落ちた旅人を、恐ろしい怪物が口にくわえて、浮き沈みしていた。

* 自分は神号を唱えると、怪物の姿は消えてしまった。
 怪物の難から助かった旅人は、舟木と言った。彼は喜んで自分の道連れとなった。

* 二人連れで進んでいくと、口の大きな怪物が、二人を逃がすな、と長剣をふるって襲い掛かってきた。
 神号を唱えても効果がなく、進退窮まったところへ、先ほどの女神が現れて、比礼を振るようにと言った。
 比礼を振ると、怪物は退却してしまった。

* やれやれと思うまもなく、突然大蛇が現れて二人を飲み込んでしまった。
 そして轟然とした音と共に、奈落の底へ落ちていった。

* 気がつくと、幾千丈とも知れない滝の下に、両人は身を横たえていた。
 周囲は鋭い氷の柱で囲まれており、身動きすれば氷の剣に身を貫かれてしまう態であった。

* 自分は満身の力をこめて、「アマテラスオホミカミサマ」と唱えると、身体が自由になり、滝もどこともなく消えうせてしまった。

* 今度は、茫々たる雪の原野が現れた。
 雪の中には幾百人ともわからないほど、人間の手足や頭の一部が出ていた。
 にわかに、山が崩れるかという響きがして雪塊が落下し、自分を埋めて身動きができなくなってしまった。

* 一生懸命、惟神霊幸倍坐世をなんとか唱えると、ようやく身体の自由が利くようになってきた。
 舟木の全身が雪にうずもれていたので、比礼を振ると、舟木は雪の中から全身を現した。

* 天の一方より、またまた金色の光が現れて雪の原野は一度にぱっと消え、短い雑草の野原に変わった。

* 雪に埋もれていたあまたのひとびとは自分の前にひれ伏し、救世主の出現と感謝した。救世主と一緒に、神業に参加したいと希望する人もたくさんあった。その中には実業家、教育家、医者、学者なども混じっていた。

* 以上は水獄の中でも一番軽いところであった。
 第二段、第三段となると、このような軽々しい苦痛ではなかった。

第9章 雑草の原野(9)
* 雑草の原野で、ふたたび自分は一人になっていた。
 ザラザラと怪しい音がすると、自分の両岸に焼け砂のようなものが飛び込み、目が焼けるような痛さで開くこともできなくなった。

* 頭上からは冷たい氷の刃が降ってきて、梨割りにされる。
 一生懸命、「アマテラスオホミカミ」を唱えると、目の痛みがなおり、自分は女神の姿に化していた。

* 舟木がはるか遠方から、比礼を振りつつこちらへ向かってきた。
 再開の歓喜にしばし休息していると、後から悪鬼がやってきて、氷の刃で切ってかかった。
 舟木が比礼を振り、自分は神号を唱えると、悪鬼は退散した。

* どこからともなく、「北へ北へ」という声が呼ばわり、自分の体が自然に進んでいった。
 「坤」という字のついた王冠をかぶった女神と、小松林という白髪の老人から筆を託され、自分は五百六十七冊の半紙を書いた。すると、「中」という鬼が現れて書いたものを槍で突き刺し、空に散乱させてしまった。

* 他にも鬼がやってきて、自分の書いたものを焼いてしまった。
 「西」という男が、自分の書いたものを抜き出して、もって来る。
 鬼たちは「西」を追いかけるが、自分が比礼を振ると、逃げてしまった。
 「西」は書いたものを抱えて南の空高く姿を隠してしまった。

第10章 二段目の水獄(10)
* 自分は寒さと寂しさに、「天照大神」の神号を唱えると、にわかに全身暖かくなり、芙蓉仙人が現れた。
 うれしくなって仙人に近寄ろうとすると、仙人は厳しい顔をなし、自分は第二の門を開くために来たのであり、近づかないようにと諭した。

* ギィーという音がしたせつな、自分は第二の門内に投げ込まれていた。
 氷結した暗い道を地の底へと滑り込んでいった。前後左右に苦悶の声が聞こえる。
 たちまち足元がすべり、深い地底へ急転直落した。

* 全身を岩角に打って血みどろとなったが、神名を奉唱すると、自分の四辺だけが明るくなってきた。
 御神号を唱えて手に息をかけ、全身を撫でさすると、神徳たちまち現れて傷も痛みも全部回復した。

* 再び上の方でギィーと音がすると、十二三人の男女が転落して自分の足元に現れ、助けを求めた。
 比礼を振るとたちまち起き上がり、「三ツ葉様」と叫んで、泣きたてた。
 一同は氷の道をとぼとぼと自分の背後から着いてきた。


第11章 大幣の霊験(11)
* 一歩一歩かろうじて前進すると、広大な池があった。
 池の中には虫がたくさんおり、蛇体の怪物がいた。後ろからは鬼が槍で突きに来る。

* 進退窮まっていると、頭上から女神の声がして、一本の大幣が下ってきた。
 大幣を手にとって思わず、「祓戸大神祓いたまへ清めたまへ」と唱えると、池はたちまち平原になり、鬼も怪物も姿を消してしまった。

* 数万の老若男女の幽体はたちまち蘇生し、「三ツ葉様」と叫んだ。
 各人の産土の神が現れて、氏子を引き連れて喜び帰って行った。

* さらに平原を一人行くと、巨大な洋館が聳え立っていた。
 中に入ると、獄卒が亡者をひどく責め立てていた。
 中にたくさんの婦女子が槍で刺されたり、赤子の群れに血を吸われたり、毒蛇に巻かれて苦しんでいる光景があった。

* またもや大幣を左右左に振ると、苦しんでいた大勢の婦女子は助けられて、うれし泣きに泣いている。また各人の産土の神が現れて、氏子を伴い、合掌しながら帰って行った。天の一方には歓喜に満ちた声が聞こえる。


第二篇 幽界より神界へ
第12章 顕幽一致(12)

* 高熊山山中における顕界と霊界の修行の実践を、大略述べてみたが、述べた部分は実はほんの一小部分にしかすぎない。

* すべて宇宙の一切は顕幽一致、善悪一如である。絶対の善もなく、絶対の悪もない。
 絶対の極楽もなければ、絶対の苦患もない。

* 根底の国に堕ちて苦悩を受けるのは、自己の身魂から産出した報いなのである。

* 顕界の者の霊魂は常に霊界に通じ、霊界からは常に顕界と交通を保っている。
 これは、幾百千万年といえども、変わることはない。

* 天国浄土と娑婆社会は、本質はまったく同じである。
 ただ、その本然の性質を十分に発揮して適当な活動をするかしないかで、神俗、浄穢、正邪、善悪が分かれるのである。

* あることも天下公共のためにすれば善であり、私有のためにすれば悪ともなる。

* 神は一切万有を済度しようとする。
 凡俗は我が妻子眷属のみを愛すだけである。人の身魂そのものは、本来は神である。
 したがって、宇宙大に活動できる天賦の本能を備えているのである。
 この天賦の本質である、智、愛、勇、親を開発し、実現するのが人生の本分である。

* 肉体を捨てず、苦あり悪ある現実社会を離れず、これを美化して天国浄土を目の前に実現させる。
 これが自分が考える神性の成就であり、目的とするところである。


第13章 天使の来迎(13)
* 自分はなお進んで水獄の二段目を奥深く極めた。
 そして三段目を探検しようとしたとき、にわかに天上から喨々と音楽が聞こえてきた。

* 空を仰ぐと、天使が共を連れて、自分の方に降臨してくるのが見えた。
 そして、都合により産土の神のお迎えであるから、一時帰るがよい、とお達しがあった。

* 三四十分、ふわりふわりと上へ上っていくような心地がし、気づくと高熊山の岩窟の前に端座していた。
 それから約一時間ばかり経つとまた、再び霊界にいた。

* すると、産土様である小幡神社の大神様が現れた。
 そして、霊界が切迫しているため、幽界より先に、神界の探検をする必要があることを告げた。

* 自分の体が捉まれて運ばれ、おろされたところは綺麗な海辺であり、富士山が近くに大きく見えた。
 今から思うと、三穂神社に行ったのである。
 そこで、夫婦の神様に、天然笛と鎮魂の玉を授かった。

* と思うせつな、不思議にも自分は小幡神社の前に端座していた。
 帰宅の念を天使にたしなめられ、神界へ旅立つことになった。
 天使は、神界と幽界が今、混乱状態であることを告げ、神界へ旅立って高天原に上るように、と告げた。

* 天の八衢までは天使が送っていくので、そこから鮮やかな花の色をした神人が立っている方へいくように、と教えられた。

* 神界といえども善悪不二であり、よいことばかりではないこと、現界と霊界は相関しているので、互いに出来事が移ってくること、また神界にいたる道には、神界を占領しようとする悪魔が邪魔をしようとすることを聞いた。

* やがて自分ひとり、天然笛と鎮魂の玉を持ち、羽織袴装束で、神界へと旅立ちすることになった。


第14章 神界旅行の一(14)
* すでに二三丁来たかと思ったが、八衢に引き返してきてしまっていた。
 そして、地獄に落ちる亡者が、地の底へ急転直下の勢いで落ちていくのを見た。

* 天然笛を吹くと芙蓉仙人が現れたので聞いてみると、この亡者は大悪の罪により頓死したので、急速に地獄に落ちたのだ、という。

* 人は死ぬと死有から中有に、そして生有という順序で推移する。死有から中有まではほとんど同時である。四十九日の間が中有であり、その後、親兄弟が決まって生有となる。そのときの幽体は、三才の童子のように縮小されている。

* ただ、大善と大悪には中有がなく、ただちに行き先が決まる。
 大善の者はただちに天国に生まれるが、大悪の者は、先のようにすぐさま地獄に落ちていくのである、と。

* それを聞き終わると、ふたたび高天原のほうへ神界旅行に向かおうとした。
 ところが、顔いっぱいに凸凹のできた妙な婦人が、八衢の中心に忽然と現れた。
 そして自分の姿を見るなり、神界の入り口指して駆け出した。

* 自分はひとつ、この怪人の正体を見届けよう、と好奇心にかられて追跡した。
 そして異様な声を頼りに、怪女と化け物が集っているところを見つけた。

* 怪女は化け物を放り投げて、化け物が苦しむのを眺め、その血を吸っていた。
 自分は神界の旅行をしているつもりであるのに、なぜこんな鬼女のいるところに来たのだろう、と合点が行かず、神様に助けを求めようと思った。

* 瞑目端座して、天津祝詞を奏上した。
 すると、「目を開けて目を覚ませ、なぜ八衢にいつまでも踏み迷って、神界旅行に旅立たないのだ」と自分をたしなめる声が聞こえた。

* 化け物がだましている声かもしれないと迷っていると、一喝され、思わず目を開くと、荘厳な宝座が見えた。そのせつな、ふと気づくと高熊山のガマ岩の上に端座していた。
 

第15章 神界旅行の二(15)
* 先は自分の間違いであったことを悟り、心を改めて一直線に神界への旅路についた。
 神言を唱えながら歩いていき、「幸」という男と「琴」という女が道連れになった。

* 細い道が幾筋となく展開するところに出た。
 自分はどの道を選んだらよいか、途方にくれたが、その中で正中と思われる小路を選んだ。
 橋をいくつも渡ったが、ある橋にさしかかると、真っ黒な四足の動物が現れて、自分を橋の下の川に投げ込んでしまった。

* 道に沿って溝を泳いで戻り、元の道まで引き返してきた。
 真っ黒な動物が追いかけてきたが、二匹の白狐が追い払った。再び道を選び、今度は三人が別々の道を進んだ。

* 山の中腹にさしかかり、大きな滝に出くわした。
 その滝で身を清めようと打たれてみると、自分の姿は大蛇になってしまった。
 すると、「琴」という女も大蛇の姿になって苦しんでいるのを見た。

* 山が急に海に変わると、「琴」の大蛇はものすごい勢いで行ってしまった。
 すると海も川もなくなって、自分は元の道の別れている場所に戻っていた。

* 今度は一番細い道を行くと、病人が狸を拝んでいたので、鎮魂で狸を追い払った。
 病人たちは感謝して喜び、取りすがってきたので一歩も進むことができない。
 天の声に促されて天の岩笛を吹くと、何もかも消えて、広い平坦な場所に進んでいた。



以上   [前回レポート] [次回レポート]


 [拝読箇所一覧] [愛読会の紹介] オニ(王仁)の道ページ