横浜フィルハーモニー管弦楽団の次回(第58回)定期演奏会で、パウル・ヒンデミット作曲・交響曲「画家マティス」を取り上げます。この曲のことは、
交響曲「画家マティス」をご覧いただくとして、ここではヒンデミットのそのほかの曲について、ちょっと寄り道をしてみようと思います。
ヒンデミットは、もともとはヴァイオリン、その後ヴィオラ奏者として活躍したことは有名です。その意味で、「ヒンデミットの楽器」はヴィオラだったのでしょう。
それでは、ヴィオラのソナタは、というと、3曲のヴィオラとピアノのためのソナタ、そして4曲の無伴奏ヴィオラのためのソナタがあります。確かに、自分の楽器に関するソナタはたくさん作っています。
ちなみに、「白鳥を焼く男」(Der Schwanendreher)とは同名の民謡に基づく変奏曲ですが、この「白鳥を焼く男」は字の如く、白鳥を捕まえて焼き鳥にする男のことだそうです。中世のドイツは貧しくて食料が満足とはいえなかったので、白鳥は格好の蛋白源だったのでしょう。そういえば、カール・オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」にも、居酒屋の場面で「ローストされる白鳥」の歌がありましたね。(中世のドイツは食料が不足していたので、豚一匹捨てるところなく食べるために、そのままでは食べられない部分をすり潰し、香辛料で匂いを消して腸に詰め、ソーセージを作ったのでした)
2.ホルンのためのソナタは?
ヒンデミットの楽器ではないのに、ホルン関係だけで3曲も作っていくれていました。(ホルンとピアノのためのソナタ、アルトホルンとピアノのためのソナタ、4本のホルンのためのソナタ)
3.その他の楽器のためのソナタは?
その他、いろいろな楽器のためのソナタがある、ということは知っていましたが、一体どれだけの楽器のためのソナタがあるのかの全貌は認識していませんでした。
ちょっと、リストアップしてみましょう。情報源が限られていますので、間違いや抜けがあるかもしれません。皆さんも自分の楽器について知っていることがあれば教えて下さい。
ヒンデミットの代表的な作品は
パウル・ヒンデミットのWikipedia
を参照ください。
3−1.弦楽器のためのソナタ
(1)ヴァイオリン
(2)ヴィオラ
(2A)ヴィオラ・ダモーレ
(3)チェロ
(4)コントラバス
3−2.木管楽器のためのソナタ
(1)フルート
(2)オーボエ
(2A)イングリッシュ・ホルン(コールアングレ)
(3)クラリネット
(4)ファゴット
3−3.金管楽器のためのソナタ
(1)ホルン
(2)トランペット
(3)トロンボーン
(4)テューバ
3−4.その他の楽器のためのソナタ
(1)ハープ
(2)オルガン
(3)ピアノ
4.ソナタに関するCD情報
とりあえずリストアップはしてみましたが、私もほとんど聴いたことがないものばかりです。
まずは、一通りのソナタがそろう全集盤は、現在は出ていないようです。
ヒンデミット/ソナタ全集(ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ、Vn.イザベル・ファウスト、他)
ヒンデミット/ソナタ全集
ヒンデミット/金管楽器のためのソナタ集(p.グレン・グールド)
ヒンデミット/木管楽器のためのソナタ全集
ヒンデミットの楽器であるヴィオラ。
ヒンデミット/ヴィオラとピアノのためのソナタ集(Va.今井信子)
ヒンデミット/無伴奏ヴィオラのためのソナタ集(Va.今井信子)
ヒンデミット/ヴィオラのための作品集(1)(Va.タベア・ツィンマーマン)
ヒンデミット/ヴィオラのための作品集(2)(Va.タベア・ツィンマーマン)(2枚組)
ホルンのソナタにはこんなCDも。バボラークのホルン。
ヒンデミット他/ホルンのための作品集(Hr.バボラーク)
まずは、ヒンデミットの器用さの象徴として、いろいろな楽器のための「ソナタ」について書いてみましょう。
1.ヒンデミットの楽器「ヴィオラ」のソナタ
オーケストラとヴィオラのための曲としては、室内音楽第5番(ヴィオラ協奏曲)Op.36-4(1927)、ヴィオラと大室内管弦楽団のための協奏音楽Op.48(1930)、独奏ヴィオラと管弦楽のための「白鳥を焼く男」(Der Schwanendreher、1935)、「葬送音楽」(Trauermusik、1936)などがあります。確かに、多いですね。室内音楽第6番(ヴィオラ・ダモーレ協奏曲)Op.46-1(1927)というのもあります。
そこで調べてみたら・・・あるはあるは。打楽器を除き、オーケストラの通常の楽器に関しては、全て存在することが分かりました。
<ヴァイオリン・ソナタ(Vn., Klavier)>
・Es-dur Op.11-1
・D-dur Op.11-2
・E-dur (1935)
・C-dur (1939)
<無伴奏ヴァイオリンのための>
・Op.31-1
・Op.31-2
<ヴィオラ・ソナタ(Va., Klavier)>
・F-dur Op.11-4
これは美しい曲です。
・Op.25-4
・C-dur (1939)
<無伴奏ヴィオラのための>
・Op.11-5
・Op.25-1
・Op.31-4
・無伴奏ヴィオラのためのソナタ(1937)
・ヴィオラ・ダモーレ・ソナタ Op.25-2(Va.d'Am., Klavier)
こんな楽器のためにも作曲していました。
<チェロ・ソナタ(Vc., Klavier)>
・a-moll Op.11-3
・チェロ・ソナタ (1948)
・チェロ・小ソナタ (1942)
<無伴奏チェロのための>
・Op.25-3
・コントラバス・ソナタ H-dur (Kb., Klavier) (1949)
珍しいですね。
・フルート・ソナタ B-dur(Fl., Klavier) (1936)
・オーボエ・ソナタ G-dur(Ob., Klavier) (1938)
・イングリッシュ・ホルン・ソナタ(Engl.hr., Klavier) (1941)
・クラリネット・ソナタ B-dur(Kla., Klavier) (1939)
・クラリネット・ソナタ B-dur(Fg., Klavier) (1938)
・ホルン・ソナタ F-dur(Hr., Klavier) (1939)
・アルトホルン・ソナタ Es-dur(AHr., Klavier) (1943)
・4本のホルンのためのソナタ(4Hr.) (1952)
・トランペット・ソナタ B-dur(Tp., Klavier) (1939)
・トロンボーン・ソナタ B-dur(Trb., Klavier) (1941)
・テューバ・ソナタ F-dur(Tuba, Klavier) (1955)
これも珍しいですね。
・ハープ・ソナタ (Harp) (1939)
・オルガン・ソナタ No.1 (1937)
・オルガン・ソナタ No.2 (1937)
・オルガン・ソナタ No.3 (1940)
これはここに書くまでもないですが。
・ピアノ・ソナタ Op.17 (1920)
・ピアノ・ソナタ No.1 A-dur (1936)
・ピアノ・ソナタ No.2 G-dur (1936)
・ピアノ・ソナタ No.3 B-dur (1936)
・4手のためのピアノ・ソナタ No.2 G-dur (1938)
・2台のピアノのためのソナタ No.2 G-dur (1942)
分かる範囲でCDを検索してみた結果を示しますので、聴いてみたいものにチャレンジしてみてください。曲の出来不出来、演奏の良し悪しは分かりませんが、自分の耳で判断してください。
なお、いろいろな組合せが存在しますので、自分のお目当てのものがどこに含まれるか探してみてください。
変則的な組合せですが、ヴァイオリン、チェロ、アルトホルン、トランペット、トロンボーンのソナタが入っています。
これも変則的な組合せですが、ミシェル・デボスト(Fl)らフランスの奏者によるフルート・ソナタ、ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ、4手ピアノのためのソナタ。
ピアニストのグレン・グールドと当時のフィラデルフィア管弦楽団の金管奏者による、金管楽器のソナタ集。
木管楽器向けの、フルート、オーボエ、イングリッシュ・ホルン、クラリネットのソナタが入っています。
今井信子さんによる北欧BISレーベルへの録音です。
同じく北欧BISレーベルへの録音。2枚合わせてヴィオラ・ソナタが全曲そろいます。
タベア・ツィンマーマンのヴィオラによるヴィオラと管弦楽のための作品集。
タベア・ツィンマーマンのヴィオラによるヴィオラのための作品集。
ラデク・バボラークのホルンによるヒンデミットのホルン・ソナタ、アルトホルン・ソナタ、ホルン協奏曲(ピアノ伴奏版)、ケクランの作品。