マーラー/交響曲第2番「復活」の関連情報 〜次回・第64回定演の演奏曲関連〜

2010年 5月 8日 初版作成


 横浜フィルの次回・第64回定演の定期では、マーラーの交響曲第2番「復活」を演奏します。

 とりあえず、スコアと音源に関する情報です・・・。(とりあえず公開しましたが、段階的に内容を充実させていきます)



1.マーラーに関する本

 寺岡氏とマーラーを演奏するのもこれで3回目(第1番、第4番に続き)です。もっとマーラーに親しみたい方は、あらためて読んでみましょう。

村井 翔 「マーラー (作曲家・人と作品)」 音楽の友社 \1,350
 
ごく一般的で順当なマーラーの伝記と代表的な作品解説です。

渡辺 裕 「マーラーと世紀末ウィーン」 (岩波現代文庫) \1,050

アルマ・マーラー 「グスタフ・マーラー〜愛と苦悩の回想」 (中公文庫)  \840
 
マーラーの妻でもあったアルマ・マーラー・ヴェルフルの回想記。ナチスの台頭に伴うマーラーの社会的抹殺に対抗して書かれ、美化やアルマに都合の良い創作も多いと言われている。読み物としては十分面白い。

 

2.交響曲第2番「復活」に関して

 マーラーの交響曲第2番「復活」の概要は、Wikipediaあたりで確認いただくことにしましょう。このサイトの解説によると、「復活」の楽譜には次の版が存在するそうです。

(1)初版:1897年 ライプツィヒ、ホフマイスター社
(2)旧全集版:マーラー自身による改訂版:1910年、ウィーン、ウニフェルザール社(英語読みだとユニヴァーサル社)
(3)新全集版:国際マーラー協会版(エルヴィン・ラッツ校訂):1970年、ウィーン、ウニフェルザール社
(4)キャプラン版: 2005年出版?(この版も版権はウニフェルザール社にあるらしい)

 「旧全集版(1910年)」は、おそらく古い指揮者(ワルター、クレンペラー、メンゲルベルクなど)によって演奏されてきたものと思います。バーンスタインの旧録音(ニューヨーク・フィルとの1960年代の録音)も多分これを使っているものと思います。

 「新全集版(1970年)」は、国際マーラー協会公認の原典版なので、現在の演奏のほとんどはこれに基づいていると思われます。ただし、上記Wikipediaによると、「復活」に関してはこのラッツ校訂版には問題があるらしき記述があります。(そういえば、交響曲第6番の楽章順に関しても、国際マーラー協会はラッツの校訂に問題ありとして、2003年に第2楽章と第3楽章の順序を入替えると宣言しています。この辺の事情はこの記事を参照下さい。)

 「キャプラン版」のギルバード・キャプラン氏は、アメリカの実業家(経済誌出版社の社長)で、ストコフスキー指揮の「復活」を聴いて感激し、この曲に入れ込んだあげく、マーラー自筆スコア(1894年の初稿)を購入し、音楽学者レナート・シュトルク・フォイトの協力を得て、各地のオケ(ウィーン・フィルも含む)に残るマーラーの手書き修正を調査して、マーラーの最終決定稿に相当する独自のキャプラン版を完成させたそうです。ウィーン・フィルからの「あのときの調査結果はどうなった?」との問合せがきっかけで、この版でウィーン・フィルとの演奏&録音を行ってしまったとのこと。(キャプラン指揮では、ロンドン交響楽団(1987年)、ウィーン・フィル(2002年)との録音あり。でもこの方、指揮に関してはアマチュアです)
 キャプラン版での演奏を、私は聴いたことがありませんが、聴き比べ情報がこんなサイトにありますのでご参考まで。
 

3.スコア情報

(1)新全集版

 今回演奏するのは、おそらく「新全集版:国際マーラー協会版(エルヴィン・ラッツ校訂):1970年」だと思います。
 これに相当するスコアは、音楽の友社(フィルハーモニア版)から出ています。

OGT−1395 マーラー交響曲第2番 (Philharmonia miniature scores) 音楽の友社 \2,520

 オリジナルのウニフェルザール社のスコアは、下記ウニフェルザール社のサイトから入手できるようです。

  ■ウニフェルザール社「マーラー/交響曲第2番」エルヴィン・ラッツ校訂(Edited by: Erwin Ratz)
   ・ポケットスコア:24.5ユーロ
   ・クリティカル・スコア:(Volume:2となっているので、2分冊?):61.95ユーロ

 ウニフェルザール社のサイトには、この曲のスコアとして、エルヴィン・シュタイン編曲というものもありますが、やや小編成(3管)にアレンジしたもののようです(出版はされていない模様)。この演奏は聴いたことがありません。
  ■エルヴィン・シュタイン編曲(小編成版:Reduced version, arranged by Erwin Stein)

(2)旧全集版

 ドーヴァー版、全音のスコアはこの旧全集版(1910年版)と思われます。ただし、いずれもベースとなる版が不明確なようで、ドーヴァー版は初版(1897年)に基づいている可能性もあるようです。(このサイトに版の対応が載っていますが、よく分かりません・・・)

Mahler: Symphonies No 1 and 2 in Full Score   Dover \1,843
ドーヴァー版(大型):交響曲第1番との合本です。(それでこの値段!)

Mahler: Symphony No. 2 in C Minor ("Resurrection") (Dover Miniature Scores) \875
こちらはドーヴァー版でも、ポケットスコアです。

全音スコア マーラー 交響曲第2番 ハ短調 「復活」 (Zen‐on score) 全音 \1,470

(3)キャプラン版

 キャプラン版は、残念ながらまだオーケストラ・スコアとしては刊行されていないようです。
 詳しくは下記のウニフェルザール社のサイトを参照して下さい。

  ■ウニフェルザール社「マーラー/交響曲第2番」レナート・シュタルク・フォイト/ギルバート・キャプラン校訂(Edited by: Renate Stark-Voit; Gilbert Kaplan)
   (ヴォーカル・スコア:6.5ユーロのみで、オーケストラ・スコアは未刊行のようです)
 

4.CD、DVD情報

 「復活」は極めて有名な曲なので、録音は数え切れないほどたくさん出ています。
 お勧め演奏、名盤をピックアップしたサイトも多数あるようなので、比較はそういったサイトを参考にして下さい。

 今年はマーラー生誕150周年ということもあり、下記のような「スペシャル・エディション」が出ます。(各々、2010/5/20、2010/5/24発売)
 交響曲のみならず、歌曲、そして珍しい曲まで含まれていてこの価格、というのが魅力ですね。(「復活」第1楽章初稿の交響詩「葬礼」や、最初期のカンタータ「嘆きの歌」、未完のピアノ四重奏曲など)
 特に、DG盤の「葬礼」は「復活」第1楽章の初稿とのことであり、話の種に聴くとよいかも。
 また、「復活」の第3楽章にそのまま用いられている歌曲集「子供の不思議な角笛」の中の「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」も、もし聴いたことがないのならば、この際聴いておいた方が良いでしょう。
 第62回のアンコールで山田英津子さんが歌った「春の朝」(「若き日の歌」より)も収録されています。

  ■マーラー・コンプリート・エディション DG盤:18枚組 \4,550 (2010/5/20発売)
     ←DG マーラー・コンプリート・エディションの紹介ページへ

  ■マーラー・コンプリート・ワークス EMI盤:16枚組 \3,962 (2010/5/24発売)
     ←EMI マーラー・コンプリート・ワークスの紹介ページへ

 ちなみに、「復活」に関しては、

  ■DG盤  : メータ指揮ウィーン・フィル(1975年録音)
  ■EMI盤 : クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(1961年録音)

で、どちらも名盤と呼ばれているものですね。

 「復活」に関係の深い歌曲集「子供の不思議な角笛」に関しては、

  ■DG盤  : アバド指揮ベルリン・フィル(メゾ:アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、バリトン:トーマス・クヴァストホフ)
  ■EMI盤 : ジョージ・セル指揮ロンドン交響楽団(ソプラノ:シュヴァルツコップ、バリトン:フィッシャー=ディースカウ)

で、こちらもどちらを取っても後悔しないと思います。

 いずれのセットも、「復活」+「子供の不思議な角笛」+「クック版の交響曲第10番全曲」を個別に買うことを考えれば、それだけで十分元が取れると思います。それでマーラーの交響曲全曲、歌曲全曲がそろってしまう! (ちなみに、クック版の交響曲第10番は、DG盤がシャイー指揮ベルリン放送響、EMI盤がラトル指揮ベルリン・フィルの演奏です)

 CDを検索していて気付きましたが、現在マーラー・ツィクルスを録音進行中のデイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管の「復活」は、ジャケットのデザインが「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」ですね。(ちょっとお魚さんが何ですが)
 「聖アントニウス」といえば、ヒンデミット作曲/交響曲「画家マティス」にも登場しましたね(第3楽章「聖アントニウスの誘惑」と、そのもとになった「イーゼンハイムの祭壇画」のところです)。
 でも、「誘惑」されたのはエジプト生まれの修道士の創始者(西暦251〜356)、魚に説教したのはリスボン生まれでイタリアのパドヴァで活躍した聖者(西暦1195〜1231)で、別な方です。(キリスト教の歴史はあまり詳しくありませんが)
  

 ご参考までに、キャプラン版での演奏のCDを。(ここのキャプランに関する解説が詳しい)
  ■キャプラン指揮/ウィーン・フィル

 さあ、スコアを買って、CD(またはDVD)を準備して、「復活」への挑戦に出発しましょう。



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