アカデミー賞(オスカー)とクラシック音楽の関係



 少し趣向を変えて、音楽に関するちょっと場違いな、意外な話を集めてみました。既に知っていた方には面白くもなんともないと思いますが、「へーっと思った話」ということで、クラシック音楽家のポピュラー音楽、という切り口から何点か。

(なお、下記のアカデミー賞については、“アカデミー賞のホームページ=http://www.oscars.org/academyawards/” に詳しく載っていますので、興味があれば参照下さい。このホームページ−−当然英語ですが−−の "Academy Awards Database" の検索画面から年や受賞カテゴリーを入力すると、簡単に検索できて便利です)
(注)このアカデミー賞のデータベースは、昔は "IMDb" (Internet Movie Database Inc.) にありましたが、2002年に新しいデータベースが作られ、旧サイトへのリンクは迷子になっていたようです。このたび、リンクを張り直しましたのでご活用下さい。 2004/9/9)

1.レナード・バーンスタインのミュージカル
 指揮者のレナード・バーンスタインは、何と、ミュージカルの作曲もしていたのですね。かの有名なミュージカル「ウェスト・サイド・ストーリー」。意外と知らない、どころかとても有名な話でした(これを知らなきゃ、もぐりです)。
 バーンスタインは、「ウェスト・サイド・ストーリー」以外にも、いくつかミュージカルを作曲しているようですが(序曲が有名な「キャンディード」は、オペラかミュージカルか不明ですが)、現役で残っているのは「ウェスト・サイド・ストーリー」だけのようです。
 ちなみに、このブロードウェイミュージカルを映画化した「ウェスト・サイド・ストーリー」は、1961年にアカデミー賞(ハリウッドの映画関係の賞。別名オスカー。有名ですよね)を受賞していますが、あくまで「映画」が受賞したのであって、バーンスタイン自身は受賞していません。バーンスタイン自身は、1954年に「オン・ザ・ウォーターフロント」という映画の音楽でアカデミー賞にノミネートされたことはあったそうですが。

 「ウェスト・サイド・ストーリー」については、このサイトのウェスト・サイド・ストーリーについてのあれこれ も参照下さい。また、映画「ウェスト・サイド・ストーリー」のDVDを見たい方はこちらから→「ウエスト・サイド物語 West Side Story」DVD ¥2,079

2.アンドレ・プレヴィン
 では、指揮者のアンドレ・プレヴィンは? 残念ながら、プレヴィンはミュージカルを作曲してはいません。でも、ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」(オードリー・ヘップバーンが主演した有名な映画)の編曲を担当し、みごとアカデミー編曲賞を受賞しているのです(1964年)。この頃、プレヴィンは、ジャズ・ピアニストとしてアメリカで活躍していて、しゃきしゃきのポピュラー音楽人だったのです(ジャズ・ピアニストとしてそれなりに有名で、レコードもかなり残しています。なお、最近、90年頃から、「楽しみとして」ジャズ・ピアニストの活動も再開しているとのこと)。
 ここまでは比較的有名な話なのですが、更に意外な事実があります。プレヴィンは、「マイ・フェア・レディ」だけではなく、アカデミー賞に合計で受賞4回(1958、59、63、64年)、ノミネート9回という常連で、ハリウッド音楽界の顔だったのです。「マイ・フェア・レディ」以外の有名なところでは、1973年のミュージカル映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」の編曲賞にノミネートされています(この頃はもうロンドン交響楽団の常任指揮者になっていた?)。

3.ショスタコーヴィチ(その1)
 さらに、上に書いたアカデミー賞のホームページで知った更に意外な事実。
 実は、かのショスタコーヴィチが、アカデミー賞の編曲賞にノミネートされたこともあった、という事実です。これには私もぶっ飛びました。旧ソヴィエトの作曲家が、プロコフィエフにしてもハチャトゥリアンにしても、映画音楽を担当していることは知っていましたが(プロコフィエフの有名な組曲「キージェ中尉」も元は映画音楽)、まさかアカデミー賞に関連ありとは知りませんでした。1961年の「ホヴァンシチーナ」という映画だそうです。ちなみに、この年の編曲賞の受賞は「ウェスト・サイド・ストーリー」の音楽担当の4人(作曲者バーンスタインは含まれず)、他に主題歌賞「ムーン・リバー」(ティファニーで朝食を)、音楽賞ヘンリー・マンシーニ。こんな方々とショスタコーヴィチが同じ土俵に乗っていた、というのも、なかなか楽しい話題ですね。

4.ショスタコーヴィチ(その2)
 アカデミー賞からは離れますが、ショスタコーヴィチの作品16(1928年)に「タヒチ・トロット」という曲があります。3、4分の小品ですが、聞いてみると、なんと「二人でお茶を」(Tea for Two)。何だ、この曲はショスタコーヴィチの曲だったのか・・・というのは早計です。原曲はれっきとしたアメリカのポピュラー音楽です。
 これがショスタコーヴィチの作品リストにある理由は、例の「ショスタコーヴィチの証言」にも出てきます。ある指揮者の家に招待された駆け出しのショスタコーヴィチに、その指揮者は「二人でお茶を」のレコードを聞かせ、「気に入った?」と聞いたところ、「私ならもっと気の効いたアレンジができる」といって、15分ほどさらさらと書き付けた、という曲だそうです。もちろん、レコードで1回聞いただけの曲を。モーツァルトが、幼少の頃イタリア旅行中に、どこかの修道院の門外不出の曲を、1回聴いただけで楽譜にしてしまった、という逸話に匹敵する話です。
 何種類かの録音も出ています。小品なので、交響曲や何かの「おまけ」に入っていることが多いので、見つけたら思い出して下さい。

5.ニーノ・ロータ
 ニーノ・ロータ(1911〜79)というイタリアの作曲家は、映画音楽の好きな人には有名です。アラン・ドロン主演「太陽がいっぱい」(1960)、「ロメオとジュリエット」(1968)、「ゴッドファーザー」(1972)といった映画音楽のヒットメーカーで、1974年に「ゴッドファーザーPart2」の音楽でアカデミー賞を受賞しています。
 でも、この方、れっきとしたクラシックの作曲家で、イタリアの何とか音楽院の作曲家の教授だったそうです(リッカルド・ムーティは彼の弟子だそうです)。本業のクラシックの作品も、最近取り上げられるようになったとか。(これも、最近のクラシック音楽界の埋もれた作品発掘ブームの恩恵なのでしょうか・・・)ちなみに、私は聴いていませんが、BISレーベルから、オーボエのハインツ・ホリガーなどの演奏した「ニーノ・ロータ作品集」(木管五重奏などの室内楽)のCDが出ています。興味のある方はどうぞ。

6.黛 敏郎
 この方は多方面の作曲をしているので、当然ポピュラー音楽もいろいろと作っています。有名なところでは、ハリウッド映画「天地創造」の映画音楽。黛さんは、この映画音楽で1966年のアカデミー賞候補にノミネートされています。

 主に映画音楽、アカデミー賞の話になってしまいましたが、これも典型的な20世紀の音楽、ということで、クラシックだポピュラーだと区別すること自体意味がないのかもしれません。
 上記は筆者が適当に調べたもので、事実誤認がある可能性もありますので、あしからず。でも、あまり知らなかった話、結構笑える話もあったでしょう? 役には立たないけど。



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