成年後見人制度
超高齢化で「任意」重要に
2005.6.17 毎日新聞
 成年後見は認知症などの理由で判断が十分にできない人に代わり、貯金など財産を管理したり、契約を結んだりする制度。本人が将来に備え、判断能力のあるうちに後見入を選ぶ「任意後見」と、本人または親族、市町村長らが申し立て、家庭裁判所が選任する一「法定後見」がある=表参照

 成年後見制度につい、て、小山操子弁護士(大阪弁護士会)は「後見人がいれば、不当な契約などに気が付く可能性が高く、仮に契約後でも早期に対応できる。孤立した高齢者を狙う商法がはびこっている今、制度の活用を図るべきだ」と話す。

特に未婚や超高齢化で親族のいない人が今後増えると予想される中、判断力が衰える前に後見人を決めでおく「任意後見」の利用の必要性を強調する。

一方で、小山弁護士は「後見人だけでは、100%安全とはいえない」とも話す。「変わった様子はないかどうかを各方面からみるケトスワーカーやヘルパーら福祉関連の専門家と、後見人が連携することで初めて、高齢者を守ることができる」と複数の目の大切さを指摘する。

社会福祉協議会の利用も
 各地の社会福祉協議会が実施する地域福祉権利擁護事業を利用するのむ方法だ。本人に代わり、「生活支援員」が預貯金の出し入れ、家賃や光熱勇、医療腰関への支払いなどをしたり、各種福祉サービスの手続き、生活状態の貝守りもする。

利用には1回数百円〜1000円程度かかるが、所得に応じた免除もある。
 大阪府社会福祉協議会によると、利用を始める際に通帳などの確認をする中で、利用者が悪質な訪問販売の被害に遭っていたことが発覚したケースもあるという。同社協の大国美智子・大阪後見支援センター所長は「自分から利用を申請する人は少ない。周囲の人に協力してもらって、事業の利用につなげたい」と話す。利用料金は地域によって異なるので、詳しくは最寄りの社協へ問い合わせてほしい。

格安なNPO
 NPO法人「日本ライフ協会」 (大阪市北区、柳瀬恒範理事長)は、身寄りがなかったり、身寄りがあっても頼めないなどの事情がある人向けに「みまもり家族制度」に取り組んでいる。

 病院や福祉施設への入居の際、身元保証人となり、立ち会いや手続きを代行したり、日常生活の手助けもする。また、利用者とNPO、弁護士の3者間で契約し、金銭管理や成年後見、遺言や相続関係にも対応する。費用は契約内容によるが、収入に応じた減額もある。

 NPO法人「任意後見ネットワーク」 (大阪市平野区、理事長・中西康政弁護士)は、法人として任意後見や法定後見を引き受けるのが特徴。弁護士や司法書士らに直接
後見を頼むよぢ費用が抑えられる。

 司法や医療、金融など各分野の専門家がいるので、各種の相談にも応じる。入会金は1万円(後見人費用は別途)

◆主な相談先◆
▽高齢者・障害者総合支援センターひまわりTEL06・6364・1251(大阪弁護士会、各府県の弁護士会でも受け付ける)
▽成年後見センター・リーガルサポート大阪支部TEL:06・4790・5643(各府県の司法書士会に支部がある)
▽大阪後見支援センタ一TEL:06・6764・5600(各地の社会福祉協議会でも)
▽NPO法人任意後見ネットワークTEL06・6709・8801
▽同日本ライフ協会貪06・6374・7080
▽権利擁護・成年後見センターぱあとなあ(日本社会福祉士会)TEL03・5275・3694

◆成年後見制度の概要◆

法定後見制度
任意後見制度
類 型
後 見
保 佐
補 助
対象者の判断能力欠く苦しく不十分不十分
ある
申立人と手続き 本人、配偶者、4親等内の親族、
市町村長らが家庭裁判所人を決め、契約に申し立てる。家裁が対象者の判断能力の程度により成年作成する後見人、保佐人、補助人のいずれかの援助者を選任する
本人が任意後見人を決め、契約し、公正証書を作成する
補助者の仕事援助者の財産管理、生活、療養・看護仕事に関する契約や手続きなど本人の判断能力低下後に、契約内容に沿って代理行為をする
同意権(取消権)あり(後見、保佐、補助ににより内容は異なる)なし
『成年後見』手続き緩和
厚労省方針親族確認2親等以内
読売新聞 2005.6.3朝刊
 厚生労働省は6月3日、市町村長が身寄りのない高齢者に成年後見制度に基づく後見人を立てる場合の要件を、大幅に緩和することを決めた。埼玉県富士見市で認知症(痴呆)の老姉妹が業者に高額の住宅リフォームを繰り返されて全財産を失うなど、高齢者などの財産や人権が侵害されるケースが増えているためだ。現在は4親等以内のすべての親族の存在を確認することが条件とされているが、2親等までに簡略化する方針。市町村の負担を大幅に軽減し、利用者の拡大を図る。

認知症など高齢者被害に対応
 成年後見制度で後見人がついていれば、たとえ本人が悪質な業者と不利益な契約を結んだ場合でも、取り消すことなどが可能になる。制度の利用は本人、配偶者、4親等以内の親族が申し立てる例が多いが、一人暮らしなど身近に身寄りがいない高齢者については、市町村長が家庭裁判所に審判の請求を申し立てることが可能とされている。

 ところが、厚労省はこれまで、市町村長が行う場合は親族にかわって申し立てることの承諾を得るために、「4親等以内の親族の有無の確認」を条件としていた。おいやめいの子ども、いとこ、ひ孫の子供まで対象となるため、対象が100人を超えてしまう例も少なくない。

一人暮らしの65歳以上の高齢者は全国に約390万人と推計されるが、全員の戸籍謄本を取り寄せなければならないなど事務が煩雑なため制度の利用が進まず、市町村長による申し立ては2003年度で437件(最高裁事務総局調べ)で、制度利用者全体の約2.5%にとどまっている。

 厚労省は総務省などと協議した上で、今夏に確認の対象を2親等までとする通知を出す方針。両親、配偶者、祖父母、兄弟、孫などに範囲が狭まり、確認が10人台程度で済むようになる。「従来は2か月以上かかった確認作業が1か月以下になる」 (東京都町田市福祉総務課)など、市町村側の期待は大きい。

認知症の高齢者を巡っては、富士見市に住む80歳78歳の認知症の姉妹が、業者に勧められるまま住宅フォームを繰り返し、自宅が競売にかけられる事件5月初めに発覚。同市が後に後見人の選任を申してた。

※成年後見制度
 認知症の高齢者や知的障害者など、判断能力の低下した人の財産管理などを後見人が行う制度。2000年に創設された。後見人に代理権などを与える法定後見制度と、将来、認知症などにより判断能力を失った場合に備える任意後見制度の2種類がある。厚労省は法定後見制度の活用を目指している。

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