現代の矢立

 

「世界の女性の首を飾りたい、日本の真珠で」といった真珠王御木本幸吉。 三重県鳥羽のミキモト真珠島、そこは海女さんの実演も見ることができる真珠の博物館になっています。

島内に、幸吉の記念館があります。わたしが矢立を知ったのは、その一角でした。 幸吉のコレクションが矢立とエビス像で、彼はそれぞれ一万個ずつ集めることを目標にしたといいます。 実際にはどれだけの数を集めたのか説明がありませんでしたが、幸吉は、「私が死んだら一万人の友人にプレゼントする」と言っていたそうです。 世界中にたくさんの友人をもっていた幸吉らしいと感心しました。

矢立は、一口でいえば、万年筆や鉛筆が登場する前の携帯用の筆記具です。 筆を持ち歩くために工夫されたもので、筆を入れる筒の部分と、墨汁を染み込ませたパンヤやモグサをいれた墨壷の部分が一体化しています。形は、マッカーサーが愛用していたパイプに似ています。

今や、ボールペンやシャープペンシルの普及で使われることもなく、その名前さえ忘れさられようとしています。

矢立が、外国人とのコミュニケーションに役立つといったら、奇異に思われるでしょうか。筆で文字を書く習慣が西欧にないので、興味をひくのです。 例えば、空港の待合室や機内で、隣に座った外国人に、筆を出して名前などを書いて見せると興味しんしん、周りからのぞき込まれるに違いありません。それくらい、珍しがられます。

と言っても、今日では、古道具屋にでも行かないと矢立は手にはいりません。でも、心配ご無用、ちゃんと現代の矢立があります。それは、筆ペンです。

これを一本カバンに入れておくと、思わぬコミュニケーションができます。カードに名前やちょっとした墨絵をかいてプレゼントしたり、、相手にサインをしてもらっても楽しい。

外国人とのコミュニケーションと言えは、けん玉や折り紙、綾取り、ハーモニカ、白粘土などを持参して、楽しく交流されているのを見かけたことがあります。 趣味や特技で、かさばらないものなら、なんでもいいと思います。 何かひとつ、旅行カバンに入れておかれるよう、おすすめします。 幸吉にはかなわないにしても、友達づくりに一役かってくれるはずです。
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