過激なイギリス史
歴史上の人物の名前が、なかなか覚えられません。特にイギリス人の名前が苦手です。ジョン、ヘンリー、リチャード、エドワード、ジェイムス、ウイリアム・・・こういった名前の下に、一世、二世、三世などが続きます。なかには、ウイリアム征服王、獅子王リチャードなどと呼ばれている王もいて、ひとすじ縄ではいきません。
そんな中で、最初に親しみをおぼえたのが、ヘンリー八世。『ヘンリー八世の私生活』という映画がありました。タイトルからも連想できるように、この王の私生活はすさまじいものでした。十八歳で即位、生涯に六回結婚し、二回離婚し、二人を処刑しています。残る二人とは死別です。
十六世紀の王で、八と六と二に縁のあった王といえます。
イギリスの歴代の王のなかには、シェークスピア劇に登場するものもいれば、映画に描かれたものも多くいます。もちろん、歴史書や文学作品をかずえあげたら、どれだけの量になるか見当がつきません。
『とびきり愉快なイギリス史』(ジョン・ファーマン著、ちくま文庫)という文庫をみつけました。おもしろく、手軽にイギリス史がおさらいできそうだと思って買ってみました。
ところが、一国の歴史が、安直に身につくと思ったのが大まちがい。過激な文章によるエピソードに気をとられて、期待したように英国史が身につきませんでした。
ヘンリー八世の五人目の奥方は、このように紹介されています。
「このあとヘンリーは、またもやお付きの女官に目をつけるんだ。これがキャサリン・ハワード。でも彼女、ちょとばかりヘンリーには賢すぎたもんだから、型どおりに首をチョン (「職業にともなう危険」というやつ)。」
すべて、こんな調子で、過激な皮肉とユーモアで解説してあります。イギリスの子供向けに書かれたといいますが、正直言って、日本人の私には親しめませんでした。
過激といえば、NHKの「週刊こどもニュース」のお父さん役キャスター池上彰さんの『ニュースの「大疑問」』(講談社) に、パレスチナ問題を解説した次のような文があります。ちょっと長くなりますが、引用しましょう。
第一次世界大戦中、イギリスは、中東を支配していたオスマン・トルコと戦います。イギリスは、当時トルコの支配下にあったアラブ人を味方につけるため、パレスチナを含む地域が、戦後アラブ国家として独立することを認めると約束しました。このとき、イギリスから送りこまれた情報部員が、「アラビアのロレンス」です。映画で有名になりましたね。
その一方でイギリスは、この地域にイギリス寄りの国家ができれば、イギリスの国益が守れると考え、ユダヤ人グループに、ユダヤ人の「ナショナル・ホーム」を設立することを認めました。さらにその裏でイギリスは、この地域を戦後支配するという秘密協定をフランスと結んでいました。このイギリスの三枚舌外交が、パレスチナ問題を複雑にしたのです。
洋の東西を問わず、歴史を解説するには、過激なほうがいいのかもしれません。
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