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ミラ・グラントのFeedを読了。
ゾンビがうようよしている近未来、アルファブロガーを目指す姉弟が、大統領選挙の取材チームとして同行するうち、陰謀に巻き込まれていく、というお話。
読み終えた当初、この作品が2011ヒューゴー賞候補になったり、米アマゾンの書評で絶賛されている理由が、どうしても理解できませんでした。冗長だし、ゾンビが発生した理屈付けもありきたりで、ブロガーがマスコミに取って代わっているという状況も、現在の延長で新味に欠けます。
しかし、欧米の書評を眺めてみて少し分かったのは、とりわけアメリカには年代層を越えて「ゾンビ・ファン」が幅広く存在し、常に新たなゾンビ物を捜し求めているということです。9.11後のアメリカ社会の不安の表れもあるのかもしれませんが、むしろ日本の怪獣物に近い存在のような気がします。日本の怪獣は、人間関係で窒息しそうな日本の社会を一気に破壊し、爽快感を与えてくれます。これだけのファンがいるということは、ゾンビたちも、アメリカ人になんらかのカタルシスをもたらしている可能性があります。
リアルなゾンビに、アメリカ人の大好きな大統領選挙に陰謀とくれば、鬼に金棒。その意味でこの作品は、きわめてアメリカンローカルなヒット作といえるかもしれません。
文章は冗長ですが語彙は平易で、飛ばし読みでも簡単に読めます。三部作で続編も出ているので、ゾンビファンの方はぜひどうぞ。私は……もういいですけど。(^ ^;)
●ストーリー●
風邪と癌を根治するために散布したウイルスが、死人まで健康にしてしまい、世界中にゾンビがうようよしている2040年。ゾンビはその勢力範囲を広げ、残った都市は要塞のようになっている。一方、ニュースメディアの主流はブログに移りつつあり、ブロガーたちはアクセス数を競って、アルファブロガーを目指している。姉ジョージアと弟ショーンは若きニュースブロガーとして、ゾンビ地帯の突撃レポートなど危険な取材で頭角を現していた。
ある日、ジョージアたちのチームは、大統領の有力候補の上院議員から、選挙戦の取材チームに抜擢される。彼らは勇んで報道を続けるが、彼らの選挙活動は幾度もゾンビの襲撃で妨害され、大統領の娘や取材チームの仲間まで失ってしまう。そこには悪意に満ちた陰謀の影が見え隠れするようになっていた・・・