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Mars Bound

  • 著者:ジョー・ホールドマン(Joe Holdeman)
  • 発行:2008/Acer $7.99
  • 273ページ
  • 本邦未訳(2011年10月読了時)
  • ボキャブラ度:★★★☆☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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Star Bound

  • 発行:2010/Acer $7.99
  • 308ページ
  • 本邦未訳(2011年10月読了時)
  • ボキャブラ度:★★★☆☆

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 ジョー・ホールドマンの最新シリーズ第一巻Marsbound、第二巻Starboundを合わせて読了。分量的には日本でいう上下巻という感じで、一気に読めました。

 明らかに、火星年代記、レッドマーズ、楽園の泉、2001年宇宙の旅などの懐かしい宇宙SFを元ネタとしていますが、今風なアレンジにエロも加え、軽く、かつ懐かしく読ませてくれます。一見ヤングアダルト向けとも見えますが、案外、現代SFに付いていけないオールドSFファンも狙っているのかもしれません。今後高齢者が増えるSF界では、こういうマーケットも有望そうです。

 

 ホールドマンは、ベトナム戦争従軍の経験を下敷きにした「終りなき戦い」でネビュラ賞など三冠を獲得しましたが、その結果、常に問題作を期待され続け苦しみました。しかし、宇宙人難破ものをヤングアダルト風に描いた前作「カモフラージュ」で吹っ切れたように思われます。

 本シリーズでも、クラッシックなスペオペを、最近のアメリカの連続TVドラマの乗りで楽しませてくれます。

 欧米では相変わらず重厚な作品を期待するSFファンから散々な評判ですが、ホールドマンの本質は、本来このような軽い語り口にあるような気がしてきました。

 そういうわけで、うるさくいう必要もないのですが、誰が誰と寝たとかのエピソードがちょっと多すぎます。バクスターの絶滅シリーズのファンとしては、ロケットや機械を故障させてもっと登場人物を危機にさらせばさらに面白くなったのに、と思ってしまいました。

 シリーズ第三巻目のEarthboundは2011/12刊行。期待して待ちます。

 

2012/5 追記:思いっきり期待を裏切ってくれたEarthboundの書評はこちら。

 

●ストーリー●

 ■MARSBOUND

 18歳の少女カルメンは、両親に連れられ完成したばかりの火星のコロニーに長期滞在するため、軌道エレベーターのあるガラパゴス諸島にやってくる。そこで彼女は、宇宙船の船長ポールと出会い、火星への旅の間に恋に落ちる。

 しかし、到着した火星では、ポールの元恋人だった女性司令官が、ことあるごとに彼女を監視し迫害する。憤慨のあまり一人火星の砂漠にさまよい出たカルメンは、地下の洞窟に落下し骨折してしまう。瀕死の彼女を救ったのは、4本足・4本腕の謎の知性体だった。彼らは、はるか太古から数万年にわたり火星の地下にひっそりと暮らしていた。人類が文明を築いてからは、地球からのラジオやテレビ放送で人間の言語を習得し、人間の科学も学習していた。その一方、自らが長く使ってきた超技術についての知識は、なぜか全く失っていた。

 カルメンを通じて、彼ら「火星人」とファーストコンタクトを果たした人類だったが、そこには「火星人」自身も知らなかった、二重三重の罠が隠されていた・・・

 

 ■STARBOUND

 人類は、火星人の献身で絶滅の危機を間一髪で回避した。カルメンとポールは、謎の存在「アザーズ」が住む24光年かなたの恒星・ウルフ25へと向かうことになる。急造の恒星間宇宙船には、彼女らを含め7人の地球人・2人の火星人が乗り組むが、元軍人が複数含まれるなど、その選抜理由には不明な点が多かった。

 彼らが乗り込む恒星間宇宙船アド・アストラは彗星核推進剤とし、数十年で目的地に到達できるはずだった。主観時間で数年後、中間地点に到着したアド・アストラは、エンジンを停止し減速に入るための回頭に入った。そのとき、外部エアロックを誰かがノックした。
 地球と火星の真実の歴史が、カルメンたちの前に明らかとなっていく。

 

●覚えたい単語●

 barge はしけ、mucus 粘液、vigil 寝ずの番、swerve 急に向きを変える、sediment 沈殿物、detrimental 有害な、solidarity 結束、permeate しみ渡る、perpetrate しでかす、surrogate 代理人



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