Review/レビュー
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Future Visions

  • 編者:マイクロソフト編
  • 発行:Microsoft (2015/11/17)
  • 2015年12月読了時、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★★★☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

   →Amazon  →楽天Kobo版

 あのマイクロソフト社が編集発行したSFアンソロジーです。

 Amazon,Kobo,iBook などから無料でダウンロードできます。


 マイクロソフトは、先端技術の未来を考えるプロジェクトの一環として、多くのSF作家を招待して同社の研究者と交流させました。このアンソロジーはその成果として、AI、VR、電子翻訳など、同社の最新の研究にインスパイアされた短編9編を収録したものです。


 グレッグ・ベア、アン・レッキーなど著名な作家が並んでいますが、普通のアンソロジーとして読むと肩透かしを喰らいます。プロジェクトの趣旨から寄せられた原稿をそのまま掲載しており、編集者による推敲や取捨選択がされていないようで、書籍としては市販のアンソロジーのレベルには達していません。

 しかし、アイディアが光る作品も何点かあり、初めての試みとしては評価されるべきでしょう。マイクロソフトには、懲りずにまた挑戦してほしいと思います。グーグルや他のベンチャーも追従してくれれば、新しいトレンドができるかもしれません。


 なお、収録作の中では、グレッグ・ベア、ロバート・ソウヤー、ナンシー・カレスをお勧めしておきます。


●ストーリー●  (以下、ネタバレあり。ご注意を。)


Hello,Hello :シーナン・マクガイア

 主人公は、耳の聞こえない妹のために、手話を音声に翻訳するアプリをインストールしてやるが、それから見知らぬ女性からいたずら電話が掛かってくるようになる。


The Machine Start :グレッグ・ベア

 本格的な量子コンピュータのテスト稼働を目前に、機器の点検をしていた技術者・ボーズは、自分の筆跡で「俺を探すな」と書かれたメモを見つける。


Skin in the Game :フォワード・エリザベス・ベア

 人気の女性ロックシンガーが、他人の感情を共有するアプリの開発のために、感情データの収録を求められる。


Machne Learning :ナンシー・カレス

 AIに社会性を持たせるため、子供との交流によりディープ・ラーニングさせようとするが、AIがそこで学んだものとは……。


Riding With the Duke :ジャック・マクデビット

 物理学者になる夢に挫折し鬱々として過ごすタクシードライバーが、知り合った女性から、映画の登場人物になりきれるバーチャルゲーム機をプレゼントされる。


A Cop's Eye :ブルー・デリクワンティ&マイケル・ロゼンタル

 AIが捜査の相棒となった時代の警官の日常を描いたコミック。
 なんで日本のマンガ家に頼まないんだ、と言いたい残念な出来です。


Looking for Gordo :ロバート・ソウヤー

 2030年、SETIが記録していた宇宙からの電波のデータを解析したところ、異星文明のものと思われる信号が発見される。インターネットに類似した膨大なデータで、雑多な画像と文字列が含まれていた。


The Tell :デイビッド・ブリン

 売れないマジシャンは、似非科学による詐欺のネタの解明を副業としていたが、今回の依頼はカジノが開発したという「予知」のトリックだった。


Another Word for World :アン・レッキー

 遠く離れた殖民惑星。言語の異なる2つの殖民者グループの間で、内戦が起きようとしていた。双方のリーダーは、飛行機に同乗し交渉会場に向かっていたが、何者かに撃墜される。二人は翻訳機もないまま荒野に放り出される。


●覚えたい単語● --電子書籍のハイライト記録から

gedankenexperiment 思考実験、prognostication 予言、bleeding edge 最前線にある最新の、ostentatious これ見よがしの




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