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Learning the World

  • 著者:ケン・マクラウド
  • 発行: 2005/Tor Books $7.99
  • 364ページ
  • 本邦未訳 (2007年7月読了時)
  • ボキャブラ度:★★★★☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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 本作は、受賞は逃しましたが、2006年ヒューゴー賞にノミネートされました。

 作者のKen Macleod(ケン・マクラウド)は、イギリスのSF作家で、宇宙SFを新しい視点からポップに描く「ニュー・スペースオペラ」の旗手だそうです。邦訳された「ニュートンズ・ウェイク」同様、本書も肩が凝らずに気楽に読むことができます。

 世代宇宙船による人類の恒星間殖民という古典的なテーマですが、殖民される星に住む異星人の視点からも描いているところが「ニュー」といえます。

 ただ、肝心の異星人の描写が今風ではありません。姿はコウモリそのものなのに、文化や考え方、行動がほとんどビクトリア時代の英国人です。(なにかといえば、お茶を飲む!) おそらく読みやすさ、感情移入のしやすさを優先させた結果とは思いますが、すれっからしのハードSF読みとしては最後まで違和感が残りました。ふと、日本の明治維新は、欧米のSF作家の想像力を超えているかもしれないなあ、などと思いをいたしてしまいました。

 とはいえ、難しく考えずに、紅茶でも飲みながらのんびりと読むぶんには、オールドファンにもお若い方にも楽しめると思います。

●ストーリー●

 一万数千年後、人類は直径500光年の恒星に広がり、長寿化技術と巨大な世代宇宙船によりさらに殖民範囲を広げつつあった。しかし、まだ高等生命には遭遇せず、宇宙には生命はまれな存在と思われていた。

 今、宇宙船<しかし空だ。レディ!空がある!>号は、百万人の移民を乗せ4000年の航海の果てに、目的の恒星に到着しようとしていた。しかし、その間際、恒星をめぐる惑星に、予想もしなかったコウモリに似た異星人「バットピープル」の文明を確認する。船の委員会は、惑星に、ナノ技術を使った観測装置を送り込んだ。

 

 バットピープルの文明は、蒸気機関と飛行船を建造できるまでに達していたが、電波や飛行機はまだ実用段階に至っていなかった。

 バットピープルの若き天文学者・ダービンは、偶然撮影した天文写真の中に「減速しつつある彗星」を発見し、友人で亡命科学者のオロとともに、論文として発表する。その直後、2人は軍の調査機関に拘束され、高高度を高速で飛行する謎の物体の写真を見せられる。

 一方ダービンの恋人で生物学者のクワビーンは、各地に発生した新種の昆虫が電波を放出していることを発見する。その昆虫は自然のものとは思えない結晶や銅線を内蔵し、見たものを電波として放出していた。

 ダービンら3人は、結成された軍の研究チームに加わる。開発段階にあったテレビジョンを利用して昆虫の電波をモニターしていたところ、惑星の地図を虫に見せたとき、突然テレビにエイリアンの姿とメッセージが放送される。

 

 宇宙船は混乱していた。虫型探査装置から送られた地図に反応して、AIが自動的に到着メッセージを送信してしまったのだ。移民団の中では、文明が発見された以上殖民を延期したい指導者層に対し、若年層は殖民開始を主張し始め、船は二分されようとしていた…。



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