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MANIFOLD : ORIGIN

  • 著者:スティーヴン・バクスター (Stephen Baxter)
  • 発行:2002/Voyager books UK £6.99
  • 2003年1月読了、本邦未訳
  • ボキャブラ度:★★★★☆
     ※個人的に感じた英単語の難しさです。

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 MANIFOLD(多様性)シリーズ三部作の完結編です。「宇宙に知性体がいるのなら、なぜ地球に来ていないのか」というフェルミのパラドックスの謎にひとつの解が示されます。


 前二作『Time』、『Space』でも登場したNASAの宇宙飛行士マレンファントと妻エマが、今回は多元宇宙を放浪する「赤い月」の原始世界で奮闘します。構成の面では、第2巻同様に頻繁な視点の切り替えが続きますが、作者の技量が向上したのか、以前よりずっと読みやすくなっています。

 しかし、ロストワールド的ストーリー展開が延々と続く割に、バクスターにしては結末にもうひとつ物足りなさを感じるところです。シリーズ前2作の謎解きというより、バクスターのもうひとつの3部作であるマンモスシリーズ(マンモス―反逆のシルヴァー 邦訳:海外SFノヴェルズ) と、タイム・シップ〈邦訳:ハヤカワ文庫SF)のアイディアを統合した、という感もあります。ローカス誌のインタビューによると、バクスターは、今後、知性の進化をテーマにしたシリーズと、多元宇宙の3部作を予定しているようなので、そちらのほうにつながっていくんでしょうか。期待しましょう。


 なお、二作目で登場した根本が、今回はNASDAの宇宙飛行士としてマレンファントの相棒になり、謎解きの狂言回しとして活躍します。


●ストーリー●


 妻のエマとともアフリカを旅していた宇宙飛行士マレンファントは、突然NASAから引退勧告を受けた。急ぎ戦闘機でアメリカに戻ろうとしたとき、彼らはアフリカの空に出現した巨大な光る輪に遭遇し、エマがその中に飲み込まれてしまう。同時に月が消滅し、代わって火星より巨大な「赤い月」が月軌道に出現する。


 新たな月の巨大な引力のため、地球は大津波や気象異変に見舞わるが、赤い月には空気や植物の存在が確認される。エマが月に生存していることを確信したマレンファントは、日本人宇宙飛行士ネモトとともにNASAを説得し、急造の宇宙船で赤い月へと飛び立つ。


 そのころエマは、赤い月で、ネアンデルタール人やホモエレクトゥス、アウストラロピテクスが共存する異様な世界に遭遇し、困難なサバイバルを強いられていた。マレンファントとネモトはようやく赤い月へ到着するが、そこで知ったのは、この月が多元宇宙を次々と移動して、人類の「種」を、それぞれの地球にばら撒いているということだった。しかし、突然次元の転移が起こり、マレンファントたちは自分達の宇宙から切り離されてしまう。

 やがて、新たに転移した地球の住人が、「赤い月」に探検にやって来た……




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