「まずは、短編集か雑誌でも読んでみるか...」
私もそれで引っかかりました。
実は、短編の英語は長編の2倍難しいんです。
長編は、状況説明が会話でされることも多く、単語や構文は比較的シンプルです。一方、短編は密度が濃い分、単語・構文とも複雑になりがちで、読み飛ばすと意味が取れなくなってしまいます。
また、登場人物や世界設定の理解は小説の最初の難関ですが、長編はいったん頭に入ればあとはストーリーを追うだけなので、読めば読むほど楽になります。一方、短編は作品ごとにその作業が必要なので、雑誌や短編集を1冊読みきるのは大変なのです。
さらに、複数の作家の作品の寄せ集めである雑誌やアンソロジーは、初心者にとってよりハードルが高くなります(理由は後ほど詳説)。特に雑誌の定期購読は、毎号の読み残しが積み重なり、精神衛生上はなはだよろしくありません(私も何回かハマりました)。
そこで初心者向けの条件を示すと、
本邦未訳をお勧めするのは、訳本に頼れないということで踏ん張りが効き、また読了後の満足感(お得感)が大きいからです。
ところで、学習者向けに簡単な単語を使って書き直した小説本が出版されていますが、どうでしょうか。(例:マクミランランゲージハウス社)確かに読みやすいのですが、我々の目的に限って言えば、練習用の1冊程度に留めておくべきだと思います。中高年は残り時間が少ないのです。保証しますが、さっさと「本当に読みたい本」を手に取り、多少の苦労は厭わず1冊読みきるほうが、満足感も読解力も高まるはずです。
そうはいっても、苦労して読了したら「なんじゃこりゃー」というケースもままあります。そこで、SF・ミステリー系の場合は、毎年の各賞のノミネート作品から選択すると、多少リスクを回避できます。
目星をつけたら、アメリカ本家のAmazon.comの書評も眺めてみましょう。アメリカ人は毀誉褒貶が激しいので、どっちを参考にすべきか迷うこともありますが。
なお、諸表の評価が高くても、その中でliteraryとか、intellectualとか、conceptとか言っていたら要注意です。外国語でブンガク的・実験的というのは、非ネイティヴにとってはチンプンカンプンと同義なことが多いからです。
2冊目以降にお勧めしたいのが、お気に入りの一人の作家を追っかけることです。
小説で使われる語彙やフレーズは、それぞれの作家で指紋のように決まっています。語彙の分析で文書の作者が誰かを調べる「計量文献学」という学問さえ存在します。
つまり、
一人の作家がよく使う語彙やフレーズは偏りがあるので、1冊めに覚えた単語が、同じ作家の他の本に出てくる確率は極めて高いのです。このため、1冊目より、2冊目、3冊目と読むのがどんどん楽になり、単語力も付いてくるのが実感できるはずです。シリーズ物や3部作(トリロジー)などは、登場人物や世界設定にもなじみができるのでお勧めです。
先ほど、雑誌やアンソロジーは初心者向けではないと述べたのは、この理由からです。複数の作家の異なる文体と語彙を一度に読みこなすのは、ある程度英語力に自信がついてからにしたほうが無難です。
なお、この方法で追っかけした結果「俺、すごい英語読めるようになったじゃん」と思って、別の作家に手を出すと……、必ず自信喪失します。でも、落ち込まないで。新たなステップに踏み出しただけなんですから。息を整えて、次の作家に挑みましょう。
これから本格的に洋書を読もうと思う方は、紙にこだわりがないかぎり、Kindleの電子ブックで始めましょう。スマホにKindleアプリをインストールすれば、すぐに読み始められます。
欧米では、ハードカバーや雑誌も紙版と電子ブックが同時発売されるので、新刊書でもOKです。
電子書籍が洋書読みの福音となったのは、辞書引きがワンタッチになったことです。私も、指タッチの辞書引きを体験をした時点で、長い間こだわってきた電子辞書を一瞬でお蔵入りにしてしまいました。(^ ^;) 「入力不要」の英和辞書がタダで手に入ったんですから。Kindleでは、専用端末のほかiPad、iPhone、Androidのアプリでも英和辞書が利用できます。
ある程度洋書が読めるようになったら、Kindle以外の電子書籍のアプリもインストールしておきましょう。実は、Amazonはシェアが高まるにつれ電子化の条件が独善的になってきていて、その反発からかKindleへ作品を提供しない作家がでてきているのです。このような場合、Kindleで出版されていなくても、別の電子ブックで探すと見つかる場合があります。
国内で洋書が買える電子ブックは 楽天のKobo と アップルのiBooks があります。(このほか「GooglePlayブックス」がありますが、2013年現在アプリが不安定なのでここでは触れません。)
いずれもKindleにはない電子ブックが買えたり価格も安かったりします。Amazonの横暴を抑えるためにも、対抗軸として頑張ってほしいところです。
ネット上には各社のショップ以外でも、KindleやKoboのアプリで読める英語の電子書籍(htmlやpdfも含む)がたくさん存在します。入手先の例をお示ししておきましょう。新刊本でも、無料で公開されることがありますので要チェックです。
Amazon - kindle
雑誌・電子書籍
フリー・テキスト
英語圏では、著作権切れの古典はもちろん、現役作家の作品でも、オンライン・テキストの無料公開が増えています。Freeの成功以来、期間限定で無料版を公開する出版社も出てきました。
ただし、先にも述べましたが、短編の場合、英語のレベルはかなり高いものが多いので、ご注意を。
著者やファンのサイト
日本では出版社も作家も電子化に及び腰ですが、欧米ではクリエイティブ・コモン・ライセンスなどを利用し、著者自身が作品を無償公開する例が増えています。近年のヒューゴー賞の候補作などでは、そのほとんどがオンラインで読めてしまいます。⇒ワールドコンのサイト
下記は公開されている長編の例です。気になる作家がいたら検索してみましょう。
ストーリーを追うだけなら電子書籍が最適ですが、アートやお気に入りの本などは、やはり紙の本として手元におきたくなります。
紙の洋書も、やはり アマゾン が質・量的にも最大ですが、紀伊国屋BookWeb、楽天ブックスなどの大手のオンライン書店でも、思わぬ安売りをやっていることがあるので、ときどきチェックしています。アマゾンでは、海外から直送する個人書店?が出品しており、さらに安く手に入ることもあります。
英米の小説は、ハードカバー発売後、半年から1年でペーパーバック化されますが、売れ筋の場合、さらに安い「マスマーケット版」が出ていることがありますので、検索するときは要チェックです。
雑誌の場合は、海外の出版社に直接個人定期購読を申し込む方法が最も安価です。(クレジットカード必須ですが、アシモフ誌が1冊300円!)