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ねっと仕事術 Lesson 4

市民との協働で、世界に自治体情報を発信!

ウィキペディアとYouTubeで無料の広報

あなたの自治体の情報は、全国・世界にどれだけ発信されているでしょう。
「フリーの百科事典」ウィキペディアと映像配信サイトのYouTubeを、全国・世界に向けた広報ツールとして活用する地域・自治体が増えています。

必要なのは、「やる気」とちょっとしたノウハウだけです。

※ 本シリーズ0〜12は、筆者が月刊ガバナンス(ぎょうせい)2007年1月号〜12月号に
   連載した同名の記事を大幅に加筆修正したものです。

 

あなたが編集するウィキペディア

Q子 ウィキペディアで見たら、他の自治体に比べて、うちの市の情報がちょこっとしか載ってなくて、しかも人口とかデータが古いんですうっ。 まずいですよね?

亭主 あ、そう。  じゃ、書き直しておいたら?

Q子 ええっ! 私が直しちゃっていいんですかぁ?

 自治体が、全国・世界に向けた観光や企業誘致のPRを、公式ホームページを使って行おうとすると、内部手続きや委託費用で手間ひまがかかることは容易に想像がつきます。

 しかし、ウィキペディアのような投稿サイトなら、誰でも柔軟に情報を追加していくことができます。例えば、函館市の記事には2008年現在23言語版があります。

 今回は、ウィキペディアなど、世界規模の投稿サイトの特徴を生かし、世界に向け自治体を広報する方法をご紹介します。

 【図1】ウィキペディア  (各国語版が充実している函館市の例)

ウィキペディア(Wikipedia)とは

 ウィキペディアは、非営利組織のウィキメディア財団が運営する「フリーな百科事典」で、2008年現在、言語数250、英語版256万項目、日本語版52万項目を擁し、日々拡大を続けています。

  ウィキペディアの記事は、注目度の高さからYahooやGoogleなどの検索結果でも高頻度で上位にランクされ、SEO効果が高いことがうかがえます。もったいないことに、ウィキペディアで日本の自治体関係の情報は、あまり充実しているとはいえませんが、手軽に無料で自治体の情報を発信できる最強のWeb2.0ツールとなり得ます。

 

記事を投稿するには

 ウィキペディアへの投稿は非常に簡単で、多少の書式指定を除けば、掲示板への投稿とほとんど同じです。

  しかし、世界中の人たちの投稿の積み重ねの中で決められてきた基本的なルールは、理解しておく必要があります。

○アカウントを登録する
  アカウントがなくても記事の投稿は可能ですが、変更の確認や写真の投稿にはアカウントが必要です。 ページの最上部の[ログインまたはアカウント作成]から入り、メールアドレスなど必要項目を入力して登録します。(図−A)
  なお、アカウント登録をしないまま投稿すると、投稿した組織やプロバイダのIPアドレスが記録されます。記録されたIPアドレスから組織名を検索するソフトも公開されており、国の某省のお役人が勤務中にガン○ムの記事を投稿していたことがバレたのは、記憶に新しいところです(ソース)。ウィキペディアでは、投稿履歴が永久に残されます。

 公務員の場合は、このような問題を避けるため、個人のメールアドレスで登録し、1市民として自宅から作業することをお勧めします。

 

○投稿の前に「編集入門」を読もう
  ウィキペディアのヘルプ(図−@)の「編集入門」では、必要事項が分かりやすく説明されています。初めて書き込みする前には、必ず読みましょう。

 

○サンドボックス(練習板)で練習する
  記事のレイアウトには、独自の書式(マークアップ)を使います。簡単ですが、ある程度の慣れが必要です。まず、練習用の「Wikipedia:サンドボックス」で投稿の練習をすることをお勧めします。

 

○著作権とウィキメディア・コモンズ
  編集入門でも強調されていますが、著作権と肖像権には最大の注意を払ってください。例えば、市のホームページの丸写しは、著作権の侵害です。必要な場合は、引用元を明記します。
  また、自分で撮った写真を掲載する場合は、世界中の誰もが自由に引用できるように、「ウィキメディア・コモンズ」でアップロードすることが推奨されています。

 

○ウィキペディアの3大原則を守る
  ウィキペディアは百科事典です。投稿にあたっては次の3大原則を守りましょう。

@ 他者が検証可能であること

A 中立的な観点

B 独自の調査物の排除 (あなたが直接調査・研究したものでないこと。紙の百科事典だって、執筆者は公表されている情報を分かりやすくまとめるだけですよね。)

 また、誰かが書き加えた文章は、自分に都合の悪い内容を含んでいても事実である限り、勝手に消すとトラブルになる場合があります。

 

記事をどう充実させていくか

 ウィキペディアでは、組織に頼らなくとも、職員個人や市民有志による「勝手連」によるページ作成が可能です。(というか、そのほうがやりやすい)

  したがって、記事は一気に作るのではなく、少しずつ充実していくほうが、良いものができます。以下のような手順で進めていく方法がお勧めです。

@ 最初に日本語版を充実させる
  検索してみると分かりますが、日本語版ウィキペディアでは、ほとんどの市町村について、簡単な記事の枠組(「スタブ項目」といいます。)を用意してくれています。他の自治体のページを参考にしながら、自分で撮った写真などを追加していくことで少しずつ充実していくことができます。
  観光地や特産物など、関連項目のページを新たに作ることも可能です。しかし、「百科事典」にふさわしい項目であること、客観的な記述にすることには留意してください。

A 次に英語版の充実
  日本語の次は、英語版を書き込み、日本語版とリンクさせます。各国語版は、誰かが英語版の記事から翻訳してくれるケースが多いからです。英語版も、日本の市町村についての「スタブ項目」がありますので、それに追記しましょう。
  不完全な英語でも、とりあえず意味が分かる書き込みであれば、他の書き手が修正してくれるのがWeb2.0の強みです。また、英語版ウィキペディアの「Wikipedia:Translation」のページに、翻訳依頼を出しておくと、誰かが翻訳してくれる場合があります。その他の各国語版も同様です。

B 市民協働
  最も好ましいのは、執筆や翻訳について、職員有志や住民が市民協働で進める方法だと思います。外国人の住民もいっしょに地域の魅力を探しながら作業すれば、新しい輪ができるかもしれません。

 

YouTubeや他の投稿サービスも使ってみよう

 ウィキペディア以外にも、同様に活用できる投稿サービスが増えています。

 例えば、映像配信の「YouTobe」や旅行専用の「ウィキトラベル」は、ウィキペディアほどのルールが厳しくなく、日々更新されていくので、観光誘客用としてさらに有効かもしれません。
  特にYouTubeは、動画ですから詳しい翻訳がなくとも理解できます。面白ければ世界中から視聴されるので、有効な媒体として自治体自身による投稿も増加しています。
  特に函館市は、2008年にPR動画数十本の作成とYouTubeへの投稿を外部委託し注目を浴びています。その第1作はなんと、「函館滅亡!? イカール星人襲来」!!

 

      ▼函館市のYouTube投稿映像

 

地域のPRこそ市民との協働の出番

Q子 おっもしろ〜い!
でも、役所がばんばん投稿するとなったら、真面目な人たちから横槍が入りそうな気がしますねぇ。

亭主 まあ、そういうこともあるかもしれんのう。  じゃが、市民や個人が勝手に投稿する分には問題なかろう? 地域の良さをみんなでPRしていく。そういう分野でこそ、市民との協働の力が発揮されるはずじゃ。
もっとも今後は自治体も、PR映像を作る場合は、YouTubeなどへの投稿が可能なように、あらかじめ著作権関係を調整して作成する配慮は必要じゃ。

 

(2008/10加筆) 

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  本シリーズの登場人物

B男
入庁7年目。不勉強を不遜な態度でごまかす名人。
Q子
入庁3年目。空気を読まない質問で場を凍りつかせる才女。
亭主
入庁xx年目。種族不明。
最近、忘却力がレベルアップしている。