Puppy Studio 3.1

  お世話になっている理髪店のご主人が、PCオーディオに凝っていて、話を聞くうちに DAC (Digital Analog Converter) というものを知りました。Vista のパソコンをお持ちなので、Precise 571JP や Tahrpup をお勧めしたのですが、ネットで調べてみると、DAC のうち USB オーディオ規格に準拠しているものは、Linux でも特別なドライバを必要としないことが分かりました。さらに、Linux のほうが Windows より音がいい、という理由で、Linux を使う人がある程度存在することも分かりました。

  Audiovisual 機能を強化した Ubuntu Studio の他に、Puppy Studio というものがあることを知って利用してみました。マシンは ThinkPad T42 です。
  最初に、なるべくサイズの小さいものを、と考えて Puppy Studio 3.1 Lite (realtime kernel) を起動してみましたが、無線 LAN アダプタが認識されませんでした。ビデオの設定も手動で行う必要があるなど、通常の Puppy に備わっている機能が削られているようでした。
  YouTube も視聴したいので、無線 LAN 対応が充実しているという、標準カーネル (2.6.33.2) の Puppy Studio 3.1 を使うことにしました。日本語化は lang_pack_ja-2.0.sfs を利用しています。Lucid Puppy (Lupu) 5.1.1 ベースということで、設定上の留意点も Lupu 5.2.8 の場合とだいたい同じです。
  ビデオは、quickpet を通じて Xorg_High パッケージ (OpenGL 関連) を追加。xorgwizard で 1024x768x24 を指定、自動生成された xorg.conf に、以下の記述を追加しています。

Section "Device"
Identifier "Configured Video Device"
Option "GARTSize" "32"
EndSection

  GARTSize は何も指定しない場合 8MB です。それでも動きますが、動画再生の時など CPU に負担がかかって熱くなります。このマシンの場合 64MB が最適な値だと思われますが、今回はメモリの節約のため 32MB を指定しました。(設定できる値は、8, 16, 32, 64 ... です。中途半端な数値を設定すると無視されます。) 余談ですが、カーネル 3系になった頃から、KMS (kernel mode setting) がデフォルトになって、ユーザーが xorg.conf をいじるのは困難になりました。しかし、古いマシンの場合、自分で調整したほうが、よいパフォーマンスを得られることがあります。

  指紋認証装置と赤外線は使わないので、設定を省略しました。これらの機能が使えることは Lupu 5.2.8 で確認済です。カーネルが共通なので、必要なソフトウエアを入れれば、Puppy Studio 3.1 でも使えるはずです。モデムは最初から認識されていますが、これも使うことはないでしょう。
  Ubuntu Lucid のレポジトリは、もう利用できなくなっているようです。Lucid はずいぶん前にサポートが終わっていますし、この4月に Precise もサポートが終わったくらいなので、仕方ありません。なお、パッケージ名で web 検索すれば、大抵アーカイブにたどり着くことができます。

  このディストリビューションは "Studio" を名乗るだけあって、マルチメディア関連のアプリがてんこ盛りです。例えば、動画編集 Openshot、音声編集 Audacity、 ドラムマシン Hydrogen などがあります。MIDI 関連も充実しています。REAPER という打ち込みのためのソフト(?)を動かすために wine もインストールされています。そういうわけで、Puppy Studio は通常の Puppy と比べるとサイズが相当大きくなっています。

studio desktop
  Puppy Studio 3.1 のデスクトップ (壁紙は変更しています)
  world-famous な ZARD はアルバムアートまで表示されます。AKB では、こうはいきません。


  CD ripper がメニューに見当たらなかったのですが、Asunder が入っていました。自分で asunder.desktop ファイルを作ってメニューに登録しました。一方、メニューには Firefox があるのですが、なぜか実体は入っていません。SeaMonkey を入れました。メディアプレーヤーとしては GNOME MPlayerVLC が入っていますが、日本語 CDDB にアクセスできない(設定も不能)ので、Lupu 5.2.8 で実績のある Audacious を入れました。

  肝心の音は... 標準カーネルなので、他の Puppy と同じです。バージョンによって微妙な違いはあるかもしれません。最初、他のPuppy より音がいいかも、と思ったのですが、ミキサーの設定によるものでした。私はミキサーで PCM の値を上げて、マスターボリュームを控えめにする習慣がありました。しかし、Archwiki によると、音質を改善するにはゲインが 0 になるように設定するとよいということでした。初期値は 75% になっていますが、これがゲイン 0 となる設定だったのです。つまり、PCM の値をいじらなければ、バランスのよい音が聞けるわけです。(ThinkPad X121e では、PCM の初期値 = 100% です。ハードウエアにより異なるようです。) 音方面に詳しい人から、そんなこと常識だよ、と言われそうです。

  私は動画編集や MIDI の打ち込みなどしませんし、音が他の Puppy と同じなら、Puppy Studio を使う理由はほとんどありませんが、この毛色の変わった Puppy をしばらく使ってみようと思います。(残念ながら、Puppy Studio の開発は終了しているようです。)

追記: このバージョンは、新しいハードウエアでは動かない可能性があります。 動画編集などを行ないたい方は、適切なバージョンのOSやアプリを利用なさることをお勧めします。

Puppy Studio その後

  mtPaint のメニュー表示がおかしいことに気づきました。lang_pack_ja-2.0.sfs に含まれている mtpaint.mo (日本語メニュー) がこのバージョンに適合していないのでしょう。それで、mtpaint_3.31_i386.deb をダウンロードして、抽出した mo ファイルで置き換えました。旧バージョンの lang_pack なら適合するのかもしれません。

  TiMidity で XG フォーマットの midi ファイルを再生しようとしたら、一部の楽器の音が鳴りませんでした。GM (general midi) や GS 規格のファイルはちゃんと再生されます。
  Puppy 4.1.2 や Lupu 5.2.8 にインストールした TiMidity は XG フォーマットでも再生できます。(近い音で代用しているのだと思われます。) Puppy Studio に搭載されている midi 音源は "freepats" ですが、設定ファイルが XG フォーマットに対応していないのでしょう。設定を自分で書く知識はありませんので、音源 "minishom" をフォルダごとコピーしてきて、/usr/share/timidity 以下に配置しました。これに合わせて /etc/timidity/timidity.cfg を修正したら、音が鳴るようになりました。所詮、代用の音ですが、Linux 用の XG 音源(ソフトウエア)などないでしょうから仕方ありません。wikipedia によると、XG 規格は過去のものとなりつつあるようです。
2017年5月

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Lucid Puppy の改良

  ThinkPad T42 で運用している Lupu (Lucid Puppy) 5.2.8 に少し手を加えました。

フォントのレンダリング

  以下は、Lupu の初期状態での表示です。

figure1 figure2

  左の 13pt では、「菓」の表示がおかしいです。右の 14pt では、「画」の表示がおかしいです。画面上の漢字は、少ないドット数で表示するので、適当に省略されたものになることが多いです。しかし、「菓」や「画」 はさほど複雑な文字でもないので、一部が欠落するのは不可解です。
  Puppy 4.1.2 では、Firefox 44 を起動するために、fontconfig-2.11.1-i486.petfreetype-2.5.5-i486.pet をインストールしました。その結果、フォントのレンダリングは改善されています。Lupu にも、これらのパッケージをインストールしました。

(7月追記)
  インストール後、 /etc/fonts に fonts.conf.bak というファイルができます。bak という拡張子が付いていますが、 これが新しい fonts.conf です。(new とか sample という拡張子がふさわしいと思いますが...)

fonts.conf → fonts.conf.old に名前を変更
fonts.conf.bak → fonts.conf に名前を変更

これ、大事なことですが、記載を忘れていました。お詫びします。m(__)m
(追記終り)

  古いシステムでは、/etc/fonts にある fonts.conf や local.conf に記述を追加することで、フォント関連の設定を行いますが、最近は、基本的に /etc/fonts/conf.d にリンクを作ることでコントロールするようです。このリンクは /etc/fonts/conf.avail にあるファイルを指しています。設定をオフにする場合はリンクを削除します。ファイルそのものを削除するわけではないので、 再び有効にすることもできます。 今回はできるだけ、この仕組みを活かして設定しました。
  local.conf には YouTube の広告文字化け対策だけ記述しました。そういえば、YouTube では最近、広告がほとんど表示されなくなって、すっきりしました。(広告の自粛は一時的な措置だったようです。その後、もとに戻りました。)

/etc/fonts/local.conf

<?xml version="1.0"?>
<!DOCTYPE fontconfig SYSTEM "fonts.dtd">
<fontconfig>

    <match target="pattern">
        <test qual="any" name="family">
            <string>sans-serif</string>
        </test>
        <edit name="family" mode="append" binding="same">
            <string>M+1P+IPAG</string>
            <string>IPAPGothic</string>
        </edit>
    </match>

</fontconfig>


figure3

  デスクトップ (ROX-Filer) が使うフォントやメニューのフォントをプロポーショナルフォントにするため、65-nonlatin.conf に記述を追加しました。

sans-serif の alias 設定

 ・
 ・
<family>MgOpen Modata</family>
<family>M+1P+IPAG</family> <!-- 追加 -->
<family>IPAPGothic</family> <!-- 追加 -->
<family>VL Gothic</family>
 ・
 ・

  ブラウザの表示を改善するために、"liberation" という他の Puppy にはないフォントを削除、ROXTerm がこのフォントを使っていたので、IPAGothic で表示するように設定変更しました。ターミナルの表示は等幅フォントのほうが都合がいいのです。

  フォントの設定に応じて表示されるフォントが変わりますが、文字が全く表示されなくなるようなことはありません。 システムにどういうフォントがインストールされているかによっても、表示は違ってきます。

(7月追記)
  Courier, Helvetica などのビットマップフォントが利用できなくなっていることに気づきました。代替のフォントが使われるので、実用上、何も問題はありませんが、web サイトによっては、表示されるフォントに違いが生じます。ビットマップフォントを有効にするには、

/etc/fonts/conf.d (上図) の 70-no-bitmaps.conf を削除して、70-yes-bitmaps.conf (リンク)を作成します。
/etc/fonts/fonts.conf に、フォントのパスを追加します。

 
 ・
<dir>/usr/X11R6/lib/X11/fonts</dir>
<dir>/usr/share/X11/fonts</dir> <!-- 追加 -->
<dir prefix="xdg">fonts</dir>
 ・
 ・

  Tahrpup でも、ビットマップフォントはデフォルトで無効になっています。ビットマップフォントは拡大すると輪郭がギザギザになります。 それが、使われなくなった理由でしょうか。
(追記終り)

GNOME MPlayer のインストール

  Lupu 528 のデフォルトメディアプレーヤーは xine-ui ですが、レコチョクからダウンロードした f4a, m4a 形式の音声ファイルを再生できませんでした。Puppy 412 には、xine-lib や ffmpeg のアップデートを施してあるので、再生が可能です。同じパッケージをインストールすることで解決するかもしれない、と考えましたが、Lupu には適合していないようで、インストールできませんでした。

  Puppy Studio 3.1 (Lupu 5.1.1 ベース)の GNOME MPlayer では再生が可能なので、これをインストールすることにしました。必要なパッケージは...

ffmpeg_lucid52-0.pet
mplayer_lucid52-0.pet
gnome-mplayer_lucid52-0.pet

  インストールの際に、一部のファイルがシステムにあるものと競合するので警告が出ますが、これはインストールを強行するしかありません。 (不具合が生じる恐れもあるので、予め save file のバックアップをとっておきます。)

  インストール後、ffmpeg のバージョンを見てみると、Lupu 528 オリジナルのものよりバージョンが下がっていますが、f4a, m4a ファイルは再生できました。どうやら、ffmpeg のバージョンよりも、パッケージ作成者がコンパイルの時に指定したオプションの違いが影響しているようです。ffmpeg を利用する FFConvert というメディアファイルコンバータも大丈夫なようです。試しに f4a などの形式を mp3 に変換してみましたが、問題ありませんでした。



  Lupu 528 のベースになった Ubuntu Lucid はとっくの昔に、サポートが終了していて、今ではパッケージマネージャも機能しません。(ただし、pet 形式のパッケージは、puppy のレポジトリにあるので、今でも利用できます。)

  私が ThinkPad T42 で古いバージョンの puppy を使う一番の理由は、ビデオチップのサポートです。一般に、AGP 接続の古いビデオチップは、571JP や Tahrpup の KMS (kernel mode setting) のもとでは、X の起動はできても、性能を発揮できません。古いパソコンを使う場合、このようなデメリットを承知の上で新しい OS を入れるか、あえて古い OS を入れるかの選択になると思います。古い OS ではセキュリティ関連も含めて、自分でメインテナンスしなければなりません。それは面倒だ、ということなら、古い PC の利用は諦めるしかありません。

  Ubuntu などの Puppy 以外のディストリビューションでも事情は同じです。サポートが切られて、レポジトリも利用できないようなら、ある意味、Puppy よりも悲惨でしょう。良くも悪くも Puppy にはサポート期間という考え方がないので、"at your own risk" で使い続けることができるのですが、このような使い方は、初心者にはお勧めできません。(Tahrpup には必要最小限の update 機能があります。)
2017年6月

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