スキャナってどれがいいの? 

[デジタル機器のお話し Vol.05, 2000年07月04日UP]

 スキャナが特殊な機器の一つだったのは遥か昔のことで、今じゃパソコンショップに行けば普通に売ってますよね。 値段だって「一大決心でローンを組む金額」から、「子供の写真を葉書にしたいので買うお父さんの小遣い」程度になりました。 (それでいて性能はすごいあがってるし、昔に何台も買った「おやじ」は何を書こうとしても愚痴ばかりが出てきます。(^_^;)

 まあ、そんなスキャナですが、もともとは印刷の現場で画像の製版のために使われてきました。 製版というのは、カラー画像の色や明暗の情報を4つの「版」に分け、印刷に使う「網点」に置き換えることなんですが、 スキャナの画像をデジタルデータ化できる機能を「パソコン」の取り込み装置として利用したわけです。

 製版用のスキャナはもちろん高価な(数千万円〜数億円)もので、使うにも専門の知識と技能が必要なものです。 それに比べて、パソコンの画像入力機器として作られてる最近のものは、安価(数万円〜数十万円)で簡単なものが多いです。 (でも、色の知識が必要なことや、画像を扱うという意味では「簡単」なはずはないんですけどね..。)

詳しく話すとキリがないスキャナですが、ここでは初めて買う人のために基本的な説明をしたいと思います。

・スキャナの仕組み
 仕組みといっても、おやじは技術者じゃないんで詳しいことは知りません。 ただ、ほとんどのPC用のスキャナは「CCD」を使ってるので、デジカメに似ているとも言えるでしょう。 (CCDについては「デジカメ」や「CCD」の話しを参照ください)
 デジカメとの一番の違いは、CCDが「四角」ではなく、「線(ライン)」状に並んでいることです。 これは、CCDが原稿全体をカバーしないといけないので、線にして「なぞる − 走査(スキャン)」ほうが効率いいからです。 (A4サイズの原稿を読み込むのに、A4サイズのCCD作ってたらすごい高価なスキャナになりますよね?)


 さて、ここで市販されている一般的なスキャナの「種類」と「特徴」をまとめてみたいと思います。

名称
価格帯
用途
説明
ドラム
スキャナ
数百万以上
製版・業務用

透過原稿向き
これは名前の通り「筒(ドラム)」に原稿を貼り付け、ぐるぐる回しながら読み込むタイプです。 製版用で使われることの多いタイプで、価格も高くほとんど一般的なものはありません。 光源や受光部も特殊なものが多く、操作も難しいものがほとんどです。ちゃんとした人が扱えば、 最高の画質を選られますが、一般の方では原稿をドラムにセットすることさえ難しいでしょう。 ここを読んでる人でこれを購入検討されてる人はいないと思いますが、一応説明のために加えときました。(^_^;)
フラットベッド
スキャナ
3万円〜

数十万円
一般〜業務用

反射原稿向き
皆さんが一番よく目にするやつじゃないでしょうか?。コピー機の上側部分をはずして持ってきたような形です。 A3からA4くらいの箱型で、上の蓋を開けると原稿を置くガラス面があり、ここで原稿を一ラインずつ読み取ります。 構造上、反射原稿(写真なら印画紙)を読むのは得意ですが、透過原稿(リバーサルなど)を読む場合は透過原稿ユニットを別に買わないといけません。 読める原稿サイズの割に価格が安し、使い勝手もいいですが設置すると場所を取ります。この上には物を置けない欠点もあります(経験談)。(^_^;)
フィルム
スキャナ
5万円〜

数十万円
一般〜業務用

透過原稿専用
最近は割と一般的になってきましたが、昔は業務用の高価なものばかりでした。 直方体を横にしたような形で、透過原稿のフィルムを「フォルダー」にセットして差し込みます。 一般的には35mm用が多いですが、もちろん4×5やブローニーを読めるものもあります(高価ですが..)。 ほとんど透過原稿専用といってもよく、モノクロ、カラー、ネガ、リバーサルを問わず読みこめます。 もし使うカメラが35mmサイズだけでいいなら、一番いい選択と思います。ただ、安くなったといってもまだ少し高価な気がしますが..。
シート
スキャナ
約3万円
一般用

反射原稿専用
じつはおやじはまったく使ったことがないスキャナです。フラットベッドに近い仕組みですが、 設置面積を小さくするため、CCDは動かずプリンターのように紙が移動してスキャンするものです。 価格的には安いんですが、どちらかというと写真などの画像より「文書」を読むのに向いているんじゃないでしょうか。 読み取り精度は原稿の送りに依存するし、画質よりスピード優先なんで写真で使うならフラットベッドの方がいいでしょう。
ハンディ
スキャナ
約3万円
一般用

反射原稿専用
これも使ったことはありません。CCDのパーツのみの細長い棒にパソコンと繋ぐケーブルがついたようなもので、 紙や雑誌の上を手でなぞって画像を取り込みます。読み込み精度はあまりよくないし、当然画像向きとも思えません。 どちらかといえば持ち歩き用で、図書館なんかで調べ物するにはいいんじゃないでしょうか。 使い道によって は面白いかもしれませんが、写真で使うなら接写の出来るデジカメにした方がいいと思いますよ。
その他
約1万円
一般用

反射原稿専用
変わったところでは、インクジェットプリンターのオプションで、つけると「スキャナ」になるアダプターがあります。 そういうプリンターをお持ちの方にはいいんじゃないでしょうか。多少の出費でスキャナの楽しみも味わえます。 でも、結局はシートスキャナに毛の生えたようなもんですから、わざわざそのプリンター買ってやるものじゃないです。 写真を楽しむための入門用といったところでしょうか..。

 こうやって全部説明しても、価格が高いものや向いてないものを除くと、結局「写真」に使えるスキャナは、 「フラットベッド」か「フィルムスキャナ」しかないということですね。(^_^;)じゃあ、どっちがいいんでしょう?。

フラットベッド
 ・反射原稿に向いている
 ・読み取り解像度は300〜1200dpi
 ・原稿サイズはA4までならOK
 ・透過ユニットは別売りで+1万円くらい
 ・透過ユニットでは読み込みdpiが物足りない(特に35mm)
 ・原稿がサービスサイズなら画像もそれなり
フィルムスキャナ
 ・透過原稿専用
 ・読み取り解像度は2400〜4800dpi
 ・原稿サイズは35mmフィルム専用
 ・反射原稿は読めない
 ・35mmのフィルム以外は読めない
 ・高画質が期待できるが手間と時間はかかる

 こういう違いがあると、やっぱり使う目的で選ぶしかないですね。ということでおやじの独断ですが分けてみました。

【フラットベッドスキャナが向いてる人】
 ・カメラは持ってるがデジカメは持ってない。
 ・普段はカラーネガを中心に使っていて、ほとんど同時プリントをしている。
 ・目的はHP用か葉書にプリントするくらいで、デジタルプリントはしない。

【フィルムスキャナが向いてる人】
 ・カメラもデジカメも両方持っている。
 ・35mmカメラが中心で、カラーネガやモノクロ、リバーサルも使う。
 ・たまに写真画質のプリンターでデジタルプリントする。

 自分がどちらに当てはまるかで選んでみてください。(^_^)


・スキャナのスペックについて

ところで、実際にスキャナを買うときはどこを見て選べばいいんでしょうか?。 サイズとか値段もありますので一概に言えませんが、「どのくらいの大きさの原稿」で「どのくらいの画像データ」にしたいかで決まるでしょう。 例えば、インクジェットプリンターでA4くらいに伸ばしたければ30〜40MBのデータ量が必要になります。 このデータを作るには、フラットベッドなら600dpi以上、フィルムスキャナなら2400dpi以上の読み込み解像度は欲しいですね。

スキャナのカタログ見てもデジカメのように「何万画素!!」なんて書いてありません。 これは、スキャナにとっては「どれだけ細かい」ピッチで読めるかが問題で、CCDの数自体はそれほど重要でないからです。 とはいっても、並んでいる方向のピッチはCCDの密度によります。これを「主走査」方向といいます。 一方、CCDを移動させて読み込む方向は「副走査」といいます。これはハードの制御次第で主走査より上げることが出来ます。 カタログには「最大1200dpi×600dpi」などと書いてますが、これは主走査が600dpiで副走査が1200dpiということを表しています。 一方向だけを倍の密度で読んでもあんまり意味ないので、600×600dpiが実力というところでしょうか..。

ちなみに、よく「dpi」と書いてますが、これは「Dot per Inch」の略で、1インチ(25.4mm) あたりを「何点」に分けてるかです。例えばプリンターで300dpiだったら、1インチの長さに300個の点を打っているようなイメージです。

他にも数字の出てくるスペックに、読み取り階調というのがあります。これは色を何段階に分けて読むかですが、これは「bit」で表示します。 この数字は「2の何乗」という意味で、パソコンの扱うフルカラーデータは通常「8bit(2の8乗=256)」です。 これは各色をそれぞれ256段階の濃度に分けているという意味です。よくグラフィックソフトに、色を「0〜255」の数字で入力する場所がありますよね?。 (ファミコン時代の昔のゲームはゴールドの最大値が255だったなぁ..)

ところがスキャナのカタログを見ると、出力階調はどれも「8bit」なのに、入力は8〜14bitと機種によって違います。 普通なら出力が8bitなんだし、入力も「8bitで十分」となりますよね?。ところが、写真の画像は256よりもっと多い階調を持ってます。 これを始めから8bitで読んでしまうと、いい結果にならないことが多いんです。 そこで10bitや12bitで読み込み、最適に調整して「8bit」のデータに出力するわけです。 数字が多けりゃいいってもんじゃないでしょうが、スキャナ選択の1つの要素でしょうか..。

最後に...

具体的に「これが1番のお奨め!」と言えればいいんですが、おやじも全部持ってるわけじゃないんでそうもいきません。 かといって、買って使ってみるまで「性能」は分からない商品でもありますね。(^_^;) (実際、今までに10bit読み込みなのに12bitよりいいスキャナや、ハードはいいのに読み取りソフトが「ヘボ」なものもありました。)

雑誌なんかに比較が載るときもありますが、ここは口コミ情報である程度の金額のものを買う方がいいんじゃないでしょうか..。 ということで、スキャナ情報は「写真相談室」でご質問下さい。 _(._.)_ では今日はこの辺で..。


※このコンテンツは全て2004年以前に書かれたもので、情報によっては現在と合わないこともあります。
※もし内容について確認したいことがあれば、「写真相談室」へご質問ください。

店内に戻る

TOPに戻る