標準レンズは写真の基本 

[撮影機材のお話し Vol.06, 2000年04月10日UP]

 前回一眼レフの話を書いたので、最近のカメラ屋さんを覗いてみたんですが、 店頭にはズームが付いた展示品がほとんどですね。 いわゆる「標準ズーム」付きってやつですが。でも、これって何が「標準」なんでしょうね?。 写真を良くわかった方が「欲しいレンズもついててお徳なんです」っていうんならいいと思うんですが、 これから写真を始める方や、初めて一眼レフを買う人にはあまり良くないように思います。

おやじは「ズーム」を否定するわけではないんですが、出来ればビギナーこそ「標準レンズ」を付けて買って欲しいですね。

・標準レンズとは?

昔、標準レンズというのは本当に一眼レフに「標準」で付いてました。すでに持ってる人を除けば、一眼レフと共に必ず買ったもんです。 具体的には35mmカメラでいうと「50mm F1.4」などの単焦点が「標準レンズ」になります。 一般の人は「望遠」や「広角」や「ズーム」じゃない「普通のレンズ」みたいに思ってる人も多いと思います。 でも本当は「フィルムの対角線の長さ」の焦点距離のレンズです。

例えば35mmカメラでは対角線が約43mmになりますので、「43mm」が標準レンズになります。 ただキリが悪いせいか、ほとんどのメーカーは「50mm」が標準ですね。 昔は40mmや45mmなんてレンズもあったんだけどね。(なぜか55mmや58mmなんて少し長いのもあったんですが..)

 標準レンズには理論的な意味の「数字」があるわけですが、「感覚」で言うと倍率が1倍で遠近感が自然なレンズといったところでしょうか。 これは見たままの印象に近い自然な感じの写真が撮れるということです。 でもそれが災いしてか、ビギナーでも一眼レフに少し慣れると、標準では「つまらなく」なってしまうようです。 そして、すぐに広角や望遠に移ってしまい、標準はカメラバックの片隅にしまわれちゃうという悲しい結末が多いようです..。

 最近のズームが安くて性能もいいし、人気もあるので一眼レフにセットして販売してるようです。 でも最初からズームのみで、標準レンズを「持っていない」とか「使ったことがない」のは、写真を学ぶ上で不幸な気がします。

・初めてのレンズ

おやじも初めて一眼レフを買った時、50mmの標準を付けたんですが、理由は「一番安いレンズ」だったからです。 中学生の頃は「長〜い望遠レンズをカッコ良く振り回す」ことや、 「友人が持っていない高〜いレンズを自慢する」ようなレベルの低いことしか頭になかったんですね。(T_T) その後レンズを揃え、使いこなして写真の腕も上がった頃、気づくと一番使うレンズはやっぱり50mmだったという..。

 ところで、本当に標準(50mm単焦点)レンズは「つまらない」「安い」だけのレンズなんでしょうか?。おやじはそう思わないです。 そこで、標準レンズのいいところを書いてみたいと思います。

 1.明るい これはおやじがことあるごとに言ってますが、やっぱりレンズは明るいに越したことはありません。 そして、標準のいいところは「値段の割に明るい」ことです。50mmじゃF1.4くらい普通ですし、値段も2〜3万くらいでしょう。 でも、他の焦点距離ではそんなに明るいレンズはほとんどありません。また仮にあっても、相当高価なレンズになるでしょう。 さらにズームと比べたらこの明るさは驚異的です。 もし、標準ズームの開放F値がF2.8なら、F1.4の1/4しかありません。 同じ撮影条件ならフィルム感度の「100」と「400」ほどの差になります。
 2.小さく軽い わざわざ言うまでもなく、一目瞭然ですね。でも「標準ズーム」しかしらない人には、あらためて感じて欲しいです。 最近はズームの倍率ばっかり気にして、レンズの「重さ」や「操作性」を気にしないビギナーって結構います。 こういう人に限ってズームの両端しか使わないとか、いつまでもズームリングを回してなかなか撮れない人が多いように思います。 カメラやレンズが軽くなると、撮る人間のフットワークまで軽くなるんですが、 これって撮影する時の「リズム」も良くなるんで、35mmカメラには結構重要なことと思いますよ..。
 3.ボケがきれい 個人的な趣味になりますが、50mmは「開けて使う」のが好きです。 開けるのはもちろん絞りのことなんですが、思い切って開放で使ってみてください。 AFでピントの心配しないでいい人は、カメラを絞り優先モードにしてやってみて欲しいです。 別に標準ズームでも出来ると思っている人は大間違い。同じような「写真」は撮れません。 まず「F1.4」なんて開放F値をもつズームなんてないですし、開放でのズームは「ボケが汚い」です。 この辺は実際に使ってみないとわからないでしょうね。(^_^)美しい標準レンズのボケ具合をぜひ試してみてください。

 え〜、そろそろ本題ですが、標準レンズを「持ってない」ことや「使ったことがない」人の1番の弊害は何でしょう?。 それは「基本が身につかない」ことです。もうベテランの人やプロが理由があって使ってないのなら別ですが、 初心者や一眼レフビギナーが持ってないのは問題です。 結果的に使わなくなるにしろ、写真を学ぶ上で一度は使うべき「50mmの役目」は、レンズの感覚を身につけることにあります。

 野球の投球で言えば基本の「ストレート」にあたる標準レンズですが、広角や望遠はさしずめ「変化球」でしょうか。 でもピッチャーを目指す人が、いきなりフォークボールから学ぶ人はいませんよね?。 それと同じで、レンズごとに違う「遠近感」や「倍率」などの感覚を憶えるためにも「基本」が大事なんですが、 それを作るのに50mmが必要なんです。この意味で「標準ズーム」ではだめなんですね。 標準ズームは「標準レンズの焦点距離を含んだ」ズームレンズであって、「標準になる」レンズではないんですね。

・ズームレンズの使い方

皆さんはズームレンズの使い方を知ってますか?。 昔のプロは性能が悪いという理由であまりズームを使いませんでしたが、今じゃ仕事にも「便利」に活用しています。 でもそれは‘レンズ交換の手間を省く’目的で使っている場合が多いですね。 写真がうまい人は「1. ズームで希望の焦点距離に合わせて」「2. 撮影する場所を移動して」「3. カメラを覗いて」シャッターを押す。 おやじはこれがズーム本来の使い方じゃないかと思っています。

一方、初心者や写真を良く知らない人は「1. ファインダーを覗いて」「2. 自分は動かず」 「3. ズームで大きさを変え」シャッターを押す。でもこれじゃいい写真撮れるわけないですよね?。 ところが50mmを使ったことがなく、最初からズームで写真を始めるとこの使い方が身に付いて上達しなくなるようです。 多分、どの焦点距離にすればどんな写り方になるか想像できないからでしょうね。

そしてこういう使い方をする人に限って「もっと倍率の高いズームが欲しい」と言うみたいです。 もっと自分が動け!!とおやじが言うと「近づけない場所で使いたいんだ」なんていいわけするんですが、それなら 「もっと長い焦点距離のレンズが欲しい」と言わなきゃ。 (ズーム倍率なんて24〜85mmだと「3.5倍」になりますが、80〜200mmじゃ「2.5倍」になりますよね) でも、単にいいわけしてるようにしか聞こえないんですけど..。

・自分の標準レンズ

 標準レンズ(というか単焦点の50mm)がいかに重要かを書いてきたんですが、 意外にも一眼レフを除くと50mmが採用されているカメラはほとんどありません。 昔のレンジファインダーコンパクトにはあったんですが、 現在は「35mm」や「28mm」などの広角系が付いています。 特に35mmは「準標準レンズ」とも呼ばれ、50mmの代わりに使う人も結構いると思います。 この理由はファインダーを覗いてみるとわかるんですが、50mmというのは写る範囲が結構「狭い」んです。 だから、スナップや記念写真などでは案外使いづらいんですね。

 ということで「基準」を身に付けるのに必要な50mmも「写す目的」によっては「標準」レンズではなくなります。 そして大事なことは「写真」をやるなら「自分のための標準レンズ」を持つべきです。 その人にとって何mmが基準のレンズになるのか。「35mm」なのか、はたまた「200mm」なのか。 撮る目的で違うとは思いますが、自分の好きなものを撮ってるうちにわかってくると思います。 そして「自分の標準レンズ」が決まればズームを使っても一向に構わないし、まったく問題なく使いこなせるはずです。 それを見つけるまではズームじゃない50mmが「標準」として必要になるとおやじは思います。

ちなみに、おやじの標準レンズは「35mm」です。 でも「50mm」は準望遠的な使い方ですが、1番よく使います。
皆さんの「標準レンズ」は何mmですか?。(^_^)

・おまけ

皆さんは人間の目をレンズの表示にするとどのくらいか知ってますか?。なんでも20〜24mmのF2くらいになるそうです。 これって結構「広角」なんですが、平面なフィルムと違って「網膜」は球形になってるので、 画像は歪まないし遠近感も普通に見えるんだそうです。

ちなみに人の目の画角(見える範囲)は、水平方向で「170度」もあるそうです。(片目でも110度!) 今回説明した50mmが「45度」くらいしかないので、普段使うにはやっぱり狭く感じるはずですね。 また、意識を一点に集中させてものを見る時は「18度」になり、焦点距離で言うと135mmなるそうです。 そのため、一眼レフの交換レンズには135mmって中途半端な焦点距離が加えられたそうです。

人間の目って50mmの自然な「遠近感」を持ち、魚眼に近い「画角」で、 135mmの「望遠」まで「ズーム」できる優れものなんですね。 皆さん、目はくれぐれも大事にしましょう。なんせ気軽に交換できませんから(^_^)。

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