[撮影機材のお話し Vol.07, 2000年06月10日UP]
最近売れなくなった写真用品って何だか知ってます?。1つめは「外付けのストロボ」だそうです。 そして、もう1つは今回のテーマにした「三脚」なんです。ストロボは内蔵したカメラが多くなってきたので、 わざわざ買う人が減ったのもわかる気がします。だけど、三脚はどうなんでしょう?。使わない人が多くなったんでしょうかね?。 昔はあまり使わない人でも、とりあえず持ってましたけど..。 ということで、今回は「上級者向け」の話しとして「三脚」について書いてみようと思います。
・カメラだけプロの真似しても..
皆さん、プロと一般の撮影機材の違いは何だと思います?。そうです、「三脚」と「ストロボ」なんです。 特に「三脚」は重要で、ほとんどのプロは必ず使います。なぜならその方が「いい写真」が撮れるからなんですね。 街で機材を抱えたカメラマンを良く見かけますが、仕事かどうかは「三脚」で見分けがつきます。 (たとえプロ用カメラ持っていても、ちゃちな三脚じゃ「プロ」じゃないですね。 カメラだけ真似しても三脚の扱い方ですぐにプロじゃないとわかるのに..。笑)
でも、三脚を「記念写真撮るための道具」としか考えてない人に、この話しは「意外」なんでしょうか..。 そこで「三脚のいいところって何?」って思う人のために、その「利点」をまとめてみます。
1.手ぶれを防ぐ
よく「プロならこのくらい手持ちで撮る」なんて言葉を聞きますが、実は逆で、三脚が使える状況なら確実に「使う」のがプロです。
何故ならプロは「仕事」をしているわけで、失敗や危険の確立を「低くする」のが当たり前だからです。
(もし、やらなくてもいい危険を犯しているような「プロ」がいたら、とても「一流」とは言えないですね。)
そもそもリバーサルが多いプロは、ISO64〜100くらいの低感度フィルムであらゆる状況を撮影します。
そんなプロにとって、「三脚」はなくてはならない「アイテム」ですね。
2.カメラぶれを防ぐ
上の「手ぶれ」と間違えやすいのですが、これはカメラ自身の動作でシャッターやミラーのショック(振動)として起きる「ぶれ」です。
特に、中判や大判カメラでは重要で、
どんなに早いシャッターを切っても三脚なしではシャープに撮ることは難しいでしょう。
(カメラぶれを気にするプロは、35mmカメラの時でも注意を払っています。)
この「ぶれ」は皆さんやプロカメラマンが、いかに「自分の腕」で努力しようとしても防げません。素直に三脚を使いましょう。
皆さんは「なんかピントが甘いなぁ」とか、「シャープさがないなぁ」なんて写真を撮ったことありませんか?。
良くピンぼけといっしょにしてますが、おやじが見るところ「ぶれてる」写真が多いようです(とくにカメラぶれ)。
というのも、ピンぼけなら「どこかが」シャープに写ってるはずですよね?。
それなのに「どこもシャープじゃない」んです。世はAFカメラ全盛ですが、「ぶれ」には要注意です..。 おやじがこんな話しをすると「速いシャッター切ってるからそんなことない!」とおっしゃる方がいましたが、 たとえ500分の1を切っても、条件次第でぶれるときはあります。 まして「カメラぶれ」は手ぶれほどはっきり確認できませんので、 なんとなくシャープな写真が撮れないと悩んでいる人は、一度「三脚」を使って確認してみては?。(^_^) |
3.アングルを固定できる
これってほとんどの人には必要ないかもしれませんが、プロにとっては重要です。
なぜならプロの場合、頭に撮影するイメージを描いて機材を選び、セットします。
その時、カメラアングルがころころ変わるとイメージに近づける作業がやりにくくなります。
カメラをしっかり固定して、「被写体」に指示をしたり、「商品」を並べたりするのがプロにとっては普通です。
(中にはイメージ作りのため、カメラを手に持ってうろうろする人もいますが、実際に撮るときは固定します。)
・実は難しいんです..
さて、こんなに重要な「三脚」も、撮影に行くときに必ず持って行こうと思わないのは何故でしょう?。 実はおやじも持っていくのが億劫なんですが、「重い」と「面倒」の二つの理由が大きいんじゃないでしょうかね..。
1. 持って歩くには「重くて邪魔!」
この「重くて邪魔!」はどうしようもないですね。せいぜい軽い三脚を買うか、ないよりマシと割り切って‘ちゃち’な奴を使うかです。
でも、最近は‘ごつい’三脚の代名詞「ジッツォ(仏製)」も、カーボン使った軽いシリーズがでてますし、
軽いのを好むプロに人気の「マンフロット(伊製)」なんかもあります。
用途を考えてうまく選べば、軽くてもいい三脚があるんじゃないでしょうか?。
(個人的には「ハスキー(米国)」の三段あたりが好きです。でも、おやじが持ってるのは国産のスリックマスターですが..。)
2. 立てるのが「面倒くさい!」
この「面倒くさい!」ですが、これには三脚の使い方が下手な場合も含まれているんじゃないでしょうか..(^_^;)。
下のチャートを見るとわかりますが、プロはカメラをセットしたい位置に三脚を立て、後からカメラをとり付けます。
(撮影中の移動で、カメラ付けたままの場合はありますが..)
ですから、三脚つけたカメラを覗きながら「うろうろ」したり、脚を伸ばしたり縮めたりすると一発でプロじゃないとわかるんですね。
でも、この使い方って簡単そうでかなり難しいです。なにせ、三脚立てた時点でカメラアングルが「ピタッ」と決まらないといけないわけですから。
プロの場合 : 「脚を伸ばす」 → 「立てる」 → 「雲台の向き」 → 「カメラつける」 → 「エレベーター微調整」 → 「覗く」 → 「シャッター」 |
一般の場合 : 「カメラをつける」 → 「脚を伸ばす」 → 「立てる」 → 「覗く→移動する→脚縮める」 を数回繰り返し → 「シャッター」 |
じゃあ、三脚を「うまく」「スマートに」使うには具体的にどうしたらいいでしょう?。
・三脚の使い方
1. 脚を伸ばす 簡単そうですが、1番難しいポイントで、大切なのはカメラをセットする「高さ」の感覚です。 例えば椅子に座った人物を撮るには、カメラのレンズが「モデルのあごの位置」にくる「高さ」がセオリーです。 この時、三脚を「ちょうどいい」高さにしてしまうと、カメラを乗せたときに脚を縮めることになります。 (さらに、縦位置にしようとすると、また下げるはめに..。)ということで、コツは自分が思うより15cmほど低くすること。 できれば、自分のカメラで実際に試してこの辺の「感覚」を身につけてください。 (それから基本ですが、細い方の脚から先に伸ばさないこと。笑われます。また、3本の長さは「必ず」揃えてください。) |
2. 立てる これも意外と難しいです。基本として必ず脚を「目一杯」開いてください。脚がきちんと広がってないと安定しません。 よく開く途中で使ってる人や、不ぞろいな開き方の人を見かけますが、出来るだけ止めましょう。 (わざわざ三脚を使って不安定に立てるなら手持ちで撮影した方がましです。) また、岩場のような場所や傾いたとこで、1本だけ脚を縮めて調整する人もいますが、 あまり傾きが大きくない場合は次の「雲台」で調整した方がいいでしょう。 |
3. 雲台の向き 「雲台」というのはカメラを乗せる(取りつける)部分です。ここは様々な向きに変えるための蝶番と締めねじがついています。 カメラ位置を縦か横に決めたら、まずは「水平」が出るように調整します。水平は雲台についた「水準器(レベライザー)」で行います。 もし、水準器のついてない三脚でしたら、別売りのものを使いましょう。(水準器がついてるかどうかは「三脚」を買う時の目安になると思います。) ここで重要なのは、カメラをつける前に必ず「水平」にすることです。 |
4. カメラをつける 簡単なことですが、カメラを雲台に「まっすぐ」つけましょう。ここでファインダーを覗いてください。 もし、写したいものが ファインダーの中心から「大幅」にずれていたら、「1.」に戻りましょう。 手を抜いて雲台だけで向きを必死に変えたとしても、変な角度から撮ることになります。(たとえば人物を見下ろして頭でっかちに撮ったりとか..。) 理想を言えば、思ってたより若干「低め」に入ってることですね。 |
5. エレベーター微調整 「4.」までうまくいったら、あとは微調整をしてください。雲台の向きを変えた後、エレベーター(ハンドルを回して雲台を上下させる機構)を調整します。 ただ、重要なのはあくまでも「微調整」ということです。10cm以上も高くするようであれば、最初の高さが「低すぎた」わけです。 これを伸ばしすぎると振動に弱くなり、カメラぶれの原因になりますので注意してください。 |
というわけで、上に書いたやり方を一連の動きで「ピタッ」と決めてれれば、実にかっこいいし写真の腕もいいはずです。 (実際、一発で決めるのはかなり難しいです。)でも、この話しは基本中の基本で、中判や大判カメラを使うようになれば余計大事になってきます。 少なくとも高いカメラを他人に自慢するよりは、三脚をスマートに扱う方が写真の腕が良く見えるでしょう。(^_^)
−おまけ−
別に一般の人がみんなプロの真似をして「見栄を張る」必要はないんですが、写真の基本を身につけるという意味では重要なんですよね。
でも、「足元を見る」という言葉がありますが、カメラマンの「脚」を見るほどその人の腕がわかるものはないでしょうね..。(^_^)
最後に一言だけアドバイス。おやじが今まで見た経験でいうと、一般的に三脚を「高く」立て過ぎる人が多いです。 三脚なしで構えるときでも「胸元」や「ベルト位置」で十分ですから、これより三脚を高くするのは特殊な場合と思ってくださいね。 |