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宗教法人は特別法である宗教法人法(昭和26年制定)により設立される公益法人です。
公益法人はその設立については主務官庁の認証を必要とし、設立認証後は規則等を変更するときは、主務官庁(文化庁または都道府県)の認証を受けなければなりません。
宗教法人法第25条が、「財産目録」の作成を義務付けていますが、貸借対照表と収支計算書の作成を義務付けていないと解釈され、財産目録と収支計算書だけが財務に関する帳簿と考えられているようです。
宗教法人法第25条2項3号では、宗教法人は「貸借対照表又は収支計算書を作成している場合は、これらの書類」を備えなければならない、としています。
同項4号には、「事務処理簿」を備えるよう求めており、社会通念上、この事務処理の中には財務に関するものも含まれると考えられますので、日々の収入および支出の記録とその集計した「収支計算書」ばかりでなく、期末ごとの財産の状況を示す「貸借対照表」も含まれるものと考えられます。
現代会計では、「財産目録」は遺物となっており一般には死語となっています。現代会計では、日々の収入・支出・購入・売却などの取引を複式簿記により記録して作成される「貸借対照表」が一般常識となっています。
かつての旧商法にも、会社に「財産目録」の作成を要求していましたが、現在は「財産目録」を廃止し「貸借対照表」の作成を義務付けています。
現在、国税庁に届出をした、神社庁、天理教、日蓮宗、法華宗、金光教、曹洞宗などの標準規則では、貸借対照表が正式な帳簿になっていませんが、現在の社会通念に合わせる必要がありましょう。
宗教法人法第25条の改正により、平成8年9月15日以後に開始する会計年度から、次の書類を毎年会計年度終了後4ヶ月以内に、都道府県知事所轄または文部大臣所轄の宗教法人はそれぞれの所轄庁に提出することになりました。
左の欄が作成して宗教法人に備えておく書類で、右の欄が提出すべき書類です。
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提出すべき書類 |
規則及び認証書 | |
役員名簿 | 役員名簿 |
財産目録 | 財産目録 |
収支計算書 次のうちいずれかに該当する法人 T.収益事業を行っている法人 U.年収が8千万円を超える法人 V.収支計算書を作成している法人 |
収支計算書 次のうちいずれかに該当する法人 T.収益事業を行っている法人 U.年収が8千万円を超える法人 V.収支計算書を作成している法人 |
貸借対照表(作成している場合のみ) | 貸借対照表(作成している場合のみ) |
境内建物に関する書類 (財産目録に記載されてない境内建物がある場合のみ) |
境内建物に関する書類 (財産目録に記載されてない境内建物がある場合のみ) |
責任役員会等の議事録 | |
事務処理簿 | |
事業に関する書類 (公益事業や収益事業を行っている場合のみ) |
事業に関する書類 (公益事業や収益事業を行っている場合のみ) |
収入金額に関わりなく、毎年提出すべき書類は、役員名簿と財産目録があります。
法人税法は、課税の観点から「公益法人課税」の規定をもち、公益法人に対する課税を一般の法人課税と区分しています。宗教法人を含む公益法人は、一般事業が利益を獲得する活動とは異なることから、特別な規定で収益事業に対してのみ課税し、一般事業の税率(課税所得が8百万円を超える標準税率34.5%→99年4月以後開始する事業年度は30.0%)とは異なる低率の税率(25%→99年4月1日以後開始する事業年度は22%【所得金額が年8百万以下は18%】)で課税しようとするものです。
法人税法では、公益法人が収益事業を営む場合、収益事業から生ずる所得と収益事業以外の事業から生ずる所得と区分して経理することを求められます(法人税法施行令6条)。こうした区分経理は、収入および費用だけではなく、資産および負債についても行うこととされています(法人税法基本通達15-2-1)。
したがって、収益事業を行う場合、収益事業を収益事業以外と区分して経理することが求められることになります。
法人税法では、決算から2ヶ月以内に確定申告書に貸借対照表および損益計算書等の書類を添付しなければなりません(法人税法第74条第2項)。また、公益法人等は、貸借対照表および損益計算書等の書類には、収益事業以外の事業に係る書類が含まれます(法人税基本通達15-2-14)。
収益事業とは、次の34の事業(付随して営まれるものを含む)で、継続して事業場を設けて営まれるものをいう(法人税法第2条13号、施行令5条1項)、としています。
1.物品販売業、2.不動産販売業、3.金銭貸付業、4.物品貸付業、5.不動産貸付業、6.製造業、7.通信業、8.運送業、9.倉庫業、10.請負業、11.印刷業、12.出版業、13.写真業、14.席貸業、15.旅館業、16.料理店業その他の飲食業、17.周旋業、18.代理業、19.仲立業、20.問屋業、21.鉱業、22.土石採取業、23.浴場業、24.理容業、25.美容業、26.興行業、27.遊技所業、28.遊覧所業、29.医療保険業、30.洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、茶道、生花、演劇、園芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン、自動車操縦若しくは小型船舶の操縦(以下、技芸という)の教授、31.
駐車場業、32.信用保証業、33.その他工業所有権その他の技術に関する権利又は著作権の譲渡又は提供を行う事業、34.労働者派遣業
上記の業種を行っていれば課税するというのではなく、二つの要件を満たしている場合に課税しますというものです。 つまり、(1)継続して営まれており、(2)事業場を設けて営まれるという要件を満たしている事業が収益事業となります。(法人税法第2条13号)
一回限りの取引で、継続して営まれないものは含まれませんし、事業場を設けていない場合などは該当しません。
逆に、収益事業に付随して行われる取引も収益事業とになされます。例えば、出版業で出版業に関連して講演会を開いたり出版物の広告代をもらうということは出版業となります。
栃木県日光市の日光東照宮など世界遺産に指定された2社1寺の3宗教法人が関東信越国税局の税務調査を受け、2009年までの5年間で総額約5億円の申告漏れを指摘されたことが8日、分かった。追徴税額は過少申告加算税などを含め、計1億円に上るとみられる。
ほかに指摘を受けたのは、いずれも世界遺産で日光二荒山(ふたらさん)神社と輪王寺。
関係者によると、東照宮と二荒山神社は、公益事業に当たらず課税対象となる駐車場収入などで、申告漏れを指摘されたとみられる。
輪王寺は物品販売所での数珠や線香などの販売収益を公益事業とし、申告していなかった。税務調査の結果、数珠や線香は一般の土産物屋でも販売しており、課税対象となる物品販売業に当たると指摘された。
東照宮は「駐車場収入は申告しているが、見解の相違があった」と説明した。二荒山神社は「税務調査を受けたのは事実だが、詳しいことは分からない」とし、輪王寺は「見解の相違があったが修正申告した」とコメントした。(2010/06/08-17:33)(JiJiCom)
公益法人等の収益事業の範囲・・・国税不服審判所
墓石の永代使用料収入相当額は、墓石の販売収入と認められ、法人税法施行令5条1 項1号の物品販売業に、カロートの永代使用料収入相当額は、土地の定着物であるカロ ートの販売収入と認められ、同令同条同項2号の不動産販売業に該当することから、そ れぞれ法人税法2条13号の収益事業に該当する。(判例 「巨大宗教法人が課税」)
ちなみに、法人税法施行令5条5項二は、墓地の永代使用料について公益事業として「ニ 宗教法人法 (昭和二十六年法律第百二十六号)第四条第二項 (宗教法人の定義)に規定する宗教法人又は公益社団法人若しくは公益財団法人が行う墳墓地の貸付業」は収益事業ではないとしているが、施行令の「墳墓地の貸付業」は墓石やカロートの貸付も含んでいると納税者は主張したが却下されている。
カロートとは、遺骨を納めるために墓石の下に設置されるコンクリート製の設置物です。墓石が動産で、カロートは不動産としています。
宗教法人法に「収益事業を行うことができる」と規定してますが、次のような事業が公益事業として行われているようです。
これ以外に、病院・診療所等の経営を行っている例がありますが、これらは、税法上は医療保険業に該当し収益事業の扱いとなります。
宗教法人を含む公益法人等の課税の特徴は次のようになっています。
1 | 公益法人等とは、財団法人、社団法人、宗教法人、学校法人など特別法によって設立された法人で、法人税法の別表第二に掲載されたものです。 |
2 | 公益法人等は、収益事業から生ずる所得に対してのみ課税されます。収益事業の範囲は、上記に示された33の事業をいいます。 |
3 | 公益法人等については、22%(平成11年4月1日以降開始する事業年度)の軽減税率が適用されます。 |
4 | 公益法人等の寄付金の損金算入限度額は、収益事業から生ずる所得の20%(平成9年1月1日以後に開始する事業年度より27%から20%となった)とされます。 収益事業部門から非収益部門への支出は、寄付金とみなす(みなし寄付金)ことになっています。 |
5 | 公益法人等については、清算所得に対する法人税は課税されません。ただし、清算中の各事業年度の所得には法人税が課税されます。 |
宗教法人の源泉所得税の税務調査は一般的に行われているところです。公益法人等は、収益事業を営まなくても、給与を支払っている場合には、その給与の源泉徴収義務が生じます。
税務調査の結果をみると、宗教法人自体の様々な収入を懐に入れ、宗教法人に収入の記録を残さず、家族名義で預金していたとか、銀行、証券会社を調査(反面調査)したところ、戒名料、塔婆料、葬儀・法要のお布施料を仮名預金が発見されたとかしています。
当然、住職等の所得と認定され、所得税の課税および過少申告加算税または無申告加算税または重加算税(税額の40%)が課せられます。
住職個人として講演を依頼された場合以外は、収入はいったん宗教法人へ入金し、宗教法人会計から給与として支払うことになります。給与として支払う場合は、給与源泉所得税を控除し、控除した源泉所得税は、原則、給与を支払った翌月の10日までに納税する必要があります。
ただし、給与の支払が10人以下の場合は、6ヶ月ごとに7月10日、1月10日までに納付する特例が適用できます。
給与の源泉税を計算するためには、税務署に備えられている「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を給与所得者に記入してもらい、宗教法人で保管し、これを基礎に「給与源泉税の月額表」に照らして正しい源泉税を計算して給与から控除することになります。
年末には、年末調整を行い、年末調整の過不足額を清算することになります。
宗教法人が、土地の一部を駐車場として継続して貸付けている場合は、不動産貸付業に該当し収益事業として課税されます。契約更新に伴う更新料は、不動産貸付業の付随的行為に含まれるものと考えられ、不動産貸付業の所得として申告することになります。
駐車場については、政令5条1項31号に明文規定があり、当然に収益事業として法人税の申告が必要となります。しかし、駐車場の収益を公益事業に使用したいとのことですので、営利事業から非営利事業に対する寄付金扱いとなり、収益事業の所得の27%が損金算入が認められますので、単純ではありませんが理論的には、それを控除した金額が課税所得となると考えてよいでしょう。
宗教法人におけるお守、お札、おみくじ等の販売のように、その売価と仕入原価との関係からみて通常の物品販売業における売買利潤ではなく実質は喜捨金と認められる場合のその販売は、物品販売業に該当しないものとする。ただし、宗教法人以外の者が、一般の物品販売業として販売できる性質を有するもの(例えば、絵葉書、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花等)を一般の販売業者とおおむね同様の価格で参詣人等に販売している場合には、物品販売業に該当する(基本通達15-1-10)、とあります。
したがって、一般の販売業者とおおむね同様の価格で販売している絵葉書、メダル、キーホルダー、ペナントであれば、物品販売業に該当することになります。
宗教法人に関する相談料は、1回当たり30,000円で賜っています。ただし、複雑な事例は、ご相談のうえ決まります。
相談をご希望の方は、下記のE−mailをクリックして相談内容を送信してください。E−mailにてご回答します。
横山会計事務所
〒270-0034 松戸市新松戸7-173 五番街 A1405
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