寄りみち(Vol.4,93年5月号)

僕の吟醸酒(4)

 鉄の町,釜石に幻の酒は生きていた。北陸のチベット?に生きずく吟醸魂,それが浜千鳥である。新日鉄の火が消えると同時に,一つの町がゴーストタウンに化してしまうのに値するものを,この町は知っている。言葉で表現するには,あまりに深刻で,その現状を知っている人の語れる秘話も沢山あるのではないだろうか。しかし,その街の片すみで高炉の中の鉄の様にジワジワと燃えさかる小さな蔵があった。山内杜氏・似内理想治氏率いる釜石酒造である。

 バツグンの美酒を地元におくり続けていた彼らの酒は釜石を後にした人々などに語られ遂に東京デビューしてしまった。
 知る人ぞ知る!幻の酒である。

 ぽってりと優しく,ほの甘い「浜千鳥」は,魚貝の持つ甘味を一段と引き立てる。なるほど豊かな三陸の海の幸に育まれた酒なのだと痛感する。

 そんな酒に出会った,やはり僕の吟醸酒の一つに入れない手はない。

春のおいしさ

きの芽(あけびの芽)

 今頃から旬の山菜「あけびの芽」をご存知でしょうか?とってもおししい!
 もしあけびを見つけたら新しいツルの部分がそうです。新潟の伯父にたのんでも,ほんの少ししか手に入らない。今年は食べられるのかなぁ心配。

 おししい食べ方は,沸騰した湯にザッとほうりこむ。火を止めて水を換え2〜3時間アクを出す。適当な長さに切って,うずらの卵と醤油であえる。またマヨネーズ醤油で食べてもうまい!

 舌にはちょっぴり残るエグミが,日本酒とよくあって,ま〜幸せな気分になってしまいます。

山鶴のこと

 奈良・生駒・あすかのに販売石数450石(1石は1升瓶100本)という小さな(中本社長すみません)吟醸蔵,山鶴はある。創業は,江戸中期の由緒ある蔵だがここ30年は販売石数も減らし人々の目につかない存在であった。実は,ここだけの話この蔵あまりの酒質の良さに大手メーカーよりひっぱりだこだった。

 名門山鶴の先代の名杜氏村尾考一氏(昭和62年没)は全国杜氏組合連合会の会長も努められた方で,村尾杜氏の下から,杜氏になった人は30数人もいるといわれる。その村尾杜氏の一番弟子,西坂信一杜氏が今,山鶴を醸す。全ての酒が,吟醸酒規格で純米・本醸のみである。レギュラーの本醸造にしても,手を抜く事はない。添加する醸造アルコールも,自らの純米酒から作る米アルコールである。

 これは,すなわち本醸造標示の純米酒ではないだろうか!今日,逆の蔵もある中,酒造りに妥協を許さないこだわりを痛感する。どっしりと腰の座った酒質は飲み手に「酒とは」と語りかけてくる様で,好きになると,のがれられまい!!
ご一献あれ

第5回木陰浮月粋人盃の様子

 先日,4月19日に第5回,木陰浮月粋人盃を「よしのや」さんで開くことが出来ました。参加者は25名,飲んだお酒は「亀の翁・生」「夏子物語」をメインに,秋田能代の天洋酒店の浅野様より参考出品として頂いた,喜久水「田民の酒・生」,楽泉「吉野錦大吟醸・袋つり2番」。おいしい料理も出して頂き楽しい会でした。次回は6月を予定しております。




今月の酒・味だより

富山・満寿泉

 冷用吟醸「涼」。先日吟醸酒を楽しむ会で,今年の「涼」を味わってきた。一年ぶりの再会である。正直を言って,去年よりも,ぐっとスッキリした感じで,いくらでもいけそうである。たまらなかった。さあ,ひと夏「涼」を楽しめる。
750ml・・・1,550円,300ml・・・510円

秋田・能代・喜久水

 先日の木陰浮月粋人盃で出品した「田身の酒・生」の4合ビンが,ちょっぴり入荷しました。
 去年の「田身の酒」よりおとなしい酒質といった感じで,喜久水さんのドカンと言う個性がやさしい感もあるが,バツグンの旨酒である事は,まちがいない!
720ml・・・2,100円

福井からの新風・伝心

 春のそよ風の様に今は静かに吹いている風が「伝心」である。
 しかし近年,消費者と生産者(酒蔵)が,顔と顔をつき合わせ,酒造りをして行きたいと語る。
 「以心伝心」,心の交流のもと,美酒が育つとのポリシーから生まれている。近い将来,台風の目になる事うけあいである。
 気どらず,やさしく,常に,肴のあいの手を,つとめてくれる酒質であるが,奥底の深くに,なぜか!キラリと光る物を感じる酒!
 伝心特別純米(5月16日) 1升2,500円


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