|  | 
|  |  亜季 [バックナンバー1100] |  | 
|  | 
|  | こんにちは、亜季です。 
 先週半ばまで風が強く寒い日が続きました。
 なので浜辺へ足が向かないまま10日ほど過ぎました。
 このまま、後10日も経てばもっと寒くなるでしょうし、あのご夫婦連れも浜辺の散歩を止めるかもしれない・・。
 そうしたら・・・そんな思いでいました。
 
 それは半ば『諦め』でしたが『安堵』もありました。
 それと、また別に『空白』や『喪失』に似た気持ちもありました。
 それが、先週木曜日から春の陽気になりました。
 暖かい陽気に『諦め』の思いが薄れて『期待』に変わり、そして『安堵』が『緊張』と『不安』になって皮膚が騒ぎました。
 
 金曜日も汗ばむほど暖かく穏やかな日でした。
 午後2時前、背を押されるように家を出ました。
 白いブラウス、窮屈なタイトミニで、透けて見える上下揃いの下着の色は明るいグレーを着けました。
 
 浜辺にはいつもより少し早い2時半頃に着きました。
 いつもの松林に入り、運転席側を砂浜に向けて車を停め、そして辺りを望みました。
 波打ち際は見えず、望めるのは砂浜ですが、そこに人影は見えませんでした。
 
 ドアを開けて両脚を投げ出すと、冷たい外気を太腿の奥まで感じました。
 人影が見当たらないのは、暖かい陽気でも海風は冷たく寒いからでしょう。
 ドアに両手を乗せ、投げ出した両脚を緩めると、私には冷たい外気が気持ちよく感じました。
 体は、これから起きるかもしれない出来事を思い熱くなっていました。
 
 私は短大を卒業後しばらくして結婚しました。
 長男はハネムーンベイビーでしたし、次男も2年後に誕生しました。
 20代半ばには二人の息子を連れて外出するのが常でしたし、すっかり母親でした。
 
 それなのに、母に子供達を預けて外出したときなどよく声を掛けられました。
 つまり『ナンパ』です。
 浮気は子供達が小学校の高学年に差しかかる頃、半年ほど続いた関係が一度だけありました。
 相手は短大を卒業して就職した会社の取引先の人でした。
 一回り以上齢が離れた人で、偶然街中で出会ったのです。
 
 その時、独り善がりの主人の性技とは全く違う浮気相手の手管に落ちました。
 会うたびに新しい性技で翻弄され、その都度新しい絶頂に昇り詰めました。
 もう、その人の愛撫がなくてはどうにもならない・・そう思い、次の逢瀬が恋しくて仕方なかったのです。
 
 潮の匂いが海風に揺れる砂浜を眺めながら、何故過去の体験を思い出したのかはっきりしません。
 でも・・・あの頃の私はある意味で純粋でした。
 つまり性に対して真面目で、教えられた濃い快感を求めたに過ぎません(浮気の是非は申しません)。
 
 今は・・・求めるものは同じ快感ですが、手段も内容も違いますし、それに私の心自体が歪んでいます。
 立場やその他を『理性』的に考えれば許されない行為と分かります。
 分かっているのに抑えられないのです。
 言葉では表現できそうもない私の表と裏です・・・・。
 
 シートに座った腰にタイトミニはまつわり太腿はすっかり露出して、俯けばグレーのパンティが見えました。
 クロッチ部分がいやらしく盛り上がった恥ずかしい姿です。
 そこに潤みを感じていました。
 家を出る前から感じていた熱い感覚がジリジリとして、晒した太腿が気怠るい感じでした。
 その感じは、少し刺激を与えればたちまち燃え上がって、体内を充足させる何かを欲しくなる予兆でした。
 
 砂浜に人影は見えません。
 そのまま今直ぐにでもパンティを脱ぎ捨て、掴みどころがない空白感を感じながら思い切りオマンコを広げてみたい・・そんな欲望に囚われました。
 そんな変態的行為への憧れを恥ずかしいと思うのに、焦がれてならないのです。
 でも、そこまで行動する勇気も持ち合わせていません。
 
 そろそろと下ろした指を盛り上がったクロッチに這わせながら、したいのにできない思いに歯痒さを感じました。
 そして・・少しだけなら、と思い、クロッチに掛けた指先を横に引っ張りました。
 湯上りの肌に感じるような肌を刺す外気の心地よさ・・・
 クレンジングクリームを手の平で溶いたような指先のぬめり・・・
 神経は痛いほどに緊張しているのに、実は気が疎かになっている不思議な思い・・・少しでも指を使えば、たちまち熱いものを噴き上げそうな、寸前の感覚・・・
 
 息が熱く、鼓動が耳の奥で聞こえました。
 眩しくて、瞼が重くて、でもそのまま目を閉じたらどこかへ引きずり込まれそうな怖い思いが、どうにも堪えられない快感でした。
 そのままずっと、砂浜に向けて、いやらしい私のオマンコを晒し続けていたい・・・熱い思いに堪えられなくなったその時でした。
 
 助手席側の窓がノックされる音を聞いて私の心臓は縮みました。
 投げ出していた両脚を縮め、両の握りこぶしで股間を押さえ、背も丸めたと思います。
 
 「ごめんなさい・・驚かせてしまったかしら・・かまいません?」
 いくぶん作った声で、落ち着いて低い調子の、中年女性の声でした。
 どうして良いか、何て答えたら良いのか咄嗟に思いつきませんでした。
 戸惑う間にも車を回って歩く砂の音が微かに聞こえました。
 
 |  | 
|  |  | 
|  | 驚いただろうね。ご夫婦が車の後ろからやって来るなんて、考えもしなかったようだから。亜季にとっては意外でも、ご夫婦にしてみれば、計算づくのアプローチだったのかもしれないよ。どうして?なんて、私に聞かないだろうね、亜季。 | 
|  |  | 
|  | 
|  |  亜季 [連続投稿] |  | 
|  | 
|  | おはようございます。亜季です。 
 私が行く浜辺に沿った県道を西へ5キロほど進むと港があります。
 昔は小さい漁船だけでしたが今は当たりにプラントなどが建ち並び、輸送業者の倉庫ができ、あの頃の鄙びた面影はありません。
 その分、県道沿いから港までの道も整備され食堂やファミリーレストランもできて、休日は釣り人やドライブに来る人達などで賑わっているようです。
 県道から港に進む道を、途中左へ入ったところに気の効いた和風の喫茶店があります。
 
 先週金曜日、私はその喫茶店に初めて入りました。
 一人でなく、浜辺で声をかけてきたご夫妻に誘われて、です。
 ご夫妻のお名前は森脇さんと、席に着いてから紹介を受けました・・・。
 
 浜辺の松林に停めた車を回ってきたのは奥様が先でした。
 俯いたままの私には濃いベージュのスカート、藍色のコートしか見られませんでした。
 
 「お話してよろしいかしら」
 声を掛けられて、初めて顔を上げました。
 観念しなければ悟られてないもので悟られてしまうと思ったからです。
 
 「ええ・・かまいませんけど」
 「私達、今年の夏の終わり頃からこの砂浜を散歩しはじめましたの」
 「はい・・」
 「砂浜を歩いていて、この辺りに車を停めているあなたを知ったのは9月の半ばか末頃だったかしら。いつもお一人で来てらっしゃるから、海が好きなお方と勝手に主人と話してましてね」
 
 私は気丈でいようと努めました。
 奥様達が見て知った頃の私は巨大な張り型を使うために浜辺へ来ていました。
 その事実の羞恥を表情に見せたら無し崩しになってしまいそうでした。
 「私達も海が好きで、主人がこの春定年したのをきっかけにあちこちへ散歩するようになったんですけど、どなたかお話し相手ができたら・・なんて思いはじめてたときだったの」
 
 後ろに目を向けると、少し離れた松の木の脇に立って煙草を吹かしているご主人の姿が見えました。
 ご主人と視線が重なったことも思い出しました。
 乳首を搾るように愛撫して、クリトリスに触れた瞬間達してしまったその後でした。
 10メートルほどしか離れていない先から振り向いたご主人の目を覚えていました。その目が少し笑いを含んでいたのも・・・。
 
 「ご家庭をお持ちの方でしょうから毎日ここで出会えないのは分かっていましたが、たまたま今日会えて、それで声を掛けさしていただいたの。昨日今日は暖かいけど、もう冬ですからね。私達もそうそう散歩に出られませんし、本当に良かったと思っているんですけど・・いかが、喫茶店でお話でもしませんか?」
 
 お二人の車の後について到着したのが和風の喫茶店でした。
 とても洒落た東屋風の、とでもいえるような店内で、木の香が匂うような落ち着いた雰囲気でした。
 でも、そんな雰囲気の中で私の姿だけが浮いていました。
 ニットのカーデガンを肩に掛けていましたが、薄っすら透ける下着の色合いを隠せはしません。
 それにタイトミニはやはり落ち着いた雰囲気には似合いません。
 
 若いウエイトレスが眉を動かしても注文の品を運んできたときだけです。
 でも向かい合って座ったご夫妻の視線は常に感じ続けました。
 しっかり膝を揃えても太腿はほとんど丸見えですし、小さいセカンドバッグを膝に乗せていなければパンティが見えてしまうのは分かっていました。
 
 温かい紅茶は好きですが、味が分からないほど緊張しました。
 話は世間話で、奥様が中心に話してきました。
 私は相槌を打ち、訊ねられたことを答えました。
 
 話の中で知ったのは、ご主人は今年の春、県の職員を定年したこと、お子様達も結婚されていて多少の余裕もあるので再就職していないこと、二人だけの生活で楽しいことをして余生を過ごしたいこと・・などです。
 
 「亜季さんのお宅はこの近くなの?」
 首を少し傾けた奥様の表情が素敵でした。
 奥様は52歳と言いましたが、その齢には見えません。
 肌に張りがあって、女性にありがちな目じりや首筋の小皺もありません。
 紅茶のカップを持つ手の甲や指先も艶があって、炊事仕事の多い私のほうが荒れた感じでした。
 
 「そうなの、じゃそんなに遠くないわね。私達はここから西へ行ったところに住んでいるのよ」
 そこは数ヶ月前まで燐市でしたが、市の合併で今は私の住む市になりました。
 変な考えと思いますが、もしご夫婦と妄想していたような関係に至ったとしたら、同じ市の住民台帳に登録されていると思うと、むず痒く感じました。
 
 「ところで、奥さんは海が好きなんですか?」
 ご主人が訊ねました。
 白髪が目立つのに、それがとても粋に見える方でした。
 海は好きですが、海だけが好きというのでありません。
 子供の頃に住んでいた都会にも憧れはありますが、それよりも今住んでいる土地柄の残っている自然の方が好きです。
 
 「なるほど、素敵な考えですね。僕もそう思うし、家内もそう思っていますよ」
 言いながらご主人の目が私の胸や足元に移るのが分かりました。
 あの時の目と同じで、私は目を逸らしつつ心を騒がせました。
 
 「ええ、私達もこの人の転勤で、まあ県内だけですけど、あちこち移りましたのよ。でもここは一番良いわ」
 奥様の視線も時折私の体を巡りました。
 私の姿がどうなのか、どんな様子なのか、視線を感じてどう思っているか、など同性として奥様には手に取るように分かるはずです。
 それが、視線と同様に恥ずかしく、そしてご主人の視線よりも心を騒がせるのです。
 
 「どうかしら、私達とお友達になっていただけたら嬉しいわ。時間があるときだけで充分よ、いかがかしら?」
 頷けば、妄想が現実に近づきそうなのが分かりました。
 現実になれば、どんな関係になるのかも予想できないわけではありません。
 
 「まあ、嬉しいわ、ねぇ、あなた」
 奥様は私が頷くと、ご主人に向いて言いました。
 何かが崩れていく物音を心の中で感じました・・・。
 
 「今度、近いうちに私達の家にご招待するわね」
 喫茶店を出て、駐車場の車の前で奥様が言いました。
 ご主人は頷きながら、私の姿を、窮屈で、下着の色が薄っすら透け、ラインも見えるタイトミニを見ていました。
 
 ご夫妻の電話番号も教えられましたし、私の携帯番号も教えました。
 先を走るご夫妻の車が交差点で曲がりました。
 私は反対方向へ曲がり、車を進めました。
 
 走りながら、一体何が起こったのか、何を話したのか、覚えているようで覚えていない状態でした。
 『お館』へ告白するような艶っぽい内容でもないような気もします。
 でも、私の何かが終わって、何かが始まる・・・そんな思いでいます。
 
 |  | 
|  |  | 
|  | 気になっていたご夫婦と「お近づき」になるという、望むべくもない展開になったね。やわらかく落ち着いた物腰と紳士淑女然とした態度・・それとは異質な、亜季の心をざわつかせる視線・・。確かに艶っぽい話ではないけれど、このご夫婦は何かを持っていそうだね。それは、亜季も感じたはず。その何かが何なのかは、いずれわかるよ・・・いずれね。 | 
|  |  |