学習指導要領の改訂 どうなの 本文へジャンプ

改訂案 文科省の説明と資料
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1,教育基本法改定との関係

 「先生がたに受けとめていただくよう掲載した」。学習指導要領の冊子は、冒頭に、改定教育基本法の全文、改定学校教育法の抜粋(義務教育の目標条項)を掲げる。これまでは掲げていない。

 「教育基本法をどう具体化したかで、@資料(資料5「教育基本法改正に対応した主な改訂点」)をとくに用意した。総則の目標、伝統と文化、公共の精神などを重視した。A義務教育の目的、目標を明確にした。義務教育の一体性を重視した。9年間で身につけることを重視した」

 (大綱化)「大綱化は変わっていない。国語などで学習過程を詳しくしたのは、きびしくしたのではない。共通性を重視した側面はある。でも個に応じた指導の条項は残している」「選択拡大よりは共通性重視だ。それは、教育基本法改正、学校教育法改正で、義務教育の目標を明確にしたためだ」

 (改訂のキャッチフレーズをひとことでいうと)「60年ぶりの教育基本法改正をふまえた改訂」
 
2,教科、領域、授業時数、新研発制度

 「告示とあわせて、発表する」「資料2『「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案等』に、新しい研究開発学校制度(認可を総理から文科相に移し、基準をゆるめる)のことを書いた。その手続きを近く定め、発表する」
 
3,日程

 2月16日から3月16日までパブリックコメント、3月末に告示する。
 全面実施=幼稚園09年度、小学校11年度、中学校12年度。
 09年度は、解説書を刊行(小学校6月、中学校7月)し、周知をはかり(夏前に中央研修会、夏休みに各地方で説明会)、高校と特別支援教育の学習指導要領は「4月以降できるだけ早く改訂する」
 
4,道徳

 「内容、体制、教材の3つを充実する」「内容は重点化をはかる。体制では、推進教師をおき、全体計画、指導計画のとりまとめをする。教材の充実は答申で明記(127Pの3の(3)に記述)されている。来年度、概算要求をする」

 「推進教師は公務分掌上の処理。いまは主任。より明確にした。職制上の処理ではない。各学校1人」

 「『子どもの発達と徳育についての調査研究』にとりくむ。来年度に有識者会議を設ける。1年間かけて報告をまとめてもらう」「乳幼児からを視野に入れる」「脳科学、生命科学、心理学の専門家に入ってもらう」「答申で言っていることだ(60P「別途検討する」と記述)

 「各教科で道徳教育に取り組むことを、各教科の内容の取り扱いで明記した」
 
5,重点指導事項例

 「示す時期と内容を今後検討する」「とくにつまずきやすいもの、社会生活上だいじなもの、思考力・判断力・表現力ふくめ、ピックアップして、文科省として提示して、メリハリある指導をしてもらう」「告示、移行、解説書づくりのなかで検討したい」「『ここまで到達させる』を示すのは難しいのは事実だ。いくつかの観点で、いくつかの例示をしたらどうかという答申なので、検討していきたい」

 (中教審答申で、「文科省が」示すとあって、学習指導要領で示すのではなかったので、改訂案には書いていない)
 
6,言語活動

 資料4「言語活動に関する学習指導要領改訂案の記述例(抜粋)」 
 
7,評価、発達段階、高校地歴教科のありかた、教科構成

 「常設の教育課程部会でこれから検討していく」
 「評価のあり方は、本格実施までにはまとめる」「評価は、前回、答申から2年後に出た。ていねいな議論が必要だ」
 
8,歯止め規定

 「ほとんどとりました。基本的になくした。例外で残っているのは、小学校・家庭科で『生の魚や肉は扱わない』としている」(編注・算数・数学、理科などにはある)
 「教材を精選すること」を削除した」
 (歯止め規定がなくなったので、教科書の「発展」マークはなくなるのか)「すべての子どもに教えることが学習指導要領だ。歯止め規定は、教えてはいけないと受け取られがちなので、はずした。今後、検定基準の改定のなかで考える」
 
9,国語

 「言語活動例を『内容の取扱い』から『内容』に格上げし明確に位置付けた。現場に重視してくださいとメッセージした」「その指導のプロセスを明確にした」

「その結果、小学校の言語活動は指導事項は項目数としては25%増えた。内容が25%増えたのではない。言語活動重視ということで、プロセスや活動をよりていねいに示した。低学年が現行33→改訂案43、中学年37→45、高学年35→43、計105→131」「中学校は、1年32→35、2年33→34,3年33→27、計98→96」

 「学年配当でない漢字を『交ぜ書き』から『ルビ付き表記』にしたのは、小学校の早い段階から漢字を読む機会を充実するため」 
 
10,社会

  「宗教を重視した」「近現代を2分割した」「小学校で『領土』を加えた」

  「伝統文化重視なので、歴史を重視した。中学3年の時数増分は歴史にまわす。近現代は3年になる。3年は、歴史40時間,公民100時間の配分になる。夏休みまでが歴史になる」

 (人物は例示か)「あくまで例示。ほかの人でもかまわない」
 
11,算数・数学

  「4領域+的活動とした」「的活動を算数・数学だけ明記した(理科はしていない)のは、算数・数学は座学になりやすいから」

 的活動は「(PISAのリテラシーを)かなり意識している。学習指導要領上の全国的基準として明示している。教科書に具体的に載るようにした」「中学校は、アからの類型を必ず示してもらう。小学校は具体の例を示している。それを各学校でやってもらう」

 (例示とはいえ、各項の趣旨に合うものが必ず教科書に載らないといけないのか)「活動の内容が載ることはまちがいない。対応は、具体的には検定基準で検討する」

 「TIMSSとのフィット率がアップした。小学校4年は、国際平均59%、日本は現行69%、改訂案83%。中学校2年は、国際平均70%、現行80%、改訂案91%」

 「算数・数学は、小中9年間で、授業時数は212時間増えた(小学校142時間、中学校70時間)。これにたいして、小中間の移行を除く純増の指導事項は、150時間分くらいだ。それは、授業時数増加分の7割強にあたる。(現在でも8割になっている)残りの時間は繰り返し学習などにあてる」
 
12,保健体育・性教育

 「数年前、いきすぎた性教育と思われる事例があった。学習指導要領が守られていない。内容でなく、指導のあり方の問題だ。そのため今回、小中とも総則の体育・健康の指導の項で『児童生徒の発達の段階を考慮して』と新たに書いた。ここが新しい」
 「性教育は、@発達段階A学校全体のとりくみB家庭の理解をえる、が3本柱である。それを体育、保健体育の解説書に書くことにしている」
 武道「武道場の整備は4割少しの学校」「たたみなど、交付金で措置する、交付金を増額する」
 
13,理科

 「義務教育の一貫性のひとつとして、小中7年間の体系を意識して作成した」

 「7年間で授業時間は150時間増える(640→790)。新規の指導事項は、150時間の8割強になる。2割は裁量的に使える。8割強のうち、6が知識技能、2が実験観察になる。2+2の4が活用型に使える」

 「実験観察重視で施設設備の基準の見直しをする」

 「TIMSSとのフィット率は、小学校4年が、国際平均56%、現行50%、改訂案59%。中学校2年が、国際平均71%、現行73%、改訂案84%」
 
14,音楽

 和楽器指導のねらいを「我が国や郷土の伝統音楽のよさを味わう」と新たに明記した。

 前回改訂で削除した共通歌唱教材を7曲復活させた。「前回示すことをやめたのは、各学校の特色ある音楽活動をということだった。教育基本法改正で伝統・文化の尊重が位置付いた。尊重する態度を身につけるため、今回入れた」

 (伝統・文化ということで、なぜこの7曲か)「いまでもこの7曲は教科書に全部載っている。昭和40年ころからの要領からずっと載っている。新しいものを入れるのはむずかしい」
 
15,家庭、技術家庭

 「『デジタル作品の制作』はPC使いアニメ動画をつくる」「『和服の着方』はゆかたを想定している。振り袖はやらない」
 
16,小学校の外国語活動

 09年度から移行。11年度から必修。『英語ノート』は35週分の内容をもりこむ。07年度につくり、08年度に配る」「主たる教材で使ってもらう。『心のノート』と同じ扱いで使用義務は課せられない」 

 「今年度は指導主事研修をした。来年度は県単位で集めて指導・研修する」
 
17,英語

 指導語数900→1200(数だけ示す)。共通語数(別表掲載語)を100→削除「1200のなかでまちがいなく使われるだろうから、示すのをやめる」
 
18,特別活動

 (再生会議報告が示している)体験学習の期間を明示していない。「答申は明示していないので、明示していない。5日間と書き5日できないと未履修になる」

 「清掃」をはじめて明示。「答申が勤労を重視すると提言しているので加えた」

 総則第3の3で、「総合で行事やれば特活の行事にあたることを書いた。逆はない」
 
19,生活・総合

 「総合を章だてし、構成上も重要性を明確にした。総合本来の役割に純化してしっかりやろうということだ」「ドリル的学習は教科でやってもらう。運動会の準備はなじまない。自然観察は、従来やっていた。ボーダー的だ。本来まず教科でやること」

 (探求的活動のイメージ)「習得し、活用し、そのうえで教科をこえた課題について、テーマをたててやる。確立した方法論によらず、方法論ふくめ学習していく」

 (習得、活用、探求)「截然として分かれるものではない。主としてイメージだ。市川伸一さんは、教えて考えさせると認知心理学的にいう。一連の流れとして整理した。市川さんは、習得にも活用にもある、といっている」

 「教科横断は、総合の要件ではない」
 
20, 授業時数の確保

 総則第3の1「学期の内外を問わず」と新たに書いた。「長期休業中の授業を授業時数にカウントできるようにした」

 モジュールを教科担任制の中学で免許教科がちがう学級担任がやっても授業時数にカウントできるような叙述を加えた。(中学の総則)「指導の一貫性が確保されていればOKだ」
 
21,移行措置の現時点の考え

@09年=道徳、総合、特活 ただちに移行 
A内容増の算・数と理科=学び残しないように大幅増加して指導する。授業時数も前倒しする。補助教材を整備する。
B国、生、音、図、美、家、技、体、保、外=学校の裁量で新課程を採り入れることができる 
C社会科=新課程の一部は移行からやるよう指定することがある。例・47都道府県の名称と位置。教科書がなくても地図帳でできる。学校裁量で 
D小学校外国語=前回の総合と同じ。前倒し実施を推奨。学校裁量。英語のノートを準備中
 
□時間の確保をどうするか。中学校は、選択があるので調整可能だ。小学校は、理数増があり、総授業時数を増やす、教科、総合を減らすことも視野に入る。その場合は施行規則改正に関係する。小学校は、外国語活動もある。理数と外国語を総合の時間にあてると、総合が1〜2コマになってしまう。条件整備もからむ。
□細部を検討し、3月末の改訂告示後、できるだけすみやかに発表したい
 
(09年度から総合は1時間減るのか)「授業時数は施行規則改正に手をつけないとならない。これから検討する」
 
(番外21,45分、50分 =この項は説明とは関係ない情報)

 「学習指導要領案」(改訂案)の冊子のはじめのほう(小学校Gページ、中学校Hページ)にある、「各教科等の授業時数(学校教育法施行規則の一部改正案)」の表に書いていないため、45分、50分の規定はなくなるのではという声がありました。

 改訂案発表に合わせて文科省が示したほかの文書にはあります。「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案等について(概要)」の授業時数の表には、欄外で45分,50分が現行と同じ文章で書いてあります。

 授業時数は学習指導要領でなく、施行規則改正で示すものです。省令改正がまだ決まっていない段階なので、改訂案の本の表の欄外の記述は書かなかっただけのことでしょう。
 
(22,学習指導要領の内容は量的にも増えた)

 小学校 現行98n → 改訂案122n (124%)
 中学校 現行112n → 改訂案130n (116%)
 
23,資料について
 
【資料1】概要=改訂の趣旨、告示、施行、移行、全面実施(1枚)
【資料2】学校教育法施行規則一部改正省令案(2枚)
  (小中学校の標準授業時数の改正案、施行期日、新しい研究開発学校制度の創設など)
【資料3】幼小中の改訂のポイント、標準時数(7枚)
 
 
【 資料4】言語活動の記述例(6枚)
【資料5】教育基本法改正に対応したおもな改訂点(2枚)
 
【資料6】各教科領域などの改訂のポイント(各1枚、計26枚) 
 目次/幼稚園/小・総則/中・総則/小・国語/中・国語/小・社会/中・社会/小・算数/中・数学/小・理科/中・理科/小・生活/小・音楽/中・音楽/小・図工/中・美術/小・家庭/中・技術家庭/小・体育/中・保健体育/小・外国語活動/中・外国語
 
/小中・道徳/小中・総合/小中・特別活動
 
【資料7,8,9】改訂案(幼稚園17n、小学校122n、中学校130n)
【資料10】改訂案と現行の全文の新旧対照表(幼稚園16n、小学校139n、中学校151n)
 
【資料11】関連資料
 国語改訂イメージ(カラー1枚)/小中社会内容比較表(4枚)/算数の新規、スパイラル、移行、的活動の表(A3赤黒2色1枚)/同、現行の表(A3、1枚)/数学の新規、スパイラル、移行、的活動の表(A3赤黒2色1枚)/小中理科のA区分第1分野内容表(A3カラー1枚)/小中理科のB区分第2分野内容表(A3カラー1枚)/家庭、技術・家庭の新旧領域事項対照表(3枚)/体育、保健体育の内容、取り扱い比較表(4枚)/中学英語の語数変遷表(1枚)
 
【資料12】学習指導要領の変遷(9枚)
 
 改訂案発表にかかわる資料は、上記のようにあります。
 このうち、【資料10】改訂案全文と現行全文の新旧対照表と【資料12】学習指導要領の変遷(9枚)、は、文科省サイトにはなく、当サイト内にPDFファイルがあり、ダウンロードできます。
 それ以外の資料は、文科省サイトにも、当サイトにもあります。
 
 (注=このページの先頭1から22までの、説明内容資料の作成にあたっては、新聞報道とできるだけダブらないようにし、重要性だけを情報選択の基準にしていません)


改訂案の全文、概要、資料

 全文 → こちら (新旧対照表)

 関連資料 → こちら

 実施時期、移行措置、解説書 → こちら


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