もともとは、サツマイモのようにごろんとしていて、イモの葉を食べる虫ということでイモムシと呼んだようです。おそらく、スズメガ類の幼虫など大型の幼虫を指す言葉だったのでしょう。しかし、今では毛の少ない、チョウやガなどの幼虫全般をイモムシと呼びます。 イモムシのほとんどは草食です。農作物も食い荒らすので害虫として嫌われます。作物を荒らされては農業経営が成り立ちませんから防除が必要です。でも、経済的被害を与えていないものまで「悪い虫」として殺されるのは残念です。ときには、「見た目が気味悪い」という理由だけで殺虫剤をかけられることもあります。 春、植物が爆発するように芽吹き、たくさんのイモムシも孵化します。ある程度成長したイモムシの多くは鳥の餌になります。雛を育てる時期と、イモムシの大発生する時期を一致させているのでしょう。穀類も食べるスズメですが、雛に与えるのは動物性蛋白質です。大量のイモムシが鳥の雛の餌になるのです。 かわいいからいいというのではありません。太陽のエネルギーを受けて育った植物の栄養を、他の生き物に引き渡していくという、生態系での重要な役割を担っているイモムシです。悪い虫だから、気味悪いからと遠ざけていては、この生き物の真価はわからないでしょうし、その生きざまから感化されることもないでしょう。 イモムシにはドクガのような毒針毛(どくしんもう:毒のある毛)を持つものはありませんから、近づいただけでひどい目にあうことはまずありません。イモムシの顔をのぞきこんで見るのも一興でしょう。 |