No. | 作者 | 歌 | 落葉のカルタ(金子みすゞ) |
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22 | 文屋康秀 | 吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風をあらしといふらむ |
山路に散つたカルタは なんの札。 金と赤との落葉の札に、 蟲(むし)くひ流の筆のあと。 山路に散つたカルタは、 誰が讀む。 黒い小鳥が黒い尾はねて、 ちちッ、ちちッ、と啼いてゐる。 山路に散つたカルタは 誰がとる。 むべ山ならぬこの山かぜが、 さつと一度にさらつてく。 [みかきもり] 「吹くからに」の歌は草木がしおれて山の木々も落葉した感じがします。 金子みすゞは山の木々でなくその落葉のほうに目を向けています。 山路に散っている葉っぱを陽光が照らし、葉っぱが鮮やかに輝いています。その葉っぱは、 虫食いすらもまるで変体仮名の文字のようにしゃれた感じになったかるたの札です。 黒い小鳥はヤマガラでしょうか。おみくじを引くように読札を引くヤマガラの可愛らしい声が 聞こえてきます。 山風が落葉の札を舞いあげてさらっていく様子は競技かるたさながらです。 下関に住んでいたみすゞは競技かるたを見たことがあったのかもしれません。 ----------- 金子みすゞ 明治36年(1903)4月11日生~昭和5年(1930)3月10日没 宇部かるた協会(山口県) 大正12年(1923)設立 九州かるた協会(福岡県) 大正9年(1920)設立 ----------- P.S. この詩にはみすゞのしゃれっ気が感じられます。 落葉の札(木へん)、黒い小鳥(ヤマガラ)、山かぜ(あらし)と「落葉のカルタ」の詩には 木枯らし(こがらし)が隠されています。きっと、木+から+あらし=木枯らし を織り込んだ 「吹くからに」の歌へのオマージュなのでしょう。 吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風をあらしといふらむ |
■参考文献 ・競技かるた百年史(社団法人全日本かるた協会) ■参考URL ・Wikipedia 金子みすゞ ・Wikipedia ヤマガラ ・金子みすゞ記念館 ・金子みすゞの世界/落葉のカルタ ・ヤマガラ:落ち葉の上