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みかきもりの気ままに小倉百人一首

2010/10/26 「ちはやぶる」Part2
(2013/09/19 説明修正)

「春過ぎて」では「天女が蝶のように舞い降りてきて羽衣を干す」情景が
目に浮かびました。
「ちはやぶる」では「龍田姫が美しい鮮やかな紅色の御簾をくぐる」情景が
目に浮かびます。

No. 作者 解釈
17 在原業平 ちはやぶる神代も聞かず龍田川
からくれなゐに水くくるとは
春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山
  いつの間にか春が過ぎて夏が来てしまったらしい。
  そう、天女が蝶のように舞い降りてきて羽衣を干すという天の香具山に。
  (5. 天智・持統天皇)

ちはやぶる神代も聞かず龍田川 からくれなゐに水くくるとは
1)神代にも聞いたことがないくらい荒々しかった龍神のような龍田川が、
  川面を紅葉でこれほど鮮やかな紅に染めて流れているとは。
  (永遠にこの屏風絵のようにあってほしいものだ)
2)神代にも聞いたことがないくらいじゃじゃ馬の龍田姫が、美しい鮮やかな
  紅色の御簾をくぐっているとは。
  (じゃじゃ馬で秋の女神の龍田姫のように美しいあなたが天皇家の御簾をくぐるとは!)

【参考】古今集仮名序
ありはらのなりひらは、その心あまりてことばたらず。
しぼめる花のいろなくてにほひのこれるがごとし。

[みかきもり]
龍田川の川面に浮かぶ色鮮やかな紅葉の下を水が潜って流れている倭絵屏風(やまとえびょうぶ)
の図柄を、秋の女神である龍田姫が鮮やかな紅色に染められた御簾をくぐることになぞらえて
います。
現在の竜田川は平群川を竜田川と称しており、当時の竜田川は大和川本流を指すようです。
古くから大和川流域は洪水被害があり、「ちはやぶる」(勢いの強い、荒々しい)は龍田川にも
掛かっていると思われます。そこには龍神が感じられます。
そして紅葉に染まった龍田川から連想されるちはやぶる龍田姫はじゃじゃ馬ですね(^^)
「ちはやぶる」の歌は「これほどのじゃじゃ馬が天皇家に入るとはなあ」という業平の
藤原高子(二条后)へのメッセージにも感じます。
この業平の歌の三十一文字には本当にあふれんばかりの心があります。
■参考文献
・百人一首 全訳注           有吉 保      (講談社学術文庫)
・全訳古語辞典(第二版)        宮腰 賢、桜井 満 (旺文社)

■参考URL
・Wikipedia 竜田川Wikipedia 大和川

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