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遊びと人間

『遊びと人間』は、ヨハン・ホイジンガ 『ホモ・ルーデンス』(遊ぶ人間)とともによく知られる
ロジェ・カイヨワの遊戯論で、遊びを表1のように定義し、表2のように分類しています。
小倉百人一首かるたに関するものを表2に黄文字で追記してみると、表2で競技かるたは
「アゴン(競争)+ルドゥス(競技)」の分類となります。
見方を変えて、競技かるたの内容を4つの基本的範疇「アゴン(競争)、アレア(運)、
ミミクリ(模擬/表現)、イリンクス(眩暈/失神)」で分類してみると、表3となります。

競技かるたの魅力を聞くと「静と動」や「自己表現」という言葉を聞くことがよくあります。
競技かるたは基本的には「アゴン(競争)+ルドゥス(競技)」ですが、「ミミクリ(模擬/表現)、
イリンクス(眩暈/失神)」の要素も持っているからこそ、はまる人もいるのでしょう。
競技かるたをする人の学校でどんな部活動をしているか/していたか聞くと、「吹奏楽」が
よく出てきます。競技かるたも音やリズム感が大切なのでその方向性だと理解しています。
時々「演劇」というのがあって不思議に思っていましたが、「ミミクリ(模擬/表現)」で
ちょっとわかったような気がしました。


■表1.遊びの定義
No.定義内容
1自由な活動 遊戯者が強制されないこと。
もし強制されれば、遊びはたちまち魅力的な愉快な楽しみという性質を失ってしまう。
2隔離された活動 あらかじめ決められた明確な空間と時間の範囲内に制限されていること。
3未確定の活動 ゲーム展開が決定されていたり、先に結果が分かっていたりしてはならない。
創意の必要があるのだから、ある種の自由がかならず遊戯者の側に残されていなければ
ならない。
4非生産的活動 財産も富も、いかなる種類の新要素も作り出さないこと。
遊戯者間での所有権の移動をのぞいて、勝負開始時と同じ状態に帰着する。
5規則のある活動 約束ごとに従う活動。この約束ごとは通常法規を停止し、一時的に新しい法を確立する。
そしてこの法だけが通用する。
6虚構の活動 日常生活と対比した場合、二次的な現実、または明白に非現実であるという特殊な意識を
伴っていること。


■表2.遊びの分類
  基本的範疇
アゴン(競争)
・遊戯者に平等にチャンスが
 与えられた競争
・能動的
アレア(運)
・遊戯者の力の及ばぬ
 独立した決定
・受動的
ミミクリ(模擬/表現)
・遊戯者によるまねごと、変身
・観戦/観覧による誰かや何か
 への同化
イリンクス(眩暈/失神)
・一時的に知覚の安定を
 破壊し、意識を官能的な
 パニック状態に陥れる
パイディア(遊戯)
・くつろぎ
・気晴らし、気まぐれ
・即興的で不規則
・競争、取っ組合い(規則なし)
・運動競技
(A)お座敷かるた(家庭)
(B)校内かるた(学校)
・鬼を決めるじゃんけん
・表か裏か遊び
・賭け
・ルーレット
(C)坊主めくり
・子供の物真似
・ごっこ遊び
・人形、おもちゃの武具
・仮面、仮装服
・TV/映画/マンガ主人公への同化
(D)「ちはやふる」主人公への同化
(E)競技かるたのまねごと
・メリーゴーラウンド
・ぶらんこ
・ワルツ
 ↑
 ↓
(F)源平かるた大会(地域)
(G)五色百人一首大会(学校・地域)

     
ルドゥス(競技)
・困難の解決
・技能の獲得
・規則
・ボクシング、フェンシング、
 サッカー
・玉突き、チェッカー、チェス
・スポーツ競技全般
(H)競技かるた
・単式富くじ
・複式富くじ
・繰越式富くじ
・演劇
・見世物全般
・スキー、登山
・空中サーカス


意志

ルール/計算

アゴン
(競争)

←-------

ミミクリ
(模擬/表現)

脱ルール/混沌
←−−−−−−−− −−−−−−−−→

アレア
(運)

-------→

イリンクス
(眩暈/失神)

脱意志



■表3.競技かるたとの対応
分類競技かるたの内容
アゴン(競争) ・自陣及び相手陣とも25枚で、自陣を早く0枚にしたほうが勝ちになる。
・読まれた1枚1枚について音を聞き分けて素早く札を取り合う。
アレア(運) ・ランダムに読まれる出札を競技者は取り合う。
 この中で競技者は読みの流れ(追い風、向かい風)を感じている。
・残り1枚−1枚を運命戦と呼んで、競技者は自陣を守るか相手陣を攻めるか選択する。
ミミクリ(模擬/表現) ・上級者の取り方の型をまねてみる。
・競技に対する向上心や競技そのものが自分自身の自己表現になっている。
イリンクス(眩暈/失神) ・静と動。
 一定のリズムの中、余韻で集中を高め、上の句が読まれると堰を切ったように札を取り合う。
・お手つきで動揺する。




■参考URL
【コンドルをまちながら】ロジェ・カイヨワ 『遊びと人間』 (講談社学術文庫)
【るいネット】「遊び」についての学説(ホイジンガ、カイヨワ、ピアジェなど)


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