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競技かるたとコンピュータ
2.これまでのコンピュータ応用

 競技かるたは、読手が札を読む音により一瞬の判断のもと競技者が取り札をとる競技である。したがって、読みは重要な位置づけであるが、応用されてきたのがこの読みである。

 競技かるたの読みでは、まず序歌と呼ぶ空札が読まれてそれに続いて小倉百人一首の和歌がランダムに読まれる。読みは4−3−1−5方式という、下の句が4秒(四句と五句の途中)+3秒(余韻を導く語句の最後の1字と余韻)、音の間が1秒、上の句が5秒のリズムにしたがって読むことが決められている。

 このことから読みをコンピュータ応用するには、101首のクォリティの高い読み、100首の読みのランダム性、4−3−1−5方式のリズムが必要となることがわかる。これまでも読みを音楽CDにしたものがあったが、音楽CDではこうした要求を満たすことができなかった。しかし、こうした要求を満たすことができるのは安価に大容量の音声データを提供でき、ランダムアクセスが可能なCDをおいて考えられなかった。

 こうしたときに登場したのが、FM TOWNS(富士通)というCD−ROMドライブ内蔵パソコンである。このパソコン用のCD−ROMソフトが制作され、かなり要求を満たすことができるようになった。当時の技術レベルで最善はつくされたがシステム性能がまだ十分でないために競技かるたにおいて重視される音の間の1秒を実現することは困難だった。

 1994年になると32ビットゲーム機の先駆けとして 3DO REAL(松下電器)というCD−ROMドライブ内蔵ゲーム機が登場した。1995年にはこのゲーム機用のCD−ROMソフトが制作され、要求を満たすことができるようになった。競技かるたの練習場は畳のある広い場所を必要とするので、多くの場合どこかの場所を借りているが、このソフトはゲーム機という持ち運びやすさもあって練習のため読手の代わりに利用されることも多い。しかしながら読手の肉声には及ぶものでなく上級者が競技する競技会での使用は不向きであると思われる。

 また百人一首かるたに親しむことを目的として読みを重視せずに動画によるビジュアルを重視したWindows(マイクロソフト)用とMacintosh(アップル)用を共用したCD−ROMソフトも制作されている。家族で百人一首かるたをちょっとやってみようというのに手頃だろう。こちらのほうは競技かるたへの入門的な役割を果たすのではないかと期待される。

 FM TOWNS用のソフトを開発したところから同じようにWindows用とMacintosh用を共用したCD−ROMソフトも制作されている。こちらのほうは本格的な読みのものになっている。

 競技かるたにおけるこれまでのコンピュータ応用は読手の代わりをパソコンあるいはゲーム機にしてもらうことを中心に発展してきたといえる。