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競技かるたとコンピュータ
7.競技会の支援

 競技かるた人口の増加によって競技会へも多くの参加者が集まり非常に喜ばしい状況になっている。しかしその反面、試合回数の増加や会場のやりくりのために競技会が長時間になって終了が夜遅くになってしまうことも多い。そうした状況からその解決方法をさぐっていく必要がある。ここではコンピュータを応用した競技会運営によって、運営効率の向上と省力化を図ることを考えていく。

7.1.参加者を募集する
 最近競技会の運営上、事前申し込みによる参加受付がほとんどになっている。これは参加者予定者を把握することで、会場の使用方法の検討、参加賞の手配、対戦カードの準備などをあらかじめ行って、競技会当日の運営を円滑にするのを目的としている。現在の状況は上位の級の競技者ほど遠方から来る場合が多いこともあって上位ほど不参加が多い傾向があり、運営者はそうした状況も踏まえながら人数を見積もり、場合によっては参加をことわることもある。

 インターネットを利用すれば、募集および事前申し込み受付をWWW(World Wide Web)で行い、受付時に参加料を電子マネーで決済することによって、大幅な省力化ができるとともに申込者数と参加者数の大幅な食い違いを避けることが期待できるだろう。

 競技会スケジュールのホームページから個別の競技会の参加者募集の案内や会場地図・交通アクセスとともに各級の参加申込者の一覧を見ることができ、そしてその案内から参加申し込みと参加料の支払いができればよい。(社)全日本かるた協会が主催する競技会では有段者の級に参加するには協会正会員の資格を必要とされる。必要に応じて参加申し込み時にその資格確認を同時に行えばいいだろう。

 参加者募集に定員制を導入し、申し込み締切までは参加をキャンセルできるようにすれば、都合により参加できなくなった場合にもある程度対応できるし、また締切間際の申し込みラッシュを避けることもできるだろう。この場合の定員は会場の対戦可能数・級別申込者数・級別最大申込者数を勘案しながら自動調整を行って、運営に不都合を生じさせずできるだけ多くの競技者が申し込みできるようにするのが望ましいと考える。

 このような募集にすると、申し込み時に参加料を支払うことから参加者の事前申し込み意識も高まって申込者と参加者の食い違いが少なくなることが期待できるし、競技会当日の現金のやりとりがほとんどなくなることで金銭トラブルの心配が少なくなり、参加者の当日受付も簡単に済ませることができる。運営者は手をわずらわせることなく申込者リストもできるし、競技者はどのような出場者の顔ぶれになるか事前にわかって楽しみも増えるだろう。

7.2.参加者の出場登録をする
 競技会当日の受付は競技の出場者を受け付ける。事前申し込みが少なかったり、事前申し込みしたが出場しないなど、出場者が定員に達していないときは当日受付も行い、できるだけ多くの競技者が出場できるようにしたい。このとき、競技かるたの世界で個人を識別する会員カードを導入すると、受付や出場者集計をすばやく行うことができる。事前申し込みをした出場者やキャンセル待ちの出場希望者は会場受付でカードを機械に読ませて受付を済ませると、自動的に出場者は申込者リストにチェックされ、出場希望者はキャンセル待ちリストに登録される。受付締切をして申込者リストの出場者人数が確定すると、定員に余裕があればキャンセル待ちリストに登録された出場希望者を先着順または抽選でコンピュータにより即座に決定して、本人の出場受付を行う。これですべての出場者が確定し、級別出場者数が自動集計される。

 現在の当日受付は出場受付と参加料の徴収・確認で多忙なうえ、出場者数は申込者リストのチェックを手作業で数えている状況である。そうした中で上記のようなキャンセル待ちの対応を行うことは難しい。競技会という機会にできるだけ多くの競技者が参加できるためには当日受付の効率化もひとつの要素ではないかと思う。

7.3.対戦を組み合わせる
 トーナメント戦においては誰とどのような順番で対戦していくかもまた勝負のあやである。役員が対戦カードを切り、それを見守る競技者が手を入れ、1枚1枚めくって対戦者を決めていくその瞬間はどきどきするものがある。日常ではなかなか得ることのできないそういう気持ちになれることも競技会に出場する魅力なのかもしれない。だが長時間にわたって行われる競技会の現状を考えると時間短縮のための取り組みとして対戦組み合わせ方法の簡略化も必要といえよう。

 当日受付ですでに出場者はコンピュータに登録されている。これを同会や同県の対戦回避ルールを設けランダムに対戦組み合わせをコンピュータに決めさせて、組み合わせに要する時間を短縮化することが可能である。このとき競技者が対戦カードに手を入れることと同様な効果を期待するため、回転ルーレットをスタート・ストップするような偶発的な方法で乱数の種を与えながらランダムに組み合わせを決めるようにすればいいだろう。競技者が試合を終えてコンピュータのほうに群がって会場が空いているとき、運営者がそれと並行して試合終了直後からすぐに対戦位置を示すカードや取り札を所定の場所に置いていくのは時間短縮に効果が高い。ただし最後の競技者に配慮して、試合終了から次の試合開始まであまり早くなりすぎないように運営者は気を配ってほしいと思う。

 競技者は試合を終了すると勝者は対戦位置カード・取り札を運営者に返すとともに自分の会員カードを提示する。運営者はこのカードを機械に読ませることでどちらが勝ったかをコンピュータに記録する。また必要に応じて枚数差のデータを手入力する。これによってコンピュータによる試合進捗のリアルタイム管理ができるようになる。このコンピュータがインターネットに接続されているなら、リアルタイムで競技会の状況を世界中で知ることが可能になる。

7.4.成績をレポートする
 こうしてコンピュータによって試合を管理することで、成績レポートを自動的に作成することや競技会の競技記録をデータベース更新に利用することができる。そして、そうした情報をインターネットで公開することで全国で行われる競技会の状況や競技者の成績を誰もが即座に知ることができるため、競技かるたにより多くの親近感を持つことができよう。何かのきっかけで競技かるたをやめていくということもよく見受けられるが、こうした情報を身近に触れることができることで競技かるたに対していつまでも親近感を持って接することができるのではないかと考える。

 コンピュータによって競技会の運営効率の向上や省力化のみならず、その競技会を誰かがどこかで見てくれていると考えるとまた楽しい気がする。