第二章 個々の読解の在り方を吟味する
第5節 【読解 その5】について
〔注2−21〕
同書の「名詞修飾的節[attributive clauses]」(127--131)に関わる箇所にカンマを伴わない「制限的関係詞節」とカンマを伴う「非制限的関係詞節」の双方が記述されていればことは単純である。カンマを伴わない「制限的関係詞節」はカンマを伴わない「名詞修飾的付加詞[attributive adjuncts]」に対応し、カンマを伴う「非制限的関係詞節」はカンマを伴う「名詞修飾的付加詞」に対応するということになるからである。
ところが同書ではカンマを伴う「非制限的関係詞節」は「連続的副詞節[Continuative Adverb Clauses]」(126)、「連続節[Continuative Clauses]」(135)、「準副詞節[semi-adverbial clauses]」(137)などの下位範疇を有し、「名詞修飾的節[attributive clauses](127--131)」とは別の箇所で吟味されることになる。
かくして、同書の「名詞修飾的節」は「カンマを伴わない関係詞節」に対応すると判断せざるを得ない。「(休止の有無という)こうした相違の理由は付加詞の特性の中にある。このことは名詞修飾的節[attributive clauses]を扱う章の中で説明されることになる」(33-2)と記述されてはいるが、「名詞修飾的節」に関する記述の中で「相違の理由」が説明されることはない。
同書は、カンマを伴う分詞句が名詞句の直後に位置する場合、これを自由付加詞ではなく名詞修飾要素と見なしてはいるが、このような名詞修飾要素に伴うカンマの役割はついに説明されることはない。このように、「名詞修飾的節」は「カンマを伴わない関係詞節」に対応すると判断せざるを得ないのではあるけれども、関係詞whichについて記述されている箇所(403 Anaphoric Relative[前方照応的関係詞])では、「名詞修飾的用法[attributive use]は文章語[written language]に限られる」とされ、この「名詞修飾的用法」は明らかにカンマを伴う関係詞節に言及している。「連続的関係詞節[continuative relative clauses]は文章語[written language]に限られる」(135-2)のである。「連続的関係詞節」についての理解が、「(連続的節は)緩い結びつきの文集合や独立文の一要素に含まれていてもいいような、先行詞に関する付随的[incidental]情報を与える」(136)といった程度にとどまる限り、名詞修飾に伴うカンマの有無に十二分の注意が向けられることにはなりそうもない。「カンマ」については[1−49], [2−16]参照。
(〔注2−21〕 了)
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