『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第二章 個々の読解の在り方を吟味する

第1節 【読解  その1】について


〔注2−3〕

   例えば、以下の例では、「カンマを伴う分詞句」は分詞句の暗黙の主辞との関係の方が優位である([1−13]参照)と感じられている。

His last novel, written (= which was written) in 1925, is his best.
〈彼の最後の小説は1925年に書かれたもので、彼の最良の作品である。〉
(CURME, Parts of Speech, 43-5)
   これと類似する次の例は、《受験英語》の世界では馴染みのものである。
This book, (being) written in simple English, is suitable for beginners.
(=As this book is written in simple English, it is suitable for beginners)
(大塚高信編『新英文法辞典』、Participial construction(分詞構文)の項)(下線は引用者)
   ここでは「解読」の結果、分詞句は母節に述べられていることがらの理由をあらわすと判断されているが、次のような判断もある。
This book, written in simple English, is suitable for beginners.
(この本はやさしい英語で書いてあるから、初歩の人にむいている)で、斜体の部分はas it is written …とパラフレイズできる分詞構文とも、which is written... とパラフレイズできる形容詞的修飾句とも考えられる。ここの区別は分明ではない。
(清水護 編『英文法辞典』、Participial Construction(分詞構文)の項)(下線は引用者)
   以下の文例は、Betty Schrampfer Azar, UNDERSTANDING AND USING ENGLISH GRAMMAR中の「形容詞句を形容詞節に変えよ」という練習問題中の9番にある課題文。
St. Louis, Missouri, known as “The Gateway to the West,” traces its history to 1793, when Pierre Laclede, a French fur trader, selected this site on the Mississippi River as a fur-trading post.
〈「西部への入り口」として知られるセントルイス(ミズーリ州)の歴史は1793年にまで遡る。その年、フランス人毛皮商ピエール・ルクレドがミシシッピ川沿いのこの場所を毛皮取引基地に選んだのである。〉(p.228)(下線は引用者)
   この文法教科書の趣旨に添えば、下線部二箇所が形容詞句である。更に第二章第5節参照。

(〔注2−3〕 了)

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