『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第二章 個々の読解の在り方を吟味する

第2節 【読解  その2】について


〔注2−6〕

   参考になる記述を紹介しておく。

接続詞を使って書き換えることが可能な例もあるが、書き換えが不可能であるか、もしくは書き換えによって原文の実感が損なわれてしまう例もある。分詞構文の本質はむしろそういう例の中にあるというべきであろう。(江川泰一郎『改訂三版 英文法解説』, 233)

分詞構文は、形のうえで主節に対して従属的であるというだけで主節との意味関係は明示されていないが、時、原因・理由、条件、譲歩、付帯状況など様々な意味を表すことができる。これらのいずれを表すかは分詞構文中の述語の文法的特性、主節の相(ASPECT)、文脈、言語外の常識などによって決定できることが多いが、いつも明確に区別できるわけではなく互いの意味が部分的に重なっていることも多く、曖昧で不明瞭である場合さえある。しかし、このような漢然とした意味が分詞構文の表現上の特徴とされる。さらに、分詞構文が表すこれらの意味は、用いられる分布や使用域(REGISTER)とも重要な相関関係がある。
(荒木一雄・安井稔編『現代英文法辞典』participial construction[分詞構文]の項)(下線は引用者)

   Kruisinga & Eradesは「自由付加詞[free adjunct]」(「自由付加詞」には《分詞構文》と見なされるような分詞句も含まれる。[1−1], [1−8]参照)について次のように記述している。
自由付加詞と文の他の部分との論理的関係は常に明瞭にして明白であるわけでは決してない。このことが、この構造が英語において非常に頻繁に用いられる理由の一つである。というのも、学生にも難なく分かるであろうが、あらゆる種類の漠然として複雑な諸関係を明確化しないままにしておくことが非常に好都合なことはよくあることだからである。
(KRUISINGA & ERADES, An English Grammar, 38-1)
   書き換え云々という点については次のような記述もある。
分詞構文を、よく接続詞を用いて書き直す問題があるが、あまり感心しない。分詞を用いて書かれた文は、それなりの理由があってそのような形をとっているのであるから、機械的に書き直しをさせることは避けたい。接続詞を用いて書かれた文を分詞を用いて書くことは、説明としては納得がいくが、文体上違いがあるものをイコールで結ぶのは問題があろう。
(綿貫陽・淀縄光洋・MARK F. PETERSEN『教師のためのロイヤル英文法』、p.145)

(〔注2−6〕 了)

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