『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第五章 分詞句の解放に向かって

第3節 もう一つの「カンマ+-ed分詞句+ピリオド」


〔注5−9〕

   「意味内容」については既に[1−6]で次のように述べておいた。

意味内容」は、一定の言語的脈絡あるいは非言語的脈絡の中に置かれたある記号(列)あるいは音素列について、その記号(列)あるいは音素列の受け手(話者=受け手である場合もある)が語り得る(と判断している)ことがら(の一端あるいは全て)である(脈絡がゼロである場合を含む)。
   「辞書外的情報」は「意味内容」の構成要素である。何かしらの脈絡中に置かれているある発話中のある語(句)の「意味内容」がその発話の受け手の内部でどのように了解されているかが、文〔発話〕の読解に反映されることもある。例えば以下の文例中の語"crippled"について、「身体に障害がある・不具である」という辞書的知識が共有されている受け手の間でも、その語についての「意味内容」の共有のされ方が異なるということになれば、読解は異なった成立の仕方をするかもしれない。
I will employ him, who (=although he) is crippled.
(私は彼を雇おう、不具ではあるが。)(木村明『英文法精解』p.129)
   ここに見られる日本語への置き換えについて、[3−2]で次のように記しておいた。

   「ここで、〈私は彼を雇おう。彼は身体に障害があるんだ(障害があるから)。〉という「日本語への置き換え」が実現しなかったのはなぜか。」

(〔注5−9〕 了)

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