『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第2節 《分詞構文》と主辞補辞……形容詞句・名詞句の場合


〔注7−14〕

   杉山は「同格」について「第5章 特殊構文、§5 同格およびそれに類する構文」(杉山忠一『英文法詳解』)の中で類書に比べると断然多くの記述を残し、適当な数の文例を挙げている。その労、多とすべきである。綿貫陽・淀縄光洋・MARK F. PETERSEN『教師のためのロイヤル英文法』の記述と比較してみれば、いやさらに、杉山の労がしのばれる。

   『教師のためのロイヤル英文法』は「§80.省略・同格」の箇所で「コミュニケーションでは、省略という現象がしばしば生じる。一方、同格というのは、英文を読む際に欠かせない知識である。」(p.241)と述べた後、「同格」については

同格という形は、名詞や代名詞の後に、他の語句を用いて説明を加える表現方法である。生徒には何と何が同格関係になっているかを考えさせて、この表現を理解させる。コンマで前後を囲ってある場合はすぐに分かるが、同格のthat節を、関係詞節と間違えやすいので、特に用例で示したい。(ibid, p.242)
   とし、「同格のthat節」を含む文例を五例挙げた後、「同格のthat節」を従え得る名詞をぞろぞろと列挙している(江川泰一郎『改訂三版 英文法解説』にも「【解説】(2)どんな名詞がthat-節を従えて同格になるかという問題があるが、幸いこれにはBBIが手ごろな参考資料として利用できる。同辞書には該当する名詞に標示がついていて、丹念に数えた人の話では全部で約180語あるそうである。」(§17同格)といった余談が語られている)。[7−12]でも述べたように、並置[apposition]について何ごとかが語られる場合、主辞補辞の場合と同様、その語りはカンマを伴う分詞句の理解に見合ったものになる以上、その記述の質をとやかく言う気はないが、「英文を読む際に欠かせない」これほど重要な学習事項について記述を避けようという姿勢(文例を含めた記述の量の乏しさのことだ)は感心しない。

   杉山は、次のような分類の下で、説明と文例を残している。

   (1)もっとも純粋な形での同格;(2)同格的に解説の文句や説明を補足した場合;(3)同格的な語句が分離している場合;(4)分離した語句が補語に近い性質を有する場合。(杉山忠一『英文法詳解』、同格およびそれに類する構文、pp.660--663)

   杉山が「同格」をどのように説明しているかは[7−13]参照。その説明は私には納得行きかねるものであるが、ちょっとした手違いのせいかもしれないと斟酌しておく。

(〔注7−14〕 了)

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