『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第5節 「文章体」なのか、「文語体」なのか


〔注7−46〕

関係代名詞の「挿入用法」は、一般に文語的である。(清水周裕著『現代英文法』, p.204) (下線は引用者)

非制限用法の関係代名詞節は、先行詞について説明を付け加える。文語調。(『ロイヤル英文法 改訂新版』、p.637)(下線は引用者)

一般に非限定用法は文語的で、書き言葉に多い(Swan, PEU, §528.1)。(江川泰一郎『改訂三版 英文法解説』,55) (下線は引用者)(以下に引用したPEUの記述と対照せよ)

連続用法は主として文語的な言い方である。(杉山忠一『英文法詳解』,p.181) (下線は引用者)

継続用法は書きことばとして用い、接続詞を使って表すよりも、文を引き締める効果がある。(堀口・吉田『英語表現文法』,p.280) (下線は引用者)

連続的関係詞節[continuative relative clauses]は文章語[written language]に限られている。(KRUISINGA & ERADES, An English Grammar, 135-2) (下線は引用者)

既に述べたようにこの構造は概して[chiefly]文語的[literary]である。しかしこの種のものは、関係詞が、名詞先行詞ではなく先行する主節全体に言及する場合は、口頭英語[spoken English]において大変有り触れており、この場合、whichが唯一の可能な代名詞である。(ibid, 135-4) (下線は引用者)
(「既に述べたように」とは135-2の記述のことであり、「この構造」とは「連続的関係詞節」のことである。Kruisinga & Eradesでは「文章語」と「文語的」の両方が用いられている)

この構造はかなり改まったもの[formal]であり、口頭英語[spoken English]の場合より文章英語[written English]の場合によく見られる。(PEG, 78) (下線は引用者)
(「この構造」とは、「非限定的関係詞節[non-defining relative clause]」のこと)

非識別的関係詞節[Non-identifying relative clauses]は会話の場合にはかなり稀である。重々しく堅苦しい[formal]ことが多く、文章英語[written English]の場合の方がずっとよく用いられる。非識別的関係詞節はカンマ[1−22]によって名詞から切り離される(非識別的関係詞節は名詞の意味の不可欠な一部ではないからである)。(PEU, 528) (下線は引用者)

非限定的関係詞節[Non-defining relative clauses]は、音声表現[speech]よりむしろ主として文字表現[writing]において用いられる。(Collins COBUILD on CD-ROM, 8.85 kinds of relative clause)

連続節は表現のテンポと適度に緊迫感を加える効果を持つ。この構文が専ら文語体の構文に好んで用いられる理由がここにある。これに反し口語では一般にあまり用いられない。(荒木一雄・安井稔編『現代英文法辞典』、continuative clause(連続節)の項)(下線は引用者)
(「連続節」は「広義では、制限節に対応する非制限節と同義に用いられるが、狭義では非制限節の下位類の1つである関係詞節(RELATIVE CLAUSE)で,「接続詞+代名詞(または副詞)」に書き換えられる」(ibid)と説明されている)

非制限的用法は、主として文章体で、通例、関係代名詞の前にコンマが置かれ、口語体では、音調の切れ目[1−19]がある。(安井稔『改訂版 英文法総覧』, 20.4)(下線は引用者)(更に以下に引用したCGELの記述参照)

非制限的用法は、文章体ではしばしば見られるが、口語体ではあまり用いられない。英語における口語体では、おそらく、少なくとも90%が制限的用法であると言われている。非制限的用法の文は、口語体の場合には、単文に切り離すのが普通である。(ibid, 20.4)(下線は引用者)

非制限節とここで言っているものには、実際は、二つの異なるものが含まれている。一つは、They had a son, who became a pianist. のように、文末に置かれ、and heなどの形で書き換えることができるもので、これが非制限的用法であることに間違いはないけれども、もっと細かにいうなら、継続節(continuative clause)と呼ばれるべきものである。つまり、この用法では、非制限節は、等位接続詞によって結ばれた等位節にほとんど等しく、違いは、文体上のものであるにすぎないと考えられる。つまり、継続節のほうが文語調で、緊迫感があるということである。(ibid, 20.4)(下線は引用者)
(更に上記の『現代英文法辞典』からの引用参照)

どちらかといえば文語的な構文であり、口語ではあまり用いられない。書きことばでは、その前にコンマが置かれるのがふつうである。この種のものを継続的非制限的関係代名詞節(continuative non-restrictive relative pronoun clause)と呼ぶことにしたい。(成田義光・丸谷満男・島田守『講座・学校英文法の基礎 第六巻 前置詞・接続詞・関係詞』, p.198)(下線は引用者)(以後、『講座第六巻』と略記)

この用法も、どちらかといえば書きことばでよく見かけるものであるが、書きことばの場合には、その部分が、コンマ、またはダッシュで区切られたり、かっこの中に入れられたりすることもある。話しことばでは、その前後に休止が置かれる。(ibid, p.199)(下線は引用者)(「この用法」とは、同書によれば「補足挿入的非制限的関係代名詞節(supplementally parenthesized non-restrictive relative pronoun clause)」)

   CGELの記述はその淡白さが異彩を放っている。
文字表現[writing]の場合、非制限的関係[nonrestrictive relationship]は通常、カンマによって区切られる。
   WRITTEN : Then he met Mary, who invited him to a party.
   SPOKEN    : Then he met MARy| -- who invited him to a PARty|
   (CGEL, 17.22) (下線は引用者)
("MARy"も"PARty"も下降調[falling tone]。「縦線(|)」は「音調単位[tone unit]の終わりは太い縦線[a thick vertical]で示す。」(ibid, App-II-11) の「縦線」である)

(〔注7−46〕 了)

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