『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第5節 「文章体」なのか、「文語体」なのか


〔注7−51〕

   「文章体」と「文語体」の相違は何か。日本の学習用文法書の記述とそこに挙げられている文例を見る限り、「文章体」と「文語体」の違いが意識された上で用語が選択されているようには思えない。英語で書かれている文法書では、「非制限的関係詞節」についても、《分詞構文》にほぼ相当する類の分詞句についても、概ね「文章語〔書きことば〕[written English]」と評価されている([7−46][7−48]参照)。ただ、「文章体」と「文語体」の相違は決して自明ではないようである。その相違を考える上で参考となりそうな記述を引用しておく。

Palmer-Blandford (1939-2)の説明にも目を向けよう。「話しことば(spoken)と書きことば(written)という用語は一つ以上の解釈を受け易い。話しことばとは普通の会話や親しい友達に手紙を書く時教育ある人達が一般に用いている英語をいうと解すべきである。」また「書きことばとは書籍、書評、新聞、儀礼的手紙に一般にみられかつ演説のことばあるいは面識のない人同士のかしこまった会話に耳にするような英語」をいうとPalmer-Blandfordは述べている

さらに「話しことばと口語とはしばしば同義的に用いられる。したがって口語(colloquial)という用語は上に述べた内包をもち、卑俗な(vulgar)とか俗語(slangy)と同義的な意味は含まれない。同じように書きことば(written)は古典に通じた(classical)とか文語(literary)の同義語としてしばしば用いられている」(Palmer-Blandford, 1939-2, p.xxxiii)とある
(村田勇三郎「現代英語の諸相」(『英語学体系 第3巻 文法論T』所収)、pp.540--541)(下線は引用者)

(〔注7−51〕 了)

目次頁に戻る
 
© Nojima Akira.
All Rights Reserved.