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第四章 戦闘開始

 

 「降りかかる火の粉は振り払うだけ」というセリフもありますが、振り払うことが出来なければ死は避けようのない悲劇となります。この広い世界の中で、禍族のみならず術者も人間も互いに『敵』となりうるのですから。そして、特に術者の人生は多かれ少なかれ戦いに明け暮れることになるでしょう。この章では戦闘に関するルールを書き記していきます。

 

● 戦闘行動の種類と回数

 DOCのルールでは、戦闘中の行動は主に「S行動」「L行動」「C行動」の3つに分類されます。まあ、それ以外の特殊な行動もありますが、基本は上の3つとなります。何故かと問われるならば、これらの行動は1ラウンド(6秒)に行える回数が決められているからです。
 DOCではそのことを考えるためにAR(Action Right=行動権利)を想定します。各ラウンドのはじめにARは2点になります。そして、何らかの行動をとるためにはARを消費しなければなりません。軽い行動ならば消費量が少なく、大変で時間のかかる行動ならば消費量が多いことになります。
 では、それぞれについて少し説明していきましょう。

・S行動
 戦闘中最も多く使用するであろう行動です。AR消費量は1。通常ならば1R(ラウンドの略です)中に2回の行動を取りうるのです。S行動の中には武器攻撃、移動(S)、Sでの術力、集積、装精霊の組み替え、跳躍、踏み込み等の近接戦闘中の状態移行が含まれます。また、回避(S)もこのS行動に近いといえましょう。

・L行動
 普段(S行動)よりも時間をかけて確実にことをなしたいときに用いられます。AR消費量は2。つまり、通常ならば1Rに1回しか使えないことになります。L行動で行動すると、武器攻撃ならばダメージが+4、術力ならば発動達成値が+4になります。L行動には武器攻撃、Lでの術力、「投げ」「締め」「極め」、フルオート射撃が含まれます。

・C行動
 タイミングを合わせて行動するときはC行動になります。定義としては「相手の行動に『適した』行動をとるときの行動」ということになるでしょう。すなわち、相手のアクションに対して何らかの状況判断が加味されるものとします。C行動をとるにはたいてい「迎撃」技能をコンビネーションさせる必要があります。C行動で消費するARは1点です。

 つまり、伝承点によってARの獲得をしなければ、1Rの間には1ARの行動を2回するか、2ARの行動を1回行うかになるわけです。また、上記のSLC行動の他にも行動はあります。それらについては後述していきたいと思います。

 

● 行動宣言と行動順位

 戦闘中は便宜上1RをMV(Movement Value)単位に分けて考えます。各ラウンドは第∞MVからはじまり、第0MVで終わるものとします。ですから、高いMVはそのラウンド内で早いタイミングであることを表しています。そして、SMVはそのキャラクターが最初に行動宣言できるMVを示しています(算出法は第1章)。
 各ラウンドを開始したら高いMVの行動から解決していき、SMVが来たら行動宣言に入っていくのです。
 行動宣言とは次にどのような行動をするかを宣言することなのですが、同じMVで複数のキャラクターが行動宣言を行わなければならないときは『知力』の低い方から先に行動宣言をしなければなりません。『知力』も同じ場合は「心理学」技能の低い方から。それすらも同じだった場合は別の紙にでも書いておき、同時に公開して下さい。何故ここまで宣言の順番にこだわるかというと、C行動が絡んでくると先に行動宣言するのが致命的な事態になるからです。相手の行動に応じて戦術を変えてくる相手は実力以上の驚異となってくるでしょう。
 SMVの前のMVでは全く何もできないかというとそうでもありません。ARを消費しない行動ならば基本的に出来ます。会話・防御・抵抗などがこれに当たります。例外として、前のラウンドの第0MVを「スキ」で終えたときにはSMVまで会話しかできません。
 行動宣言がすんだからといって、すぐに行動の判定に移るわけではありません。それぞれの行動によって実際に行動が出来るMVが異なる場合もあり得るのです。また、行動の前後にスキが生じることもあり得ます。下の図を見て下さい。

行動

 上の図で左端のマスが行動宣言したMV。塗りつぶされたマスが実際に行動が発生するMV。それ以外のマスが先ほどからいわれる「スキ」になるのです。スキの間はほとんど身体を能動的に動かすことはできません。ARを消費する行動はもちろん、防御・抵抗Tもできなくなります。行動後のスキが終わって、まだARが残っていたらもう一度行動宣言ができ、これを繰り返していきます。

 

● 命中判定

 さて、行動できるMVになって何らかの攻撃(ここでは武器等を使った白兵・射撃戦のことを指します)を行うことになったら命中したか否かを判定しなければなりません。
 甘んじて攻撃を受けるなら構いませんが。基本的には第2章の行為判定に従って攻撃者が達成値を出します。「攻撃」+『運動力』の達成値をです。この達成値が何らかの要因でマイナスになってしまったら、攻撃は(例え相手の回避・防御・カウンターの達成値を上回っていたとしても)必ず失敗になります。
 被攻撃者は可能であり、それを望むのならば回避・防御・カウンターのうちどれか1つを試みることができます。
 カウンターを試みたのならば迎撃側も達成値を出し、高い方の攻撃が命中することになります。
 回避を試みうる場合、被攻撃者は攻撃の達成値を目標値とした「回避」+『運動力』に成功したら攻撃者の攻撃から全くダメージを受けません。ですが、失敗してしまったら攻撃者の攻撃はクリーンヒットすることとなります。一般に(誘導ミサイルなど以外)、攻撃の達成値は変動しますので同点だとクリーンヒットしてしまいます。
 防御を選択した者が攻撃の達成値を目標値とした「防御」+『運動力』に成功したらそのダメージを「防御」LV+1分の1(最悪でも2分の1)にすることができます。しかし、これも回避と同じように判定に失敗すると攻撃者の攻撃はクリーンヒットすることとなりますし、通常、同点でもクリーンヒットしてしまいます。被攻撃者が盾を持っているか、攻撃者の武器が鈍器だった場合は「防御」+『筋力』でも防御は可能です。

 

● ダメージの算出とその影響

 クリーンヒットしたか否かはともかく、攻撃が命中したらダメージの算出を行います。まずは攻撃者が「最終攻撃力」を算出します。

最終攻撃力=武器固有の攻撃力(+強撃点)+2D6

 上式の2D6は技能の有無に関わらず2D6のままです(後述の縁故による変動はありえます)。この数値を防御に成功していたならば「防御」LV+1分の1にしてから、「最終防護点」を算出・差し引いて残った分がダメージとなります。

最終防護点=装備・術力等による防護点+2D6

 「最終防護点」の場合もやはり技能の有無に関わらず2D6のままです。
 なお、これら攻撃力・防御力の算出の際にも「クリティカル・ファンブル」は発生し得ます。
 ダメージを受けて、HPが『耐久力』×1点を下回ったらその人物は重傷状態になり、身体に様々な影響が出てきます。それを決めるのがデスチャートです。重傷状態になってしまったら2D6を振って現在のHPに加え、その数値の修正を各能力値に加算(?)します。

 

・ 通常デスチャート

12以上 ペナルティなし
11 「軽度の運動能力の低下」…運動力・筋力−1
10 「軽度の知覚能力の低下」…運動力・知力・感覚力−1
「軽度の霊的能力の低下」…運動力・感覚力・精神力・霊力−1
「運動能力の低下」…運動力−3、筋力−2、感覚力−1
「知覚能力の低下」…運動力・知力・感覚力−2
「霊的能力の低下」…運動力−3、感覚力・精神力・霊力−2、知力・筋力−1
「決定的ダメージ」…運動力−3、筋力−2、感覚力・精神力・知力−1、1ダメージ/R
「致命的ダメージ」…運動力・筋力−3、精神力・知力・感覚力−2、霊力+1、1ダメージ/R
「臨界ダメージ」…耐久力・知力−2、感覚力・運動力・筋力−1、精神力+1、霊力+2、2ダメージ/R
「限界ダメージ」…耐久力−3、2ダメージ/R、気絶
1以下 「致死ダメージ」…死亡

 

・ サイボーグ用デスチャート

12以上 ペナルティなし
10〜11 「軽度の運動系障害」…運動力・筋力−1
8〜9 「軽度の知覚系障害」…運動力・知力・感覚力−1
6〜7 「運動系障害」…運動力−2、筋力・感覚力−1
4〜5 「運動系障害」…運動力−2、筋力・感覚力−1
「知覚系障害」…運動力・感覚力−2、知力−1
「精神系障害」…運動力・筋力−2、知力・感覚力・精神力・霊力−1、「静穏チェック」
「決定的故障」…運動力・筋力−3、知力−2、感覚力・精神力−1、1ダメージ/R、「静穏チェック」
「致命的故障」…運動力−4、筋力−3、知力・感覚力・精神力−2、霊力−1、1ダメージ/R、「静穏チェック」
−1 「臨界的故障」…運動力・筋力−4、知力・感覚力・霊力−2、精神力−1、1ダメージ/R、「静穏チェック」
−2 「限界的故障」…耐久力−3、1ダメージ/R、気絶
−3以下 「致死的故障」…死亡

 

・ 式用デスチャート

9以上 ペナルティなし
「混乱」…必ず手近な者にL攻撃を仕掛ける
6〜7 「逆襲」…必ず召喚者にL攻撃を仕掛ける
3〜5 「帰還」…元の世界に返る
2以下 「消滅」…消滅する

 

 デスチャートは『耐久力』×1点を下回るHPになるたびに行い、その影響は重複します。ですから、「決定的ダメージ/故障」〜「限界ダメージ/故障」が適用されると、毎ラウンドデスチャートを行わなければなりません。デスチャートの効果は術力や自然回復力でHPが重傷状態から脱するまで持続します。
 例えば、ある『耐久力』が5の術者(非サイボーグ)のHPが3になり、重傷状態になったとしましょう。プレイヤーはその場で2D6を振り、その目が5であったら、デスチャートの3+5=8、つまり「運動能力の低下」になります。この時に右側の「回数」の欄に「1」と書くわけです。何らかの理由でHPが5以上になると今回の「運動能力の低下」、および他のデスチャートによる効果は全て消されます。しかし逆に、回復することなくデスチャートの影響が重複していき、どれか1つでも能力値がマイナスになってしまったら、その術者は「戦闘不能」になってしまい、やはり何らかの理由で回復しない限り戦線に復帰することはありません。
 ちなみに、人間と<同化>した禍族は通常のデスチャートで判定しますが、デスチャートで「気絶」と指定されない限り、能力値がマイナスになっても戦闘不能にはなりません。
 サイボーグはサイボーグ用デスチャートで判定を行いますが、「静穏チェック」という通常デスチャートにはない判定を行わなければならなくなるでしょう。「強さ」を求めて自分の肉体を改造していくサイボーグはその「強さ」から来る自信と破壊衝動ゆえに人格も人間を超越していきます。彼らにとって誰よりも強い自分が負傷するのはとてつもない精神的衝撃なのです。自分が負傷した衝撃は彼らの理性を吹き飛ばす可能性があり、衝撃に耐えられたか否かを判定するのが「静穏チェック」なのです。「座禅」+『精神力』−発狂値の一般ロールを行い、その達成値を下の表に当てはめてみます。

 

・ 静穏チェック

0以上 「静穏」・・・ペナルティなし
−1〜−2 「恐慌」・・・あらゆる達成値−3、発狂値R持続
−3〜−5 「錯乱」・・・戦闘不能、発狂値R持続
−6〜−8 「狂乱」・・・視界内の全てに攻撃、命中+4、回避・防御−4、発狂値R持続
−9以下 「発狂」・・・狂気表参照、永続

 

 発狂値とは「下部構造が上部構造を支配する」と言われているように、サイバーウェアを埋め込むごとに増えていく「精神的脆さ」を表す数値であり、殺傷能力を高めるためのサイバーウェアほど発狂値が高くなります。狂気表は「静穏チェック」以外にも、相当に深い精神的ショックを受けた時にはサイボーグならずとも適用することが可能でしょう。
 サイバーウェアを埋め込むことが人間の精神を狂気へと近付けるのは、これから先にどんなにサイバーウェアの開発が進んでも止められないでしょう。しかし、だからといって軍隊に最凶の狂人を抱える余裕はありません。
 そこで、各国の軍隊は見込みのありそうな兵士を『強靭な』兵士に育て上げることを始めました。ただ技術・肉体的に強靭にするのは当たり前。彼らは幼少のころから特に精神的に強靭に育てられ、人の生き死にに無頓着になり、超自然的な力を信じず(=術力の行使を放棄し)、平和という幻想を抱かないようになっていきます。
 彼らの名は「喪情士」。紀元25世紀に登場する彼らについての詳細は第7章に載っています。下の表が前述の狂気表です。

 

・ 狂気表

12 多重人格  何かの拍子に別人格に切り替わる、別人格中も記憶はある
11 憑依妄想  神懸かりの状態に陥る、しばらく行動不能
10 精神分裂  思考がまとまらない、『知力』−2
恐慌症   縁故「恐怖:重傷ロールの原因になったもの、4LV」を持つ
快楽殺人症  人間を見ると殺したくなる
離人症   「他人」を認識できなくなる
中毒症   1D6→1煙草、2アルコール、3覚醒剤、4睡眠薬、5血液、6精神安定剤、
        を2日に1回与えないと全達成値−2
失語症   言語能力を著しく失う
半身不随  左右半身の片方が動かせなくなる
大脳破壊  植物状態になる
脳幹破壊  2分以内に治療しないと死亡、しても1週間の植物状態後死亡

 

 余談ではありますが、術力や霊薬を用いない限り、HPは6時間につき1点しか回復しません。ただし当然ながらHPが完全に回復しても切り落とされた腕は生えてきませんし、一度命を落とした者のHPは二度と回復しません。
 また、APは集積(第3章で記述)や術力・霊薬を用いない限り3時間の安息による1点、ないし6時間の安眠での完全回復以外にはまず回復しません(『伝承力』は別)。

 

● 至近距離戦闘

 基本ルールは剣と剣を持った「一足一刀の間合い」を基準に記述されていますが、相手が剣を持っていて、自分が素手の場合は相手の懐にもぐり込んだ方が有利ですし、敵を殺さずに捕らえたいので相手を押さえ込みたいなんてこともあるでしょう。このような場合、これから説明する至近距離戦闘のルールを使うことになります。
 至近距離戦闘は通常状態から派生する2つの状態「無距離状態(ゼロスタンス)」「組み付き状態(ホールド)」で行われます。読んで字の如く、無距離状態とは懐に入り込んだ状態で、組み付き状態とはどちらかあるいはお互いにつかみかかった状態を示します。

 

通常状態
@ya1  Aya2 
無距離状態 … 移動不能
Bya1  Cya2     互いの攻撃に関して「回避」「防御」技能1/2(端数切り捨て)
   リーチの長い武器技能1/2(端数切り捨て)
組み付き状態 … 移動不能
   「回避」「防御」技能使用不可
   リーチの長い武器技能使用不可
   互いに常に接触状態
   投げ・締め・極め攻撃が可能

 

 通常状態を含めた3つの状態は上の図のように変化させることができます。
 見れば分かるように、通常状態から無距離状態へ。また、無距離状態から組み付き状態へと変化するのです。特殊な状況下(ウィップの使用や虚術<伸腕>等)では通常状態から一気に組み付き状態にすることも可能でしょうが、極めて稀な状況だと言えます。
 図中の矢印の番号は以下のことを示しています。

 @は「踏み込み」と呼ばれるアクションで、通常の状態から懐に入り込むアクションを示します。
 双方の距離は入り込む側の「移動力」÷10(端数切り上げ)m以内でなければなりません。入り込む側はS行動で『運動力』+「疾走or体術」を行います。もしも相手が望まないのであれば、これに対して『運動力』+「疾走or体術or跳躍or回避」で抵抗することができます。この抵抗が可能かどうかの判断は基本的に抵抗Tと同様に扱います(つまり、スキ中などで体が動かないときはできません)。抵抗に成功すれば通常状態のままで、抵抗に失敗すれば両者は無距離状態になります。また、「踏み込み」の際に攻撃を行うこともできますが、「蹴撃」「手撃」「短刀術」などのリーチの短い攻撃しか組み込むことはできませんし、無距離状態としての防御側のペナルティはありません。

 Aは逆に無距離状態から離脱するアクションで、「引き込み」といいます。
 これはS行動の『運動力』+「疾走or体術or跳躍or回避」で「踏み込み」の達成値以上になれば離脱し、「移動力」÷10(端数切り上げ)mだけ任意の方向に離れることができます。ただし、吹っ飛ぶような攻撃やテレポートなどが発生した場合は「引き込み」をせずに離脱することになります。

 Bは「つかみ」と呼ばれる行動で、SかLかC行動での『筋力or運動力』+「投げ技or手撃+点撃」を行います。Lで行った場合はこの達成値に+4のボーナスを得ます。C行動での場合は「防御」「迎撃」をコンビネーションさせる必要があります。これに対してつかまれるのを望まなければ『運動力』+「回避or体術」で抵抗できます。この抵抗ができる条件は「踏み込み」に対する抵抗と同じです。抵抗に成功しても無距離状態のままです。「つかみ」に成功すれば両者は組み付き状態になりますが、この段階では組み付いているのは片方だけであることに注意して下さい。

 Cはつかまれている状態から相手の手を振り払う行動で、そのまま「振り払い」といいます。
 「つかみ」の達成値に対して『筋力or運動力』+「体術orリーチの短い攻撃」で同点以上になれば「振り払い」は成功します。「振り払」った後は両者は無距離状態となります。

 先ほどの図を見てもらえば分かりますが、無距離状態では移動できません。また、互いの攻撃に関してのみ「回避」「防御」技能を2分の1(端数切り捨て)にしなければなりません。この修正は<氷盾>などの術力によるボーナスを加算した後に適用します。さらに、リーチの長い武器技能も2分の1(端数切り捨て)になってしまいます。「リーチの長い武器技能」とは、「刀剣術」「槍術」「斧術」「杖術」「投擲」「弓術」「射撃」を指します。問題は持っている武器ではなく武器の扱い方であることに注意して下さい。刀の柄や銃底で打ち据えるのならばそれは「手撃」です。なお、拳銃タイプならば無距離状態でも使えます。
 組み付き状態でも両者の移動は全くできません。そのうえ、この状態では「回避」「防御」「リーチの長い武器技能」は全く使用することはできません。他の何らかのロールに組み込むことさえもできないのです(0LVとして組み込むこともできません)。リーチの長短は無距離状態と同じですが、つかんだ側は両手武器を使うことができません。そして、当然ながら両者は常に接触した状態にありますので、相手に術力をかける際に「手撃」を組み込む必要がなくなります。さらに、つかんだ側はこの状態から「投げ」「締め」「極め」という3つの攻撃をしかけることができます。

 「投げ」は柔道などでお馴染みの攻撃方法です。
 どんな投げ技でも、投げる側はL行動で『筋力or運動力』+「投げ技」を行います。このときに、L行動であることのボーナスはありませんが、両手で投げる場合には+4のボーナスを得ます。防御側はC行動で『筋力or運動力』+「投げ技+迎撃」を成功させると逆に投げ返すことができます。それ以外にも抵抗扱いの『運動力』+「体術」で受け身を取り、ダメージを「体術」+1分の1にしたり、やはり抵抗扱いの『筋力』+「体術」で投げられないようにしっかりと地面に立つこともできますが、受け身か不動の立ちかどちらかしかできません。
 投げられた人物は自動的に転倒することになります。「投げ」による転倒は強烈な衝撃のためにL行動でなければ起きあがることはできません。この際に、投げられた側は「空手強撃点」+「投げ技」+2D6点のダメージを受けます。このダメージに対しては通常の防護点は効果がなく、術力か装精霊による防護点でしか減点できません。そのうえ、投げたものは相手を(『筋力』+「投げ技」)÷2mまで投げ飛ばすことができます。このときに投げ飛ばす距離を0mにして、任意に無距離状態にすることもできます。
 投げた後も「つかんだ」ままにしておくことを試みることもできますが、これには目標値17の『筋力or運動力』+「投げ技」に成功しなければなりませんし、2度3度と続けて試みるには+3・+6・・・の修正を課せられます。『運動力』+「体術」で受け身をとれた場合は、投げられた側が飛距離と状態を決定する上に転倒もしません。

 「締め」は相手を窒息させることを目標とした攻撃で、呼吸形態が人間と異なる生物や、不死族・機械などの呼吸していない対象には効果がありません。
 「締め」を行うものはLの『筋力』+「投げ技」を行います。このときに、L行動であることのボーナスはありませんが、両手で締める場合には+4のボーナスを得ます。防御側はC行動で『運動力』+「迎撃+点撃+リーチの短い攻撃」を成功させると締めようとした腕をはたき落とすことができます。それ以外にも抵抗扱いの『筋力or運動力』+「体術」に成功すればすり抜けることができます。
 締めがきまると、毎ラウンド「空手強撃点」+2D6点のダメージを受けます。このダメージは通常の防護点はおろか装精霊でも減点することはできません。術力による防護点のみが有効です。さらに被害者は酸欠によって毎ラウンド『防御側の耐久力』−「投げ技」+2D6番のデスチャートを課せられていきます。デスチャートの効果は解放されても「投げ技」ラウンドの間有効です。このデスチャートの効果によって気絶した場合は「投げ技」×1時間は目が覚めません。
 締められている側は自分の行動のときにふりほどくこともできます。L行動での『筋力or運動力』+「点撃+リーチの短い攻撃」か『筋力or運動力』+「体術」で「締め」の達成値以上を出せば無距離状態になります。ただし、締めている側も毎ラウンドLの『筋力』+「投げ技」を行い、現在の達成値よりも高い達成値が出たら次回からその値を達成値とします。つまり、「締め」は蟻地獄のように深くなっていくのです。

 「極め」は関節技や鞭などによって対象の行動を束縛するアクションです。
 「極め」を試みるものはL行動の『運動力』+「投げ技」を行います。このときに、L行動であることによるボーナスはありませんが、両手で極める場合には+4のボーナスを得ます。極められる側はこのときにC行動での『運動力』+「迎撃+点撃+リーチの短い攻撃」で手や鞭をはたき落とすか、抵抗としての『筋力or運動力』+「体術」でかわすことができます。
 極めが成立すると、毎ラウンド「投げ技」点だけ『筋力』『運動力』『耐久力』のどれかが減少します(攻撃者が分配)。どれか1つでも0になると関節が外れるなどしてしまい、医療処置を施すまで戦闘不能になります。極められた側はL行動の『筋力or運動力』+「点撃+リーチの短い攻撃or体術」で「極め」の達成値以上になれば束縛を逃れることができます。外れたとしても5Rは『能力値』が下がったままです。ただし、「極め」も「締め」と同様に達成値が上昇していきます。「締め」「極め」を行った側は外れるまでその行動に従事する必要があります。
 ウィップの使い手は無距離状態になることなく「つかみ」を仕掛けることができますが、この場合はSではなくL行動になります。また、つかんだとしても「投げ」には−10の修正が課せられます。

 

第四章追記

 ここでは戦闘中の特殊なアクションを説明していきましょう。また、銃器に関する追加ルールについても解説します。

・ 回避
 防御は相手の攻撃に対して「防具の硬い場所で攻撃を受ける」「急所はさける」「懐に入り込んで力が入りきらないようにする」「剣で攻撃を受け止める」等のアクションでダメージを軽減させることです。が、回避は「攻撃に対してさわりもしない」というもので、軽減どころか全くダメージを受けませんし、接触の危険さえも皆無にすることができます。
 回避のアクションはSLCの分類に属さないアクションで、回避(S)と回避(L)があり、回避(S)は行動宣言したMVから数えて2MVの間の攻撃に対して有効で、回避(L)は5MVの間有効となります。消費するARは回避(S)が1点、回避(L)は2点を消費しなければなりません。
 回避可能なMVの間に攻撃をされると、防御者は防御か回避のアクションを取ることができます。防御は前述のように行えばすみますが、回避は『運動力』+「回避」で判定します。もしも回避に成功したら一切武器攻撃によるダメージは受けません。ですが、回避に失敗したら攻撃はクリーンヒットしてしまいますので、接触さえも危険なとき以外は余り使用頻度の高くないアクションでしょう。

・ 待機
 SMVになった、スキMVが終わったからといってすぐさま行動に出なければならないわけではありません。少し行動を遅らせても構わないのです。ですが、だれもが皆1000分の1秒単位で行動を察知・計画できるわけではありません。頭脳明晰な人物の方がこの手のことは得意でしょう。
 通常、DOCルールでは戦闘中の待機は12÷『知力』MVを1単位として行われます。この間はスキではありませんので「防御」は可能ですが、残念ながらカウンターはできません。また、待機は行動ではありませんのでARを消費しません。

・ 条件待機
 通常の待機では「誰かが扉から出てきたら撃つ」や「クロスカウンターパンチ」はできませんでしたが、この条件待機は『キーワード』が発動する瞬間になったらMVなどを無視して行動に移ることができます。このアクションには1ARが必要です。
 まれに発生するシチュエーションですが、『キーワード』が発動したが行動したくなくなった場合、つまり前述の例では「扉から出てきたのが味方だった」や「相手がフェイントをかけてきた」などの場合にはまず本来の行動の達成値を求めて、これを目標値として別に行動を阻止する行動のロールをします。例えば「もう片方の手で銃をたたき落とす」(「迎撃」+「手撃」+「点撃」)や「攻撃をあきらめてガードする」(「迎撃」+「回避」)などをするのですが、見ても分かるようにこれらブレーキ動作には「迎撃」を組み合わせねばなりません。

・ 装精霊の組み替え
 第1章追記で記述した「装精霊」は合計ポイントさえ変えなければいくらでも変更が利きます。装精霊を組み替えるのはS行動ですので1MVのスキの発生や、1ARの消費はどうしようもありません。

・ 薙ぎ払い(スウィーピングブロウ)
 槍などの長柄の武器にのみ行使可能なアクションで、武器を振り回すことで同時に多数の敵に攻撃を仕掛けられます。有効範囲は前方60°、半径は武器の長さです。しかしながら、この範囲に余りにも多数(『筋力』を越える人数)の人間(ないし生物)が存在した場合は距離の近い方から『筋力』人が対象になります。
 命中達成値は個々にではなく一律行いますし、ダメージも同様ですが、このアクションは大きく振りかぶり、力一杯振り回すのでL行動と見なし、しかも行動後のスキは3MVではなく5MVになります。薙ぎ払いの可能な武器はαステージ及びγステージではスピア。β世界では薙刀が該当します。当然、それ以外にもハルバードなどもあり得るでしょう。

・ 跳躍
 1Gの条件下において、物理攻撃時に自らの体重を上乗せする攻撃は一般的かつ効果的な攻撃方法です。これを跳躍攻撃といいます。
 跳躍攻撃をするには、まずジャンプして空中にいる状態(跳躍状態)になる必要があります。この通常状態から跳躍状態へと移行するS行動を「跳躍」と呼ぶことにします。跳躍は普通は達成値を必要としませんが、何らかの要因が跳ばせないように働いているならば、その達成値は『筋力』+「跳躍」で算出します。地術<荊縛>や空術<乱気流>などが働いているときにはそれらの術力の達成値を上回る『筋力』+「跳躍」が必要になるということです。
 跳躍状態になった者はその間全てのロールに「跳躍」技能を組み込まなければなりません。抵抗や術力でさえもです。跳躍状態の間は直進しかできませんし、「防御」「回避」技能は半分(端数切り捨て)になってしまいます。
 跳躍状態は『運動力』ないし「跳躍」技能LVのどちらか高い方×1ラウンドまで維持することができます。着陸しないままこの持続時間を超えたら強制的に転倒した状態で着陸(というか落下・墜落)させられてしまいます。跳躍状態から着陸するにはS行動かL行動を要します。達成値が必要になったら『運動力』+「跳躍」+「体術」を用います。滅多にこのロールをすることはありえませんが、空術<天翔脚>で浮かされたときには使うことになるでしょう。
 さて、この着陸という行動に攻撃を組み込んだのが跳躍攻撃です。
 跳躍攻撃の達成値は『運動力』+「跳躍」+「体術」+「攻撃」で算出します。跳躍攻撃のメリットは「ダメージに「跳躍」LVを加算」「移動を兼ねる。その際移動力は通常の1.5倍」「防御行動の達成値を7点以上上回っていたら対象は転倒する」「Cの術力にはボーナスを与えない」の4点です。デメリットは「防御行動の達成値を7点以上下回っていたら自分が転倒する」という点です。
 ハイリスクハイリターンを実現した攻撃法ですので、必要なときだけキメることをおすすめします。

・ フルオート射撃
 全ての銃器は射撃時に反動があり、酷いときには手首が折れるときもあります。
 DOCでは全ての銃器には「反動強度」が設定されており、この値よりも使用者の『筋力』+「射撃」が1点低いごとに命中達成値が5点低下します。さらに、攻撃の達成値がマイナスになってしまったら手首を壊してしまい、反動強度−『耐久力』+2D6点のダメージを受けてしまいます。このダメージは装精霊(βのみ)+2D6点しか減点できません。当然のことながら、「遠隔射撃」で射撃するために設置された銃器に関してはこのルールは適用されません。
 と、ここまでは銃器に関する一般則です。
 銃器の中には機関銃のようにトリガーを引きっぱなしにすることで弾丸を射出し続けることができる銃もあります。この「トリガーを引きっぱなしにする」射撃法のことをフルオート射撃と言います。フルオート射撃が可能な銃は射撃数が3以上の銃に限られます。
 フルオート射撃はL行動の『筋力or運動力』+「射撃」です。フルオート射撃による攻撃は連続させる(フルオート射撃後に他の行動をしないで再びフルオート射撃を行う)ことでその真価を発揮します。2回目以降は命中達成値が+3、+6、+9と3点ずつ上昇するボーナスを得ることができます。ただし、反動強度も1点ずつ上昇していきますので、自分の限界を考えて適度に行った方が良いでしょう。
 フルオート射撃中は射撃対象を変更することができますが、前方30°に限られます。その射角の範囲内ならば「こいつに2発とあいつに1発」ということも可能です。
 フルオート射撃を連続させているときには当然ながら弾丸の装填(S行動)もできませんので注意して下さい。

・ 体当たり
 自分の全体重を相手にぶつける攻撃です。体当たりを行う場合は攻撃者・被攻撃者ともに組み付き状態ではいけません。このL行動の攻撃を行うものは「体術」+『筋力or運動力』で達成値を算出します。L行動であることでのボーナスはありませんが、自分が転倒しながら行う場合は達成値が+4されます。被攻撃者は「回避or体術」+『運動力』ないし「体術」+『筋力』で抵抗することができます。どちらの抵抗も「身体が動かないとき」はロールできません。また、『筋力』では抵抗しても接触されてしまいます。
 体当たりが成功したら、攻撃者は「空手強撃点」+2D6点のダメージを与えられます(被攻撃者は「防護点」+2D6点だけ軽減できます)。さらに二次効果として以下のような現象が起こります。

  •  攻撃側の達成値が4点上回っていれば、被攻撃者に「組み付く」こともできる
  •  攻撃側の達成値が1〜3点上回っていれば、被攻撃者は転倒する
  •  攻撃側と被攻撃側の達成値が同じ場合は、双方ともに転倒しない(ダメージはある)
  •  攻撃側が1〜6点下回っていたら、ダメージを与えられない
  •  攻撃側が7点下回っていたら、ダメージを与えられないだけでなく、攻撃者は転倒する
  •  全ての場合において事前に攻撃者が「転倒しながら」と宣言していたら、攻撃者は転倒する(転倒しながら組み付くこともある)

・ 起き上がり
 戦闘中には敵に転倒させられることがあります。転倒したままで戦闘を続けることもできますが、あらゆる行為ロールに「体術」を組み込まなければなりません。また、移動力は半減(端数切り捨て)してしまいます。
 これを望まないのであれば「起き上がる」必要があります。起き上がりは「基本的には」S行動です。ただし、「投げ」を食らったときや、元から転倒するような攻撃の必殺技にさらに「転倒」のオプションを組み込んだ場合などはS行動ではなくL行動になります。L行動で起きなければならない攻撃に「転倒」のオプションを組み込むとL行動とS行動を1回ずつ消費しなければなりません(1回の行動で起きなくても構いません)。
 起き上がりに様々な行動を組み込むこともできます。

 

 ここで触れた戦闘ルールは基礎中の基礎です。もっと精密な戦闘ルールが必要な方は別冊「コンバットマニュアル」の方をご覧下さい。

 

第四章番外 「汝、血を流せ」

 この章は戦闘か。一体誰がやるんじゃ?
恭 弥  俺はさっきもバイクに乗って狙撃されたんだぜ。誰か別の人にやらせてくれよ。
悪 魔  そうは言われましても・・・。でもまさか旧友の女性に戦闘なんてさせませんよね。やさしい恭弥君は。
恭 弥  ウッ・・・分かったよ。やりゃあいいんだろう。で、相手はなんなんだ?
悪 魔  先ほどのゾンビ君です。データは第八章にあります(笑)。
由香理  恭ちゃんが怪我したら私が直してあげるけど死なない程度にね。
恭 弥  他人事だと思いやがって。SMVは俺のほうが勝ってる(16と6)から、まずは軽くSの「蹴撃」・・・命中の達成値は16だ。
 こちらはSMVより早いので「回避」ではなく「防御」じゃ。・・・12。
恭 弥  クリーンヒット。ところで神様。おれの装備品は?
 便宜上衣服(防護点1)とジャングルブーツ(攻撃力+1)だけじゃ。
恭 弥  それで十分。強撃点は1なのでダメージは2D6+2・・・9ダメージ。
 ゾンビの防護点は3点・・・ダイスが4なので7点防いで実質ダメージは2点じゃ。まだまだ大丈夫そうじゃな。
恭 弥  MV15はスキ。14から1回待機。
悪 魔  彼の場合待機は12÷3(恭弥の知力)=4MVごとですね。
恭 弥  MV14、13、12、11は待機状態だ。
 ゾンビはまだ動けないぞ。
恭 弥  もう1回待機します。
由香理  さっきと同じようにMV10、9、8、7は待機ね。
 ここで確認じゃが、行動を宣言するMVが同じな場合は知能の低い方から行動宣言をするんじゃ。この場合はゾンビからじゃな。ゾンビ素手で殴りかかる。行動はSじゃ。
恭 弥  ならばこちらはカウンターを狙います。カウンターキックだ。
悪 魔  こんな風にカウンターができるなんて確率的には0に近いですね。
 (無視して)命中の達成値は・・・13じゃ。
恭 弥  「蹴撃」+「迎撃」+『運動力』は・・・13。「双方命中」だな。ダメージは・・・(省略)
 続くゾンビの攻撃はお前のスキをつくぞ。回避も防御もできない今、達成値がプラスならば命中じゃ。・・・ファンブル。天勢値を持っていないキャラクターは『天勢値』の代わりに10を引くので−2。失敗じゃ。
悪 魔  悪運が強いですね。次のラウンドです。
恭 弥  さっさと終わらせてやる。MV16でL攻撃だ。
由香理  今回のようにMVに余裕のあるときに使うのは極めて有効な手段なので覚えておきましょうね。
恭弥  今のは誰に言ったんだ?
由香理  ヒ・ミ・ツ
恭 弥  はぐらかしやがったな。MV16はスキ。MV15で攻撃する。命中の達成値はSと同じで・・・18。
 そんな攻撃・・・クリーンヒットじゃ。
恭 弥  ダメージは9+4で13ダメージ。
 8点防いで5ダメージ。MV6でこちらは懐に入るぞ。
由香理  懐って「踏み込み」のことですね。至近距離戦闘を狙ってるのかしら。
悪 魔  なんだかまだまだ終わりそうにありませんね。
由香理  じゃあ、ゾンビと恭ちゃんはほっといて先に必殺技の説明にいきましょう。
恭 弥  てめえ・・・いつか地獄に堕ちるぞ。

 

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