第参章 術力発動
● 術力
術力とはあらゆる生物の身体に内在する「オーラ」と呼ばれるエネルギーを利用して引き起こす超常現象のことを指します。オーラは疑似生物以外ならどんな生物でも持っていますが、それを引き出すことができるのは術者などの一部の生物だけです(正確には術者とは「天勢力」を自らの意思で有効利用できる者のことです)。術力は一般に以下の15種類に分類されます。
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術力について、あまり詳しいシステムなどは判明していません。古今東西を問わず術力の仕組みを解明しようとした学者は数多くいましたが、誰一人として完全に解明できた者はいませんでした。判明していることは「術力はオーラを集中させて引き起こすものである」というくらいのことです。
● 術力の原理と習得
術力は普通、魔法だとか超能力だとかと呼ばれている超常能力です。この能力は劣性遺伝します。この遺伝情報の内容は「特定の精霊に命令を与える」というもので、この遺伝性因子を持つものは自然界に訴え掛けて術力を発動させることが出来るのです。
精霊はいたるところにいます。空気があれば空気の精霊が、土があれば土の精霊がいます。マイナーなところではいっぱいいるのに無名な生命の精霊・熱の精霊・次元の精霊・空間の精霊、数も少なく無名な不運の精霊など、ありとあらゆるもの(?)に精霊が宿っています。ですが、基本的に言うことを聞いてくれる精霊は限定されており、炎の精霊に命令を与える術者とか、空間の精霊に命令を与える術者とかがいるわけです。たいていにおいて炎に命令できる術者は熱にも命令できるものですから、便宜上にその範囲を示したものを術力系統(火術・虚術等)と呼びます。
先の章で、技能はRSPを消費して獲得・成長させました。術力も全く同様にPSPを消費して獲得・成長させることが出来ます。
1LVにするのに1点。1LVから2LVにするのにはさらに2点。というように消費していきます。そして、技能に△印の技能があったように術力には*印の術力があり、これらの術力に対しては2倍のPSPが必要になります。×印に相当する術力もないわけではありませんが(ファンタジー世界での雷術<電脳>等)その辺はGMが判断して下さい。
● 術力の発動と抵抗
術力とは自らのオーラを集中させて発動させます。この集中するアクションに関わってくるのが『霊力』の能力値です。術力を発動させるためには各術力固有の「発動値」を目標値とした<その術力>+『霊力』を成功させなければなりません。
ここで注意しなければならない点は3つ。
1つ目は術力は技能と異なり、「1LV以上習得していなければロールすることさえできない」ということです。技能のロールならば多少不利であっても『能力値』+1D6でロールすることが、ひいては、「伝承点」を使って成功にすることが可能ですが、術力はロールすることさえできません。
2つ目は、L(後述・第四章参照)で発動させると発動の達成値(=術力の達成値)が+4される点。つまり、多少なりとも術力を発動しやすくできます。
最後の3つ目の点は、コンビネーションに関することです。技能同士のコンビネーションの場合は上限を規定する技能は「コンビネーション」でしたが、術力が関わる場合は「魔法物理学」が規定する技能になります。そして、技能と術力のコンビネーションならば「コンビネーション」と「魔法物理学」の両方が上限を規定します。
こうして、術力の達成値が発動値以上であったならば、APの消費という次のステップに移ります。
先程も述べた通り、術力はオーラを凝縮させて発動しますので、そのエネルギーとして術者のオーラを使わざるを得ません。DOCでは術者の身体に内在するオーラの量は「AP」で表されているので、ゲーム中はオーラの減少はAPの減少で表されるのが道理でしょう。「発動値」と同じように後載のリストに載っている「消費AP」の欄の数値が術力発動時に消費するAPの量です。このAPが何らかの理由で払えない場合は術力は一切発動しません。
APはHPと異なり、マイナスになることはありません。一部の術力にはAPを減少させる効果がありますが、いかなる方法を持ってしてもマイナスにはなりません(0で止まります)。また、自ら望んでも0未満になるような消費はできません。
そして、APが0になると、「集積」することも霊的な力場・存在を感知することも(装精霊で能力値を強化することも)できなくなります。
無事に術力が発動しても、対象が術力の効果を受け付けようとしないかも知れません。効果があったとしても不完全な形になるかも知れません。これらのように術力の効果を和らげるのが「抵抗」です。「抵抗」には主に3つの型があります。
T……「回避」+『運動力』+2D6
U……「座禅」+『精神力』+2D6
V……「座禅」+『耐久力』+2D6
後載のリストも、これからの記述もT・U・Vで記述しますが、これら以外にも抵抗法がないわけではありません。幻覚系の術力などは「霊感」+『感覚力』でも抵抗(看破?)することができます。
抵抗は、抵抗する側が発動した術力の達成値を目標値として判定します。つまり、同点の場合は抵抗できなかったことになります。
また、複数の術力をコンビネーションさせて術力を発動させた場合、抵抗法は発動させた術力の抵抗法のうちのどれでもかまいません。Tで抵抗する術力とVで抵抗する術力を組み合わせた場合、TでもVでも抵抗できることになります。
発動した術力が「ダメージを与える術力(以下、攻撃系術力)」だった場合はダメージを軽減されてしまいます。武器による戦闘で「防御」に成功したのと同様に、ダメージを(「座禅」+1)分の1にすることができます。ただし、これは抵抗法がU・V及びその他の抵抗法の場合であって、Tの場合は回避したことになるのでダメージは一切受けません。
攻撃系術力のダメージの求め方はダメージの与え方によって異なります。例えば、術者の掌中に氷でできた剣を作り、それで斬りつけるための術力<氷刃>では被攻撃者の鎧や攻撃者の腕力が与えるダメージに関わってくるでしょうが、符を中心とした球状に無差別な放電をする<蒼雷符>には鎧や腕力ではなく、術者の霊力や被攻撃者の精神力が物を言うでしょう。
他にも様々な場合・パターンが考えられますが、DOCでは主にダメージの与え方によって4つのカテゴリーに分類しています。
カテゴリー | ダメージ算出 | ダメージ軽減 |
A | 攻撃力+LV+『霊力』+2D6 | 『精神点』+2D6 |
B | 攻撃力+LV+「強撃点」+2D6 | 『精神点』+2D6 |
C | 攻撃力+LV+『霊力』+2D6 | 防護点+2D6 |
D | 攻撃力+LV+「強撃点」+2D6 | 防護点+2D6 |
上の表中では、LVとはその術力の技能レベル(?)のことです。ですから、簡単な術力でも極めれば高い攻撃力を有することができます。まあ、PSPが得かどうかは分かりませんが。
PSPによる術力の獲得・成長については第1章と第6章に記載されています。
● 式術
さて、ここまでは通常の術力でのことであり、異世界の生物 : 『式』を召喚する『式術』は少々都合が違います。式術は以下の4つの手順を必要とします。
1、式の発見
2、式との契約
3、式の召喚
4、APの消費
「式の発見」 :
先程も言いましたが、異世界の生物の中でも召喚に応じて使役できるものを特に「式」と呼びます。
式術は異世界から術者の望むような式を発見することから始めます。とはいえ偶然性を用いて様々な特徴を持つ無限に近い式の中から術者の望む1匹の式を見つけ出すのはルール上不可能に近いので、基本的な9種類の能力に<特徴>を付加することで解決します。
「チャート集」にあるように、大きく「獣族」に分類される霊獣・聖獣・神獣、「霊族」に分類される妖精・祖霊・英霊、「鬼族」に分類される妖魔・幻魔・鬼神が式の9分類となります。
また、表で「−」となっているのは、その能力値を持っていないことを意味しています。
つまり、「獣族」は自分で判断する能力にひどく劣っていますし(全く状況判断ができないわけではありませんが)、「霊族」は肉体を持っていないので物理的に物を動かすことができません。逆に言うと「獣族」は幻影に欺かれたりしませんし、「霊族」は物理的な攻撃によってダメージを受けることはありません。ついでですが「鬼族」は<招>×1個の物品を持ったままの状態で帰れます。
本題に戻りますが、このような能力値の欠落は式が本来住む世界と我々の住む世界の物理法則の相違によって生じます。例えば、「霊族」達の世界では肉体を持たなくても物を動かせるような法則があるのです。ところが、私達の世界ではそんな法則はありませんので、この世界で「霊族」は基本的に物理的な腕力を駆使することができないのです。しかし、これらの事象はあくまで『基本的に』の話です。数多くいる「霊族」達の中には彼らの世界の法則の元では無駄な「腕力を持つ」奴もいることでしょう。そのような特殊な力をDOC式術の<特徴>としてリストに記載されています。
念のために、上記の基本能力+αを箇条書きにしておきましょう。
・ 「獣族」は幻影・思い込みを利用したトリック等に騙されません。 ・ 「霊族」は<複数体>を取得しない限り物理的な攻撃・術力でダメージを受けません。 ・ 「鬼族」は術者の<招>LV個までの物を持ったまま自分の次元に帰ることができます。 |
「獣族」
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「霊族」
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「鬼族」
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<特徴>は術力ではありませんので、PSPを消費して習得する必要はありません。しかし、<特徴>を持った式を召喚するにはより多くのAPを消費する必要があります。例えば特徴の1つ<吸命>をあげてみます。
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先の表にある「消費AP」という数値が召喚時に消費するAPに加算される数値です。加算といったのは何の<特徴>も持たない式でさえ「召喚」するにはAPを消費するからですが、これは複数の能力を持ったときにどんどん加算されていくことになります。「消費MP」と混同しない様に留意して下さい。
「消費MP」とは式がその<特徴>を使った時に消費するMPのことで、MPとは式のAPのようなもので、作成時は『精神力』×3で算出されます。同様にHPも『耐久力』×3です。
そして、「発動種」「効果範囲」「抵抗法」については通常の術力と同様ですので説明する必要はないでしょう。
「体得種」はその特徴を持つことのできる種類のことです。上の例で言うと「獣」でも「霊」でも「鬼」でも<吸命>を持てるということを表しています。こうして特徴を決定したら、次に技能を獲得させます。RSPは9分類によって異なりますので、それを使って下さい。
式の技能の獲得・成長は全て1LVで1点、2LVにするのに2点が必要です(つまりは技能表中で全ての技能を〇として獲得・成長させられるのです)。後々のために式には固有の名前を付けておきましょう。
「式との契約」 :
契約の内容は様々ですが、たいていは「こっちの世界で腕磨かないか?」です。様々な理論もあるでしょうが、修行するのに我が家の近くで修行する者はいません。どうせ武者修行の旅に出るのならばできるだけ遠くへ、世界の果てへ、ひいては違う世界へ行こうとするでしょう。しかし、次元歩行は非常に難しいのです(この辺は第七章に詳しく書いてあります)。そこで、異世界の生物を自分達の世界に召喚する能力(=式術)者と契約するのです。
ルール上はたった1回の成功ロールで判定します。発動値は9分類にのみ由来する表中の「契約」の数値です。使う能力値は当然『霊力』ですが、技能は3種類あり、「獣族」と契約する場合は<契−獣>を、「霊族」なら<契−霊>、「鬼族」となら<契−鬼>を使います。つまり、3種類の<契>に分かれています。
「式の召喚」 :
式と契約したらその式を召喚することができます。ただし、召喚するには通常の術力のように発動・APの消費などの手順を踏む必要があります。
先の表を見て下さい。左の方に「召喚」という欄があります。ここの数値が術力<招>の「発動値」となります。しかし<契>が3種類あるように<招>は各「式」に1種類の<招>が必要です。Aという式を召喚するには<招−A>が、別のBという式を召喚するには<招−B>が必要になるのです。この術力は完全に専門なので、仮にAという式が死んだとすると、今まで<招−A>につぎ込んだPSPは無駄になってしまいます。例え全く同じ能力・分類の式と契約しても無駄です。
なお、式をこの世界に召喚したままでいられるのはリストにある通り<招>×2+5ラウンドです。
「APの消費」 :
式を召喚したらAPを消費します。消費するAPは先述の通り9分類による消費値+<特徴>による追加消費値ですが、当然APが0以下になるような消費はできませんし、<封>をするつもりならばさらに消費可能なAP量は少なくなるでしょう。
式を符に封印する術力である<封>は<招>と全く同じ量のAPを消費しますが、召喚と同時に<封>を発動させねばならないので、最大でも最大APの半分までのAPで召喚できる式でなければ<封>はできないことになります。しかし、式を開放する時にはAPを消費しないですみますし、開放はS行動ですみます。ちなみに<封>や<退鬼環><退散><統率><門><解約>も<契>と同じように3種類あるので注意するようにして下さい。
● 集積
さて、DOCではAPを消費するだけでなく、APを回復することができます。この能力を集積というのですが、周囲の自然・精霊からオーラを吸収する能力です。かといって無尽蔵にAPを吸収できるわけではありません。術者が集積する際には第1章で算出した「集積力」と振った2D6を比較して、
「集積力」≧2D6
が成立すれば集積は成功です。集積はS行動として扱うので、1ラウンドに2回試みられる計算になります。
集積のロールに成功したのならば、術者はAPを「集積力と2D6との差」点だけ回復することができます。この技術は周囲の自然=精霊などのオーラを自身のうちに取り込む能力ですので、自分以外が発動させた術力・その他超常現象の効果範囲内のように自然がゆがめられている空間では集積力に−4のペナルティを受けてしまいます。
また、この2D6にも「クリティカル・ファンブル」は発生し得ます。まあ、この場合はファンブルの方が良いのですが。
先程も言った通り、周囲の自然からオーラを吸収する以上、周囲の自然との調和を乱してしまうと(=1度でも集積に失敗すると)、その場所では集積ができなくなってしまいます。自然が人間を許してくれるか否かはその場所で人間という種族がどんな行いをしてきたか、端的に言うならば、その場所の自然がどれだけ破壊されずに残っているかによります。自然が人間のことを恨んでいなければ、すぐにまた人間に力を貸してくれることでしょう。しかし、前文中の「その場所」には余り厳密な境界があるわけではありません。気楽に感覚的に捕らえて下さい。
● 言霊の法
集積や術力には必ず『言霊の法』というものが付き従います。
言霊とは本来、「言葉には霊魂が宿っており、その言葉を現実に起こす力がある」という考え方で、多くの術者はこれを信用し、活用しています。つまり、術力を発動させる際に特定の「言葉」を口にすると術力が半ば自動的に発動するように自らに強い暗示をかけておくのです。剣術で「同じ姿勢から剣を抜き、打ち払う訓練を何度も繰り返せばいずれ本番でもその姿勢から打ち払うことができるようになる」のと同様に、同じ言葉を口にすれば術力が発動させられるように刷り込んでしまうのです。さもないと長時間の瞑想や呪的儀式を行わなければなりません。
しかし欠点もあります。「言葉」=「発動」という条件を頭の中で形成してしまうためにキーワードを口にできない状況下では混乱してしまい、術力を発動させにくくなってしまいます。まあ、十分に落ち着くか基礎に立ち返りその術力がどのような仕組みで発動しているのかを考えれば平気ですが。
これらのことはルール上では『精神力』+「座禅」または『知力』+「魔法物理学」で目標値15に成功しなければならないことで表されます。
(しくじったわ)
それが目を覚ました彼女が思った最初のことだった。禍族と思われる人物を尾行している最中に油断して、後頭部を強打されてから後の記憶は彼女にはない。しかし、状況が全てを語っている。
(ハリウッド映画にありがちなシチュエーションよね)
倉庫と思われる窓がなく乱雑な部屋、タオル地の即席さるぐつわ、そして両手首をつなぐ金属製の手錠。「つかまった」以外はちょっと思い付かない。
(手錠が金やプラチナで作られてなけりゃいいけど)
そう。彼女は水を操る術者。空気中の水分を硝酸に変えることなど容易なことなのだ。しかし、「呪文」を唱えずに術力を発動させられるかどうか。
(こういうときは基本に戻らなきゃ。まず水蒸気を集めて・・・)
しばらくの後、軽い音を立てて手錠が床に落とされた。術力が成功したのだ。
(ハリウッドなら次は反撃のシーンよね)
これは自主的に言葉を発っさずに術力を発動させたいときにも適応されますので、暗殺者は落ち着きが肝心、だという結論が導かれます。
● 触媒
一部の高等術力は発動するのに「触媒」を必要とします。霊的事象である術力を活性化する「触媒」ですので、それ自身も霊的なエネルギーを秘めている物が使われます。それは術者の血液と生命。しかも、潜在能力・運勢を多く秘めた物が良いとされています。偶然にもDOCでは潜在能力・運勢を表す『天勢値』というパラメータが有りますので、ルール上は
消費HP=発動値−『天勢値』−術力LV
点のHPを消耗することで発動させられるものとします。消費HPが0でも、怪我をしていなければどうにかして血液を入手しなければなりません。
(いかん。あの禍族に術力を使わせたら・・・)
次の瞬間、炎を駆る男はためらいもなく自らの二の腕にナイフを突き立てた。躊躇したのは禍族の方だ。先の読めない術者の行動に一瞬行動が止まる。
「炎よ、御魂を焼き尽くせ! <煉獄>!!」
術者の放った清めの炎は禍族を包み込み、身にまとうオーラを焼き尽くす。
「・・・天国と地獄の狭間の炎か。おもしろい物を見せてもらったな」
「なに。すぐに本物を見せてやるぜ」
ちなみに触媒での消耗は発動してからですから、これで重傷状態になり、『精神力』が下がっても射程距離は変化しないものとします。
ここらへんのことはDOC別冊「魔道の書」をご覧下さい。
● 術力リスト
ここまでで術力の一般則については説明してきましたが、15系統もの術力(<特徴>含)には例外となる術力もあります。まずは術力のリストにおける記述法について説明しましょう。
* :
この術力は「秘術」であり、獲得・成長には通常の2倍のPSPが必要です。このことは先述したとおりです。
A :
この術力は「対空カウンター術力」ですので、カウンターの判定をする際(発動達成値)に+4の修正を受けられます。陸上からのカウンターの際にも修正を加えられます。
C :
この術力は「カウンター術力」ですので、カウンターの判定をする際に+4の修正を受けられます。しかし、「対空カウンター」と異なり空中からの攻撃に対しては修正を加えられません。
〜符 :
符を作成する術力に見られる「発動値」「消費AP」の欄は符作成+発動の順に並んでいますが、唯一火術<封炎符>のみは符作成+吸引+解放の順番で並んでいます。また式術<封>、雷術<蒼雷符>、符術<操演符><餓鬼符>以外の術力は<〜符>LV×1枚までしか作成できません。式術<封>、雷術<蒼雷符>は1枚しか作れませんし、符術<操演符>はLV×2枚=LV×1組の符を作れます。符術<餓鬼符>は通常の半分(端数切り上げ)の符しか作れません。特にルールとして定めませんが、通常、符の作成には(符作成時の)発動値÷3時間程度必要です。
抵抗法「特殊1〜5」 :
これはTUV以外の方法で抵抗できる術力です。
特殊1は「体術」+『運動力』で抵抗可能です。主にエリア系術力に見られますが、エリア攻撃なので「回避」はできませんが身のこなしによってダメージを軽減できることを示しています。これはTと違い、抵抗に成功してもダメージを皆無にすることはできません(代わりに「体術」+1分の1にすることができます)。
特殊2は「霊感」+『感覚力』で抵抗(認識)できる術力です。主に純粋な幻覚系の術力に多く、認識=抵抗が成り立つ術力です。
特殊3は術力が見えないのだが特殊2と違ってダメージを与えることに重点を置いた術力です。抵抗するにはまず「霊感」+『感覚力』に成功して認識しなければなりませんが、認識したからといって抵抗したことにはならないのがこれらの術力の特徴です。罠のような術力といえるでしょう。
特殊4の術力は人間(?)の理性に効果を及ぼす術力であり、霊的な力の関与を認識するか自分の理性を客観視するかで抵抗できます。前者が特殊2のように「霊感」+『感覚力』を、後者は「心理学」+『知力』を意味しています。
特殊5は不意討ち的な使い方をする術力で、「霊感」+『感覚力』かそうでなければ「殺気感知」+『感覚力』で抵抗できます。しかし、不意撃ちを見破っただけで攻撃はまた別に「防御」「抵抗」しなければなりません。
(接触) :
符を作成する術力に多く見られますが、効果範囲のカッコ書きは効果範囲が「符と接触」であることを示します。同様に、(半径〜m)ならば「符を中心とした半径〜m」であるわけです。特殊な例として、妖術<蠱毒>は作成した毒の粉(!)と接触したときに抵抗が必要となります。まあ、実際には特殊な壺に入れてから被害者の家の前に埋めて使うのが本来の使い方のようですが・・・。
/ :
発動種の変化によって変動する数値を示しています。/の左からS、L、Cの順に該当します。S、L、Cに関しては第4章か別添「魔道の書」を見て下さい。
● 特殊な術力
ここから先は扱いが特殊で、術力目録からだけでは細部が分からない術力を集中攻略していきたいと思います。また、ここから先に述べることは別添・「魔道の書」にも記述されています。
1,<転想>
この特徴を持つ「式」は相手がどのような思考をしているかをイメージとして知る(言語形式がこの世界と異なる可能性があるから言葉でどうこうしてくると知るのは無理なのです)ことができるので、攻撃時にはダメージ+2、防御時には−2することができます。でも、思考をしないタイプには効果がありません。
2,<氷刃><真空刀><雷剣><肢刀><炎拳><火剣><紅炎剣><手刀><光剣><閃斧><影槍><神剣><気剣>
上記の術力は何らかの形で武器を作成する術力です。リストでは武器の形容を指定されていますが、術力なんていう物はもともと精神領域での作業なので、イメージを強く持てば武器の形容を変化させることができます。この際に術力は発動が難しくなってしまうのですが、近い形容に変化させるのならば大して発動しにくくならないというのは何となく分かると思います。下図を御覧下さい。
この表中で、―を1回経るごとに発動値が2点上昇してしまいます。
例えば、<光剣>を手裏剣のようにして投げて使うとしましょう。「剣→短剣→手裏剣」と2回変化させますので、発動値は6+2+2=10になります。
「特殊武器」技能で操るような武器は表中にありませんが、それぞれの形容・使用法から判断して下さい。
この法則性(?)に当てはまるのは純粋に武器を作り出す術力のみで、武器に力を付与する式力<光身>、凍術<凍刃>、雷術<紫雷拳>、火術<火刃>、光術<光刃>、虚術<影斬剣>、聖術<聖刃>、騎術<熱拳>及び<雷拳>、そして獣術の半分以上の自らの身を武器とする術力に上記の発動値の上昇はありません。
また、全くの「好み」ですが他にも凍術<氷戦輪>、空術<天昇脚><斬車刀><斬空脚>、火術<炎烈拳><烈火掌>、光術<閃発勁>、水術<水天弓><水冥弓><渦旋脚>、虚術<幻影斬>等の術力でヴィジュアル面での演出効果のために変化させるのもいいでしょう。ただし、射程距離や効果範囲は変わりません。
3,<地竜><雪狼><雷蛇><創鎧鬼><冥犬><天翔騎>
以上6つの術力は式ではないのですが、疑似生物を創造する術力です。
疑似生物はそれぞれ固有の戦闘能力(命中の基本値、攻撃力(D)、回避の基本値、防護点)を持っていますが、術力に対する抵抗や「防御」については術力発動の達成値をあらゆる抵抗の達成値とします。
4,<地導>
他の術力を『地脈』という「地球のオーラ」の流れに乗せて別の地点から発動させる術力です。
この術力とのコンビネーションによって別の地点から発動させた術力には不意をつかれることから「回避(=抵抗法T)」はできなくなり、それ以外の抵抗(=抵抗法U、V、その他)も達成値に−4のペナルティを受けてしまいます。この不意打ちを見破るには『地脈』の流れを見極めるか攻撃者の意図を読み取るかしなければなりません。すなわち「霊感」+『感覚力』か「殺気感知」+『感覚力』でまず<地導>に抵抗しなければなりません。
5,<制脳>
生物の脳の中には色々な化学物質が含まれています。どれも劇薬で毒性が強いことから「脳内麻薬」と呼ばれています。<制脳>は「脳内麻薬」をコントロールする術力で、操作する「脳内麻薬」によって4種類の効果があります。
1つ目はセロトニンのコントロールによる誘眠作用。抵抗に失敗した対象は1分後に眠り始めます。持続時間は10分間ですがその間は少々のショックでは目覚めません。「重傷状態」になるような傷を負うと脳内で別の脳内麻薬が発生してしまうために目が覚めてしまいます。
2つ目はエンケファリンという物質をコントロールすることです。エンケファリンが分泌されると苦痛に対して強くなり、重傷ロールの際に+4の修正を得られます。持続時間は5分間です。
3つ目。肉体的な能力を活性化させるアドレナリンのコントロールによる『筋力』『運動力』+2の効果があります。持続時間は10Rですが、その後反動として3R身体が硬直してしまいます。
4つ目はアドレナリンよりも毒性の強いノルアドレナリンです。アドレナリンのように『筋力』『運動力』を+5しますが、持続時間は4R、硬直する時間は10Rです。
6,<巨像符><起動符>
これらの術力は陰陽士の作り出す疑似生物、巨像兵(パペット。ゴーレムや傀儡(くぐつ)とは違います)を作り出すための術力です。巨像兵の作成には2段階の準備が必要です。
まず最初に<巨像符>を原料となる物質に接触させて発動させます。原料となる物質は砂、木、石、鉄の4種類に限ります。原料による基本数値に<巨像符>が発動したときの達成値(符作成時ではありません)を割り振って巨像兵のハードを準備します。ちなみに巨像兵の大きさは接触していた原料となる物質の大きさそのまま(形は人型になります)です。
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次に巨像兵のソフトを作ります。<起動符>を作成するのですが、この際に命令を1つだけ与えておくことができます。この命令は自殺的な行為でも構いませんが、巨像兵の内部に<起動符>を埋め込ませると巨像兵は言語能力を失ってしまいます。ですからこの場合だと「主人の命令を聞け」「私に逆らうな」といった臨機応変な命令はできません。かといって<起動符>を巨像兵の外面にむき出しにしておくと何かの拍子に<起動符>がはがれてただの木偶人形になってしまうかもしれません。陰陽士は<起動符>を発動させる際にどちらにするかを選ばなければなりません。また、<起動符>発動の達成値は前述の<雪狼>などと同じように「防御」・抵抗の達成値となります。
7,<気眼>
多くの騎術の御多分に漏れず、ELiCEに乗っていないと発動できない術力で、この術力を発動させるとALiCE(総称としての)のモニターからでも霊的存在を視認できるようになります。逆にいうとモニター越しでは相当な霊的エネルギーを持つ存在でないと視認できないということです。ですからこの術力を発動させておかないと騎術<気弾>はTでは抵抗(というか回避)できないことになります。
8,<火翼><暴走>
火術の中で、これら2つの術力は対象の『霊力』を上昇させるための術力です。が、これらの術力は取り扱いが難しく、少々煩雑な判定を行わなければなりません。
まずは<火翼>から。この術力が発動すると、以後「数ラウンド」の間、使用者の『霊力』が+2/+3されます。さらに、この効果は累積します。ですが、<火翼>の効果はごく一時的なもので、熱エネルギーを保存しておくための術力であり、<火翼>以外の術力を発動させると、その術力の発動とともに<火翼>の効果は切れてしまいます。
例えば『霊力』が6の術者が<火翼(1LV)>を発動させるとしましょう。基本値が6+1=7ですから、ダイスが9以上ならば発動します。この術者がもう一度重ねて<火翼>を使うとすると、今度は『霊力』が高まってますから、基本値は6+2+1=9。ダイスが7以上ならば発動することになります。これが発動したものとして次に<爆発(1LV)>を発動させるとします。『霊力』は現在10。発動値が17ですから、ダイスはわずかに6以上で発動することになります。その上、この爆発の攻撃力は<火翼>の効果もあり、攻A7+6(霊力)+4(火翼)+1(LV)=18+2D6になります。が、<爆発>のダメージを算出したら<火翼>の効果は消えます。
一方、<暴走>はもっと強力で、『霊力』を+7する効果があります。ですが、<暴走>は諸刃の剣です。『霊力』の制御機構を一時的に麻痺させるために、初等術力を発動させようとすると『霊力』が制御出来なくなり、<暴走>の対象はすさまじい霊子の逆流にさらされて壮絶なダメージを受けます。
例えば、『霊力』9の術者が<暴走>を自分に発動させて、『霊力』を16にしたとします。この状態で、<煉獄>や<鳳翼衝>を発動させたときの破壊力はいまさら言うまでもないでしょう。しかし、この状態で<発火>を使おうとします。ダイスが7だったとして、その達成値は24になります。<発火>の発動値は7ですので、その2倍(=14)を越えてしまいました。こうなると使用者は<暴走>の効果によって攻A24(発火の達成値)+16(霊力)+1(暴走のLV)=41に2D6を加えたダメージを受けるということです。
9,<光矢>
<光矢>は周囲から光を吸収しつつ対象を攻撃しますので、使用者から遠ければ遠いだけダメージがあがっていきます。その比率は1mにつき1点であり、使用者から1mの距離にいる対象に対しては攻A5(基本4+距離1)。2mの距離にいれば攻A6、10m離れていれば攻A14になることになります。つまり、射程距離ギリギリの場所から狙撃のように使うのがベストだと言うことです。
10,<獣人化>
この術力はヒトのうちに潜む本能を解放し、肉体を野獣に近づける効果を持ちます。どんな野獣に近づけるかは術者の任意ですが、通常1種類に固定されるようです(狼人間・虎人間等)。この術力の持続時間中は『筋力』『運動力』が上昇し、再生能力までつきます。
しかし、<獣人化>の効果は発動させたときの月齢によって変わってきます。新月を「月齢:0」、満月を「月齢:14」としたとき、<獣人化>の持続時間は月齢×1ラウンドとなります。つまり、新月の日には<獣人化>する事ができません。また、太陽が見える時間帯は持続時間が半分になりますし、月が直接見えるのならば再生能力が2倍になります。
このように、<獣人化>は月の影響を受けやすい術力なので、常日頃から月齢を確認しておくようにしましょう。
11,<自然霊>
DNAに異常をきたした獣術使いは人間よりも大自然と接する能力に優れています。獣術<自然霊>は大自然/精霊と交渉して、新しい術力を使えるようにしてもらうための契約を交わす術力です。また、こうしてできた新しい術力のことを総じてアニマ術力と呼びます。
アニマ術力を使うためには以下の3つのステップを踏まなければなりません。
・ PSPをANIMAポイントに変換する ・ アニマ術力を作る ・ <自然霊>を発動させて契約を交わす |
最初の手順はPSPをANIMAポイント(単位はANIMA)に変換することです。1PSPは100ANIMAに変換されます。しかし、一度ANIMAに変換したらもうPSPに戻すことはできません。
ANIMAポイントはどれだけ自然と強い契約を結べるかを表す数値であり、強力なアニマ術力を使うためには多くのANIMAポイントが必要になるわけです。
次に契約するアニマ術力の性能を決定します。一言で言ってしまえばリストの中から「一次効果」「抵抗法」「属性」「距離」「効果範囲」「発動種」「持続時間」と、望むのならば「能力値・防護点変化」「その他のオプション」を選択し、ANIMAポイントの総計を出せば決定されます。
リストはこちらを参照してください。
例として武器作成術力<裂虎爪>を作ってみましょう。
まず、一次効果で基本となる発動値と消費AP・基本攻撃力を決めます。今回は手軽目に攻撃力8としておきましょう。ダメージカテゴリーは任意に決めますが、<裂虎爪>にはやはり攻Dが相応しいのではないでしょうか。これによって発動値は12・消費APは9・60ANIMAと決定します(後から変更可能)。
この調子で他の数値も決定していきます(カッコ内はANIMAポイントです)。属性は物理攻撃(±0)、距離は接触距離=距離:0(−15)、効果範囲は1点(±0)、発動種はSLの2種(+10)、持続時間は7ラウンド(×2.00)。オプションとして「転倒」(+20)と「武器型」(+20)を付けます。武器型にしたために抵抗法はなくなります。
以上、まとめて(60+0−15+10+20+20)×2.00=190ANIMA/発動値11/消費AP11の<裂虎爪>というアニマ術力が完成したことになります。
<裂虎爪>では関係ありませんでしたが、アニマ術力の作成にはあと2つのルールがあります。1つ目は80ANIMA以下の術力を作っても80ANIMAを消費してしまうことです。2つ目はANIMA計算が「×〜〜」となっている「2R以上の持続時間」「攻撃回数2回」「攻撃回数3回」「APダメージ」「吸収」は決して重複しないということです。また、これらは「×〜〜」以外の足し算が全て終わってからかけ算を行います。それさえ守ればアニマ術力はできあがります。
アニマ術力が完成したら大自然/精霊と契約しましょう。一般的な術力のように『霊力』+<自然霊>で術力を発動させればアニマ術力を使えるようになります。しかし、<自然霊>の発動に失敗してもANIMAは消費してしまいますので注意して下さい。儀式の最中に邪魔が入っても術力は失敗します。
アニマ術力は大自然/精霊から貸し与えられた術力です。PSPを4〜5点も使えばどんなことでもできるでしょうが、大自然にアニマ術力を没収されないように使い方を考える必要が常につきまといます。
12,<時堰陣><停時界>
これら2つの術力は「時間を止める」という極めて特殊な術力です。時間が止まってしまうとどうなるのかをルール面から説明します。
まず、物理的にも精神的にも全てのものが止まります。この空間内で「もの」を動かせるのは時を止めた術者のみです。精神的にも停止してしまいますので、これらの停時術力の効果範囲内にいた人物は時が止まったことを認識できません。
例外は「術力の存在を知っていて(「魔法物理学」+『知力』で発動値×1〜3)、時間停止を警戒していた」「運が良かった(『天勢値』が発動したときの達成値を上回っていた)」の2つです。
前者はかなり難しいと思います。何故なら時間停止術力(というよりも真術そのもの)がほとんど存在を知られておらず、気付いた時にはもうすでに術力が終わっているからです。それに人間心理として日常から「時間が止まっているかも」なんてことを考えている人もいないでしょうし。
後者は極まれに存在します。意思の力が時間の力を凌駕する者は、時間が停止していてもそのことを知覚・認識・思考できるのです。ただし、知覚と認識と思考はできても、身体が動くかどうかは別の話ですが。
時間停止術力を除いて、術力は停止してしまいますので、時間停止空間内で術力を発動させても離れている対象までオーラ・術力が届きません。接触している対象にしか術力は効果を持ちません(遠距離の対象に対する術力は時間停止が解除された瞬間に発動することになります。知覚できていなかった者は不意をつかれるので、抵抗に特殊5を追加させられます)。
接触距離から発動された術力に対して、対象は基本的に抵抗することはできません。抵抗できるのは<時堰陣><停時界>の達成値よりも『天勢値』が高い者のみです。しかし『天勢値』が高い者でも抵抗できるのはUVなどの「スキ」中でも(≒身体が動かなくても)抵抗できる抵抗法に限ります。
第参章追記
先ほど「術力は15系統」と言っていましたが、ここで16番目の術力を紹介しましょう。その名は『真術』。物事の本質を見極め、またあるべき姿に戻し、時間をも操作する術力です。
かなり強力な術力ですので、この術力を体得していれば99%のシナリオはたった1つの術力で終了してしまうでしょう(殺人事件の犯人を追うシナリオで<事覚>を使われた日には・・・)。ですからこの術力はNPC(Non
Player Charactor・・・GMが操作するキャラクター)のみが習得できるものとします。
真術を習得できるサイコタイプを「真瞭士」と呼びます(当然ながら妖術もNPC専用です)。真瞭士の扱う真術は「人の子の領域でない」術力です。そのために1度真術を使うと極度に身体に負担が掛かります(吐血などが代表的です)。これを防ぐには2つの方法があります。
1つは時間を掛けて術力を使うことです。霊的儀式などがこれに含まれますが、術力を使おうとしている間は精神集中しているのでかなり無防備になります。
もう1つは精神を休めておくために深い瞑想状態についておくことです。この状態を『眠り』といいますが、この間は体外に放出される生命力・オーラを極限までカットしているために真術以外のいかなる術力によっても探知されなくなります。
しかし、逆にこの間は一切の術力及び行動を行えませんので、攻撃されれば致命的なダメージを受けてしまいます。
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第参章番外 「汝、術使え」
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