2019/11/26
リヒャルト・ワーグナー
ニーベルングの指環
オペラといえば、ワーグナーを紹介しなくてはいけないでしょう。
余りにも作品が多いので、自分の聴いた有名な作品だけを紹介します。
◆ニーベルングの指環
◆トリスタンとイゾルテ
◆ローエングリーン
◆タンホイザー
◆さまよえるオランダ人
◆ニュルンベルクのマイスタージンガー
◆パルジファル
・・と続けて行きたいと思います。今回は◆ニーベルングの指環です。
◆ニーベルングの指環です。
リヒャルト・ワーグナーの『ニーベルングの指環』は4部からなり、
計約15時間も要する大作です。
ここでは、それぞれのあらすじを「4作まとめて」詳細に紹介します。
この4作からなりますが、順を追って紹介していきたいと思います。
・序夜:『ラインの黄金(Das Rheingold)』
・第1日:『ワルキューレ(Die Walkure)』
・第2日:『ジークフリート(Siegfried)』
・第3日:『神々の黄昏(Gotterdammerung)』
上演に約15時間も要する大作です。
台本は、北欧神話の物語を基としたワーグナーの独自の世界観が描かれています。
すべてを作曲するのに26年もの歳月をかけ、
全曲初演は1876年8月13日にようやくおこなわれました。(第1回バイロイト音楽祭)
このバイロイト音楽祭は、『ニーベルングの指環』を上演するために、
ワーグナー自らが創設した音楽祭です。
リヒャルト・ワーグナーの『ラインの黄金(Das Rheingold)』は、
『ニーベルングの指環』4部作の「序夜」に当たります。
ここでは、そんなワーグナー『ラインの黄金』のあらすじを細かく紹介したいと思います。
項目 | データ |
---|---|
作曲 | 1854年 |
初演 | 1869年 |
台本 | リヒャルト・ワーグナー |
演奏時間 | 2時間30分 |
リヒャルト・ワーグナーの『ラインの黄金(Das Rheingold)』は、
『ニーベルングの指環』4部作の「序夜」に当たります。
【神々】
ヴォータン(バリトン):神々の長。北欧神話のオーディン
ローゲ(テノール):火の神、半神。北欧神話のロキ
フリッカ(メゾソプラノ):ヴォータンの妻、結婚の女神。北欧神話のフリッグ
フライア(ソプラノ):フリッカの妹、美の女神。北欧神話のフレイヤ
エルダ(アルト):知恵の女神
フロー(テノール):幸福の神。北欧神話のフレイ
ドンナー(バリトン):雷神。北欧神話のトール
【地上の巨人族】
ファーゾルト(バス):巨人族
ファーフナー(バス):巨人族、ファーゾルトの弟
【地底のニーベルング族のこびと】
アルベリヒ(バリトン):ニーベルング族の小人
ミーメ(テノール):ニーベルング族の小人、アルベリヒの弟
【水の精ラインの娘】
ヴォークリンデ(ソプラノ):ラインの娘
ヴェルグンデ(メゾソプラノ):ラインの娘
フロースヒルデ(アルト):ラインの娘
「ラインの黄金」から作られた指輪を手にした者は、"限りない力"を手にします。
この物語は、その指輪をテーマとしています。
【第1場】アルベリヒ(地底人)がライン川の底にある「ラインの黄金」を盗み、指輪を作ります。
【第2場】天上では、巨人族が城の建設を完成させています。
その報酬として、ヴォータン(神)らに指輪を要求します。
【第3場】ヴォータン(神)らが、アルベリヒから指輪を奪います。
【第4場】怒ったアルベリヒが、指輪に"死の呪い"をかけます。
指輪を手にした巨人族は、死の呪いで殺し合いをしてしまいます。
最後に神々が、完成した城に入城していきます。
-----------------------------------------------------
第1場:『ラインの黄金』のあらすじ詳細
人間が誕生する前の時代、ライン川の底
ラインの娘たちが遊んでいます。
その場所で、娘たちは父親から「ラインの黄金」の番人をまかされています。
そこに地底ニーベルング族のこびとアルベリヒが現れます。
アルベリヒは娘たちの可愛さに惚れ、彼女たちに近づこうとします。
しかし、娘たちは醜い彼を「気味が悪い」と蔑み、軽くあしらいます。
アルベリヒは、コケにされたことに怒ります。
その時、太陽の光が水中にまで差し込み「ラインの黄金」が照らされます。
アルベリヒが「それは何だ?」と尋ねると、
娘の一人が「ラインの黄金から指輪を作った男は、限りない力が与えられる。」
「そして指輪を作るには、愛の力を断念することが必要だ。」と口を滑らせます。
アルベリヒは「世界の全てが私のものになるのか」と語り、
とっさに愛を断念し「ラインの黄金」を奪います。
そして笑いながら地底へと逃げていきます。
ライン川を見下ろす山上の空地。
ヴォータンとその妻フリッカが眠っています。
フリッカが目を覚ますと、ヴァルハルの城が完成していることに気づきます。
そして、夫のヴォータンを起こします。
ヴォータンは城が完成したことを喜びますが、
フリッカは「城の建設の報酬として、妹フライアを渡す契約」をしたことに不安を覚えます。
そこに城を建設した巨人族の兄弟(ファーゾルトとファーフナー)が現れ、
報酬として妹フライアを要求します。
ヴォータンは契約の変更を求めますが、巨人は受け入れません。
ヴォータンは助言を求めるために、火の神ローゲの到着を待ちます。
ようやくローゲが到着しますが、
彼は「フライアの代わりになる価値のあるものはない。」と言います。
しかし、その後にローゲが「アルベリヒがラインの黄金を盗んだ話」をすると、
それに巨人が食いつきます。
アルベリヒは既に指輪を作り終え、絶大な権力を手にしたことが伝えられます。
ニーベルング族と確執のある巨人は、フライアの代わりに「ラインの黄金」を要求します。
そして、それまでの人質としてフライアを連れて行きます。
神々は"フライアが作った若返りのリンゴ"が食べられなくなり、若さを失い始めます。
ヴォータンとローゲは、指輪を奪うために地底へとむかいます。
地底のニーベルハイム
指輪の魔力を手にしたアルベリヒが地底を支配しています。
アルベリヒが弟ミーメの両耳を引っ張り、いじめています。
アルベリヒは、注文していた「隠れ頭巾」をミーメから取り上げます。
そして「隠れ頭巾」を被り姿を消し、ミーメを再び痛めつけます。
アルベリヒは「お前たちは永遠に私に従うのだ」と叫び、その場を去ります。
そこに、ヴォータンとローゲが現れます。
ミーメは2人に「アルベリヒへの不満」を語ります。
そこにアルベリヒが現れ「この頭巾は自分の思いのままに姿を変えられる。」と自慢します。
ローゲはそれを「信用できない」と言うと、アルベリヒは大蛇に変身します。
皆は驚きますが、ローゲは「体を大きくできても、小さくはできないだろう。」と話します。
するとアルベリヒは蛙に変身します。
その瞬間、ローゲはアルベリヒを捕まえます。
アルベリヒは縛り上げられます。
そして山上の空地まで連れていかれます。
ライン川を見下ろす山上の空地。(第2場と同じ)
アルベリヒはヴォータンに財宝をすべて取り上げられ、
さらには指輪まで取り上げられてしまいます。
アルベリヒは財宝と引き換えに自由の身となります。
アルベリヒは指輪に「指輪を持つ者に死を作り出せ」と呪いをかけ、姿を消します。
そこに巨人族(ファーゾルトとファーフナー)が現れます。
巨人族は、城の建設の報酬としてアルベリヒの財宝を受け取ります。
しかしそれだけでは納得せず、指輪も要求します。
ヴォータンは、それを断ります。
そのとき辺りが暗くなり、知恵の女神エルダが現れます。
エルダは「指輪はあなたを破滅へと追い込む。」と警告します。
ヴォータンは巨人たちに指輪を渡し、妹フライアは解放されます。
巨人たちは指輪を手にすると、指輪の取り合いをはじめます。
そして指輪の呪いにより、巨人の一人がもう一人を殺します。
そして財宝をすべて手にし、城から去っていきます。
ヴォータンたちは、指輪の呪いに恐れおののきます。
ようやくフライアが解放され、神々は喜びます。
フローが城へ虹の橋をかけ、ヴォータンたちは橋を渡り城へ入っていきます。
ライン川の底から娘たちの嘆き声が聞こえたところで幕は下ります。
◎ワルキューレです。
項目 | データ |
---|---|
作曲 | 1856年 |
初演 | 1870年 |
台本 | リヒャルト・ワーグナー |
演奏時間 | 3時間40分 |
リヒャルト・ワーグナーの『ワルキューレ(Die Walkure)』は、
『ニーベルングの指環』4部作の2作目(第1日)に当たります。
『ニーベルングの指環』の中でも特に人気が高く、上演される機会も多い楽劇です。
【ヴォータンと人間の女との間の子】
ジークムント(テノール)
ジークリンデ(ソプラノ):ジークムントの双子の妹
【ジークリンデの夫】
フンディング(バス):ジークムントの宿敵
【神々】
ヴォータン(バリトン):天上に住む神々の主神
フリッカ(メゾソプラノ):ヴォータンの妃
【ワルキューレ】
ブリュンヒルデ(ソプラノ):ヴォータンと智の女神エルダの娘。
他8人のワルキューレ
神々の長ヴォータンは"神々の終焉"を恐れ、知恵の女神エルダを訪れます。
そこでエルダとの間に子供ブリュンヒルデをもうけます。
他の女神との間にも子供を作り、ブリュンヒルデ含む8姉妹をワルキューレとして育て上げます。
またヴォータンは指輪を取り返したいが、契約のため自らでは取り返せません。
そこで人間界に降り、名をヴェルゼと名乗って、人間との間に双子の兄妹を作ります。
それが、ジークムントとジークリンデです。
【第1幕】ジークムントとジークリンデは、互いに惹かれ合います。
ジークムントは宿敵との決闘のために伝説の剣「ノートゥング」を引き抜きます。
【第2幕】ブリュンヒルデは、ヴォータンの命令に背いて、
ジークムントを勝たせようとします。しかしヴォータンが決闘に割って入り、
ジークムントは息絶えます。
【第3幕】ジークリンデ(妹)に、兄との子供ジークフリートが宿っていたことがわかります。
ブリュンヒルデは命令に背いた罰として、岩山に眠らされます。
フンディングの家
ジークムントが嵐の中逃げまどい、フンディングの家の前で疲れ果てて倒れ込みます。
彼は戦いで孤軍奮闘しましたが、武器を失ってしまいました。
そこにフンディングの妻ジークリンデが現れ、彼を介抱します。
二人はお互いに惹かれ合います。
そこにフンディングが戻ってきます。
彼はジークムントに身の上を尋ねます。
話が進むにつれ「ジークムントはフンディングが逃した敵」だったことが判明します。
「一晩泊めた後に明日決闘する」ことが決まり、フンディングは妻と寝室へと消えます。
一人残ったジークムントは、父との約束を思い出します。
(Ein Schwert verhies mir der Vater)
父は別れる際に、「危機が迫ったときに剣を授ける」ことを約束していたのです。
一方、ジークリンデは「ジークムントが生き別れた兄」だと悟ります。
そして夫フンディングに眠り薬を飲ませ、ジークムントを訪れます。
ジークリンデはジークムントに、「フンディングと無理やり結婚させられた」ことを話します。
そして、「トネリコの幹に"未だ誰も抜いたことのない"剣が刺さっている」と武器のありかを教えます。
ジークムントは彼女を抱き、復讐を誓います。
二人は春の月光の下で再会を喜び、ジークムントの歌
(Wintersturme wichen dem Wonnemond)にジークリンデが答えます。(Du bist der Lenz)
「Wintersturme wichen dem Wonnemond/Du bist der Lenz」
ジークムントは、幹から誰も抜いたことのない剣を引き抜き「ノートゥング」と名付けます。
二人がフンディングの家から去り、1幕は終わります。
ヴォータンがブリュンヒルデに、「今日の決闘はジークムントに勝たせる」ように命じます。
ブリュンヒルデは歓声を上げて、その場を去ります。(Hojotoho! Hojotoho!)
「Hojotoho! Hojotoho!」
ヴォータンの妃フリッカが「ジークムントの勝利」に不満
そこにヴォータンの妃フリッカが現れます。
フリッカは、
・人間との間に生まれた子に剣を与えたこと
・ジークリンデとジークムントが、双子でありながら恋愛関係にあること
の不満を訴え、ジークムントに処罰を求めます。
ヴォータンは戻ってきたブリュンヒルデに、
「ジークムントではなくフンディングに勝利を与える」よう
命じます。
ブリュンヒルデは反論しますが、仕方なく父ヴォータンの命令を受け入れます。
ジークムントとジークリンデが逃げているところに、ブリュンヒルデが現れます。
ブリュンヒルデはジークムントに死を告知し、「あなたをヴァルハラ城へ連れていく。」と語ります。
しかしブリュンヒルデは、「ジークムントがジークリンデを想う愛の強さ」に深く感動します。
そして「ヴォータンの命令に背いて、ジークムントを勝たせる」ことを約束します。
フンディングが現れると、二人の決闘がはじまります。
しかしジークムントが勝利をおさめようと剣を振りかぶった時、ヴォータンが現れ割って入ります。
ジークムントの剣は槍で砕かれ、槍がジークムントの胸に突き刺さります。
ジークムントは命を落とします。
ブリュンヒルデは"ショックで気絶したジークリンデ"を馬に乗せて、砕けた剣の破片を持ち、
その場から逃げます。
ヴォータンはフンディングも打倒し、逃げたブリュンヒルデを追います。
ワルキューレたちが空を駆け巡り、岩山に集まります。(ワルキューレの騎行)
彼女たちがブリュンヒルデの帰りを待っていると、
なんとブリュンヒルデが「人間(ジークリンデ)を乗せた状態で、
しかもヴォータンに追われて」やってきます。
ブリュンヒルデは事情を話し助けを求めますが、ワルキューレたちは彼女を非難します。
「ワルキューレの騎行」
ジークリンデは死を考えますが、体内に新たな命が宿っていることが告げられます。
ブリュンヒルデは「この子供は、いずれ"剣の破片を継ぎ合わせてできた剣"をふるう勇士です。」と語り、
その子の名を「ジークフリート」と名付けます。
ジークリンデは生きて子を産むことを決心します。
そして剣の破片を受け取ると、急いで逃げていきます。
そこに怒り狂ったヴォータンが現れます。
ブリュンヒルデは、「父(ヴォータン)の本心に気付き、命令に従わなかった」と弁明します。
ヴォータンは心を打たれますが、それでも「罪は受けてもらわなければいけない」と告げます。
ヴォータンはブリュンヒルデに別れを告げます。(Leb' wohl du kuhnes, herrliches Kind!)
ブリュンヒルデは神性を抜きとられ、岩山の上に眠らされます。
さらに、岩山は"真の英雄のみが近づけるよう"に炎で囲まれます。
ヴォータンが立ち去り、全幕は終わります。
◎ジークフリートです。
項目 | データ |
---|---|
作曲 | 1856年-1871年 |
初演 | 1876年 |
台本 | リヒャルト・ワーグナー |
演奏時間 | 4時間 |
リヒャルト・ワーグナーの『ジークフリート(Siegfried)』は、
『ニーベルングの指環』4部作の3作目(第2日)に当たります。
ジークフリート(テノール):ジークムントとジークリンデの子
ミーメ(テノール):ニーベルング族でアルベリヒの弟。ジークフリートを育てる
ファーフナー(バリトン):巨人族。大蛇に姿を変え、指環や財宝を守っている
アルベリヒ(バス):ニーベルング族でミーメの兄。指環を奪う機会を探っている
さすらい人(バス):神々の長ヴォータンの地上での変装姿
ブリュンヒルデ(ソプラノ):ヴォータンとエルダの娘。ワルキューレの一人。
エルダ(アルト):知恵の女神。ブリュンヒルデの母。
森の小鳥(ソプラノ):鳥の言葉でジークフリートにアドバイスをする
ジークリンデは伝説の剣「ノートゥング」の破片を握り森に逃げ込み、ミーメに助けられる。
そして兄ジークフリートとの子供ジークフリートを産み息絶える。
一方ヴォータンは、さすらい人となって世界を遍歴している。
【第1幕】ジークフリートが「ノートゥングの破片」から剣を鍛え上げます。
【第2幕】その剣で大蛇を退治し、指輪を手に入れます。
【第3幕】ジークフリートは岩山に眠るブリュンヒルデ目覚めさせ、二人は愛し合います。
---------------------------------------------------------------------
鍛冶の名人ミーメがいくら腕を振るっても、自然児ジークフリートは、
その剣を簡単にへし折ってしまいます。
「ミーメが実の親ではない」ことを感ずいているジークフリートは、
ミーメに本当の親について尋ねます。
育ての親である自分に感謝しないジークフリートに対し、
ミーメは「お前を産んだのはジークリンデだ」と話します。
そして証拠として伝説の剣「ノートゥング」の破片を見せます。
ジークフリートは「その破片で剣を作るよう」頼みます。
ミーメは「ノートゥングの破片で剣が作れず」途方に暮れています。
そこに、さすらい人(ヴォータンの変装姿)が現れます。
二人は首を賭けて知恵比べをします。
ヴォータンは、最後に「ノートゥングの破片を剣にできるのは誰だ?」と質問します。
ミーメは答えがわからず戸惑います。
ヴォータンは「それは恐れを知らない男だ。」と告げて去っていきます。
ジークフリートが森から戻ってきて、「剣はできたか?」と尋ねます。
ミーメは「おれの首は恐れを知らぬ男のものになった。」と嘆き、
「ジークフリートに恐れを教えよう」とします。
ミーメはジークフリートに「外に出るには恐れを知る必要がある。」と説き、
「ファーフナー退治に連れていく」きっかけを作ります。
未だ恐れを知らないジークフリートは、ノートゥングの破片を剣に鍛え上げます。
(Notung! Notung! Neidliches Schwert!)
「Notung! Notung! Neidliches Schwert!」
ミーメは奪った宝を独り占めにするために、「ジークフリートを殺すための毒薬」を準備します。
ファーフナーが財宝を守る洞窟の前
アルベリヒが「ファーフナーから指輪を奪い返そう」と様子をうかがっています。
そこに、さすらい人(ヴォータンの変装姿)が現れます。
アルベリヒはそれがヴォータンだと見抜き、これまでの自分への仕打ちを恨みます。
ヴォータンは「私よりミーメに注意しろ」と警告し、去っていきます。
ミーメとジークフリートが現れます。
ミーメがうるさいので、ジークフリートは彼を追い払います。
朝になりジークフリートが角笛を吹き鳴らすと、大蛇ファーフナーが目を覚まします。
ジークフリートは大蛇の脅しにも屈せず、大蛇を剣で打ち倒します。
大蛇は「盲目のお前を犯行に駆り立てたやつが、お前の命を狙っている」と警告し、息絶えます。
大蛇の返り血を浴びたジークフリートは、「鳥の声が聞こえるように」なります。
ジークフリートは鳥の声に従って進み、「指輪と隠れ頭巾」を手に入れます。
ミーメが現れ、"指輪を奪うために"ジークフリートに毒を飲ませようとします。
しかし鳥から「ミーメを信用してはいけない」と忠告を受けたジークフリートは、
反対にミーメを切り殺します。
さらに鳥は「岩山に眠る花嫁ブリュンヒルデを目覚めさせなさい」と告げます。
ジークフリートは鳥の導くままに、そこへ向かいます。
ブリュンヒルデが眠る岩山のふもと
ヴォータンがエルダを大声で呼び、彼女を眠りから覚まします。
ヴォータンはエルダに「運命の不安に打ち勝つ方法」と問いますが、彼女は答えられません。
エルダの「知恵の女神のとしての力」の衰えを感じたヴォータンは、彼女を永遠の眠りにつかせます。
ヴォータンの前に、ジークフリートが現れます。
ヴォータンがこれまでの経緯を根掘り葉掘り尋ねるので、ジークフリートは嫌気がさしてきます。
ジークフリートは「はやく岩山への道を教えてくれ!」「お前は誰だ!?」と苛立ちます。
ヴォータンは「ノートゥングを砕いた槍」を掲げます。
ジークフリートは「ヴォータンを父の仇と勘違い」し、ヴォータンに襲い掛かり槍を折ります。
ヴォータンは「行け!私はお前を止めることはできない。」と告げます。
ジークフリートは「ブリュンヒルデが眠る岩山」へと向かいます
ブリュンヒルデが眠る岩山の頂き
炎をかいくぐったジークフリートが、ブリュンヒルデのもとへ現れます。
ジークフリートは、「ブリュンヒルデを男の戦士」だと勘違いします。
しかし甲冑を脱がせると、それは美しい女性でした。
ジークフリートは初めて女性と出会い、「恐れ」を覚えます。
ジークフリートがブリュンヒルデにキスをすると、彼女は目を覚まします。
(Heil dir, Sonne! Heil dir, Licht!)
「Heil dir, Sonne! Heil dir, Licht!」
ブリュンヒルデは「生まれる前から愛していた」と語り、二人は永遠の愛を誓いあって抱き合います。
情熱的な愛が最高潮に達し、幕は下ります。
◎神々の黄昏です。
項目 | データ |
---|---|
作曲 | 1869年-1874年 |
初演 | 1876年 |
台本 | リヒャルト・ワーグナー |
演奏時間 | 4時間20分 |
リヒャルト・ワーグナーの『神々の黄昏(Gotterdammerung)』は、
『ニーベルングの指環』4部作の4作目(第3日)に当たります。
ジークフリート(テノール):ジークムントとジークリンデの子。
ブリュンヒルデ(ソプラノ):ヴォータンの娘。ジークフリートの妻。
グンター(バリトン):ライン河畔のギービヒ家の当主。
グートルーネ(ソプラノ):グンターの妹。
ハーゲン(バス):アルベリヒが人間の女に生ませた息子。グンターとは異父弟。
アルベリヒ(バス):ニーベルング族の小人。ハーゲンの父。
ワルトラウテ(アルト):ワルキューレの一人。ブリュンヒルデの妹。
3人のノルン:運命の女神、三姉妹。エルダの娘。
3人のラインの乙女
これまでの物語を通して、指輪は
アルベリヒ⇒ヴォータン⇒巨人族⇒ジークフリート
の順で渡っています。
ヴォータンはヴァルハル(天上界)に戻ります。
そして世界樹のとねりこを切り倒し砦の周りに積み上げ、神々の終焉の準備を始めます。
一方、アルベリヒは豪族ギーギヒとの間に子供ハーゲンを作り、彼に指輪奪還の使命を託します。
この呪いは、ラインの川底(元々あった場所)に返すことで解かれます。
【序幕】ジークフリートがブリュンヒルデに指輪を渡し、山を下りて世間へと旅たちます。
【第1幕】ハーゲンがジークフリートに「忘れ薬」を飲ませます。
記憶をなくしたジークフリートは、ブリュンヒルデから指輪を奪います。
【第2幕】裏切られたと勘違いしたブリュンヒルデは、
ハーゲンに「ジークフリートは背中に弱点がある」と教えてしまいます。
【第3幕】ハーゲンがジークフリートを殺します。
事情をすべて理解したブリュンヒルデは指輪を奪い返し、
"ジークフリートへの愛を歌いながら"炎の中へ身を投げます。
指輪はラインの底に戻り、呪いは解けます。
神々が炎で包まれる中で幕が下ります。
-----------------------------------------------------------------------
ワルキューレの岩の上
3人のノルンが運命の綱を編みながら、「世界のこれまでの出来事や未来」について語っています。
しかしアルベリヒやジークフリートについて語り終えないうちに、綱が切れてしまいます。
ノルンたちは、母エルダのもとへ帰っていきます。
ジークムントとジークリンデは、ヴォータンとの人間の間に生まれた双子の兄妹です。
従って、ジークフリートはヴォータンの孫にあたります。
夜が明けるとジークフリートとブリュンヒルデが登場します。
ジークフリートは武勲をたてるため、山を下り世間へと旅立とうとしています。
ジークフリートは、ブリュンヒルデに「指輪」を贈ります。
それに対し、彼女は自らの愛馬グラーネを贈ります。
お互いの愛を確かめ合うと、ジークフリートは馬に乗って旅たっていきます。
ラインの河畔、ギービヒ家の館
グンターとグートルーネ、ハーゲンの3人は、「ギービヒ家の結婚」について話し合っています。
ハーゲンは、結婚相手として「グンターにはブリュンヒルデを」
「グートルーネにはジークフリート」を勧めます。
ハーゲンは「策略は、あの酒(忘れ薬)を手に入れた私にまかせておきなさい。」と告げます。
ジークフリートが小舟に乗って、ラインを上ってきます。
ハーゲンはジークフリートを館に招待し、忘れ薬を飲ませます。
"ブリュンヒルデを忘れた"ジークフリートは、グートルーネに惹かれプロポーズをします。
グンターは「ブリュンヒルデを連れて来てくれれば、妹を妻にしてあげよう。」と告げます。
ジークフリートはそれを承諾し、グンターと共にブリュンヒルデのいる岩山へ向かいます。
ブリュンヒルデのいる岩山
ブリュンヒルデは指輪を手に取って幸せを感じています。
そこにヴァルハル(天上界)から妹のワルトラウテが現れます。
ワルトラウテは「呪われた指輪をラインの娘たちに返してほしい。」という父ヴォータンの望みを伝えます。
ブリュンヒルデは「指輪はジークフリートの愛の形見で、例えヴァルハルが崩れ落ちても返せない。」と言い、断ります。
ワルトラウテは恨み言葉を残して去っていきます。
そこに記憶をなくしたジークフリートが現れます。
彼は「隠れ頭巾」をかぶって、グンターの姿に変装しています。
ジークフリートは「おれ(グンター)の妻になれ!」と言い、さらには「指輪」を奪い取ります。
ジークフリートはノートゥングの剣を抜き、グンターとの信義を誓います。
ギービヒ家の館の前
眠っているハーゲンは、夢を見ています。
夢の中で父アルベリヒが「指輪を奪い返せ」とハーゲンに攻め立てます。
夜が明ける
グンターにブリュンヒルデを預けて、ジークフリートが先に帰ってきます。
ハーゲンは、家臣に「結婚式の準備」を始めさせます。
遅れてグンターがブリュンヒルデを連れて帰ってきます。
2組の結婚式がひらかれることになります。
ブリュンヒルデは「ジークフリートとグートルーネが一緒にいる」ことに驚きます。
そして"ジークフリートが記憶をなくしている"ことを知らないブリュンヒルデは、激高します。
さらには「ジークフリートが指輪をはめている」ことに気づきます。
ブリュンヒルデはグンターに「指輪」について問いただします。
グンターは「何も知らない」と答えます。
記憶をなくしているジークフリートも潔白を主張します。
混乱し苦しむブリュンヒルデに、ハーゲンが近づき「私がお前の復讐を手伝おう。」と語ります。
そして、ハーゲンはブリュンヒルデから「ジークフリートの背中に弱点がある」ことを聞き出します。
名誉を奪われたグンターも加わり、ハーゲン・ブリュンヒルデ・グンターの3人は
「ジークフリートの死」を誓います。
ハーゲンは「指輪を奪い取らなければならない!」と叫びます。
ラインのほとり
ラインの乙女たちが「ラインの黄金(指輪)」が戻ってくることを願っています。
そこに指輪を持ったジークフリートが現れます。
乙女たちは「その指輪は呪われています。」
「指輪の呪いは、ラインの流れだけが償ってくれます。」と告げ、指輪を返すよう願います。
しかし"恐れを知らない"ジークフリートは、それを断ります。
ジークフリートのもとにハーゲンたちが現れ、宴会がはじまります。
"忘れ薬の解毒剤"を飲まされたジークフリートは、次第に記憶を取り戻していきます。
ジークフリートが"蘇った記憶"を語りだし、ブリュンヒルデについて語りだしたところで、
ハーゲンが彼の急所の背中を槍で刺します。
ジークフリートは、"ブリュンヒルデを思い出しながら"息絶えます。
ここで「ジークフリートの葬送行進曲」(間奏)が流れます。
第3場
ギービヒ家の館
グートルーネは「ジークフリートが帰ってこない」ことを不安に思い、
「ジークフリートに会いたい!」と独白しています。
そこにハーゲンたちが「ジークフリートの死体」を運んで戻ってきます。
グートルーネは"殺人犯"であるハーゲンを恨みます。
続いて、ハーゲンはグンターに「指輪」を要求します。
グンターが断ると、ハーゲンはグンターも殺してしまいます。
そしてハーゲンが"ジークフリートの死体"から指輪を取り上げようとすると、
死んだはずの彼の腕が脅すように持ち上がります。
皆は驚き、立ち尽くします。
そこに"これまでの経緯を理解した"ブリュンヒルデが戻ってきます。
彼女は「自分こそがジークフリートの妻だ」と名乗り、「彼と永遠を誓いました。」と語ります。
グートルーネは「ハーゲンの策略にはまり騙された」ことに気づきます。
ブリュンヒルデは家臣たちに、ラインの岸に薪の山を積み上げさせます。(Starke Scheite)
そして、ジークフリートの死体から指輪を抜くと、「この指輪をラインの娘たちに差し上げます。」と語ります。
さらに薪に火を放つと、ブリュンヒルデは愛馬グラーネに乗って
"ジークフリートへの愛を歌いながら"炎の中に飛び込みます。
炎はギービヒ家の館に燃え移り、さらにヴァルハル城にも燃え移ります。
ハーゲンは、指輪を追って水中に飛び込み溺れ死にます。
指輪はラインの乙女たちのもとへと戻り、ようやく呪いが解けます。
神々が完全に炎で包まれ、幕は下ります。
------------------------------
トリスタンとイゾルテです。
ローエングリーンです。
タンホイザーです。
さまよえるオランダ人です。
ニュルンベルクのマイスタージンガーです。
パルジファルです。
一つ戻る 戻る 次へ