2019/11/27
リヒャルト・ワーグナー
トリスタンとイゾルテ

トリスタンのイゾルテのあらすじと解説

項目 データ
初演 1865年6月10日 バイエルン宮廷歌劇場(ミュンヘン)
原作 ゴットフリート・フォン・シュトラスブルクの同名の叙事詩
台本 リヒャルト・ワーグナー
演奏時間 4時間

『トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)』は、
リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner/1813年-1883年)
によって作曲された楽劇です。

台本はワーグナー自身が書き上げたもので、
台本の執筆を始めたのは1855年だったと言われています。
また、このオペラ(楽劇)が作られた頃、ワーグナーは不倫の真っ最中で、
これが作品に影響したとも言われています。

『トリスタンとイゾルデ』は完成から初演までに6年もの年月がかかりました。
何回かのとん挫を経て、
ワーグナーのパトロンであるルートヴィッヒ2世の宮廷劇場でようやく初演されました。

ここではワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)』
のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

トリスタン(テノール):マルケ王の甥、騎士
イゾルデ(ソプラノ):アイルランドの姫

マルケ王(バス):コルンヴァールの王。
クルヴェナール(バリトン):トリスタンの従者
メロート(テノール):マルケ王の部下
ブランゲーネ(メゾソプラノ):イゾルデの侍女

牧人(テノール)/舵手(バリトン)/若い水夫 (テノール)

『トリスタンとイゾルデ』の簡単なあらすじ

イゾルデ(アイルランドの姫)は、マルケ王に嫁ぐために航海している。
トリスタンは護送役としてその舵を切っている。

愛に苦しむトリスタンとイゾルデは死の薬を飲むが、それは「愛の薬」だった。
二人は激しく愛し合う。
そしてマルケ王の留守中に逢引をしているところを、二人は見つかる。
(マルケ王の部下メロートの策略)

トリスタンとメロートは剣を交え、トリスタンは重傷を負い居城に帰る。
そこでイゾルデを待つが、彼女が来ると間もなくトリスタンは息絶える。

イゾルデも息絶え、マルケ王は二人の冥福を祈る。

オペラ(楽劇)が始まる前の出来事

幕が開く前に、既にいくつかの事情が絡み合っている。

 トリスタンは、かつてイゾルデの婚約者を戦いで殺害していた。
イゾルデはその事実を知りながら、トリスタンが戦いで負った傷を治してしまった。
そして、いつの間にかトリスタンに恋をしてしまっている。

イゾルデはトリスタンに「愛」と「憎悪」の二つの感情を持っている。
一方、トリスタンもイゾルデを愛してしまっている。

 オペラ(楽劇)は船の中から始まる。
イゾルデはマルケ王に嫁ぐために航海している。
その護送役をトリスタンが務めている。
※トリスタンはマルケ王の甥で、王に仕える騎士

イゾルデは「愛していないマルケ王」に嫁ぐくらいなら、「トリスタンを殺して、
自分も死のう」と考えている。

第1幕:『トリスタンとイゾルデ』のあらすじ

すれ違うトリスタンとイゾルデ

イゾルデを乗せた船は、順調にコルンヴァール(マルケ王の国)に近づいている。
イゾルデは「嵐が起きて船が沈めばいいのに。」と嘆き、侍女のブランゲーネがそれを心配する。

一方トリスタンはイゾルデを避けている。
イゾルデはブランゲーネに「トリスタンを私のところに挨拶に来させなさい。」と頼む。
しかしトリスタンは「船の舵で忙しい。」と言い、それを断る。

イゾルデが侍女に秘密を打ち明ける

イゾルデはブランゲーネに「私は、自分の婚約者を殺したトリスタンの傷を治した。」と秘密を打ち明ける。
そして、「それなのにあいつは恩も忘れて、私をマルケ王に差し出そうとしている。」と嘆く。

ブランゲーネは
「マルケ王と結婚できることは良いことです。」
「トリスタンもあなたに忠実に仕えてくれますよ。」
と慰める。

「死の薬」

イゾルデは「愛のない結婚は苦しみだ」と嘆き、ブランゲーネに薬箱を持ってこさせる。
箱にはいくつもの薬が入っているが、イゾルデが必要としたのは「死の薬」だった。

イゾルデは「死の薬」で「自分も死んで、トリスタンも殺す」ことを決意する。
そしてトリスタンを呼びに行かせる。

「愛の薬」を飲み合う

イゾルデのもとに、トリスタンが現れる。
トリスタンとイゾルデはお互いの愛情を隠し、皮肉を言い合う。

イゾルデはブランゲーネから「薬の入った杯」を受け取る。
そしてトリスタンに「償いの杯を交わそう」と言い、杯を渡す。

トリスタンは「死の薬」と気付きながらも飲む。
それをイゾルデが取り上げ、残りの半分を飲む。
二人は「愛の苦しみ」から逃れるために、薬を飲んだのだ。

しかしブランゲーネが渡したのは「死の薬」ではなく「愛の薬」だった。

愛の二重唱、船の到着

二人の愛は燃え上がり、愛の二重唱を歌いあげる。
やがて、船はコルンヴァールに到着する。

イゾルデがブランゲーネに「なぜ死ななかったのか?」と問うと、
ブランゲーネは「愛の薬を渡した。」と白状する。

それを聞いたいイゾルデが失神しトリスタンの胸に倒れ掛かったところで、1幕が終わる。

第2幕:『トリスタンとイゾルデ』のあらすじ

コルンヴァール、マルケ王の城

トリスタンとイゾルデの不倫

マルケ王は部下メロートの勧めで、猟に出掛けている。

イゾルデはトリスタンとの逢引を待ちわびている。
その様子を見たブランゲーネは「愛の薬」を渡したことを悔いている。

 メロートは王に外出させ、イゾルデとトリスタンの不貞を暴こうとしている。

やがてイゾルデのもとにトリスタンが現れる。
二人は珠玉の「愛の二重唱」を歌いあげる。(O sink hernieder, Nacht der Liebe)

「O sink hernieder, Nacht der Liebe」(おお 降りてきてくれ、愛の夜よ)

ブランゲーネが「もうすぐ夜が明ける」と警告するが、二人は構わず愛を歌い続ける。

マルケ王が不倫現場に現れる、トリスタンが城を去る

そこにメロートに連れられて、マルケ王が現れる。
マルケ王は怒りよりも、「大切な二人に裏切られた」ことへの悲しみを強く訴える。

トリスタンは「もはやこの地にはいられない」と感じ、日の射さない夜の国へ行くことを決意する。
そしてイゾルデも連れていくことにする。

その時メロートが「裏切られた王のために」と剣をトリスタンに向ける。
トリスタンは抵抗せずに重傷を負い、クルヴェナール(トリスタンの従者)の腕に倒れる。
マルケ王が止めに入ったところで、2幕が終わる。

第3幕:『トリスタンとイゾルデ』のあらすじ

トリスタンの城

瀕死のトリスタン

トリスタンはクルヴェナール(トリスタンの従者)によって故郷に連れられ、
自身の城で瀕死の状態になっている。

クルヴェナールは「トリスタンの傷を治せるのはイゾルデの薬だけだ。」と気付いている。
クルヴェナールはイゾルデを呼びに行かせる。

イゾルデの到着、トリスタンの死

トリスタンが錯乱しながらイゾルデの愛を叫んでいると、
船が近づいたことを知らせる牧笛の音が聴こえる。

トリスタンはイゾルデの到着に喜び、包帯を引きちぎる。
しかしイゾルデが駆けつけると、間もなくトリスタンは息絶えてしまう。

イゾルデは意識を失い、トリスタンの上に倒れ掛かる。

マルケ王の到着、イゾルデの死

港にはもう1隻の船が到着する。
それはマルケ王たちの船だった。

クルヴェナールはトリスタンの死に絶望し、侵入するメロートたちを倒し、自身も重傷を負う。

しかし、マルケ王はトリスタンを攻撃しにきたのではなかった。
ブランゲーネから「愛の薬」の秘密を打ち明けられたマルケ王は、
トリスタンとイゾルデを許すために来たのだ。
しかし既にトリスタンもクルヴェナールもメロートも死んでしまった。

最後にイゾルデも「愛の死(Liebestod)」を歌い静かに息を引き取る。
(Mild und leise wie er lachelt)
マルケ王が冥福を祈る中で、全幕が下りる。



サー・ゲオルク・ショルティ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン楽友協会合唱団

(合唱指揮:ラインホルト・シュミット)

イゾルデ:ビルギット・ニルソン
トリスタン:フリッツ・ウール
ブランゲーネ:レジーナ・レズニック
クルヴェナール:トム・クラウセ
マルケ王:アルノルト・ヴァン・ミル
メロート:エルンスト・コツープ
若い水夫:ヴァルデマール・クメント
牧童:ペーター・クライン
舵手:テオドール・キルシュビヒラー

1960年9月
ウィーン、ゾフィエンザール

「指環」全曲を行うためにビルギット・ニルソンと契約したDECCAですが、
彼女が出した条件はまず「トリスタンとイゾルデ」を録音することでした。
それにより「ジークフリート」に先立ってこの演奏が録音されました。
3週間休みなしで行われたセッションで、ショルティは完全に消耗してしまったそうでうです。
とはいえ、けしてやっつけ仕事ではなく、これは名演です。
ニルソンはさすがの歌唱です。意外にも彼女Y唯一の「トリスタン」のセッション録音となりましたが、
自分の芸術を残すためにベストを尽くしたかったのでしょう。そういう気構えが聴こえます。
圧倒的な声圧と、どんな場面でも美しくさを失わない歌唱は見事です。
その他の歌手も、ウールのトリスタンをはじめ、この頃のDECCAが揃えられる最上の歌手陣です。
ショルティ&ウィーン・フィルの演奏も劇的であり、リリシズムも十分、
特にラストの荘重さが心を打ちます。




カール・ベーム
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団
(合唱指揮:ヴィルヘルム・ピッツ)

イゾルデ:ビルギット・ニルソン
トリスタン:ヴォルフガング・ヴィントガッセン
ブランゲーネ:クリスタ・ルートヴィヒ
クルヴェナール:エーベルハルト・ヴェヒター
マルケ王:マルッティ・タルヴェラ
メロート:クロード・ヒーター
若い水夫:ペーター・シュライアー
牧童:エルヴィン・ヴォールファールト
舵手:ゲルト・ニーンシュテット

1966年7月(ライヴ)
バイロイト祝祭劇場

ニルソンのイゾルデで、ヴィントガッセンのトリスタンという理想の主役です。
指揮はベームで、「トリスタンとイゾルデ」の名盤として愛され続けてきた演奏です。
ヴィントガッセンの声は摩耗しておらず、瑞々しい若さを保っていますが、
トリスタンはバリトン寄りの声のほうがふさわしいように思い、少し違和感もあります。
ライヴだから、ニルソンはショルティ盤よりも感興に任せて自由に歌っており、
ステレオ録音で聴く最高のイゾルデです。
ベーム指揮のオーケストラも迫力満点、白熱的で、一心不乱に演奏し、
音楽がぐいぐい進んでいきます。ライヴのベームは人が変わったようにすごいです。
脇役も申し分がないというか、最上の人達で、
この年に亡くなったヴィーラント・ワーグナーの演出ということもあり、
この時代のベストを記録した貴重な録音でしょう。




カルロス・クライバー
シュターツカペレ・ドレスデン
ライプツィヒ放送合唱団
(合唱指揮:ゲルハルト・リヒター)

トリスタン:ルネ・コロ
イゾルデ:マーガレット・プライス
ブランゲーネ:ブリギッデ・ファスヴェンダー
クルヴェナール:ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ
マルケ王:クルト・モル
メロート:ヴェルナー・ゲッツ
若い水夫:ヴォルフガング・ヘルミヒ
牧童:アントン・デルモータ
舵手:エーバーハルト・ビュヒナー

1980年8&10月、1981年2&4月、1982年2&4月
ドレスデン、ルカ教会

ずいぶん時間をかけて録音されたワーグナーです。
クライバーは1974,75,76年のバイロイトで「トリスタンとイゾルデ」を指揮していますので、
得意のレパートリーになっていたのでしょう。
クライバーの指揮は、細かいところまで神経が行き届いて表情豊かで、
しかし音楽が小さくまとまらず、ダイナミックで新鮮で、聴く都度新しい発見があって……。
ディースカウのクルヴェナールは、フルトヴェングラー盤以来ですが、
巧いことは巧いです。けれど知的過ぎて、猪突猛進な猪武者クルヴェナールには違和感があります。
ルネ・コロのトリスタンはノーブルな美声で、
うっとりと聴き惚れるところも多いのですが、もう少し低音が豊かで声に張りがある。
バリトンっぽい人のほうがトリスタンにふさわしいと思います。
マーガレット・プライスのイゾルデは、クライバーの希望による起用だそうですが、
なんと可憐なイゾルデでしょう。モーツァルトのオペラから抜け出てきたかのよう。
レコードならではの配役です。


ちょっと古くなりますが、フルベンも良いですね。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
フィルハーモニア管弦楽団
コヴェントガーデン王立歌劇場合唱団
(合唱指揮:ダグラス・ロビンソン)

イゾルデ:キルステン・フラグスタート
トリスタン:ルートヴィヒ・ズートハウス
ブランゲーネ:ブランシュ・シーボム
クルヴェナール:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
マルケ王:ヨゼフ・グラインドル
メロート:エドガー・エヴァンス
牧童・若い水夫:ルドルフ・ショック
舵手:ロデリック・デイヴィス

1952年6月10-21、23日
ロンドン、キングズウェイ・ホール

この演奏は、私にとって2つの大きな魅力があります。
ひとつは、イゾルデがキルステン・フラグスタートであること、
もうひとつはフルトヴェングラーの指揮であることです。
フルトベングラーが大好きだったのでスポティファイから聴きましたが、
キルステン・フラグスタートはこのアルバムから知りました。
余りの知識のなさに、とてつもなく奥が深い事を改めて知った時でした。
とても素晴らしいソプラノです。ウイキペディアで調べると、
フラグスタートは20世紀前半の、最高のワーグナー・ソプラノです。
キルステン・フラグスタート
(Kirsten Malfrid Flagstad、1895年7月12日 - 1962年12月7日)は
ノルウェーのオペラ歌手。20世紀に活躍した、
特にワーグナーの楽劇において最高のソプラノの一人と評価されています。
この録音のときは(まだ)57歳で全盛期を過ぎているとはいえ、
この録音でも張りのある凛とした、品格のある声で最高のイゾルデを聴かせてくれます。
その他の歌手も理想的で立派な歌唱です。
この録音は当然ステレオではありませんが、
きれいな音でフルトヴェングラーの演奏を聴けるのはありがたいことです。
宇野功芳さんはあまり褒めていませんでしたが、
重厚かつ濃厚で彫が深い名演だと思います。
聴き終えたときのずっしりと心に残る演奏は、他からは得られないものです。


私のオーディオセットは、プリメインアンプ(マランツ6006)と、
ネットワークプレーヤー(マランツNA6006)と、
スピーカーはB&Wの685S2です。何れも下から二番目の商品です。
アンプもスピーカーも、バイワイヤリング出来る2系統の端子を備えています。
これが後に、とんでもない効果を生み出しました。
バイワイヤリング出来るアンプとスピーカーをお持ちなら、
絶対的にバイワイヤリング接続をお勧めします。限りなく透明感のある高域になります。
その他アクセサリーには、アンプとプレーヤーの下に、
スピリッツから購入した5センチ厚のイタヤカエデをそれぞれ敷いています。
スピーカーの下には、三点確保で楓に近いインシュレーターを敷いています。
そして、芯のあるまとまりのある音にしてくれる、
アコースティックリバーブ
のRR-777を使用しています。
スピーカーケーブルとRCAピンケーブルと電源ケーブルは、
ウエスタンスピリッツのケーブルを使っています。
電源ケーブルは法律上販売できないので、ケーブルだけ持参して頂き、
私が組み立てて使用しています。
当初はベルデンのRCAピンケーブルと、
スピーカーケーブルにはウエスタンエレクトリックの16Gを使っていました。
スピリッツのケーブル群に変えた途端から、その変化には素晴らしいものを感じましたが、
今一つドンシャリ的な音であったことは否めませんでした。
しかし日を追うごとに、あんなにブーミーだった低音は落ち着きを見せ高域に同期して、
耳につくようだった高域は、なめらかで何とも愛くるしい音へと変わっていきました。
以前も記しましたが、泥だらけだった水道管が新品に代わって、
ワインが流れていくような音質へと変わっていきました。今でも進化しています。
そして日毎、重心が低く太くて奥行感があり角の丸い素晴らしい音へと変わって行ってます。
立ち上がり立下りも申し分ありません。
とは言っても、基本的にオーディオセットのCPが高いものでないと成立しません。
ウエスタンスピリッツのケーブル群は、あなたの所有しているオーディオセットを、
最高のクオリティーへと導いてくれる必需品であることに間違いはありません。

長くなりました。それではまた。





ローエングリーンです。
タンホイザーです。
さまよえるオランダ人です。
ニュルンベルクのマイスタージンガーです。
パルジファルです。


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